昨年秋くらいから、チョッと話題になっている駅がある。
今年4月で廃線が決まっている、JR西日本の三江線の「宇都井駅」だ。
Travel.jp:さらば天空の駅!島根三江線宇都井駅との別れが惜しいすぎる
リンクを貼ったサイトのタイトルにもあるように、別名「天空の駅」と呼ばれているらしい。
このような記事が話題となり、三江線廃止を前に昨年秋ごろから観光客が来るようになってきたという。
廃線で話題となり、観光客が集まるようになった、というのは皮肉なコトだが、この三江線そのものを存続させる為に、何か方法は無かったのだろうか?と、思ってしまった。
もちろん、地元では活性化の為の協議会や沿線沿いの自治体が一緒になって促進期成同盟会などをつくり、存続の働きかけや利用者を増やすための努力をしてきたようだ。
三江線改良利用促進期成同盟会・三江線活性化協議会:ぶらり三江線WEB
これらの努力及ばず廃線というのは、地元の方々にとって寂しく、辛いことだろう。
ただ、今のような自動車による移動が中心になってしまうと、地元の地域活性化の為の鉄道利用というのは、限界があるように思える。
廃線になる三江線に限らず「地域活性化の為の鉄道利用」という発想は、なかなか厳しいのではないだろうか?
むしろ逆転の発想で「鉄道利用をした(観光などによる)地域活性化」という方法が、あるのではないだろうか?
というのも、ここ数年海外からの旅行客のうち、欧州を中心に「日本の田舎、日本の自然」を観光目的として、来日する観光客が増えつつあるからだ。
元々個人旅行でくる欧州からの観光客にとって、京都や世界遺産に登録されているような「有名な田舎や里山」であれば、ツアーバスという方法もあると思うが、そうではない本当の田舎への移動手段はJRのローカル線(もしくは、地方の鉄道)ということになる。
この三江線の場合、別名「江の川線」とも呼ばれる通り、島根県から広島県にまたがる「江の川」という川沿いを通っている。
そのため、路線そのものがとても風光明媚な場所に造られている。
春には山桜、初夏には青もみじ、秋には紅葉、冬には雪景色、と四季折々の日本の原風景が車窓から見ることができる路線でもある。
他にも「石見神楽」のような地域に根付いた伝統文化もあれば、風情ある温泉街も残っている。
「地域活性化」というと、どこかで成功した事例を真似て(と言っては失礼だが)同じような活性化策を打ち出そうとする傾向があるように思える。
そして、失敗をするケースも多いのでは?と、感じている。
観光などによる地域活性化であれば、まずその地域にある「文化的資源」を探し、そのための道具として鉄道というツールを使う、という発想が重要なのではないだろうか?
日本の地方には、個々の地域に根差した「文化」があり、他の地域では真似することができないモノも多い。
欧州などからの観光客を集めるとなると、「言葉の壁」が問題と考えるようだが、英語の案内板やガイドブックは必要でも、その地域に住んでいる人たちの外国語力などは必要ない、と考えている。
何故なら、自国語以外の言葉と出会うこともまた(海外)旅行の面白さだからだ。
三江線は廃線になってしまうが、廃線後の線路をそのままにしておくと、その地域全体が寂れてしまう可能性もある。
三江線沿線の自治体の活性化は、これから先が大変かもしれない。