一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第27回将棋ペンクラブ大賞贈呈式(2)

2015-09-20 23:09:56 | 将棋ペンクラブ
次は今泉健司四段のスピーチである。
「奨励会は辛かったです。介護の世界に入って、笑うことを覚えました。幸せが幸せを呼ぶんですね」
苦労人らしい、じんわりするスピーチだった。
続いて藤井猛九段。藤井九段はボソボソとしゃべる解説が絶品で、今回も面白いことをしゃべってくれると期待していた。
「角交換四間飛車は指し方が難しいんです。でもある時、(その戦法で)2連勝した。たった2連勝ですよ。そうしたら、浅川書房の浅川さんから連絡がきたんですね。『角交換四間飛車の完成ですね!』。いや完成じゃねぇよ(笑)。でも、中級者向けになら、本を書けると思ったわけです」
著書の依頼時にも、いろいろドラマはあったのだ。
最後は村山慈明七段。
「渡辺竜王―森内名人の竜王戦七番勝負で、△5三銀右戦法が指されました。この本が出たのは、その9か月後だったんです。もし同時期に出ていたら、ミリオンセラーになっていました」
と会場の爆笑を誘った。
ここで記念撮影となる。皆さん晴れ晴れとした顔だ。私もスマホで1枚撮った。
続いて所司和晴七段による乾杯の音頭である。…が、やはり所司七段からも寸評が語られた。所司七段も最終選考委員の一人なので、これはまあ、当然だろう。
しかしこれが長い。「昔原田、今所司」で、冒頭の西上心太氏と同じくらい時間がかかっている。ビールの泡はなくなり、我慢できずに口を付けた参加者もいた。
コメントは前二方と大同小異だったが、ご自分のイチオシを、をハッキリ述べた。ひとつだけ書けば、技術部門は、村山七段の著書を推していた。

午後7時10分に乾杯。音楽隊による生演奏が流れ、これでやっと歓談に入る。といっても、私に知己はあまりいないし、自分から語り掛けるタイプではないので、所在投げに佇むだけである。
料理を取りにいくが、今年の料理は昨年よりオシャレになって品数も増え、寿司も昨年の巻き寿司メインから、握り寿司メインに替わっていた。幹事連中も、相当張り込んだようである。
藤井九段が私の横を通ったが、私はやはり動かない。藤井九段はそのまま、女流棋士のところに行った。
と、藤田麻衣子さんがこちらに来て、私と目が合った。
「お久しぶりですね。本当にお久しぶり」
と藤田さん。藤田さんが現役を引退したのは2010年3月である。その後も何度かお会いしているはずだが、直近がいつだかは思い出せない。
「本当に久しぶりですね。お互いLPSAから離れちゃったんで、お会いできる場所がなくなっちゃいましたよね」
このブログのコアな読者には常識だが、私のココロの女性師匠は、藤田さんである。これは、私が女流棋士に初めて指導対局を受けたのが藤田さんだったことによる。また文章の達人という面でも、敬意を払っている。
参考までに、ココロの姉弟子は上川香織女流初段、男性棋士のココロの師匠は真部一男九段、ココロの兄弟子は植山悦行七段となっている。
「先生の観戦記、佐藤―永瀬戦が、今朝まで読売に載ってましたね」
「そうなんですか?」
「…ご存じないんですか?」
藤田さん、ご自分の観戦記は恥ずかしくて、活字で読むことがないという。その気持ち、分からぬでもない。
「今回の受賞作、あれは将棋が面白すぎた」
私はさらに続ける。「先生の本領は、つまらない将棋を名局に昇華させるところにあります。今度はそういった観戦記を読みたいですね」
弟子がエラソーなことを言ってしまった。
傍らでは、指導対局が始まった。熊倉紫野女流初段と渡部愛女流初段が所定の位置に座る。
それぞれ3面指しで、時間の関係上、先着6名で締切りとなるだろう。私は5月の関東交流会で熊倉女流初段に教えていただき損なったから、今回は教えてもらいたい。
とはいっても、自分からズカズカ対局の椅子に座るほど、私は積極的ではない。誰かが私の背中を押してくれ、照れながら椅子に座るのが理想だ。
熊倉女流初段の前に1人座った。渡部女流初段の前はすでに3人座っている。さすがにLPSAの指導対局女王だ。あ、熊倉女流初段の前に木村晋介会長が座った。
もうダメだ、残り1席となっては、自発的に座るしかない。私はおずおずと熊倉女流初段の前に座った。
と、左の男性が
「ブログ読んでます」
と言う。
「顔バレしてますか? 私」
「いや、胸の名札で…」
「あっ」
それにしても、そうか…。私のブログもけっこう読まれてるんだなあ。
その男性氏は二枚落ち。その左の木村会長は、飛車落ちだった。右の渡部女流初段のところは、3局とも駒落ちだった。
熊倉女流初段と目が合う。駒を並べ、
「平手でよろしいでしょうか」
と申し出る。「ほか(の2局)が駒落ちだから、先生も平手を指したいでしょ?」
「……」
初対面の女流棋士にこんな失礼な言葉を吐く下手もいないだろう。
ともあれ平手戦で、指導対局が始まった。
(つづく)
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第27回将棋ペンクラブ大賞贈呈式(1)

2015-09-19 11:36:39 | 将棋ペンクラブ
18日の女流王位戦・山口理梨子女流初段と高浜愛子女流3級の一戦は、高浜女流3級の勝ち!
あと3勝で女流2級だ。まだ厳しい状況に変わりはないが、残りの対局にベストを尽くしてほしい。

18日は「第27回将棋ペンクラブ大賞贈呈式」に参加した。
夕方、早めに仕事を切り上げ、四ッ谷に向かう。私はスーツを着てネクタイを締めたが、電車内ではノーネクタイが大半だった。今はこれが主流になっているらしい。
JR四ッ谷駅では麹町口の反対側に出て、まずは「小諸そば」に入った。
もちろん二枚もり(300円)を頼む。この後の贈呈式で食事も出るが、軽く入れておきたいのと、小諸そばはゲン担ぎの意味もあった。
そばは美味かったが、感激するほどではなかった。私なりに緊張しているのかもしれない。
午後6時過ぎに「スクワール麹町」に入る。エレベーターを使い4階で降りたが、雰囲気が違う。5階だったようで、昨年と同じ間違いを犯してしまった。
5階の受付で8,000円を支払う。周りはいつもの知った顔だ。大柄な男性に遭遇したが、彼は将棋関係者だろうか。
「芙蓉の間」に入るが、参加者が一人しかいない。間が持たないので受付に戻ると、フロアで将棋を指している姿があった。それを眺める参加者たち。やはりみんな将棋が好きなのだ。
6時15分に再度部屋に入ったら、今度は私だけだった。ステージ袖では音楽隊の女子2人が調整中、あとはホテルスタッフがきびきびと準備しているだけだ。
開場は午後6時、開演は6時半からだからこれでいいのだが、開場と同時に参加者がなだれこむイメージがあるので、この光景には拍子抜けする。もっとも関係者は、向かいの控室に詰めているのだが。
それでも開演までにぞろぞろと入場し、ようやく贈呈式らしくなってきた。
先ほどの大柄な男性は、今回観戦記大賞を受賞した大川慎太郎氏だった。いわば今回の主役だ。
ほかの受賞者も入室する。一般参加の棋士では窪田義行六段、上野裕和五段の姿があった。女流棋士の熊倉紫野女流初段、渡部愛女流初段の姿もある。後で指導対局があるが、どちらかとお手合わせ願えればうれしい。
では改めて、各賞を記しておこう(敬称略)。

【観戦記部門】
大賞・大川慎太郎
優秀賞・藤田麻衣子
【文芸部門】
大賞・松本博文
優秀賞・今泉健司
【技術部門】
大賞・藤井猛
優秀賞・村山慈明

長田衛氏の司会で、開会の辞。続いて西上心太氏(文芸評論家)による審査員講評となる。
「今回も各部門のレベルが高くて、選考では苦労しました」
(大川作品)「雑誌観戦記の長所を活かし、探偵小説を読むようでした」
(藤田作品)「冒頭から結末の伏線が張られていて、面白く読めました」
(松本作品)「プログラム開発者の声をよく聞き取っている。コンピューターソフトの歴史がよく分かりました」
(今泉作品)「奨励会を2回退会してもへこたれない今泉氏のタフネスぶり、それでいて人間の弱さをうまく描いていました」
(藤井作品)「角交換四間飛車という難しい戦法を、中級者にも分かりやすく説きました」
(村山作品)「矢倉△5三銀右戦法の、歴史の変遷を記しているのがよかった」
みんな、ふむふむと頷く。入賞には洩れたが、渡辺明著・後藤元気協力の「渡辺明の思考」にも高い評価があったことが付言された。

続いて表彰式で、木村晋介将棋ペンクラブ会長が行う。プレゼンターは妙齢の女性で、最近幹事になってくれた。
(大川作品)「今度ミステリー小説を書いてくれませんか」
(藤田作品)「『のどが渇く』という表現が秀逸でした」
(松本作品)「河口俊彦さんも喜んでいることでしょう」
(今泉作品)「介護士を弁護士と読み間違えちゃいました」
(藤井作品)「私はこの本を読んで、ゴキ中を捨てました」
(村山作品)「体系的に説いたのが素晴らしかった」
木村会長は、短いコメントの中にもユーモアを交え、さすがだと思った。妙なところに感心した次第。

続いて受賞者のスピーチ。
大川氏「雑誌の記者は対局中に(原則的に)部屋に入れないので、後日に取材するしかないんです」
なるほど言われてみればそうだ。だがそれゆえに綿密な取材になった、ともいえる。
元女流棋士の藤田さん。今回は和服での登場である。「私は地方に行って、自分の対局の結果は100%聞かれないんですけど、観戦記についてはいつも、読んだよ、と言われます」
それだけ観戦記は、将棋ファンに根付いているのだ。
続いて松本氏。松本氏には、LPSAからは花束、ファンからは祝電が届いた。LPSAの歴史に、松本氏の存在は欠かせない。氏のネット中継構築がなかったら、LPSAや将棋界は、ネット配信が数年間遅れていただろう。
ちょっと目を惹く美人が松本氏にカメラを構えている。もしやと思ったら、やはり中倉彰子女流初段だった。相変わらず瑞々しい。
松本氏「私は二人の方に感謝したい。一人は東公平さんです。…もう一人は、河口俊彦八段です」
お二方とも、将棋ペンクラブの創設に尽力された。この方々がいなければ、今この席もなかったのだ。
河口八段は今年1月に他界されたが、この本を上梓した時は、お祝いの会を開いてくれたとのこと。今回の大賞受賞で、いい恩返しができたのではないだろうか。
(つづく)
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高浜女流3級の昇級の目を考える・1

2015-09-18 00:28:17 | 目を考える
棋士は四段になれば終生棋士である。女流棋士も女流3級になれば終生女流棋士…といいたいところだが、女流3級はいわゆる「仮免許」で、2年以内に規定の成績を取り女流2級に昇らないと、研修会戻りとなる。
高浜愛子女流3級は飛びぬけた成績で研修会を抜け、2014年4月に女流3級でデビューした。
ところがその後の成績がパッとせず、というかヒドく、いまや女流2級に赤信号が灯っているのだ。
参考までに、その成績を記しておこう。(○●は、高浜女流3級の星)

2014年度
4月7日 倉敷藤花戦本戦1回戦 ●山根ことみ女流3級
5月2日 女流王将戦予選1回戦 ○今井絢アマ
5月2日 女流王将戦予選2回戦 ●室田伊緒女流初段
5月24日 女流王座戦一次予選1回戦 ●相川春香女流2級
8月9日 マイナビ女子オープン予選1回戦 ●中井広恵女流六段
8月29日 女流王位戦予選1回戦 ●山根ことみ女流1級
1月26日 女流名人戦予選1回戦 ○大庭美樹女流初段
2月4日 女流名人戦予選2回戦 ●熊倉紫野女流初段
3月25日 倉敷藤花戦1回戦 ○蛸島彰子女流五段
(2014年度:3勝6敗)

2015年度
4月22日 女流王将戦予選1回戦 ○鎌村ちひろアマ
4月22日 女流王将戦予選2回戦 ●貞升南女流初段
5月21日 倉敷藤花戦2回戦 ●中井広恵女流六段
5月30日 女流王座戦一次予選1回戦 ●久津知子女流初段
8月1日 マイナビ女子オープン予選1回戦 ○浅田奈都美アマ
8月1日 マイナビ女子オープン予選決勝 ●飯野愛女流1級
(2015年度:ここまで2勝4敗)

デビューからここまで、5勝10敗。ことに、対女流棋士会との成績は8戦全敗である。これでは弁護のしようがない。
齢30を越えている高浜女流3級がこのままズルズル後退した場合、研修会へスンナリ戻れるとは思えない。落ちることは考えず、上がることだけ考えよう。
まず、女流2級への条件を確認しておこう。

1.年間で参加公式棋戦数と同数の勝星を得る。
2.2年間で参加公式棋戦数の4分の3以上の勝星を得る。
3.「女流棋士昇段級規定」の女流1級に該当した場合。

まず1.だが、高浜女流3級の参加棋戦数は6なので、クリアするには、あと4勝しなければならない。
2.で必要とされる勝数を計算すると「9」になり、やはりあと4勝しなければならない。
最後の3.を、詳しく記してみよう。

・マイナビ女子オープン本戦入り
・女流王座戦本戦入り
・女流名人戦予選決勝進出
・女流王位戦リーグ入り
・女流王将戦本戦入り
・倉敷藤花戦ベスト8

全体の成績が悪くても、ひとつの棋戦で突出した成績を取れば、女流2級に昇級できる。
相川春香女流初段もデビュー当時星が伸びず苦しんだが、マイナビ女子オープンで本戦入りし、ギリギリで女流2級に昇級した前例がある。
高浜女流3級が今後指せる棋戦は、女流王位戦と女流名人戦のみである(なお倉敷藤花戦は2015年度末から新期の対局が開始されるが、ベスト8を賭けた対局が行われるころは新年度に入っているので、適用外になると思う)。
整理すると、今の高浜女流3級に残された昇級の道は、

1.女流王位戦予選で3勝して、リーグ入りする。
2.女流名人戦予選で3勝して、予選決勝に進出する。
3.女流王位戦と女流名人戦の予選で、合わせて4勝する。

これしかない。
先に、高浜女流3級は女流棋士会に全敗と書いたが、ウラを返せば、アマには全勝しているのだ。これはアマより強い、という証左である。ことに昨今のアマはプロ並みに強いから、高浜女流3級だって実力はあるのだ。
そして今日18日は、女流王位戦・山口恵梨子女流初段戦がある。山口女流初段も強いが、全く勝てない相手ではない。ここで勝っても次は上田初美女流三段が待っているから気が遠くなるが、目先の1勝を獲らないと話にならない。今日は全力を出して頑張ってほしい。
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LPSA芝浦サロン・中倉宏美女流二段10

2015-09-17 00:52:38 | LPSA芝浦サロン
2011年8月24日(水)、LPSA芝浦サロンで指した将棋を振り返る。
この日の担当は中倉宏美女流二段。1部、2部の連投だった。私は午後5時過ぎに入室すると、宏美女流二段のほかに、石橋幸緒女流四段(当時)がいた。この時私は「勝手にマッカラン勝負」を行っていて、私が出した条件に、石橋女流四段だけがクリアしていた。すなわち、「倉敷藤花戦ベスト4」である。私は「賞品」として、GSPに1万円を寄付した。
余談ながらこの倉敷藤花戦、石橋女流四段は準決勝で清水市代女流六段に屈し、タイトル戦登場はならなかった。今では記憶に残っていないが、この時挑戦者決定戦に進出したもう一人は、室谷由紀女流初段(当時)である。もし室谷女流初段が清水女流六段に勝っていたら、4年早く女流二段になった。そして超美人女流棋士として、マスコミをにぎわしていたことだろう。
宏美女流二段らとしばらくおしゃべり。詳しくは当時の記事(2011年9月11日、12日)をご覧いただきたいが、LPSA総選挙や、私の「女流棋士ファンランキング」などの話をした。一つ書けば、ファンランキングの順位が低いことに、宏美女流二段が不満を漏らしていたのが印象的だった。
ちなみに2015年8月現在の宏美女流二段は6位。当時より落ちて、これは申し訳なく思う。

Kitamura氏、ミスター中飛車氏、その棋友が加わり、4面指しで対局開始。私のはもちろん「ワイン勝負」で、ここまで私の2勝5敗だった。私があと3勝すればセーフ。その前に3つ負けたらアウトで、私が高級ワインをプレゼントする形になっていた。
宏美女流二段の三間飛車→石田流に、私は▲5六銀と腰掛けて▲6六歩。△6四歩なら▲6五歩から1歩を手持ちにする。捨ておけば▲6五歩と位を張るつもり。本譜は△1三角だったので、私は▲6五歩と伸ばし、容易に負けないと思った。
それにしても、この作戦を4年前から用いていたとは感慨深い。
▲7五歩(第1図)と指して下手十分。このまま行けば戦わずして負けると見て、宏美女流二段は動いてきた。

第1図以下の指し手。△3六歩▲同歩△4五歩▲同歩△4六歩▲4八金引△4五銀▲3三角成△同飛▲4五銀△3九角▲2七飛△4八角成▲同金△4七歩成▲同金(第2図)

△3六歩から△4五歩は、攻めるならここしかない。△4五銀に私は、よくあるセット手順の▲3三角成~▲4五銀。この振りかわりはどちらがいいんだろう。銀がやや離れるのが不満だが、この岐れで悪ければしょうがないと思った。
宏美女流二段は△3九角からシャニムニ攻めてきたが、▲4七同金に、宏美女流二段の次の手がココセだった。

第2図以下の指し手。△5五金▲4四銀 以下、一公の勝ち。

宏美女流二段は△5五金と銀取りに打ったが、これは何かの錯覚。私は手順に▲4四銀と出て、将棋が終わってしまった。以下は△4六金▲3三銀不成△4七金▲同飛と進んだが、これはどう見ても下手必勝である。実戦も私の勝ちで終わった。
この日の私は精神状態がドン底だったのだが、見かねた宏美女流二段がアメをくれたのかもしれない。
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伊藤女流初段がタイトル戦初登場!!

2015-09-16 00:09:24 | 女流棋士
第5期女流王座戦の挑戦者決定戦・甲斐智美倉敷藤花VS伊藤沙恵女流初段戦が11日に行われ、伊藤女流初段が勝ち、加藤桃子女流王座への挑戦を決めた。今日はその将棋を軽く振り返ってみよう。

伊藤女流初段は2014年10月デビュー。元奨励会1級で、同年、年齢制限のため退会を余儀なくされた。とはいえ「奨励会1級」はとてつもない強さで、たとえば大野八一雄七段の弟子・M君が同じ奨励会1級なのだが、彼に角を落とされても、私は全然勝つ気がしない。
伊藤女流初段がM君と同じ棋力なら、彼女が女流棋戦でどれだけ勝ち進んでも、ちっとも不思議ではないのである。
それなのに伊藤女流初段は各棋戦で敗退してしまい、私の彼女に対する評価は偏見だったのかと、疑心暗鬼を生じたものだった。
けれど伊藤女流初段は頑張った。21連勝中の里見香奈女流名人・女流王位を準決勝で下し、ついに挑戦者決定戦に進出したのである。
甲斐倉敷藤花も元奨励会で大変な強豪だが、新顔のタイトル戦を見たい。私は伊藤女流初段を応援したのだった。

挑戦者決定戦は伊藤女流初段の後手で、相矢倉となった。後手番になった時の伊藤女流初段は、わざと角交換をさせ銀冠に組むという変質的な手を好んで指していたが、女流棋界の頂点を目指す気鋭がそんな指し方をしているようでは先が見えている。相矢倉の選択はベストだと思った。
将棋は甲斐倉敷藤花が果敢に攻めるが、76手目△3三玉が伊藤流の一手。さらに▲1四歩に△3四玉の角取りが、控室を驚かせた。玉も攻め駒の一つです、と言わんばかりの強手だ。
さらにさらに、▲7九角に△4五玉の突進。まるで木村一基(敬称略)の玉さばきを見るようではないか。しかも驚いたことに、この手は鈴木大介八段が推奨していた。
この中盤の難所で男性棋士と同じ手を指すとは、伊藤沙恵恐るべし。この瞬間、勝利の女神が伊藤女流初段にほほ笑んだと言ってもよい。
この後は甲斐倉敷藤花も伊藤玉を押し戻し難しい戦いだったのだが、流れは伊藤女流初段。以下も緩みのない指し手で、堂々と勝利したのだった。

女流棋士デビューから1年を待たずして、タイトル戦登場を決めた伊藤新女流二段はお見事。持ち時間をあまり使わず大豪を吹っ飛ばしたり、本局のような奔放な指し回しを見せたりと、彼女の将棋は面白い。
伊藤女流二段は第1期女流王座戦に出場したが、本戦トーナメントの準決勝で、加藤桃子奨励会1級に敗れた。勝った加藤奨励会1級は決勝五番勝負で清水市代六段に勝ち、初代女流王座を獲得。くっきり明暗を分けたのだった。伊藤女流二段、今回はあの時の雪辱を果たすチャンスだ。
これが奨励会員同士の決戦ならシラケたが、伊藤女流二段は「女流棋士」なので、問題ない。五番勝負は面白い戦いになるはずである。
第1局は10月22日(木)、仙台市で行われる。
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