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今年のノーベル経済学賞は、エポックメイキングなことかもしれない

2023-10-11 20:14:32 | アラカルト

今月に入り、ノーベル賞各賞の受賞者が発表されている。
9日は、経済学賞が発表された。
受賞されたのは、米国ハーバード大の経済学部教授・クローディア・ゴールディン氏で、受賞対象となったのは「労働市場における女性の役割の理解と促進」というテーマだった。
AFP:2023年ノーベル経済学賞、ゴールディン氏に「労働市場での女性の役割」研究 

これまでの経済学部門での受賞者が圧倒的に多かったのは、同じ米国のシカゴ大出身の教授だったような記憶がある。
そして、受賞後なぜか?数年後その理論に疑問符が付くようなコトが、繰り返されてきたように思う。
その為、「ノーベル賞に経済学部門は必要なのか?」という意見もあった。
そのような意見が出てくる中、少しづつ受賞者が変わってきた。
2019年に受賞したフランス人経済学者・エステル・デュフロ氏は、夫であるMITで同じく経済学教授であるアビジット・バナージ氏、そしてハーバード大学のマイケル・クレーマ氏との共同研究で、テーマとなっていたのは「GDPの最大化は、先進国が考えた的外れなゴール」という内容だった。
COURRiER japan:ノーベル賞経済学者が説く「GDPの最大化は、先進国が考えた的外れなゴール」 

2019年に受賞されたデュフロ氏は、今回受賞したゴールディン氏と同じ女性の経済学者で、ノーベル経済学賞での女性受賞者はわずか3人しかいない。
と同時にシカゴ大出身の経済学者から、多様な経済人が受賞するようになり、当然取り扱うテーマも多様になってきている。
受賞テーマにしても「経済発展」という視点から、「経済と社会」あるいは「途上国における経済発展」という視点に変わってきている。
あるいは「強者の経済から弱者の経済」という視点の変化、と言っても良いかもしれない。
言い換えれば、ノーベル賞を選定するアカデミー側が、変わってきている、ということだと思う。

タイトルに「エポックメイキングな出来事」としたのは、「男性と女性」という経済格差は国を問わない問題である、ということだろう。
特定の問題に視点を置き、経済発展を研究するというモノではなく、どの国も抱えているグローバルな経済的問題である、というこ都だとうかがえる。
ジェンダーギャップ指数が上位の国はともかく、多くの国々では給与を中心に(企業内における役職待遇等も含む)経済格差があり、「働く女性が増えるだけでは、この問題は解決しない」ということを示している。
特に年々ジェンダーギャップランクが下落し続けている、日本の場合は構造的な問題はもちろん、生活者の意識も変える必要がある、ということだろう。
毎日新聞:「日本は女性を働かせるだけではだめ」ノーベル賞 ゴールディン氏

この中で指摘されているのは、働く日本女性が増えていても、その多くが「パートタイム」と呼ばれる短時間労働である、ということを指摘されている。
これは、先日問題になった「103万の壁。130万の壁」と言われる、「扶養控除と社会保障費」という問題が関わっている。

もう一つは、特に名古屋のような保守的な地域で見られる「女性は男性の庇護の元で暮らすことが幸せである」という、考えだろう。
あくまでも個人的な感覚なのだが、このような考えが一般化したのは戦後高度成長期前後からなのでは?という気がしている。
というのも、戦前生まれの亡き母は「事故や病気で旦那さんが亡くなっても、自分で自立できるくらいの経済力はつけなさい」と、言う教訓めいたことを話していたからだ。
それは、母が戦争を経験し「戦争未亡人や戦争で障害者となった配偶者を支える女性」となった同級生を見てきたからだろう。
勿論、女性の社会的地位は今よりも低く、もっと男女差別が顕著だった時代の話だ。
それが経済が安定していない時代の、女性が生きる一つの考えだったのでは?と、考えている。

そのような考えから「男性の庇護の元で暮らす」ことが許されるようになったのは、戦後の高度成長期前後からだ。
そこには、「働く男性を影で支える女性」が、社会的に賛美され「専業主婦」が時代の最先端の女性像となった、という背景があるのでは?と、考えている。

何となくだが、今後の経済は「弱者が生きやすい社会の為の経済」という視点が、必要になってくるのでは?と、想像をしている。
それを男女の経済格差という視点の研究が、ノーベル経済学賞を受賞対象となったことは、社会を変える力となるエポックメイキングのような気がしている。






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