一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

長崎旅行③・ざぼんの砂糖漬とクジラ

2010-12-20 22:59:08 | 旅行記・九州編
明けて18日(土)。この日は夕方に喫茶店へ行って、そこのマスターの話を聞くのがメインである。その時間まではフリーだから、余裕だ。
午前10時すぎにネットカフェを出ると、市電沿いを歩き、牛丼専門店「すき家」に寄る。現在キャンペーン中で、並盛が250円だ。前の晩も夜食と称して食べたのだが、あまりに安いので朝も入ってしまった。旅に出ても私の食事は東京と変わらない。
昼は稲佐山に登る予定である。前日にネットで調べると、稲佐山は、函館山・六甲山と並んで日本の三大夜景のひとつ、とあった。この有名な事実を、私は不覚にも知らなかった。
その稲佐山へ明るいうちに登るのは味がわるいが、ひとり旅なので構わない。
まずは長崎駅へ戻るのがスジだが、市電に乗るのではおもしろくない。駅への方角は分かるので、ぶらぶら歩いて行く。
ところが生来の方向音痴で、軽い迷子になってしまった。地元の方に聞いて修正するが、聞いた道を素直に歩かないので、また迷子になる。
とある坂を登ると、大きな建物が目に入った。長崎歴史文化会館である。現在は坂本竜馬関連の展示をやっているが、入場料が500円なので入らない。
そのままやりすごし、さらに坂を登ると、今度は整然と積み立てられた石垣が目に入った。「立山防空濠」だという。説明書を手に取ると、太平洋戦争中、防空施策の中心として機能していたところで、原爆が投下されたとき、ここから被害情報を全国に送ったとあった。
こんな施設があるとは知らなかったがそれも道理で、2005年に一般公開されたものらしい。
入場無料なので、ありがたく入場する。トンネルのような入口を抜けると、右奥に部屋があった。ここが長官室(知事室)で、以下手前側に参謀長室(警察部部長室)、参謀室、通信室…と続いている。各部屋には電球がひとつ灯っているだけで、往時の雰囲気がそのまま残っている。
出口付近の伝令室では、原爆が投下されたときに勤務していた女性の生々しい証言が、パネルに示されていた。
ほ~っと重い息を吐いて施設を出ると、表の公園で、幼い姉妹がかくれんぼをしていた。これは懐かしい遊びである。
「もういいかい?」
「まーだだよ」
声の在りかで隠れ場所が分かってしまうが、だからおもしろいのだ。オニが隠れた子を見つけなければ、お互いシラけてしまう。中倉彰子女流初段、宏美女流二段は、ふたりでかくれんぼをしたことがあるのだろうか。
「ひろみ見ーっけ」
「あっこちゃんずるいー!!」
とか言ったりしたのだろうか。
交番が隣接されていたので、今度こそ稲佐山への詳しい行き方を聞く。もう無理をせず、市電を利用したほうがいいようだ。
お巡りさんの懇切丁寧な説明を聞いて、そのまま坂を下りると、「サント・ドミンゴ教会跡資料館」という施設が見えてきた。ここも無料だったので、躊躇せず入る。
ここは文字どおり、かつて教会があった場所だが、地元の小学校を建て替える際発見されたものである。珍しいのは、禁教令のあと長崎代官の屋敷が建ったため、教会と両方の遺構や遺物が出てきたことである。
施設内には、広大な遺跡が、ドーンと拡がっている。すごい迫力だ。
繰り返すが、これも無料である。前日に島原城の施設を巡ったときもそうだったが、有料よりも無料の施設に興味深いものが多いのは皮肉だ。
公会堂前電停から市電を利用する。長崎市電の乗車賃は長い間一律100円だったが、先ごろ120円に値上げされた。乗るのに抵抗を覚えるが、やむを得ない。
やってきた電車は年代物で、鉄道マニアにはたまらない車両だ。乗車して車内を見渡すと、「昭和二十八年製」との説明書きがあった。
何だか得した気分になって、宝町電停で降りる。ここが稲佐山の玄関口だ。しかし私はまたも道を間違えてしまい、かなりのロスタイムでロープウェイ乗り場に着いた。書き遅れたが、往復ともロープウェイの利用である。歩きはさすがにしんどい。
しかしそのロープウェイは、いましも出るところだった。12時00分発だが、腕時計を見ると11時59分である。もう1分早く来ていたら、乗せてくれたかもしれない。
次の出発は12時20分である。ちょこちょこロスタイムをしていたから、もう午後になってしまった。朝早くから行動を起こしてムダなくここに来ていたら、3時間以上は節約できたのではないだろうか。
ロープウェイの乗客は私ひとりである。案内嬢が同乗してくれるが、かえって緊張してしまう。
5分で稲佐岳駅に着く。と、その案内嬢が
「展望台は現在改装中で入ることができませんので、その手前でご覧ください」
といった。……。それならチケットを買うときに言ってくれよ、と思う。
どうも観光の歯車が狂っているが、それでも稲佐山からの景色は、昼間でも素晴らしかった。夜になったら、宝石を散りばめたような、きらめく光景になるのだろう。
13時00分、下りのロープウェイに乗る。帰りも私ひとりに、先ほどの案内嬢だ。
その案内嬢が、上りのアナウンスで「しばしの空中散歩」と言ったが、それを実感するのは、この下りであった。
通常ロープウェイは、山の稜線に沿って進むが、ここのロープウェイは、地上への距離が長い。かなり真下に、人家や木々がある。ここでロープが切れて落っこちたら、間違いなくあの世いきだ。本当に空中をふわふわしているようで、なんだかお尻がムズムズする。
地上に無事着いたときはホッとした。
さて、ここからは大浦天主堂へ行こうと思う。もうだいぶ昔だが、大浦天主堂近くのカステラ専門店で、新人君が焼いたカステラの失敗作が、正規品の3分の1の値段で売られていたことがあった。失敗作といってもカステラ外側の部分がわずかに色濃いだけで、味はまったく問題ない。これをウチへのお土産にしようと考えたわけである。
宝町電停に着いたが、さて大浦天主堂はどっち方面だったか。浦上方面だと思ったが…。浦上天主堂…。オレの行きたいのは大浦だよな…。そう思う間に電車が来たので、せかされるように乗った。
い、いやいや違う、やっぱり大浦は逆だ!
浦上駅前電停で降りて地図を確認したら、果たしてそうだった。ところでこの日は15時12分長崎発の電車に乗らなければならない。1,000円で買った腕時計を見ると、1時すぎである。このまま大浦天主堂に向かってもいいが、カステラの焼き損ねを買うために数時間を費やすには、さすがにバカバカしくないか? その確認は、またの機会とした。
…だからといって、このまま同じ市電で引き返すのも味がわるい。私は徒歩で長崎駅へ向かった。
しかし15時12分まで、この中途半端な時間をどうしようか。ふと見ると、長崎バスターミナルの2階に、長崎県物産館があった。
そういえば、今年のゴールデンウィークに九州を旅行する際、船戸陽子女流二段から「ざぼんの砂糖漬」をお土産にリクエストされたことがあった。しかしざぼんは冬の果物でその時期は売っておらず、船戸女流二段の期待に沿えられなかった。
あのときの船戸女流二段のガッカリした姿は忘れられない。そこで今回はざぼんの砂糖漬を、事前に調べておいた。
すると、長崎県物産館がネット販売している、川上文旦堂のざぼんが良さそうであった。そこで東京から連絡すると、川上文旦堂のそれは店では販売していないが、それと同等のざぼんを用意しているとのことだった。私は念のため川上文旦堂にも直接聞いたが、こちらは長崎空港に卸している、とのことだった。だから行きの空港でも買えたのだが、買いそびれてしまったのだ。
そんなわけで、私は長崎県物産館に入る。と、各メーカーが販売している、ざぼんの砂糖漬が目に入った。20日の帰りの便は、長崎空港20時50分発である。こんな遅い時間だと店も閉まっているから、まずはここで買っておくのが賢明だ。私はざぼんの砂糖漬を適当に手に取るが、もう一方で目に入ったものがある。
クジラだ。
好き嫌いのない船戸女流二段は、クジラも好き、とのことだった。長崎県はクジラの消費量日本一である。彼女の点数を稼ぐためには、そのクジラを買うしかない。しかしクジラなら、JR早岐駅前に専門店があり、私も一度買ったことがある。
そしてこの日は早岐駅近くのビジネス旅館に泊まる予定だが、しかし翌19日の日曜日に、この店が開いている保証はない。
それならばここで「保険」のために買っておくか。しかし冷凍されているクジラの赤身をいま買っても、融けてしまう。そこで店の人に東京までの宅配料を訊くと、(最低でも)1,160円、とのことだった。この価格はどうなのだろう。
迷ったが、私はとりあえず、クジラを買うのを保留した。この判断が吉と出るか凶と出るか。
物産館を出、付近の飲食街で遅い昼食を摂ろうとするが、どの店も昼は2時までの営業で、準備中の札が掲げられている。唯一開いていたのが昨年も入った激安の大衆食堂で、またしてもここに入る。生姜焼き定食、500円。
店を出て、長崎駅前の陸橋から西の方角を見ると、この日登った稲佐山が聳えていた。
(つづく)
コメント (5)
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