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女性マーケターから見た日々の出来事

「高齢者社会」のメディアを考える

2021-05-24 12:58:04 | ビジネス

先週、実家(米子市)に帰省していた。
この「コロナ禍」での帰省は、ためらう要素が多かったのだが、高齢の独居老人である父の様子を定期的に見る事で、数カ月前にできていた動作がしにくくなった、あるいはできなくなったという状況を把握する必要もあったため、半年ぶりの帰省をした。

幸いな事に、90歳を超えても認知の面では変わる事が無かったのだが、以前から患っていた右目の緑内障が進行し、大好きな時代小説を読まなくなっていた。
時代小説だけではなく、毎日読んでいる新聞でさえ流し読みどころか、見出しを見る程度だった。
テレビのニュースにしても、自分の生活に関係するローカルニュースは興味があるのに、全国ニュースになると興味が薄らぐような処も見られた。
もちろん、ニュースの中心が「オリンピックとコロナ」ばかりで、大きな変化が感じられないという点も、興味が薄らいでいる要因かもしれない。

そのような父の生活状況を見ながら、今から父の生活に必要なサポートは何か?ということを考え、行政にお願いすること、家族がサポートすることなどを準備することになる。
その中で感じた事が「高齢者社会におけるメディア」ということだった。

実家の父の場合、上述したように「緑内障」の為「見難い」という状況になっている。
聴覚の問題が無いということもあるのだが、高齢者向けの音声メディア=ラジオなどの充実が、これから重要になってくるのでは?という気がしたのだ。
もちろん、ここ数年で「ラジオ」というメディアそのものが、大きく変ってきている。
それは「Radiko」の登場によって「いつでも・どこでも・お気に入りの番組を聞くことができる」ことが、できるようになった事が大きいだろう。

特に、FMの様に聞くことができる地域が限定されていると、出かけた先でいつもの番組を聞くことができない、ということがあったり、ラジカセ全盛期の様に「聞き逃しても録音をする」ということができたが、今は簡単にラジオ番組を録音するということが逆にしにくい状況になっている。
そのような問題を解決できるサービスとして登場したのが、インターネットを使う「Radiko」ということになる。
実際には、日本全国どこの放送局でも聞けるサービス「エアーフリー」等を利用するためには、事前登録をする必要があるため、高齢者にとって使いやすいのか?という疑問はあるが、逆に行動範囲が狭い高齢者には「エアーフリー」という機能は必要ないだろう。
むしろ、インターネットに接続するということ自体が、高齢者にとって利用しにくい理由となる可能性は高い。
そのような「高齢者にとって、使いやすい音声メディア」というものが、これから必要となっていくのでは?という気がしたのだ。

これは実家の父のような「視覚の衰え」に対する問題の解決、ということになる。
これが「聴力の衰え」ということになれば、また違う「映像メディア」の在り方が必要となるだろう。
「人生100年時代」と言われるようになったが、多くの企業がこの言葉を謳い文句として使う時、「加齢によって、かつてできたことができなくなった自分の姿」ということを、忘れてしまっている。
「今当たり前にできる事が、数十年後できるのか?」と問われれば、それはおそらく「ノー」だろう。
企業は「バラ色の老後」を謳うだけではなく、「バラ色にはならない老後を如何に変えるのか?」ということを描く必要があるのだ。

「高齢者にとって暮らしやすい社会」は、様々な障害を持つ人達にとっても「暮らしやすい社会」なのだと思う。
そして、既に「高齢者社会」に突入している日本は、これまでの「メディア」の在り方も変えていく必要があるだろう。
事実、今の10~20代の半分は、テレビを視聴しないという調査もあった。
AVWatch:10~20代の約半分「ほぼテレビ見ない」。NHK調査

「メディア」における社会変化が起きている今、全世代の中で一番のボリュームゾーンとなる世代=高齢者の利便性に注目したメディア企業が、これからのメディアをリードしていくのかもしれない。