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「フードロス」の次は「アパレルロス」か?

2021-05-13 12:51:31 | ビジネス

SDGsの話題で真っ先に取り上げられるのが、「フードロス(=廃棄される食品)」だろう。
ラジオなどのCMでは、日本人一人当たり1個のコンビニおにぎりを廃棄している、という計算になるらしい。
「ひとり1個のコンビニおにぎり」というと、決して大きな数字ではないように思えるのだが、日本全体という数字になると、相当量のコンビニおにぎりが廃棄されている、ということになる。

問題なのは、食べ物が廃棄されるのに食事がままならない人たちがいる、という点だ。
先進諸国でありながら、日本の子どもたちの7人に1人が、貧困家庭だという。
日経新聞:子どもの貧困率13.5% 7人に1人、改善せず

貧困家庭の多くが、母子家庭であるという調査があるため「好きで離婚をしたのだから、自己責任」と言い放つ方も少なからずいらっしゃるのは分かっているつもりだが、日本の場合、既婚・未婚を問わず「非正規雇用者」が圧倒的に多い、ということや、「正規雇用者」であっても男性の約7割の給与し変えていない、という現実がある。
そのため、「正規・非正規雇用」問わず、母子家庭になると一気に「貧困家庭」に陥ってしまうのだ。

とここまでは「母子家庭」という視点なのだが、実はもっと深刻な経済状態である、という指摘がされている。
ITmedia:こんなに頑張っているのに、なぜ日本だけGDPが回復しないのか

女性の「正規・非正規雇用」という問題以前に、日本では労働環境が悪化しているにもかかわらず、給与を含む生活環境そのものが悪化しているのだ。
そのために「母子家庭以外の貧困家庭」も増えているはずなのだ。

このような背景で生まれた市井の活動が、「子ども食堂」と呼ばれる場所だ。
毎日ではないが、週の内に1,2回様々な境遇の子どもたちが集まって、安価な価格で食事をする場所だ。
今では、子どもだけではなく様々な年齢の生活困窮者も一緒になって、食卓を囲むというところも増えている、と聞く。
この「子ども食堂」の活動を支えるのが、「フードロス」となった食品の活用でもある。

このような「〇〇ロス」と呼ばれるものは、何も食品に限ったことではない。
アパレル商品なども、大量に廃棄されている。
バブルの頃、女性に人気のあるシューズブランドは、「ブランドイメージ維持のため」という理由で毎シーズンごとに出荷できなかった靴を大量廃棄をしていて、話題になったことがあった。
それは靴だけに限った事ではない。
シーズンごとにファッショントレンドを追いかける、服飾のほうが廃棄される量は多いかもしれない。
そのような「アパレルロス(というのか?)」を解消するために、新しい動きが出ている。
WWD:廃棄ジーンズ20トンを買い取りリメイク販売 町工場の”覚悟”に大手百貨店が共鳴

廃棄対象となっているジーンズが、ジーンズの基本中の基本ともいえる「リーバイス501」という点は驚くのだが、逆に考えれば、「リーバイス501」ですら20トンもの廃棄がされるのであれば、他のアパレル商品などはもっと大量に廃棄されているのでは?と、想像がつく。

ただ食品とは違い「消費期限」があるわけではないので、リメイクなどの方法で販売することができる。
販売価格を抑える事ができれば、社会的経済弱者と言われる人たちも手に取りやすいはずだ。
毎シーズンごとに、ファッショントレンドを追いかけるような時代ではなくなりつつある事を考えれば、アパレル産業も「ロス」から「再生→販売」という新しいビジネスモデルを考える時期にきているのではないだろうか?
それは、呉服などにも通じる事だろうし、呉服の場合は海外(特に欧米)市場を考えた、ラグジュアリー感のある提案ができるはずだ。

アパレルや呉服という市場もまた、「ロスを出さない」という発想をすることで、新しい市場や顧客が生まれるのでは?という気がする。