日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「楽市楽座」のような賑わいとメリット

2021-05-17 17:55:28 | ビジネス

WWD JapanのWEBサイトを見ていたら、「小売り本来の姿とは?」を考えさせられる記事があった。
WWD Japan:”もったいない”をなくす「パスザバトン マーケット」大盛況 デットストック約1万5000点を販売

この「パスザバトン マーケット」を企画したのは、飲食店「スープストックトーキョー」を運営しているスマイルズだ。
若い女性を中心に人気の「スープ専門店」として、日本各地で展開をしている「スープストックトーキョー」だが、企業や産地でデットストックを「蚤の市」のような形態で販売する、という試みだったようだ。

開催地が東京ということもあり、緊急事態宣言が発令されたため延期になったり規模を縮小しての開催ということになった背景はあるにせよ、記事を読む限りでは「盛況だった」ということになると思う。
そして、この記事を読みながら思い浮かんだ言葉が、「楽市楽座」だった。

日本史にも登場する(であろう)「楽市楽座」は、安土桃山時代、織田信長をはじめとする諸国大名たちが領地の経済政策の一つとして行った「市場」だ。
今でも「楽市楽座」の名のついた、市場や商店名は全国各地にあると思う。
大手スーパーなどが行う市場のようなイベントではなく、「蚤の市」のような自由さが、本来の「楽市楽座」なのでは?という気がしている。
というのも「楽市」は、市場=ものを売ることを指し、「楽座」は、エンターティメントを指しているからだ。
京都の神社仏閣の参道などで見かける、骨董市のような雰囲気のほうが近いかもしれない。

何故「楽市楽座」なのか?と言えば、上述した通り「市場とエンターティメント」を提供する場所だからだ。
今の市場には、エンターティメントが無い(場合がほとんどだ)。
そして「エンターティメント」の場には、蚤の市のような雑多感のあるモノ売りはない。
何より「楽市楽座」の大きなメリットは、街の賑わいを創り出すだけではなく、様々な人達が集まる事で「情報交換」が行われた、という点だ。

ネット社会となった現在、パソコンやスマートフォンをつければ、様々な情報にアクセスすることができる。
むしろ、情報過多と言っても良い状況だ。
そのような社会環境の中で、あえて「情報交換」なのか?と言えば、ネットでいられる情報の多くは「自分にとって知りたい情報」に限られてしまうからだ。
それが「楽市楽座」のような環境になると、「自分に興味がない情報も入ってくる」ということになる。
特にエンターティメントが加わる事で、自分の知らないエンターティメントから知らない文化に、触れることもできるのではないだろうか?
偏った情報を集めるのではなく、多様な情報を見聞きすることで「情報の選択力」を身につけることができる機会が得られる、ということなのだ。

今回の「パスザバトン マーケット」の場合、デッドストック化してしまった商品の販売をメーカー側がしている、という点で生活者側に対して「商品に対する安心感」というものを提供している。
「コロナ禍」の中で、人が集まるイベントを企画・実施すること自体難しい状況にあるが、地域の活性化だけではなく、地域自らが発信する情報提供という点でも「楽市楽座」のようなイベントは、メリットが高いのではないだろうか?
一時期「軽トラ市」というイベントが、地方の商店街活性化策として、話題になった。
商店街が日常の場だとすると、「楽市楽座」は非日常の場とする必要がある。
「楽市=市場」だけではなく「楽座=エンターティメント」が加わる事で起きる、非日常性を街中に取り戻すことで得られるメリットは大きいのではないだろうか?