私たちはお互い確認する。間違いでないようだ。
「おお、どうしてここに⁉ 私は長崎県に行ったんだけど」
「オォ、私ハサッキ、サッポロカラ来マシタ」
彼はドイツ人の教授で、かつてLPSA芝浦サロンで指したこともある。負かされたこともあり、強豪のひとりだ。ただ、その彼の名前が思い出せない。
「あ、ああそうなんだ。え、いま日本にいるの?」
「エエ、来年ノ3月マデ、サッポロノ大学デ講義ヲヤリマス」
当初、私は彼の職業を知らず、何かの拍子で「人生、一生勉強ですよ」と言ったことがある。そしたら植山悦行七段に
「大沢君、彼は大学の教授だよ」
とたしなめられたものだ。
今回は一休みで東京に戻ったようだ。
「キョウハホッカイドウノ将棋連盟ニ行ッテ来マシタ」
「いや私は毎年この時期に、長崎県の喫茶店でマジックを見ることになっていてさ」
私はそう言うと、ぐにゃぐにゃに曲がったスプーンを見せた。
「コレハ……モウ使エマセンネ」
「あ? ああ、そうだね」
どうも彼とは、視点が違うようだ。
「ナガサキノ気候ハドウデシタカ?」
「暑いね。この格好でも汗が出たよ」
「私モコノ格好デ、寒カッタデス」
2人は同じような服装をしている。
「ワハハハ、そうだね、日本は縦に長いからね」
私は彼に何か聞きたいのだが、名前が思い出せないので、ついよそよそしくなってしまう。
「最近将棋ハヤッテマスカ?」
「ああ、アプリの将棋をやってるくらい。勝率は2割くらいだね。このくらいの勝率がちょうどいいよ」
「勝チスギテモ面白クナクナッチャイマスネ」
私たちは京浜東北線に乗った。彼は次の新橋で降りるとのこと。私はボロを出さなくて済んで、ちょっと、ホッとした。
私は最寄り駅で降りた。しかし、彼は何という名前だったか。カタカナで4文字だった気がする。「ルイスポ」とか「ケイント」とか。
私は帰宅しても、思い出せなかった。
「おお、どうしてここに⁉ 私は長崎県に行ったんだけど」
「オォ、私ハサッキ、サッポロカラ来マシタ」
彼はドイツ人の教授で、かつてLPSA芝浦サロンで指したこともある。負かされたこともあり、強豪のひとりだ。ただ、その彼の名前が思い出せない。
「あ、ああそうなんだ。え、いま日本にいるの?」
「エエ、来年ノ3月マデ、サッポロノ大学デ講義ヲヤリマス」
当初、私は彼の職業を知らず、何かの拍子で「人生、一生勉強ですよ」と言ったことがある。そしたら植山悦行七段に
「大沢君、彼は大学の教授だよ」
とたしなめられたものだ。
今回は一休みで東京に戻ったようだ。
「キョウハホッカイドウノ将棋連盟ニ行ッテ来マシタ」
「いや私は毎年この時期に、長崎県の喫茶店でマジックを見ることになっていてさ」
私はそう言うと、ぐにゃぐにゃに曲がったスプーンを見せた。
「コレハ……モウ使エマセンネ」
「あ? ああ、そうだね」
どうも彼とは、視点が違うようだ。
「ナガサキノ気候ハドウデシタカ?」
「暑いね。この格好でも汗が出たよ」
「私モコノ格好デ、寒カッタデス」
2人は同じような服装をしている。
「ワハハハ、そうだね、日本は縦に長いからね」
私は彼に何か聞きたいのだが、名前が思い出せないので、ついよそよそしくなってしまう。
「最近将棋ハヤッテマスカ?」
「ああ、アプリの将棋をやってるくらい。勝率は2割くらいだね。このくらいの勝率がちょうどいいよ」
「勝チスギテモ面白クナクナッチャイマスネ」
私たちは京浜東北線に乗った。彼は次の新橋で降りるとのこと。私はボロを出さなくて済んで、ちょっと、ホッとした。
私は最寄り駅で降りた。しかし、彼は何という名前だったか。カタカナで4文字だった気がする。「ルイスポ」とか「ケイント」とか。
私は帰宅しても、思い出せなかった。