先週、ある大学病院が開催した「がん」についての講演会に行ってきた。
私自身が、がんという病気を経験したという理由が大きいのだが、今のがん治療は日進月歩で進んでいる。
8年前にはできなかったダビンチ(と呼ばれている手術ロボット)による前立腺がんの手術が、保険適用でできるようになってきたり、次々と新しいがん治療薬が登場し、話題になってきた。
患者自身が、がんという病気を知り治療についての情報を積極的に得なくては、最良の治療を選択することができなくなりつつある、という時代でもあるのだ。
新しい治療薬と言えば、数年前1年間の治療費で家が買える、と話題になった「オブジーボ」がある。
悪性度の高い皮膚がん「黒色メラノーマ」の治療薬として登場した、「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる新しいタイプの薬だった。
現在は、ある特定の肺がんなどにも使われるようになり、薬価そのものは発売当初の半分くらいまでに下がってきている。
特定のがん種だけではなく、様々ながん種にも適用されることで薬価が下がったことは、喜ばしいことだがその一方で、「高額な治療薬は、本当に患者の為になっているのか?」という議論も起き始めている。
「高額な治療薬」の保険適用は、逆に皆保険制度の負担を重くするばかりで、国民全体の利益に結びついているのか?という問題が起き始めている、ということなのだ。
上述した「オプジーボ」という免疫チェックポイント阻害剤は、これまでとは違う発想で誕生した新薬であり、日本の製薬企業・小野製薬が創り出したこともあり、日本では何としても保険適用ということはしたかったと思う。
それだけではなく、これまでような特定のがん種だけではなく、様々ながん種での適用が可能となる「汎用性の高いがん治療薬」という点でも、保険適用となっても国民の利益が十分にある、と考えられると思っている。
ただ、「オプジーボ」に代表されるような「これまでとは違う発想で創られた、汎用性の高い高額な治療薬」が、次々と登場してきているというのも、現状である、という話だった。
その一例となるのが、製薬会社・ノバルティスが開発した「急性白血病の治療薬・CAR-T治療」と呼ばれる、ゲノム治療(精密化治療)薬だ。
この「CAR-T治療薬」の場合、1回の治療が5千万円を超すという高額すぎるほどの治療薬なのだ。
「オプジーボ」の場合、薬価が下がる前で1年間で3,200万円で、「家が1軒買える治療薬」と話題になったが、それ以上の価格の薬なのだ。
効果よりも高額なコトがネックとなり、多くの患者に使えないと、医療の現場側からも批判(?)の声が、上がっているという(今回の公開講座で臨床医の先生のお話しだ)。
そもそも「急性白血病」は小児がんに多い病気で、「CAR-T治療」は完治の期待がされている。
ノバルティスが開発した治療薬とは違う手法で「CAR-T治療」の研究が米・中では進んでおり、日本でも多くの患者が受けられるような「CAR-T治療」の承認に向け、臨床試験を行う予定である、という話でもあった(最後は、病院の研究実績PRの話にだったような気がするが・・・苦笑)。
臨床医であっても、患者さんに経済的負担が少ない治療を目指す必要がある、という認識が生まれている、ということなのだ。
先日の公開講座の話から、これから先の医療は「高額な治療でも受けたい人」と「標準治療の範囲で最良の治療を受けたい人」へと2分化されていくような気がした。
しかし、皆保険制度の日本では「医療にもコストパフォーマンス」が求められる時代がきている、ということを実感しつつ、「標準治療で最良の治療を受ける」為には、どうしたらよいのか?ということも考えさせられたのだった。
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