3月3日、推理作家の西村京太郎が逝去した。享年91歳。
1961年、作家デビュー。1965年、「天使の傷痕(しょうこん)」で、第11回江戸川乱歩賞を受賞。
西村京太郎の傑作「消えた巨人軍」は1976年刊行で、1978年には藤岡弘、、水沢アキの出演で映像化された。これも面白かったが、後年、私は原作が読みたくなり、小説を古本屋で購入した。
読み始めると、内容は分かっているのに、抜群に面白い。私はもう寝なければいけないのだが、読み進む手が止まらない。両眼はコメカミのところが緊張しきって悲鳴を上げているのだが、それでも止まらなかった。
結局、深夜2時半過ぎに読破したのだが、明らかに視力が落ちたことを実感した。
西村京太郎は手書き原稿だが、その書き方が独特で、フトンに入りながら腹ばいで書く。このスタイルでわくわくするストーリーを生み出した。
1978年、鉄道ミステリー第1作となる「寝台特急殺人事件」を刊行。これが大ヒットし、以降、鉄道ミステリーモノを多く発表するようになる。
そしてこれらの原作は、全国各地の名所を紹介できるという意味で、映像化に適していた。三橋達也、愛川欽也主演による「十津川警部モノ」が大ヒットし、西村京太郎は億万長者となった。晩年にテレビ出演した際、「最高年収は7億円」と語っていたのを見たことがある。
私も西村京太郎の原作小説はほとんど読まず、専ら2時間ドラマの観賞となった。
ただ、文章では読者を異世界に迷い込ませても、映像化になると陳腐になることもあった。
たとえば、島式ホームに2本の列車が停止していて、犯人が1番ホームで殺人を犯した後、すかさず2番ホームに移って2度目の殺人を犯す、というシーンがあった。
仕事人じゃあるまいし、そんな短時間でヒトが殺せるか。第一、目撃者がひとりもいないなんてあり得ない。
またある事件では、犯人が新幹線車内でグレーのスーツを着て、第三者に誤魔化す必要があった。
だが犯人はスーツを持っていない。亀井刑事(愛川欽也)らは苦悩するが、十津川警部(三橋達也)は、「難しく考える必要はないんじゃないか?」と、車内で親切な乗客からスーツを借りるというトリッキーな推理で、事件を解決したのだった。
さらに、小説を読まなくなったもうひとつの理由。「消えた巨人軍」のときは気にならなかったのだが、西村京太郎の文章は読点が多く、読みづらかった。だがそれは、小学生にも読みやすい、平易な文章ともいえた。これが文章の神髄にも思えたのである。
ともあれ西村京太郎トラベルミステリーは順風満帆だったが、物事にはすべて終わりがある。日本の鉄道は斜陽になり、夜行列車が絶滅危惧になり、地方の鉄道は北海道をはじめ、相次いで廃止された。これでは列車トリックが創れない。
そして肝心の2時間ドラマが、絶滅してしまったのだ。いまやテレビ東京が不定期で放送するだけである。毎日のように殺人事件が起こっていたころが、ウソみたいだ。
いまごろは天国で、山村美紗とミステリー談義をしているのだろうか。
西村先生、いままで楽しいミステリーをありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。
1961年、作家デビュー。1965年、「天使の傷痕(しょうこん)」で、第11回江戸川乱歩賞を受賞。
西村京太郎の傑作「消えた巨人軍」は1976年刊行で、1978年には藤岡弘、、水沢アキの出演で映像化された。これも面白かったが、後年、私は原作が読みたくなり、小説を古本屋で購入した。
読み始めると、内容は分かっているのに、抜群に面白い。私はもう寝なければいけないのだが、読み進む手が止まらない。両眼はコメカミのところが緊張しきって悲鳴を上げているのだが、それでも止まらなかった。
結局、深夜2時半過ぎに読破したのだが、明らかに視力が落ちたことを実感した。
西村京太郎は手書き原稿だが、その書き方が独特で、フトンに入りながら腹ばいで書く。このスタイルでわくわくするストーリーを生み出した。
1978年、鉄道ミステリー第1作となる「寝台特急殺人事件」を刊行。これが大ヒットし、以降、鉄道ミステリーモノを多く発表するようになる。
そしてこれらの原作は、全国各地の名所を紹介できるという意味で、映像化に適していた。三橋達也、愛川欽也主演による「十津川警部モノ」が大ヒットし、西村京太郎は億万長者となった。晩年にテレビ出演した際、「最高年収は7億円」と語っていたのを見たことがある。
私も西村京太郎の原作小説はほとんど読まず、専ら2時間ドラマの観賞となった。
ただ、文章では読者を異世界に迷い込ませても、映像化になると陳腐になることもあった。
たとえば、島式ホームに2本の列車が停止していて、犯人が1番ホームで殺人を犯した後、すかさず2番ホームに移って2度目の殺人を犯す、というシーンがあった。
仕事人じゃあるまいし、そんな短時間でヒトが殺せるか。第一、目撃者がひとりもいないなんてあり得ない。
またある事件では、犯人が新幹線車内でグレーのスーツを着て、第三者に誤魔化す必要があった。
だが犯人はスーツを持っていない。亀井刑事(愛川欽也)らは苦悩するが、十津川警部(三橋達也)は、「難しく考える必要はないんじゃないか?」と、車内で親切な乗客からスーツを借りるというトリッキーな推理で、事件を解決したのだった。
さらに、小説を読まなくなったもうひとつの理由。「消えた巨人軍」のときは気にならなかったのだが、西村京太郎の文章は読点が多く、読みづらかった。だがそれは、小学生にも読みやすい、平易な文章ともいえた。これが文章の神髄にも思えたのである。
ともあれ西村京太郎トラベルミステリーは順風満帆だったが、物事にはすべて終わりがある。日本の鉄道は斜陽になり、夜行列車が絶滅危惧になり、地方の鉄道は北海道をはじめ、相次いで廃止された。これでは列車トリックが創れない。
そして肝心の2時間ドラマが、絶滅してしまったのだ。いまやテレビ東京が不定期で放送するだけである。毎日のように殺人事件が起こっていたころが、ウソみたいだ。
いまごろは天国で、山村美紗とミステリー談義をしているのだろうか。
西村先生、いままで楽しいミステリーをありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。