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米国の「日本への渡航規制」は、オリンピック・パラリンピックの開催に影響を与えるのか?

2021-05-25 19:12:26 | アラカルト

米国国務省が、「新型コロナ感染拡大状況」について日本への渡航を「安全ではないため、渡航すべきではない」というレベル4に引き上げた。
朝日新聞:日本の感染状況 最高レベル CD分析もとに渡航中止

オリンピック開催までにあと2ヵ月となった状況で、米国の「日本への渡航をすべきではない」という判断は、オリンピック開催そのものへの影響が大きいのでは?という印象を持つのは、私だけではないと思う。
確かにオリンピックの開会式までに2ヵ月という状況ではあるが、選手団などの来日は2ヵ月前ではないからだ。
開会式に1ヵ月位前には日本に来日をし、時差ボケを解消しつつ、出場する種目の当日に合わせた体調管理が必要だからだ。
と考えると、後1ヵ月で今の日本の感染状況が劇的に好転し、米国側が「渡航することが安全である」というお墨付きを出すことができるのか?ということになる。

IOCも日本のJOCも丸川五輪相も「多少の犠牲を払っても、開催する」という方向で動いているようだが、米国の選手団が来日しないとなった場合、果たして米国での放送権を持っているNBCなどが「米国の選手の活躍は見られないが、中継はする」というのだろうか?と、疑問に思ったのだ。

IOCと日本のJOCや東京都(拙ブログではしつこいほどに書いているが、オリンピックはあくまでも「都市開催」なので主催者となるのは東京都である)が恐れている?開催中止によって発生する「違約金?」どうなってしまうのだろう?
米国のメディアに限らず、オリンピックの中継は自国選手たちの活躍を報道するためだ。
その自国選手たちが、「渡航できない=オリンピックに出場できない」という状況になった時、参加国のテレビ局はどのような対応をするのか?ということなのだ。

もちろん、米国の選手団だけが来日しなくても、オリンピック、パラリンピックを開催することはできる。
1980年のモスクワオリンピックが正に、米国をはじめとする西側諸国が一斉にボイコットをし、「オリンピックというよりも東側スポーツ大会」と揶揄されるほどの規模を縮小して開催されたこともあった。
この時は、今回のような「感染症の世界的拡大」ではなく、当時のソ連がアフガニスタンに侵攻したことへの政治的理由によるものだったし、それも急遽ボイコットが決まった、というような状況だった。

IOC側は「モスクワオリンピック」やその次の「ロサンゼルスオリンピック」の様に、規模を縮小させてでも開催はできる、という目論見なのかもしれないが、当時のボイコット理由と今回とでは全く違う。
そしてオリンピック参加国の中で一番大きい選手団を派遣する米国が、参加しないということになれば、上述した通りNBCの対応だけではなく、他の諸外国も同じ対応(=渡航中止)をする可能性もある。

まだまだ流動的とはいえ、米国のバイデン大統領は就任当時から「科学的根拠を基に、判断したい」と言ってきた。
その「科学的根拠」による判断が、今回の「レベル4=渡航中止」なのだ。
日本の政治家の皆さんの様に「気合と根性、人の絆で感染拡大を阻止」と言っている訳ではないのだ。

そして今回の件で、IOCと開催国との契約内容が明らかになった。
一部では「開催国不利な不平等契約」という指摘がされた内容だった。
中止の判断をするのはIOC側にあるが、金銭的痛みを伴わず、金銭的負担はすべて開催都市側が負担する、という内容だったからだ。
現時点で開催が決まっているオリンピック・パラリンピックは、現在の契約内容で履行されるはずだが、今後開催都市として手を挙げる都市が無くなってしまうかもしれない、ということをIOCやNPCは考えなくてはならないはずだ。

そう考えると、今回の東京オリンピック・パラリンピックは「パンドラの箱」を開けてしまったのかもしれない。
1984年のロサンゼルスオリンピックが、今回のような「商業主義オリンピック」の始まりだと言われている。
そしてその「オリンピックビジネスモデル」が崩れたオリンピックが、この東京オリンピックと言われるようになるかもしれない。