上の局面、ふつうに考えれば、先手が飛車得だから必勝である。ところが…。
9月10日のLPSA金曜サロン、1部は大庭美夏女流1級、2部は中井広恵女流六段の担当だった。
駒込サロンもこの回を入れて残り3回と、ついにカウントダウンに入ってきた。指導する女流棋士も、サロン会員も、何となくシンミリし始めたころであった。
大庭女流1級の指導対局は勝敗に拘らない癒し系で、対戦成績は私のほうがよい。しかしいままで何回も述べているように、プロはアマ相手に本気を出さないと心得ているから、勝敗を数えても意味がない。
事実大庭女流1級にも、一局の中に必ず「ドキッ」とする手を指され、ラクに勝った将棋は1局もない。当然本局も気を引き締めて臨んだ。
大庭女流1級の三間飛車に、私は☗5七銀左から☗4五歩と仕掛ける。数手後の☗2五歩がやや重かったようだが、上手の飛車を8四に追い込み、自分だけ飛車を成れて、指しやすさを感じた。
以下徐々に駒得となり、必勝を疑わなかったのが冒頭の局面である。ところが例によって、ここから私の指し手がおかしくなってゆく。13手進んだ局面が以下のごとくである。
☗6一とまで。さっきまでは必勝態勢だったのに、下手玉がこんな息苦しいことになっている。恥ずかしくて間の手順を書けない。まあ、大庭女流1級の猛烈な追い込みと私の楽観が生み出したものだが、自分の読みのいい加減さに呆れる。ちなみに前週もこの病気が出て、石橋幸緒天河の将棋は、短手数で終わっているところを、さらに48手もお付き合いさせてしまったのだ。
大庭女流1級はここで☖8五香☗9六玉を決めてから☖6一金とと金を払ったが、単に☖6一金がイヤだった。こう手を渡されてみると、こちらも詰めろのかけ方が難しい。
捨ておけば☖7三桂と跳ねられ、これが☖8五歩☗9七玉☖9五香☗9六歩☖同香☗同玉☖9五歩☗同玉☖9四歩以下の詰めろになる。
また本譜☖6一金でも、☖8七金と詰めろで寄られていたら、受け方が分からなかった。いま考えれば☗7八桂☖7七桂成(☖9七金☗同玉☖9五香以下の詰めろ)☗8六歩で残していそうだが、実戦ではどうなったか分からない。
☖6一金に私は☗8六歩と打ち、最後は上手王を鮮やかな即詰みに討ち取り、薄氷の勝利となった。
しかし前局といい本局といい、将棋は相手が頭を下げる(投了)まで、絶対に気を抜いてはいけないと思い知った。勝ててそれが勉強できたのだから、こんなありがたいことはなかった。