大庭美夏先生、大庭美樹先生、千葉ロッテマリーンズ日本一、おめでとうございます。
去る10月30日(土)・31日(日)と、中井広恵女流六段をはじめ総勢20名で、将棋合宿に行ってきた。舞台は長野県南佐久郡川上村にある「信濃わらび山荘」。埼玉県蕨市が運営する施設で、蕨市内の子供たちに自然の中で伸び伸びと生活してもらうことを主目的としている。中井女流六段が蕨市の教育委員を務めていることから、この施設が選ばれた。
今回の合宿は中井女流六段とLPSA旧金曜サロン会員のW氏が音頭をとり、実現にこぎつけた。参加棋士はほかに植山悦行七段と大野八一雄七段。旧金曜サロン会員などの一般参加は、16名。幸い私も声を掛けていただき、まあ声を掛けていただかなくてもよかったのだが、ありがたく参加した。また観戦記者の大矢順正氏も特別参加することになった。
30日は台風が上陸し、朝から雨だった。こんな荒天の中、バカバカしくて家を出る気になれない。のんびりビデオでも観ていたいが、そんなバチの当たることはいまさら言えない。私は着替えをリュックに詰めると、気が重いまま家を出た。
出発地の埼玉近郊には午前9時集合である。クルマ5台に分乗して、信濃わらび山荘へ向かう。
JR川口駅前からは「中井カー」の中井女流六段、植山七段、Kun、Kaz、Ueの各氏、それに私の6名と、「Honカー」のHon、R、Y、Iz、Tatの各氏5名。北朝霞駅前からは「Wカー」のW、Is、Kub、Hakの各氏4名と、「Wパパカー」のWパパ氏、W・Akiちゃん、W・Hanaちゃん一家。さらに「大矢カー」には大矢氏、大野七段が乗車し、それぞれ出発した。
私は幸運にも「中井カー」だった。女流棋界の大御所、中井女流六段直々の運転で合宿先へ向かえるとはありがたいことで、全国の中井ファンがこのブログを読んだら、羨むのを通り越し、私に石を投げたくなるだろう。
雨中の運転は厳しかろうが、中井女流六段の運転はスムーズである。車内にはサザンオールスターズのBGMが流れているが、これは植山七段の選曲であろう。夏が戻ってきたようでなかなかよい。
ところで今回の日程は予約の関係で、かなり前から決まっていた。そのとき中井女流六段は各棋戦で連勝中、倉敷藤花戦でもベスト8くらいまで勝ち進んでおり、挑戦権獲得も視野に入っていた。倉敷藤花戦第2局は、11月2日に倉敷市で行われる。もし中井女流六段が挑戦者になれば前日(1日)に現地入りしなければならず、この合宿を強行すると、かなりハードなスケジュールとなっていた。
もっとも本人は、仮に挑戦者になっても合宿には参加する意向だったようだ。対局はもちろんだがファンとの交流にも重きを置く、中井女流六段の面目躍如といえた。
それはともかく、このメンバーで話すことといえば将棋界の話題だが、「○○と○○は○○で○○だから、○○は大変でしょう」とかいう会話が飛び交い、文章にすると伏せ字ばかりになってしまうので、公表は省略する。
車内の後ろには将棋盤やチェスクロックが積まれており、中井・植山・大野各棋士は準備段階から大変だったろうと推察する。そのご苦労を、私たちはその夜も身にしみて感じることになる。
予定からやや遅れて、11時すぎに上里パーキングエリア(PA)で休憩。ここに入っているレストランがジョナサンを思わせるゆったりした造りで、とりあえずドリンクを飲むために入ったのだが、やや早めの昼食を摂ってしまってもよかった。
ここでクルマに乗るメンバーのチェンジ。信濃わらび山荘まではまだまだ長い道のりで、同じクルマでは味がわるい。公平にクジ引きで決め、私は「Honカー」に替わった。中井女流六段のクルマに戻れなかったのは残念だが、プロ棋士がいなければいないで、それなりの会話を楽しめるものだ。
少し走って、横川PAで昼食休憩。ここでの昼食は考えていなかったので、少し予定が狂う。横川といえば「峠の釜めし」が有名だが、販売スペースは大きくないようだ。なにしろ20名の団体なので、2、3名を除き大レストランに入る。私は何を注文してもよかったのだが、中井女流六段にならってビーフカレーを注文した。
高速道路を出ると、幸い雨も止んでいた。今度は大型スーパーで飲み物の買い出しである。お菓子も買うそうで、それはY氏と私が担当した。繰り返すが、なにしろ20人分である。酒のつまみやスナック類など、どんどんカゴに入れていく。レジで精算すると4,000円キッカリで、Y氏と私は顔を見合わせてニヤリと笑った。キリのいい金額は幸先がよい。
クルマに戻る。ここからはノンストップで信濃わらび山荘へ向かう。山荘は広大な土地にログハウス様式で建てられているそうで、一部メーカーの携帯電話も通じないらしく、探偵小説マニアには堪らないシチュエーションである。
車内では、山荘を舞台にした殺人事件のプロットを、みんなで考える。もちろん登場人物は私たちである。Hak氏は探偵小説に造詣が深いようで、ここでは話の中心になった。
みんなのバカ話を要約すると、一番手に殺されるのが私、二番手がKaz氏。三番手がKun氏。さらに中井女流六段も殺されかかる。探偵役はAkiちゃん、Hanaちゃんのお嬢さんコンビで、そこに中井女流六段もサポートする。
欲をいえば20代の女性も登場してほしいが、LPSAの20代は、29歳11ヶ月の石橋幸緒女流四段しかおらず、該当者がいないに等しい。ちなみに藤森奈津子女流四段、船戸陽子女流二段、松尾香織女流初段は自称24歳らしいが、さまざまな人生経験をしてきました、という顔の3人が20代とはとても思えない。3人の戯れ言には、とりあえず相槌だけ打っておけばいいのだ。
話は戻るが、犯人はとりあえずY氏、とした。もちろん探偵小説なので、なぜ私たちが殺されたか、一応共通点は用意した。まあ動機はどうとでもなるが、私が真っ先に殺される理由は筋が通っていた。
午後3時すぎ、予定より1時間半遅れて、ついに信濃わらび山荘に到着した。高地に建つだけあって、さすがに寒い。また空が泣き出している。いまより天候が荒れることはないだろうが、帰宅が遅れるというような最悪の事態も想定するならば、中井女流六段の倉敷藤花戦敗退は、不幸中の幸いだったと云える。
私の「マッカラン進呈回避」も含めて、岩根忍女流二段には感謝に絶えない。
将棋盤や駒が入っている段ボール箱等をとりあえず食堂に運び、私たちは宿泊棟に入った。典型的なログハウスで、木の香りがうっすらと漂う。真ん中に大きなラウンジがあり、それをぐるっと取り囲むように、7つの部屋が用意されていた。綾辻行人「十角館の殺人」を思わせる、ゾクゾクする造りである。
部屋に入ると、二段ベッドが3つ設えられていた。つまり6人部屋ということだ。都合42名の定員で、ほかにも宿泊棟がいくつかあるから、なるほどこれなら林間学校の宿泊場所としても十分利用できる。
電気を灯けると、室内がほんのりと明るくなった。この地で、明日まで将棋三昧か…。私ははやる心を抑えると、食堂へ向かった。
(つづく)
去る10月30日(土)・31日(日)と、中井広恵女流六段をはじめ総勢20名で、将棋合宿に行ってきた。舞台は長野県南佐久郡川上村にある「信濃わらび山荘」。埼玉県蕨市が運営する施設で、蕨市内の子供たちに自然の中で伸び伸びと生活してもらうことを主目的としている。中井女流六段が蕨市の教育委員を務めていることから、この施設が選ばれた。
今回の合宿は中井女流六段とLPSA旧金曜サロン会員のW氏が音頭をとり、実現にこぎつけた。参加棋士はほかに植山悦行七段と大野八一雄七段。旧金曜サロン会員などの一般参加は、16名。幸い私も声を掛けていただき、まあ声を掛けていただかなくてもよかったのだが、ありがたく参加した。また観戦記者の大矢順正氏も特別参加することになった。
30日は台風が上陸し、朝から雨だった。こんな荒天の中、バカバカしくて家を出る気になれない。のんびりビデオでも観ていたいが、そんなバチの当たることはいまさら言えない。私は着替えをリュックに詰めると、気が重いまま家を出た。
出発地の埼玉近郊には午前9時集合である。クルマ5台に分乗して、信濃わらび山荘へ向かう。
JR川口駅前からは「中井カー」の中井女流六段、植山七段、Kun、Kaz、Ueの各氏、それに私の6名と、「Honカー」のHon、R、Y、Iz、Tatの各氏5名。北朝霞駅前からは「Wカー」のW、Is、Kub、Hakの各氏4名と、「Wパパカー」のWパパ氏、W・Akiちゃん、W・Hanaちゃん一家。さらに「大矢カー」には大矢氏、大野七段が乗車し、それぞれ出発した。
私は幸運にも「中井カー」だった。女流棋界の大御所、中井女流六段直々の運転で合宿先へ向かえるとはありがたいことで、全国の中井ファンがこのブログを読んだら、羨むのを通り越し、私に石を投げたくなるだろう。
雨中の運転は厳しかろうが、中井女流六段の運転はスムーズである。車内にはサザンオールスターズのBGMが流れているが、これは植山七段の選曲であろう。夏が戻ってきたようでなかなかよい。
ところで今回の日程は予約の関係で、かなり前から決まっていた。そのとき中井女流六段は各棋戦で連勝中、倉敷藤花戦でもベスト8くらいまで勝ち進んでおり、挑戦権獲得も視野に入っていた。倉敷藤花戦第2局は、11月2日に倉敷市で行われる。もし中井女流六段が挑戦者になれば前日(1日)に現地入りしなければならず、この合宿を強行すると、かなりハードなスケジュールとなっていた。
もっとも本人は、仮に挑戦者になっても合宿には参加する意向だったようだ。対局はもちろんだがファンとの交流にも重きを置く、中井女流六段の面目躍如といえた。
それはともかく、このメンバーで話すことといえば将棋界の話題だが、「○○と○○は○○で○○だから、○○は大変でしょう」とかいう会話が飛び交い、文章にすると伏せ字ばかりになってしまうので、公表は省略する。
車内の後ろには将棋盤やチェスクロックが積まれており、中井・植山・大野各棋士は準備段階から大変だったろうと推察する。そのご苦労を、私たちはその夜も身にしみて感じることになる。
予定からやや遅れて、11時すぎに上里パーキングエリア(PA)で休憩。ここに入っているレストランがジョナサンを思わせるゆったりした造りで、とりあえずドリンクを飲むために入ったのだが、やや早めの昼食を摂ってしまってもよかった。
ここでクルマに乗るメンバーのチェンジ。信濃わらび山荘まではまだまだ長い道のりで、同じクルマでは味がわるい。公平にクジ引きで決め、私は「Honカー」に替わった。中井女流六段のクルマに戻れなかったのは残念だが、プロ棋士がいなければいないで、それなりの会話を楽しめるものだ。
少し走って、横川PAで昼食休憩。ここでの昼食は考えていなかったので、少し予定が狂う。横川といえば「峠の釜めし」が有名だが、販売スペースは大きくないようだ。なにしろ20名の団体なので、2、3名を除き大レストランに入る。私は何を注文してもよかったのだが、中井女流六段にならってビーフカレーを注文した。
高速道路を出ると、幸い雨も止んでいた。今度は大型スーパーで飲み物の買い出しである。お菓子も買うそうで、それはY氏と私が担当した。繰り返すが、なにしろ20人分である。酒のつまみやスナック類など、どんどんカゴに入れていく。レジで精算すると4,000円キッカリで、Y氏と私は顔を見合わせてニヤリと笑った。キリのいい金額は幸先がよい。
クルマに戻る。ここからはノンストップで信濃わらび山荘へ向かう。山荘は広大な土地にログハウス様式で建てられているそうで、一部メーカーの携帯電話も通じないらしく、探偵小説マニアには堪らないシチュエーションである。
車内では、山荘を舞台にした殺人事件のプロットを、みんなで考える。もちろん登場人物は私たちである。Hak氏は探偵小説に造詣が深いようで、ここでは話の中心になった。
みんなのバカ話を要約すると、一番手に殺されるのが私、二番手がKaz氏。三番手がKun氏。さらに中井女流六段も殺されかかる。探偵役はAkiちゃん、Hanaちゃんのお嬢さんコンビで、そこに中井女流六段もサポートする。
欲をいえば20代の女性も登場してほしいが、LPSAの20代は、29歳11ヶ月の石橋幸緒女流四段しかおらず、該当者がいないに等しい。ちなみに藤森奈津子女流四段、船戸陽子女流二段、松尾香織女流初段は自称24歳らしいが、さまざまな人生経験をしてきました、という顔の3人が20代とはとても思えない。3人の戯れ言には、とりあえず相槌だけ打っておけばいいのだ。
話は戻るが、犯人はとりあえずY氏、とした。もちろん探偵小説なので、なぜ私たちが殺されたか、一応共通点は用意した。まあ動機はどうとでもなるが、私が真っ先に殺される理由は筋が通っていた。
午後3時すぎ、予定より1時間半遅れて、ついに信濃わらび山荘に到着した。高地に建つだけあって、さすがに寒い。また空が泣き出している。いまより天候が荒れることはないだろうが、帰宅が遅れるというような最悪の事態も想定するならば、中井女流六段の倉敷藤花戦敗退は、不幸中の幸いだったと云える。
私の「マッカラン進呈回避」も含めて、岩根忍女流二段には感謝に絶えない。
将棋盤や駒が入っている段ボール箱等をとりあえず食堂に運び、私たちは宿泊棟に入った。典型的なログハウスで、木の香りがうっすらと漂う。真ん中に大きなラウンジがあり、それをぐるっと取り囲むように、7つの部屋が用意されていた。綾辻行人「十角館の殺人」を思わせる、ゾクゾクする造りである。
部屋に入ると、二段ベッドが3つ設えられていた。つまり6人部屋ということだ。都合42名の定員で、ほかにも宿泊棟がいくつかあるから、なるほどこれなら林間学校の宿泊場所としても十分利用できる。
電気を灯けると、室内がほんのりと明るくなった。この地で、明日まで将棋三昧か…。私ははやる心を抑えると、食堂へ向かった。
(つづく)