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USスチールを巡る様々な思惑

2025-01-07 11:09:52 | ビジネス

昨夜遅く飛び込んできた「日本製鉄が、米国政府を提訴」というニュース。
Reuters:日本製鉄が提訴、米大統領のUSスチール買収禁止命令無効などを求めて 

日本の企業が、米国政府を提訴するということ自体、これまでになかったと思う。
もちろん、日本製鉄が提訴したい理由は分かる。
そもそも民間企業の買収案件に、政府が口出しをしたのだ。
これでは、グローバル経済の中でますます盛んになるであろう、国家間を越えた企業の買収ができない、ということになってしまう。
民間企業の経済活動に政府が口を出す、ということ自体、米国のような「自由経済」を目指してきた国としては、珍しということだけではなく、米国政府の思惑そのものが、わかりにくいからだ。

このことに対して、石破総理が「買収禁止命令」の理由となった「安全保障」について、米国政府に説明を求める、という状況にもなってきている。
TBS News DIGITAL:石破総理、アメリカ側に「懸念の払拭に向けた対応を強く求めたい」日本製鉄によるUSスチール買収計画をめぐり 

「自民一強」と言われていた故安倍総理の時でも、米国政府に対して不満を述べるということが無かったような気がする。
弱小与党だから、このような強気の発言をすることで「強い石破政権」というPRもあったのかもしれないが、異例な印象を受けたのは、私だけではないと思う。

とすると、「日本製鉄とUSスチールの買収案件」は、企業間の買収という問題ではなくなりつつある、ということのようにも受け止められる。
その背景は何か?と考えると、やはり米国内における鉄鋼業界と米国政界との結びつきのようなモノも見えてくる、と言われている。
日経新聞:日本製鉄「労組・競合と結託」主張 米大統領ら複数提訴

以前、拙ブログでこの話題を取り上げた時、USスチールの買収を巡っては、日本製鉄が手を上げる前、USスチール側が複数の企業に打診をしていたが、その買収額等の条件により話が進展しなかった。
そこに手を挙げたのが、日本の企業である日本製鉄だったのだ。
その為、米国の製鉄労働組合が、猛烈な反対表明をし、その反対に同調したのが米国政府であった、というのがこれまでの経過だ。
米国政府というよりも、昨年行われた米国大統領選において、労働組合との関係は重視したいという、本音があったのでは?という、想像ができる。

もう一つは、USスチールが買収の話を持ち掛けた1社・クリーブランド・クリフスが、USスチールの倒産を待って、買いたたきたいという思惑もあるのでは?ということも言われているという。
クリーブランド・クリフスが倒産後のUSスチールを買取る条件として、米国政府がUSスチールの従業員の雇用等についての条件を付け、米国政府お墨付きの底値買いたたき、買収ができる、ということだ。
米国社会では、「USスチールという米国の企業と従業員を救った、クリーブランド・クリフス」、というイメージつくりにもなるだろう。

もう一つは、日本製鉄という日本企業を中国企業と混同している、という米国政府の残念さも指摘されている。
というのも、米国政府側が「安全保障の問題」とした理由に、「米国企業が他国の企業に買収されることで、米国経済に対する懸念」の「他国の企業」の部分が「中国の企業」と、記されていたという指摘もされているからだ。
日本製鉄とUSスチールにとって、迷惑千万な話だが、この言葉が示すことは「日本企業の世界的求心力の低下」ともいえるだろうし、「米国政府の自国企業以外で興味がある(=経済的警戒すべき国)のは、中国である」とも考えられる。

今回の日本製鉄(とUSスチール)が、米国政府を提訴したことで、様々な米国内の思惑が見えてきたような気がする。



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