1月某日、将棋ペンクラブ幹事のA氏から、ペンクラブ新年会のお誘いを受けた。日にちは17日(土)。その日は「大野・植山教室」があり、Ok氏が私との対局を望んでいた気もするのだが、新年会にはLPSAの渡部愛女流初段が出席するという。これなら選択の余地はない。私はノータイムで、新年会参加を決めた。
17日当日。私は午前中に歯医者に行き、昼過ぎに家を出た。場所はお茶の水にある居酒屋「魚百」で、ここはペンクラブ会合時の定番である。開始時間は午後1時半で、ここで4時半まで将棋を指し、そこからは7時半まで飲み会となる。ひとつところでふたつのイベントができるわけで、ジョナサン駒込店のペンクラブ版といえる。
現地まではJRを使ったが、地下鉄で行けば乗り換えなしで行けた…と後悔しながらJR御茶ノ水駅を出ると、どこかのブラスバンドの演奏とともに、チアリーダーがパレードを始めたところだった。
チアは17人もいて、先頭は「小川町雪だるまフェア」の垂れ幕を持っていた。その先、応援団の先頭は東京大学の旗を掲げていた。…ということは、彼女らは東大生か!!
魚百までは同じ方向なので、並行して歩く。スコートからのぞく彼女らの太ももがまぶしい。歩道にはカメラマンがチラホラいて私もカメラ小僧の血が騒ぐが、カメラ不携帯なので指す手がない。かといってスマホでは撮影したくない感じである。
靖国通りに出、パレードは日本橋方面に向かう。このまま彼女らの太ももを鑑賞しちゃおうかの思いがよぎるが、渡部女流初段の笑顔が脳裏に浮かび、ハッと我に返った私は踵を返した。
「小諸そば」に寄る時間がなくなり、1時25分ごろ魚百前に来ると、すでに何人かそろっていた。
M幹事、A幹事ら数名に混じり、渡部女流初段の顔がある。新年一発目の女流棋士が愛ちゃんとは、幸先がいい。早速新年の挨拶をした。
「きょう、ひし美ゆり子の写真集の発売日ですよね。そこの本屋で、ひし美ゆり子のポスターが貼られてましたよ」
とA氏。
そう、きょうは「ひし美ゆり子写真集 YURIKO 1967-73 Evergreen」の発売日である。私は復刊ドットコムからオーダーし、15日には現物が届いていた。といっても、まだ中身は見ていないのだが。
二階に上がる。すぐに湯川博士幹事、恵子さんが到着して、9人になった。
渡部女流初段が近くにいたので、私は
「マイナビはどの辺まで勝ち残ってるの?」
と話しかける。
「……?」
「あっ、マイナビは愛ちゃんもう(敗退していた)…。大詰めだったね」
適当に話題を振ったら、それが大悪手だった、というケースはよくある。
「年賀状ありがとう」
とは湯川幹事。別に後ろめたいことはないのだが、湯川幹事と話すときは、いつもビビッてしまう。
「ブログ見ましたよ」
とは恵子さん。ネットサーフィンをしていて、昔のペンクラブの記事を偶然見たらしい。私も書きたいことを書いているので、恐縮してしまう。ただ内容はともかく、昔の記事の方が勢いはあった。
参加者はこのあと続々到着予定で、最終的には20人を超す模様だ。とりあえずめいめいで将棋を指す。
私はKob氏と。Kob氏、月に1回行われる将棋の会合に出ているそうで、成績はメロメロだと嘆く。そんな話を聞けば与しやすしと思うが、これ大変な間違いだったことを思い知らされることになる。
将棋は私の四間飛車に、Kob氏の居飛車穴熊となった。
Kob氏▲6五歩に私はよろこんで△同桂。▲6六銀には△5三銀と飛車筋を通し、▲6八角に、△6六角▲同金△5七銀と攻めた。
…のはいいが私らしからぬ攻めで、まあこれでもいいが、この前に△4六歩▲同歩の利かしを入れておくべきだった。これなら後で△4六飛と走れる。
本譜は難しい戦いになった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/64/fb67f59bce34341fe578e10c84ef838e.png)
以下の指し手。▲3一角△7五角成▲同飛△3二飛▲4一角△3三飛▲2二角成
Kob氏は▲3一角。これに△3二飛は▲6四角成や▲6四金があり後手面倒だ。
そこで私は先に角を切り、△3二飛と寄った。これで角が死に後手十分と見たが、Kob氏に涼しい顔で▲4一角と打たれ愕然とした。
△3一飛と取りたいが、それは▲6三角成で負ける。私は△3三飛と辛抱したが、▲2二角成と追撃され、おのが敗勢を悟った。
以後はKob氏に着実に指され、惨敗となった。Kob氏、弱そうにほのめかしながら、相当な手練れだ。いやはや、いい勉強になった。
渡部女流初段は2面指しを行っていたが、タイミングよく終わったので、指導対局をお願いする。
LPSAサロンに行かなくなってから、女流棋士との対局はかなり貴重になった。
▲7六歩△8四歩▲5六歩△8五歩▲7七角△5四歩▲7八銀△6二銀▲6八角△3四歩▲7七銀。
4手目△8五歩を咎めようと、私は矢倉を目指したのだが、変調だった。こう指すなら3手目に▲6八銀と指すべきで、明らかに舞い上がっていた。
右では木村晋介ペンクラブ会長が、飛車落ちで挑んだ。木村会長は軽快な振り飛車を得意としている。
本譜は中央から攻め込まれ、早々に▲5八歩と屈服する始末。湯川幹事に「ひどいね」とつぶやかれ、クサッタ。
そこから私も徐々に凝り形をほぐし、むしろ私が十分の形勢になったのだが、渡部女流初段の8筋の攻めを軽視した。△8八歩に▲同銀も▲同玉も△6七金があり、下手敗勢。私は桂損を甘受したが、それがやがて金損となり、ここでイヤになった。
私は▲6四桂の飛車取り。しかし△4二飛とかわされ、二の矢がない。▲5三角成と飛び込み、△4二飛と△5四銀に当てる手はあるが、幸便に△6五銀と出られる手が気に食わない。それで投了したら、渡部女流初段に盛大に驚かれた。
In幹事を交えた感想戦では、△6五銀でも相当難しい、となったが、私が戦意喪失しているのだからしょうがない。
「ここで投げるのはもったいないですよ」
とIn氏。
「いや私、苦しい将棋を指すのはイヤなんですよ。やうたんじゃないんだから」
「固有名詞を出すのはどうかと思う」
と、Hak氏が笑いながら言う。
ただIn氏は相当に違和感を抱いたようで、今度は私とIn氏が指すことになった。
私がどういう将棋を指すか、見てみたくなったらしい。
(つづく)