4局目の将棋は私が快勝した。
5局目は新人の青年と指す。今日はほかにも黒シャツの青年がいて、彼らは最近教室に顔を見せるようになった。教室も着々と新レギュラーが増えており、よろこばしい。
私と青年とは駒落ちの手合いらしいが、青年は近々に将棋大会があるとかで、平手での対戦となった。
私の四間飛車に、青年は左銀を動かさず、棒銀。6月の社団戦の八王子氏の指し方に似ている。私も棒銀をよく採用するが、その際は左△5三銀~△6四歩と万全の態勢を整えて△7五歩が本筋、と学習していたから、この指し方は斬新に映った。
私は△4二金と最強に受けるが、けっこう難しい。だが青年は急所で読みを欠き、▲3一角、と△2二飛取りに打ったものの、△5二飛のあとヘンな手を指したから、私は3三の金を△3二金と引いて、角が詰んでしまった。これでは私の勝勢である。
数手進んで第1図から、▲3一金△同飛▲2二飛成△3二金▲1一竜△4四角まで、私の勝ち。
▲3一金はいくらなんでももったいなかった。発想自体はおもしろいが、本局は金を犠牲にしての▲2二飛成に△3二金があり、捨て駒が生きなかった。
局後大野八一雄七段に見てもらったが、単騎棒銀はやはり居飛車に無理があったらしい。ただ振り飛車側は一手一手に正確な受けが求められ、一歩間違えば居飛車優勢の変化もいっぱいあった。つまり、一番勝負では使える、ということである。
W氏は、私にKom君(中学生)との手合いを付けたあと、退室した。今日の軽食はさびしくなりそうである。
Kom君は地方からの来席でその熱意は買うが、そのぶん大野七段に大きな負担を掛けているところがある。もし私がKom君の親だったら、彼を地元の将棋道場に通わせている。もっとも、これは大野七段とKom君親子の問題なので、私は口を出さない。
Kom君とは平手。この前まで飛車落ちだったからこの手合いには驚いた。本当に子供の伸びは早い。
Kom君の中飛車に私は居飛車。5五の位を取られたので金銀が左右に分かれたが、そこから玉頭位取りに出たのはよくなかった。私は△7五金と出るハメになり、作戦負けどころではない、はっきり劣勢に陥った。
ここで△7五金をじわじわいじめに来られたら私が負けだったが、Kom君は▲7五角と切り合いにくる。ここで私にも勝機が出たと思った。
第1図以下の指し手。△3一金▲4二銀不成△4六馬▲3一銀不成△同角▲2二金△1三玉(第2図)
私はナナメ後ろに利く駒を残したかったので△3一金と打ったが、どうだったか。Kom君に▲4二銀不成と侵入されて、気持ちがわるい。
それでも▲2二金に△1三玉と寄って耐えていると思ったのだが…。
第2図以下の指し手。▲1二金(投了図)
まで、Kom君の勝ち。
Kom君に金をスッと寄られ、飛び上がった。こんな筋を見落とすとは! 私は呆れて投了。
まさかKom君に平手で負けるとは…。
感想戦では、△3一金に代えて△3一銀が検討された。これならのちの▲2二金がないから、まだ難しい形勢だったようである。
それにしてもKom君は強くなった。かつて飛車落ち戦で、私が△8五歩▲同歩△同桂とちょっかいを出したら、「定跡と違う」と頬を膨らませていたが、そのころとはエライ違いである。
今日も彼は対局の合間には静かに将棋の本を読んでいるし、不断の努力が成績に反映されていると感じる。
7局目はU君と戦う。U君も強く、大野教室で一、二を争う実力者である。しかし私も簡単に負けるわけにはいかない。
U君に振ってもらい、「と」が5枚。私の先手になり私は中飛車、U君は居飛車になった。
持久戦模様になり、私は中央の突破を諦め、飛車を6筋に寄る。U君は銀冠を構築するが、私は4筋の位を取り、▲4六銀と上がって十分。
第1図から▲5四歩△同飛に、私は▲5六歩(第2図)と控えて打つ。この歩が好手で、U君はすっかり考え込んでしまった。
(つづく)
5局目は新人の青年と指す。今日はほかにも黒シャツの青年がいて、彼らは最近教室に顔を見せるようになった。教室も着々と新レギュラーが増えており、よろこばしい。
私と青年とは駒落ちの手合いらしいが、青年は近々に将棋大会があるとかで、平手での対戦となった。
私の四間飛車に、青年は左銀を動かさず、棒銀。6月の社団戦の八王子氏の指し方に似ている。私も棒銀をよく採用するが、その際は左△5三銀~△6四歩と万全の態勢を整えて△7五歩が本筋、と学習していたから、この指し方は斬新に映った。
私は△4二金と最強に受けるが、けっこう難しい。だが青年は急所で読みを欠き、▲3一角、と△2二飛取りに打ったものの、△5二飛のあとヘンな手を指したから、私は3三の金を△3二金と引いて、角が詰んでしまった。これでは私の勝勢である。
数手進んで第1図から、▲3一金△同飛▲2二飛成△3二金▲1一竜△4四角まで、私の勝ち。
▲3一金はいくらなんでももったいなかった。発想自体はおもしろいが、本局は金を犠牲にしての▲2二飛成に△3二金があり、捨て駒が生きなかった。
局後大野八一雄七段に見てもらったが、単騎棒銀はやはり居飛車に無理があったらしい。ただ振り飛車側は一手一手に正確な受けが求められ、一歩間違えば居飛車優勢の変化もいっぱいあった。つまり、一番勝負では使える、ということである。
W氏は、私にKom君(中学生)との手合いを付けたあと、退室した。今日の軽食はさびしくなりそうである。
Kom君は地方からの来席でその熱意は買うが、そのぶん大野七段に大きな負担を掛けているところがある。もし私がKom君の親だったら、彼を地元の将棋道場に通わせている。もっとも、これは大野七段とKom君親子の問題なので、私は口を出さない。
Kom君とは平手。この前まで飛車落ちだったからこの手合いには驚いた。本当に子供の伸びは早い。
Kom君の中飛車に私は居飛車。5五の位を取られたので金銀が左右に分かれたが、そこから玉頭位取りに出たのはよくなかった。私は△7五金と出るハメになり、作戦負けどころではない、はっきり劣勢に陥った。
ここで△7五金をじわじわいじめに来られたら私が負けだったが、Kom君は▲7五角と切り合いにくる。ここで私にも勝機が出たと思った。
第1図以下の指し手。△3一金▲4二銀不成△4六馬▲3一銀不成△同角▲2二金△1三玉(第2図)
私はナナメ後ろに利く駒を残したかったので△3一金と打ったが、どうだったか。Kom君に▲4二銀不成と侵入されて、気持ちがわるい。
それでも▲2二金に△1三玉と寄って耐えていると思ったのだが…。
第2図以下の指し手。▲1二金(投了図)
まで、Kom君の勝ち。
Kom君に金をスッと寄られ、飛び上がった。こんな筋を見落とすとは! 私は呆れて投了。
まさかKom君に平手で負けるとは…。
感想戦では、△3一金に代えて△3一銀が検討された。これならのちの▲2二金がないから、まだ難しい形勢だったようである。
それにしてもKom君は強くなった。かつて飛車落ち戦で、私が△8五歩▲同歩△同桂とちょっかいを出したら、「定跡と違う」と頬を膨らませていたが、そのころとはエライ違いである。
今日も彼は対局の合間には静かに将棋の本を読んでいるし、不断の努力が成績に反映されていると感じる。
7局目はU君と戦う。U君も強く、大野教室で一、二を争う実力者である。しかし私も簡単に負けるわけにはいかない。
U君に振ってもらい、「と」が5枚。私の先手になり私は中飛車、U君は居飛車になった。
持久戦模様になり、私は中央の突破を諦め、飛車を6筋に寄る。U君は銀冠を構築するが、私は4筋の位を取り、▲4六銀と上がって十分。
第1図から▲5四歩△同飛に、私は▲5六歩(第2図)と控えて打つ。この歩が好手で、U君はすっかり考え込んでしまった。
(つづく)