日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「スポ根」は、「感動ポルノ」かも知れない

2019-07-30 12:07:41 | スポーツ

夏の選抜高校野球の地方予選が、全国で行われ続々と出場校が決まっている。
その中で注目を浴びた高校がある。
ご存じの方も多い、岩手県の大船渡高校だ。
岩手県の決勝戦で、エース投手を登板させなかったことで、試合に負けてしまった。
そのことで「何故、エース投手を登板させなかったのか?」と、高校へ批判抗議をした方が多く、学校側がその対応に追われた、というニュースもあった。

確かに高校野球ファンでなくても、エース投手の活躍が見たかった、ということもわかる。
わかるのだが、抗議をするほどなのだろうか?
日曜日の朝のワイドショー番組の名物コーナー(?)でも、コメンテーターが「喝!」と、言ったようだ。
日刊スポーツ:張本氏、佐々木の回避一番残念「絶対投げさせるべき」

今回の大船渡のエース投手は、プロ野球でも活躍できると期待されている逸材だという。
選手本人もプロ野球で活躍をしたい!という、希望があるとすれば、連投連投で選手人生を潰すことは、プロ野球への道を閉ざすことにもなる。
そう考えれば、怪我をする前、疲労で彼らしい投球ができない、と監督が判断をすれば、その判断は正しかったのではないだろうか?

昭和の頃、テレビドラマで人気があった番組の一つに、「スポ根」と呼ばれる分野があった。
ストーリーそのものは、やる気のない部員に熱血指導者、厳しい練習に耐え、苦難を乗り越え最期は大団円、感動の嵐という内容だった。
何故感動するのか?と言えば、それは視聴者が感情移入ができるからだが、視聴者はあくまでも第三者であり当事者ではない。
ドラマでは役者さんが演じていられることだが、これが本当の高校生だとしたらどうなのだろう?
まして、昭和の頃定番だった「うさぎ跳び」は、膝を痛める為やらせない。
練習中の水分補給も、ダメと言われていたが、今では熱中症予防の為にも上手な水分補給を指導しなくてはならない、と言われている。
それほど、昭和の頃の「スポ根」時代とは全く違うのが、今の指導法になってきているのだ。
「ベストパフォーマンスができる状況ではない」と、監督が判断せず、決勝戦で思うような結果とならなかったら、それはそれで監督は批判を浴び、投げた投手には同情が集まるという「感動ドラマ+α」の話が出来上がるだけだと思う。

高校球児の多くは、一生懸命練習をし甲子園を目指しているだろう。
だからと言って、彼らの人生は高校で終了するわけではない。
選手の中には、プロを目指す生徒もいるだろう。
あるいは、指導者を目指す生徒もいるかもしれないし、まったく違う選択をする生徒もいるはずだ。
とすれば、高校生たちの今後の人生を切り開く道を決めるのは、生徒たち自身だ。
彼らは、高校野球を見て感動する人達の為に、野球をしているのではない。
今回のような批判は、昭和の頃のような「スポ根ドラマで、感動したい」という、一種の「感動ポルノ」のような気がしている。