19日のLPSA金曜サロン、船戸陽子女流二段に指導対局で軽く吹っ飛ばされたあと、会員と将棋を指していると、誰かが「ギエーッ!! ギエーッ!! ギエッ!!」と、けたたましい雄叫びを上げながら、ドタバタと入室してきた。日本将棋連盟将棋道場の手合カードには、「むやみに大声や駒音をたてないこと」の注意書きがあるが、こちらはどうなのだろう。
その声の主は、石橋幸緒女流王位であった。この日の倉敷藤花戦で、山口恵梨子女流1級に逆転負けを喫し、情緒不安定に陥ったらしいのだ。
この勝敗は事前に聞いて知っていた。山口女流1級は、私が現在最も評価している女流棋士である。とにかくいい。
一緒に入室した中井広恵女流六段は、女流名人位戦A級リーグで、本田小百合女流二段に苦しい将棋を逆転勝ちしていた。う~む。
もう夜9時近くになっているというのに、石橋女流王位は憂さ晴らしか、大盤を使って自戦解説を始める。序盤はうまく指されたようだが中盤は盛り返し、必勝態勢だったのに、山口女流1級の不思議な勝負手に応手を誤り、逆転負けを食ったらしい。さすがに山口女流1級、私が見込んだだけのことはある。綺麗だ。
石橋女流王位には残念な結果だったが、ここはタイトルホルダーに互角以上に渡りあった、山口女流1級を讃えるべきであろう。
それでも石橋女流王位は憤懣やるかたない、といった様子で、対局が終わった私に、
「きょう飲み物を買ったときに、連盟の道場で一公さんを見たのがいけなかった」
と、のたまった。
えっ、ええっ? 私に火の粉が降るのか??
と、中井女流六段も、
「私はきょうは一公さんを見なかったから勝てたのよ。この前は道場の前で立ち話して負けちゃったから、きょうは道場の中を見ないように気をつけてたのよー」
と言う。
えええ? なんだか話が変な方向になってきた。中井女流六段は続けて、
「だってほら、前も一公さんが宏美ちゃんの後ろ姿を見たとき、宏美ちゃん負けちゃったでしょー。一公さんを見たり見られたりしたら、負けちゃうのよー」
と言う。私はメドゥーサか。
なんだか妙な展開になってきたが、私に振るのはやめてもらいたい。
しかし追及の手は緩まず、誰かが
「今日は藤田先生も船戸先生もピンクの服でしたもんね」
と蒸し返す。うっ、私が恐れていた話題がまたも出た。
これと同じ話題が、夕方の大盤解説の後にも出たのだ。このときは藤田女流1級が、
「(ピンクの服を着たのは、偶然とは)違いますよー」と、当然ながら否定した。「この前、一公さんにLPSAにはピンクの服が似合う人がいないって書かれちゃったからさー」
「……」
私は黙って聞くしかない。たしかに私は、女流棋士会のスーパーサロンで藤田綾女流初段に指導対局を受けたとき、着ていたピンクの洋服をかわいらしく思い、「LPSAの棋士にこの色の似合う棋士はいない」と書いた。しかしこれ、ある日のエントリの長い文章の中に、さりげなく書いたものである。だがこの一節がけっこうLPSA棋士のプライドを刺激してしまったようで、先日のとちのきカップでも、石橋女流王位から
「LPSAにはピンクの洋服が似合う人がいなくてすみません」
と、強烈な反撃を受け、狼狽していたのだった。
そのとき船戸女流二段は、藤田女流1級の言葉を、にこにこ笑って聞いていた。
いま(午後9時すぎ)も船戸女流二段は、穏やかな笑みを浮かべるだけだ。そういえば私は、船戸女流二段のことを「LPSAのファッションモデル」と言いながら、「今回の花柄の洋服はどうだったか。彼女は男物のワイシャツや黒のパンツでも十分似合うと思う」と書いた前科があった。
…ああっ!! ということは、5月31日の日レスインビテーションカップで、カッターシャツに黒のパンツというコーディネートで現れたのは、私の書きこみに呼応したのではないか!? そして今回の船戸女流二段もまた、モデルのプライドを懸けた、渾身のピンクの洋服だったに違いない。
…あっ、まだある。私は先日のエントリで、中倉宏美女流二段の後ろ姿にポワーンとしてしまった、と書いた。きょうの船戸女流二段の凝った背面も、それを意識したものではなかったか。いやしかし、これはさすがに考えすぎであろう…。
R氏のブログ「マンデーレッスン・レポート」では、15日は藤森奈津子女流三段が、ピンクのカーディガンを着ていた。これをどう見るか。これも私の目に触れることを意識してのものだったのだろうか。
いやいやいやいや、なんだかLPSAの女流棋士が恐ろしくなってきた。
この機会だからとばかり、中井女流六段が笑いながら畳みかけてくる。
「一公さんのとちのきカップの観戦記さあ、女優の若村麻由美がいたとか、あの女流が美人だとか、そんなことしか書けないのー?」
「いやいや、それはですね…」
「一公さんは、1回戦のときも一番前の椅子席が空いていたのに座らないで、後ろの席に座ってみんなの顔を見回してたのよねー」
と、これは石橋女流王位。
「いやいや…本当に若村麻由美がいたんですから! だって将棋の解説が聞きたいんだったら、解説室に行けばいいでしょう。女流棋士の対局姿を見なかったら、何のために対局室に入るんですか!」
なぜか私の味方がいない中、私も孤独な反撃をするが、どうも賛同が得られない。
「服の話もそうだけど、こっちは真面目な話を書いてるつもりなのに、『夜のナカクラヒロミ』とか、みんな小さなことに食いつきすぎですよ!」
「ああ、『夜のナカクラヒロミ』はいいリズムだったよね」
と、これは会員のW氏。私の肩を持ってくれているのだろうか。
「う…? うん、とにかくさあ、そこまで突っ込まなくても、みんなボクのブログなんか読んでないでしょ」
すると中井女流六段、「そんなあ! みんな一公さんのブログ読んでますよ~!!」
……。本当だろうか。石橋女流王位と藤田女流1級が私のブログを毎日「チェック」しているのは知っている。しかしこの場にいる船戸女流二段、中倉宏美女流二段までが、毎日読んでいるとは思えない。このおふたりは、当ブログの準レギュラーである。面と向かって言えないこともけっこう書いている。当然不快に思う書き込みもあるはずだ。まずい。今後はちょっと、書き方を変えなければいけない。
いやまあとにかく今回は、ふつうの歩の突き捨て(ピンクの服は似合わない)を、指し過ぎとして厳しく咎められ、参った。こういうときは終盤の手筋、玉の早逃げである。
私は棋友を呼ぶと、早々にサロンを出て、行きつけのファミレスへ向かうのだった。
その声の主は、石橋幸緒女流王位であった。この日の倉敷藤花戦で、山口恵梨子女流1級に逆転負けを喫し、情緒不安定に陥ったらしいのだ。
この勝敗は事前に聞いて知っていた。山口女流1級は、私が現在最も評価している女流棋士である。とにかくいい。
一緒に入室した中井広恵女流六段は、女流名人位戦A級リーグで、本田小百合女流二段に苦しい将棋を逆転勝ちしていた。う~む。
もう夜9時近くになっているというのに、石橋女流王位は憂さ晴らしか、大盤を使って自戦解説を始める。序盤はうまく指されたようだが中盤は盛り返し、必勝態勢だったのに、山口女流1級の不思議な勝負手に応手を誤り、逆転負けを食ったらしい。さすがに山口女流1級、私が見込んだだけのことはある。綺麗だ。
石橋女流王位には残念な結果だったが、ここはタイトルホルダーに互角以上に渡りあった、山口女流1級を讃えるべきであろう。
それでも石橋女流王位は憤懣やるかたない、といった様子で、対局が終わった私に、
「きょう飲み物を買ったときに、連盟の道場で一公さんを見たのがいけなかった」
と、のたまった。
えっ、ええっ? 私に火の粉が降るのか??
と、中井女流六段も、
「私はきょうは一公さんを見なかったから勝てたのよ。この前は道場の前で立ち話して負けちゃったから、きょうは道場の中を見ないように気をつけてたのよー」
と言う。
えええ? なんだか話が変な方向になってきた。中井女流六段は続けて、
「だってほら、前も一公さんが宏美ちゃんの後ろ姿を見たとき、宏美ちゃん負けちゃったでしょー。一公さんを見たり見られたりしたら、負けちゃうのよー」
と言う。私はメドゥーサか。
なんだか妙な展開になってきたが、私に振るのはやめてもらいたい。
しかし追及の手は緩まず、誰かが
「今日は藤田先生も船戸先生もピンクの服でしたもんね」
と蒸し返す。うっ、私が恐れていた話題がまたも出た。
これと同じ話題が、夕方の大盤解説の後にも出たのだ。このときは藤田女流1級が、
「(ピンクの服を着たのは、偶然とは)違いますよー」と、当然ながら否定した。「この前、一公さんにLPSAにはピンクの服が似合う人がいないって書かれちゃったからさー」
「……」
私は黙って聞くしかない。たしかに私は、女流棋士会のスーパーサロンで藤田綾女流初段に指導対局を受けたとき、着ていたピンクの洋服をかわいらしく思い、「LPSAの棋士にこの色の似合う棋士はいない」と書いた。しかしこれ、ある日のエントリの長い文章の中に、さりげなく書いたものである。だがこの一節がけっこうLPSA棋士のプライドを刺激してしまったようで、先日のとちのきカップでも、石橋女流王位から
「LPSAにはピンクの洋服が似合う人がいなくてすみません」
と、強烈な反撃を受け、狼狽していたのだった。
そのとき船戸女流二段は、藤田女流1級の言葉を、にこにこ笑って聞いていた。
いま(午後9時すぎ)も船戸女流二段は、穏やかな笑みを浮かべるだけだ。そういえば私は、船戸女流二段のことを「LPSAのファッションモデル」と言いながら、「今回の花柄の洋服はどうだったか。彼女は男物のワイシャツや黒のパンツでも十分似合うと思う」と書いた前科があった。
…ああっ!! ということは、5月31日の日レスインビテーションカップで、カッターシャツに黒のパンツというコーディネートで現れたのは、私の書きこみに呼応したのではないか!? そして今回の船戸女流二段もまた、モデルのプライドを懸けた、渾身のピンクの洋服だったに違いない。
…あっ、まだある。私は先日のエントリで、中倉宏美女流二段の後ろ姿にポワーンとしてしまった、と書いた。きょうの船戸女流二段の凝った背面も、それを意識したものではなかったか。いやしかし、これはさすがに考えすぎであろう…。
R氏のブログ「マンデーレッスン・レポート」では、15日は藤森奈津子女流三段が、ピンクのカーディガンを着ていた。これをどう見るか。これも私の目に触れることを意識してのものだったのだろうか。
いやいやいやいや、なんだかLPSAの女流棋士が恐ろしくなってきた。
この機会だからとばかり、中井女流六段が笑いながら畳みかけてくる。
「一公さんのとちのきカップの観戦記さあ、女優の若村麻由美がいたとか、あの女流が美人だとか、そんなことしか書けないのー?」
「いやいや、それはですね…」
「一公さんは、1回戦のときも一番前の椅子席が空いていたのに座らないで、後ろの席に座ってみんなの顔を見回してたのよねー」
と、これは石橋女流王位。
「いやいや…本当に若村麻由美がいたんですから! だって将棋の解説が聞きたいんだったら、解説室に行けばいいでしょう。女流棋士の対局姿を見なかったら、何のために対局室に入るんですか!」
なぜか私の味方がいない中、私も孤独な反撃をするが、どうも賛同が得られない。
「服の話もそうだけど、こっちは真面目な話を書いてるつもりなのに、『夜のナカクラヒロミ』とか、みんな小さなことに食いつきすぎですよ!」
「ああ、『夜のナカクラヒロミ』はいいリズムだったよね」
と、これは会員のW氏。私の肩を持ってくれているのだろうか。
「う…? うん、とにかくさあ、そこまで突っ込まなくても、みんなボクのブログなんか読んでないでしょ」
すると中井女流六段、「そんなあ! みんな一公さんのブログ読んでますよ~!!」
……。本当だろうか。石橋女流王位と藤田女流1級が私のブログを毎日「チェック」しているのは知っている。しかしこの場にいる船戸女流二段、中倉宏美女流二段までが、毎日読んでいるとは思えない。このおふたりは、当ブログの準レギュラーである。面と向かって言えないこともけっこう書いている。当然不快に思う書き込みもあるはずだ。まずい。今後はちょっと、書き方を変えなければいけない。
いやまあとにかく今回は、ふつうの歩の突き捨て(ピンクの服は似合わない)を、指し過ぎとして厳しく咎められ、参った。こういうときは終盤の手筋、玉の早逃げである。
私は棋友を呼ぶと、早々にサロンを出て、行きつけのファミレスへ向かうのだった。