一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

感動のフランボワーズカップ(前編)・暗転

2010-12-25 15:55:18 | LPSAイベント
12月23日(木・祝)は、年末恒例のLPSA・1DAYトーナメント「フランボワーズカップ」が行われた。
同トーナメントは山青貿易株式会社の協賛で、回を重ねて4回目。3年前の第1回は非公開で、初代1DAY女王・島井咲緒里女流初段が優勝した。
2年前の第2回は文京シビックセンターにおいて公開で行われ、いまや伝説となった、船戸陽子女流二段・涙の優勝で幕を閉じた。
そして昨年の第3回は中井広恵女流六段と石橋幸緒女流四段の決勝戦。コクのある戦いを、中井女流六段が制した。
今年はどんな戦いを見せてくれるだろうかとワクワクしながら、私は会場である文京シビックセンター26階に向かった。
午前10時30分開場、11時開会だが、会場には10時40分ごろに着いた。今回の1DAYトーナメントの組み合わせは、観客が抽選して決める。しかし私が着いたときは、抽選が終了していた。どうも、先着の8名がクジを引いたようである。
11時すぎ、対局者の8名が登場する。向かって右から、石橋天河・大庭美樹女流初段、中井女流六段・船戸女流二段、山下カズ子女流五段・渡部愛ツアー女子プロ、中倉宏美女流二段・島井女流初段と並ぶ。トーナメント表と同じ並びである。
それぞれが一言抱負を述べる。渡部ツアー女子プロは、
「高所恐怖症なので、26階はコワイですぅ」
と言ってみんなを笑わせた。
8名の対局者が、所定の位置にすわる。横長の室内に、手前から奥へ大庭女流初段(先)・石橋天河、船戸女流二段(先)・中井女流六段。そこから窓に並行して、山下女流五段(先)・渡部ツアー女子プロ、中倉女流二段(先)・島井女流初段である。
こうして11時15分、今年最後の1DAYトーナメントが開始された。持ち時間は15分、使い切ったら一手30秒である。
観戦席は用意されているが、私は1局に限定せず、各局を見て回るので、いや正確には各対局者を鑑賞するので、立ち見である。
来年1月20日に行われる女流名人位戦の前哨戦となる中倉-島井戦は、島井女流初段が四間飛車に振った。これは相穴熊になる公算が高い。
山下-渡部戦は、渡部ツアー女子プロが向かい飛車に振った。渡部ツアー女子プロはこのところ居飛車を勉強していたが、個人的見解では、渡部ツアー女子プロの棋風は振り飛車が向いていると思う。私は渡部ツアー女子プロに何局か教わったが、初戦の渡部振り飛車に、最も凄味を感じた。
将棋は自分の指したい手を自由に指せる競技である。渡部ツアー女子プロも、自分が指したい戦法、指したい手をのびのび指せばよい。
将棋は山下女流五段も向かい飛車に振り、珍しい戦いになった。
中井-船戸戦は、2年前の決勝戦のカードだ。戦いながら、ふたりも当時を思い出したことだろう。
将棋は、船戸女流二段が注文をつけて、早くも角交換になっている。しかし席の配置の関係で、船戸女流二段が、背中しか見えない。船戸女流二段の凛々しい表情を見るのが楽しみだったのに、残念である。そんな船戸女流二段にはまことに申し訳ないが、恒例の優勝者予想は、ノータイムで中井女流六段とした。いつも書くことだが、願望と予想は違うのである。
石橋-大庭戦は、これも珍しい相三間飛車。このふたりの戦型は予想がつかなかったが、案の定予想もつかない形になった。現在は石橋天河が考慮中である。大庭女流初段が24秒しか使っていないのに、石橋天河は、すでに3分以上を消費している。今後の方針を綿密に立てているのだろう。
船戸女流二段、☗5六歩。白いスーツの船戸女流二段は背中しか見えないが、ちょっと肩をいからせて、後ろ姿でも「魅せる」。スラッとしていて、モデルのようだ。しかしこの局面、後手には☖5七角と打つ手がある。あえて馬を作らせる作戦だろうが、大丈夫だろうか。
中倉-島井戦は、やはり相穴熊。端歩を突き合っているのがイマ風だ。
11時30分。渡部ツアー女子プロが、口元に白いタオルを当てて考えている。しかし持ち時間は5分を切った。渡部ツアー女子プロも、序盤は心ゆくまで構想を練るタイプのようだ。山下女流五段は10分27秒を残している。こちらは中、終盤に時間を残す方針だろう。
石橋-大庭戦、中井-船戸戦は序盤戦。山下-渡部、中倉-島井戦は中盤にさしかかったところか。
11時37分。中倉女流二段が一番手に秒読みになった。早指しの島井女流初段は8分25秒を残している。
大庭女流初段が秒読みに入った。石橋天河は6分16秒を残している。いつの間にか考慮時間が逆転した。
大庭女流初段☗4五同銀に、石橋天河は☖4六歩と金頭を叩く。やむない☗4八金引に☖4五桂と取り返して、これは石橋天河の優勢となった。
11時43分。渡部ツアー女子プロも秒読みに入っている。しかし渡部ツアー女子プロは早見えである。30秒将棋は苦にならないだろう。
中井女流六段が考えている。長い髪がハラリと頬にかかり、そこはかとない大人の色気が漂っている。林葉直子さんを思いだした。局面は中井女流六段が圧倒的優勢である。
11時52分。中倉女流二段がコメカミに手をあてて考えている。いつものファイティングポーズである。しかし絵になる。頭痛薬のCMに起用したいところだ。
11時57分。中井女流六段が右ヒジをついて考えている。アンニュイな感じで、妖艶さも漂う。
この日の女流棋士のいでたちは、クリスマスイブイブにもかかわらず、総じて地味だ。そんな中で中井女流六段は、ふわふわの派手な洋装で、ひとり気を吐いている。
石橋-大庭戦。石橋天河の勝勢だが、ちょっと寄せをもたついている。大庭女流初段も反撃し、まだひと山ありそうである。
中倉-島井戦は、ようやく駒が敵陣に入り始めた。島井女流初段が優勢か。
船戸女流二段が投了したようだ。船戸女流二段は意欲的な序盤戦術だったが、実を結ばなかった。2年前の覇者が、1回戦で姿を消した。
12時3分、山下女流五段が投了した。終盤の入口まで優勢に見えたが、渡部ツアー女子プロの追い込みにうっちゃられた形となった。
時を同じくして、石橋-大庭戦も終わったようだ。感想戦を見に行くと、大庭女流初段側の対局時計が「End」を示している。これは大庭女流初段、また時間切れをやらかしてしまったのか。追い上げ気味だっただけに、惜しい将棋を落としたというべきだろう。それにしても石橋天河は、不調の波から脱しきれていないようだ。
これで残るはあと一局、中倉-島井の穴熊対決を残すのみとなった。
相穴熊は、当たり前だが、どちらが先に相手の駒をハガすかにある。今回は島井女流初段が先に中倉陣に手をつけた。自玉は鉄壁。こうなると、相穴熊の経験値が高い島井女流初段が優位だ。最後は自玉と相手玉の距離感をしっかり測って、キッチリ一手勝ちを収めた。
こうして12時27分、1回戦の4局がすべて終わった。
ここで昼食。いつもはひとりで摂るのだが、この日はO氏、Is氏、Si氏と一緒に摂った。
一服する間もなく、そそくさとシビックセンターに戻る。昼からの指導対局に空きがあったので、私も昼前に申し込んだ。それを知っている棋友が、配慮してくれたのだ。ただし私はここまでに大きな失敗をしている。ファンクラブ料金は1,500円だったのに、一般料金の2,000円を払ってしまったのだ。
差額の500円は、寄付したと思うことにする。
さて指導対局者は「1回戦の敗者」とあったが、対局テーブルの上の名札を見ると、入口右奥に山下女流五段、左奥に船戸女流二段、鹿野圭生女流初段、大庭女流初段の名前があった。どういう事情からか、中倉女流二段はパスとなった。
ちなみに鹿野女流初段は22日に1DAY予選を指すため、この前々日までに上京していた。
私はこれら4名の女流棋士すべてに指導対局を受けたことがあるので、どなたに受けても構わない。しかし希望の順番でいえば、船戸女流二段→鹿野女流初段→大庭女流初段→山下女流五段、となる。
誰に当たるかは、トランプを引いて決める。私のふたり前が「ダイヤの4」を引き、アイリス(LPSAインストラクター)の女性に「ダイヤは…船戸先生ですね」と言われていた。そうか、船戸女流二段に教えてもらうには、ダイヤを引けばいいのか。
いよいよ私の番である。神経を集中させて、カード引く。表に返すと、「ダイヤのA」だった。よしゃっ!!
「ダイヤは…船戸先生ですね」
アイリスの女性が言う。
確率1/4。小さい可能性の中で、このヒキは、われながらさすがであった。
対局場に入ると、棋友が、誰に当たったか聞いてくる。
「船戸先生ですよ」
私が当然のように答えると、オオーッというどよめきが起こった。
指導対局は午後1時15分からである。すでに鹿野女流初段、大庭女流初段はスタンバイしているが、肝心の船戸女流二段の姿がない。
と、アイリスの女性がきて、
「すみません、先生が変更になりました」
と言い、船戸女流二段の名札を山下女流五段のそれに取り換えた。
エエッ!? 予想もしない展開に、私は激しく狼狽した。
(つづく)
コメント (4)
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