一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

2017年長崎旅行・3

2017-12-26 00:20:00 | 旅行記・九州編
割り箸で当たった女性に、マスターが恋人の名前当てを行う。
「(あなたの脳裏に)2人映ってますよ」
と、これはマスターお得意のジョークである。
結局、マスターは恋人のフルネームをピタリと当てた。どうもマスターは、女性の脳裏に浮かぶ漢字を読み取っているようだ。
私たちは驚くが、最もビックリしているのは当てられた本人である。ヒトは本当に驚くと絶句するらしく、彼女も固まっていた。
私の前の子供2人は、あっちに行ったりこっちに行ったりだ。だいたいが子供は毎日が不思議体験の連続で、マジックの不思議な現象もそれほど驚かない。講話に至っては聞く耳すら持たないわけで、ここは退屈な場でしかない。そう、彼らはあんでるせんの客として、無理があったのだ。この母親はそのことを分かっていなかった。
マスターは続いて、好きな芸能人当てをやる。
マスターがカウンターの上に、福山雅治、EXILE・TAKAHIRO、西島秀俊、小栗旬など、9人の俳優or歌手のカードを並べる。また別の女性が当たり、マスターはこれらのカードの中から、彼女の好きな芸能人ベスト5を「順位通り」に当てることになった。
これ、以前は芸能人5人の中からベスト1を当てる形だったが、それだと正解率が20%になってしまう。9人中5人を順序よく当てるとなれば、単純計算で15,120分の1になる。これは相当ハードルが高くなった。
が、マスターはこれもピタリと正解した。彼女は私のナナメ前にいたが、私には彼女の驚く様子が手に取るように分かる。そして私たちは、大歓声と拍手をもって、マスターのマジックに賛辞を贈るのである。
ところで私は、ここまで割り箸が当たっていない。私は比較的当たるほうだったのだが、ここ数年はサッパリだ。「恋人当て」は私もやってもらいたいが、要は私に「当たりたい」という気持ちが薄らいでいるのだろう。
「あなたは将来結婚しますよ」
新たに当たった男性に、マスターは告げる。私もマスターに過去3回そう言われたことがあるのだが、いまだに実現していない。相手の影すらも見えない。
マスターは、釣りに出た親子の話をする。これも定番の話で、偉そうにしている父親も、実は子供と同程度のアタマしかない、というオチである。そこから導かれる教えとして、
「どうせ同程度のアタマなら、のんびりして一生を過ごそう」
「同程度のアタマなら、ちょっと努力したら、みんなより上に行けるのではないか」
という2択に分かれる。マスターとしては、暗に後者を推奨しているわけだ。だが私は、後者にしなければならない、と思いつつ、ラクな前者を選んでしまった。ここに私の精神的弱さがある。私はアリになれないキリギリスだったわけだ。
2時間ぐらい経ったころか。大テーブルの上に立っていた小学生(3人の子供のうちの1人)は、さっきからゴホゴホやっていたが、ついにその場を離れ、近くの椅子の上に横になってしまった。だいぶ体調がわるかったらしい。
例の母親の子供である。たびたび引き合いに出して申し訳ないが、子供の体調がわるかったら、ふつうは家に置いてくるか、外出そのものを中止する。マジックショーで2~3時間立ちっ放しになることを思えば、それは当然の措置であろう。しかし母親は、おのれのマジックショー見たさに、その決断ができなかった。
今度はお客の生年月日当てである。3の女性が割り箸を引くと、若干騒がしい男の子に当たった。
これが抽選の運不運というか、ほかに当たりたい成人がいるだろうに、もったいないことだ。
今回は誕生日当てに加え、悩みごと等をメモに書くと、マスターがそのメモを見ずに、回答してくれる特典がある。しかし子供に悩みはないので、あの母親が「聞きたいこと」を質問することになった。
まず電卓を使って、任意の5人が彼の誕生日を当てる。この方法がまた斬新なのだが、5人の導き出した答えは、まさに彼の誕生日だった。私はマスターのマジックを数百種類と見てきたが、このネタ?が最も分からない。興味ある読者には、もうライヴで見ていただくしかない。
注目の「聞きたいこと」は、「どうして手品を始めるようになったんですか?」だった。
私は彼女自身の悩みごとを聞くと思っていたが、まさかマスターへの質問を記入するとは思わなかった。
マスターは「これは手品ではありませんよ」と否定した。「だって手品じゃ片付けられないこともやっていますからね」。
マスターには珍しく、ちょっとムッとしたように見えた。
このあんでるせん、ネットではその存在が全国的に知られているが、中には快く思わない手合いもいて、その主張は「ただの手品なのに、超能力に思わせている」というものである。
確かにマジックの中には、セロなどの有名マジシャンとほぼ同じネタがあったりするので、私は第三者の意見を全否定しない。しかしマスターの言う通り、マジックでは片づけられないネタもあるのだ。
それらの批判をマスターも知ってか知らずか、表の電光掲示板には「マジックパーラー」と出している。
さらに書けば、マスターのショーはあくまでも余興であって、お代は飲食代のみである。私たちは金銭的被害がないのだから、マスターの批判をするのは見当違いである。
とはいえハッキリ「超能力」と書いてもマスターはこそばゆいだろうから、当ブログでは「マジック」と表記しているわけである。
マスターがA5サイズの用紙に、何やら書き始める。何かの諺らしく、それも母親へのプレゼントとなる。その間マスターは、みなからコインを所望した。すると母親が、
「○○君、この500円、渡してきて」
とお金を渡した。
子供を中継する手があったか!
私は母親のしたたかさに脱帽した。
(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2017年長崎旅行・2

2017-12-25 00:28:29 | 旅行記・九州編
だいぶ待って、ポークカレーが運ばれてきた。ちょっとレトルトっぽい味が懐かしい。
食後にコーヒーが運ばれてきた。アメリカンは薄い、というイメージがあるが、実際薄い。私には合わないようである。
ここからマジックショーまでまだ時間がある。ヒマつぶしに私は、年賀状用の「2017年・私の10大ニュース」を選定する。これも毎年の定跡だが、今年は会社の廃業、自動車事故、失職数ヶ月、プレス機廃棄、新車同様の軽トラ売却、水道管水漏れ、諸々の書籍や雑誌の処分、など暗いニュースばかりで、気が滅入った。
向かいの子供たちの動きがせわしない。さっきから席を離れてはあっちこっち移動しているが、マジックが始まったらじっとしてくれるだろうか。



午後2時を過ぎ、やっとお会計になった。後ろを振り向けば、壁には無数のチェキ写真が貼られている。有名人ばかりで、将棋ファンなら誰でも知っている(女流)棋士の写真もある。
いよいよマジックのスタートである。私の整理番号は「28」。定員は33だから、私の後に5人の予約があったことになる。
慣例ではジョッキの中に人数分の割り箸が入れられ、そこに番号が振ってある。おもに3の女性がそれを引き、当たった数字の人が、マスターのマジックの「お相手」になるわけだ。
席替えだが、1~6まではカウンターだから分かりやすい。その後方は基本的に番号順だが、「背の順」がだいぶ配慮される。私は背が高いので、大テーブルの上に乗らないまでも、3列目以降であろう。
だが今回は、5の後ろを指示された。これはかなりの好位置で、手を伸ばせば、コインをカウンターにほうれる。
だが他の客の配置がハッキリしない。子供は背が低いから、前から2列目になったりする。こういう「優遇」があるからややこしいのだ。
それでごちゃごちゃやっているうち、私は3列目の椅子の上、になった。
だがそれでも安住とはいかず、最終的には4列目の最も左、ミニ脚立の上に乗って観戦、という体勢になった。カウンターからは最も遠く、とてもコインをほうれる位置にない。来席19回目にして、最悪の席になってしまった。
ちなみに例の母親も、私と同じ列だった。これでは私同様、コインはほうれまい。
14時18分、いよいよマスター登場である。1年振りにマスターを拝見したが、1年どころか18年前と全然容姿が変わっていない。その間私は2度会社を辞め、結婚もせずブクブク太り、貯金はほとんどナシ。頭もハゲ散らかして、見るも無残な姿になってしまった。
マスターは挨拶代わりに、右手にオバケの手を付け、客を驚かす。
ここからマジックのスタートである。まずは指環を取り出し、掌の上で15度、28度、43度…と任意の角度に指環を浮かせていく。
さらにご婦人3人から指環を借りた。それらをマッチ箱大の木箱に入れて振ると、カラカラと音がした。箱をライターであぶると、徐々に音が小さくなり、やがて止んだ。
箱を開けると、果たして指環がない。マスターは「指環は消えました」とトボケるが心配無用。マスターがセーターの下からネックレスを取り出すと、そこにはさっきの指環が三連で括られていた。みんなオオーッと驚く。
私は何度も見ているが、「三連」は初めてである。マスターのマジックは年々進化しているのだ。
次はESPカードを取り出す。○、□、△、+、波形の5種×5枚のカードで、それぞれの種類の当てっこをするものである。
と、マスターがこちらを見て、「カズヨシ君、カズヨシ君、大丈夫?」と言った。
どうもマスターが私の名前を当ててくれたようだが、微妙に読みが違う。
正しい読みを言うと、マスターは「そうか。でもカズから始まるイメージがしました」と言った。
私もあんでるせんは19回目だから、マスターが私の名前を記憶した、という考え方はできる。しかしふつうは忘れているから、やはり超能力で私の名前をイメージしたのだろう。
ESPカードで見事なマジックを堪能したあと、次はカード(トランプ)に移る。布袋が取り出され、3番の女性が、マスターの指示により、その布袋の中でカードを選ぶ。すなわち、
「真ん中あたりのカードを1枚選んでください」
「そのカードを裏返して、いちばん上に載せてください」
である。この行為は当の女性もカードの数字やマークが見えていない。それをマスターが当てた。
そして、さらに驚く仕掛けもあった(それは秘密)。
3の女性が割り箸を引く。その番号に当たった男性にマスターが
「あなたは将来結婚しますよ」
と言った。結婚する人には、横に伴侶の影が見えるのだという。
…という感じで、どんどんマジックが繰り広げられていくのだが、例の子供たちは飽きてきたようだ。3人の子供うち、年少の2人は私の前にいたが、早くも席を離れ、近くのテーブルでごちゃごちゃやりだした。
私が恐れていたのはこれである。こっちは集中してマジックを楽しみたいのに、これでは場の空気が乱れる。さっき母親は「マジックは2時間」と語っていたが、ここ数年はショーを3時間近くやる。まだ2時間以上もあるのにこの有様では、先が思いやられる。
マスターがカードを2つにちぎり、それをカードの束に戻して、壁に投げつける。するとちぎられたカードが、壁際に掛けられてある額縁の「中」に入った。
マジックはどんどん続く。マスターがシルクハットと生卵を取り出す。ハットに生卵を入れ、さらに、お客に任意に出してもらった千円札を一緒に入れる。
するとその千円札が一瞬にして消えた。マスターが生卵を割ると、ドロッとした白身の中から、そのお札が出てきた。
絶対に入るはずのない場所からお札が出てくる、というマジックはある。だがライブでそれを見ると、ホントに超能力に見えてくるのだ。
マスターは語る。おなじみの講話である。
「人は過去には戻れませんね。今30代の人が、20代のころは若かった、と思う。40代の人が、30代は若かった、と思う。50代の人は、40代はよかった、と思う。60代の人も、50代に戻りたい、と思う。70代の人も…。人生はそれが延々と続きますネ。永遠にじゃないですけどね。
でもひとつだけ、過去に戻れる方法がありますよ。10年後の自分を想像すれば、今自分がそこから10年過去に戻って、ああ儲けたな、という気分になりますよ。
そしたらもう、10年後の自分に向けて、のんびりとはしてられないですね。いろいろやらなくちゃならないことがありますね」
これは私が1999年にお邪魔して以来、毎年拝聴した。そう、あんでるせんはマジックショーばかりが注目されるが、肝はマジックの間に挟まれる「講話」にある。私は毎年しっかりと拝聴していながら、それを後の生活に活かすことをせず、のんべんだらりと過ごしてきた。
そしてその結果が、今年起こった数々の災難である。少なくとも私がもっと早くに策を講じていたら、こうまでヒドくなることはなかった。
結局私は、ダメ人間だった。
(つづく)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2017年長崎旅行・1

2017-12-24 01:01:10 | 旅行記・九州編
(11月19日のつづき)
長崎旅行の前夜(15日)、翌日の宿の選定に入る。今回の旅の最終目的地は博多だが、青春18きっぷを利用しているわけではないので、移動はJRに拘らない。
となればやはり島原半島を経由したい。ここは海沿いに島原鉄道が通じていて、全長43.2キロの短い路線だが、民間鉄道なのによく頑張っている。鉄道ファンとしては乗車して応援したいところだ。
宿泊には起点の諫早が有効だが、PCから楽天トラベルを見ると、候補地が少なかった。
試しにスマホで同サイトを見ると、けっこうな数のホテルがあった。アクセスするメディアでこうも違いがあるとは、どういうわけだろう。
喜々津ステーションホテルは先月開業。大風呂があり、宿泊料も4,200円とリーズナブルだ。
ただし喜々津は、島原鉄道で諫早から2駅先だ。17日(日)は同鉄道の1日乗車券を使う予定なので、前日の無駄な出費は避けたい。それで諫早をあたると、諫早グリーンホテルが空いていた。こちらも大風呂付で4,200円。「開業1ヶ月」も相当な魅力だが、私は翌日の利便性を考慮し、こちらのホテルを採った(註:この時点で私は勘違いしていて、喜々津は長崎本線の駅だった)。
きょうはOutlookの調子がわるく、メールフォルダを開けない事態に見舞われたが、とりあえずワクワクしながら、眠りについた。

16日(土)。早起きして手早く朝食を摂り、羽田空港に向かう。最寄り駅は、金券ショップで購入した切符で抜ける。これで5円の得となる。
早朝の土曜だが、京浜東北線はけっこうな乗車率だった。
浜松町でモノレールの空港快速に乗り換える。モノレール切符も金券ショップで購入しており、30円の得となった。なお帰りは、福岡空港で「モノレール&山手線内きっぷ」を500円で購入する予定だ。山手線沿線に住んでいる者の特権である。
羽田空港第2ビルには07時35分に着いた。
今回はスキップサービスを利用しているので、航空券発券の手続きは省き、すぐに手荷物検査場を抜けた。
しばし待って搭乗。私の席は中央4人掛けの左から2つめ。右の席には女性が座り、顔は見ていないが加藤綾子アナウンサーの雰囲気があった。
飛行機は滞りなく離陸した。さて大手航空会社の飛行機で楽しみなのはオーディオサービスである。だが座席にはイヤホンが備えられておらず、必要な場合は客室乗務員(スッチー)からいただく形になっていた。これで経費が浮かせられるということだろう。
幸い今回はマイイヤホンを携行していたのでスッチーの手を煩わせるまでもなかったが、機内のオーディオ機能に一部不具合があり、お目当ての音楽番組等が聴けなかった。私は飛行機を常用しているわけではないのに、何というタイミングの悪さだろう。
長崎空港には定刻の10時20分より3分早く到着した。私はバス乗り場に向かう。ハウステンボス(川棚)方面行きの2番乗り場で時刻を確認すると、次は10時45分発だった。事前の調べでは10時40分だったから、ダイヤが変わったのだろう。
こっちは一刻も早くあんでるせんに入りたいのに、さらに5分の遅れとは、あべこべである。
空は小雨が降っていたが、今日は、天候はほとんど関係ない。
バスは定刻に出発した。私はあんでるせんに19年連続19回目のお邪魔となるが、これまでは前夜九州着が圧倒的に多く、今回のように朝東京発→あんでるせん直行は初めてである。せめて夕方からの回にしてくれれば昼間に観光ができたのだが、贅沢は言えない。
というわけでテンションを高めるのが難しかったが、最終ランナーのバス車内で、何となく気分が高揚してきた。
バスは微妙に遅れ、11時28分、川棚バスターミナルに着いた(960円)。自宅最寄り駅から乗り換えること3回。あんでるせんへは意外に簡単に行けるのである。
バスを降りると、おばさま方が4~5人いた。明らかにあんでるせんの雰囲気ムンムンなのだが、客ではないのか?
今年は外観の写真を撮る余裕もなく、すぐさま2階に上がると、ドアの前でタバコを喫っている客がいた。あんでるせんも分煙になったということか。
入店して、ウエイトレスさん(マスターの奥さん?)にお詫びする。私の席は入口左にある大テーブルの一角があてがわれた。
左右に男性がいて、私の存在を無視して会話を続けていた。このテーブルは9~10人掛けだが、2家族で占めていた。すなわち2組の夫婦?に子供3人、それに実年の男性だ。つまり8人の団体様だ。
あんでるせんは中学生までの入場はお断り、とどこかで見聞きしたことがあるが、ここ何年か、子供の姿を見る。予約の時は子供の有無まで聞かれないから客も連れてくるのだろうが、私は子供の参加が好きになれない。
しばらくして、熟女グループがどやどやと入ってきた。さっきバスターミナルにいた人たちだろうか。遅れた人がいたから、入店を待っていたのだろうか。
彼女らは「1人来られなくなった」と言った。団体行動は個人が責任をもって行動しないと、他者に迷惑を掛ける。だから私は団体行動がイヤなのだ。
私はミートソーススパゲティ(810円)とアメリカンコーヒー(540円)を注文する。しかしミートソースは品切れで、ポークカレー(810円)に変更した。
我が大テーブルの団体さんに戻るが、ひとりの奥様がかなりのベテランで、あんでるせんには何度も来ているようだ。息子に「これから2時間、驚くことが起きるからね」と言っている。そして周りに「コインを用意しておくように」と続けた。
やれやれ…と思う。こうした場に団体で来ることの不具合、それは個人の温度差もある。この婦人のように、あんでるせんに熱を上げている人が他者を誘うのだが、誘われたほうはお付き合いの意識があるから、心ここにあらずの場合が少なくない。そういう人が何人か紛れると、ショーの時の空気が微妙に白けるのだ。
店内はほぼ満席。あんでるせんは女性客が多いが、圧倒的に少ないのは男女ともに一人旅で、私のような中年のオッサンひとり、というパターンはほとんどない。今回は男性14人(子供2人)、女性18人(子供1人)の計32人だった。
(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

12月3日の4時から男(後編)

2017-12-23 00:57:30 | 新・大野教室

第3図以下の指し手。▲3三歩△同金▲2五桂△3二金▲7一角△8六歩▲同歩△8七歩▲同銀△4八飛(第4図)

第3図。数年前の私だったらノータイムで▲7一角だ。だが楽しみは後に取っておきたいのと、当たりになっている▲3七桂を捌きたくて、私は▲3三歩△同金▲2五桂を利かした。
そして▲7一角。が、そこで△8六歩があることに気付いた。これをA▲同歩は△8七歩が厄介だ。▲同銀は△2八飛の王手桂取りがある。だがB▲8二角成も、タダで取れそうな金を取れないのが不愉快だ。
実戦はやはり△8六歩。私は目をつぶって▲同歩。以下△8七歩▲同銀に、Fuj氏は△4八飛と、△4四金を助けてきた。

第4図以下の指し手。▲7八銀打△7二飛▲4四角成△同飛成▲3六桂△4五竜▲3三歩△2五竜▲3二歩成△同玉▲4四金△3六竜▲3三歩△4二玉(第5図)

ここで▲7八銀打が受け過ぎの悪手だった。Fuj氏に△7二飛と寄られ、▲4四角成と切るようでは指し切りの筋も出てきた。▲7八銀打では▲7八金で十分で、同じ進行なら持駒が1枚多いぶん、後の展開がまるで違っていた。
△4四同飛成に私は▲3六桂と打つが、この辺りでは、楽観気分は吹き飛んでいた。
数手進み▲4四金△4二玉に、次の手が敗着となった。

第5図以下の指し手。▲6一銀△8二飛▲5二金△3一玉▲5四金△1九角成▲4三金△2一銀▲4二金寄△同飛▲同金△同玉▲4九飛△4六馬▲5七金△4八歩▲同飛△4七歩▲4六金△同竜▲2八飛△2四香▲2五歩△3九角(第6図)
以下、Fuj氏の勝ち。

第5図で▲5三銀△同角▲4三金打も考えたが、少し重い。代えて▲6一銀と打ったが、大悪手だった。以下△8二飛▲5二金に△同飛▲3二歩成が利くと思っていたのだが、▲5二金に△3一玉と逃げる手があった。▲5二金を打つ前に気付いたが、もう修正する時間がなかった。
Fuj氏はやはり△3一玉。▲4三金には△2一銀が当然とはいえ好手で、これで将棋は終わった。
いつもの私ならここで投げているところだが、相手がFuj氏では投げきれない。
第6図以下も未練がましく指したのだが、もう形作りどころではなく、駒をボロボロ取られて惨めな図で投了した。

局後、大野八一雄七段とOg氏が「あの将棋を負けたの?」と異口同音に驚いた。私はうなだれるばかりである。
大野七段が指摘するには、第3図からすぐに▲7一角でよし。
本譜△8六歩には▲8二角成と飛車を取ってよし。
▲6一銀に代えて▲4三銀△5一玉▲5四金で先手有利、とのことだった。
何だか寄せに入ってからは悪手のオンパレードで、先日の蕨もヒドかったが、本局もそれに準じるヒドさだった。
局後Fuj氏が「わるい将棋だったけど受け潰しました」とW氏に語ったので、クサッタ。私が勝手に転んだだけだと思うが、逆の立場になるとこういう言い回しになる。
将棋は、何がなんでも勝たねばならぬと痛感した。
かなり血圧も上がっているのだが、翌日はもう教室はないので、このまま終わると後味がわるい。もう指している人はいないのだが、私はOg氏に対局を申し込んだ。
7時を過ぎているので、持ち時間は5分と秒読み30秒。どう考えてもこちらが不利な設定だが、仕方ない。
私の先手で▲7六歩△3四歩▲6六歩。Og氏のお株を奪い、振り飛車を匂わせる。
対してOg氏が飛車を振る手はあったが、本局は大人しく△8四歩ときた。
私は四間飛車に構える。△1四歩に受けないと、Og氏は△1五歩と伸ばし、玉頭位取りを採った。私は▲4七金~▲2七銀~▲3八飛とし、袖飛車で迎え撃つ。慣れない指し方だが、ほかの指し手も分からなかった。
Og氏は7~8筋から攻めてくるが、私は角交換から▲8八歩で軽く受け流し、▲3五歩の反撃。
これもすぐにはうまくいかず、ごちゃごちゃした戦いになった。もちろんすでに両者秒読みで、私は時間がないと慌てるほうなのだが、Og氏とは読みの波長が合うのか、私もそんなにヒドイ手は指さない。とにかく、珍しく盤面に集中して指した。
最終盤になり、少しは優勢かもしれない、と考え始めたところで、Og氏が投了。また私はキツネにつままれたような勝利となった。

「うまく指されました。大沢さんはやっぱり強いですよ」
とOg氏は讃えてくれたが、どうなんだろう。Fuj戦の逆転負けを目の当たりにして、Og氏が緩めてくれた可能性はあった。「だいたい、(上手相手に)端歩を受けないで指す人はいませんよ」
この忠告は受けたほうがよさそうだ。
時刻は8時に近い。さすがにもう、食事である。今日は6局指して4勝2敗。強豪にも勝ってまずまずなのだが、負けた2敗が痛すぎて、負け越した気分だった。
食事の参加は大野七段、W氏、Og氏、Hon氏、Fuj氏、女性、私の7人。「ガスト」へ行った。
今夜は肉料理を食べる気力がなく、私はパスタを注文した。
食後はおしゃべり。例の話をOg氏にしたら、Og氏も「ポカ~ン」という感じだった。
10時過ぎにHon氏が退席したが、まだまだしゃべるのが私たちである。17日の忘年会で誰を誘うか議論になったが、私は不参加なのでどうでもいい話だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

12月3日の4時から男(中編)

2017-12-22 00:10:52 | 新・大野教室

第8図以下の指し手。△6六角▲4八金△同角成▲同玉△6六角▲5七銀△3九銀▲5八玉△4七金▲6九玉△7八金▲同玉△7五香(投了図)
まで、S君の勝ち。

第8図で先手玉に詰みなしと見ていたが、S君に△6六角以下、綺麗に詰まされてしまった。
だがOg氏を交えた感想戦では、二度目の△6六角に▲5七銀がわるく、▲5七飛合(参考図)があったという。

いやこの手は見えない。30秒将棋では思いつかない。
軽く検討するとしかし、この順も詰むや詰まざるやのところがある。また1回目の△6六角に安い合駒をする手もあって、時間があればいろいろ検討をしたいところだった。
激闘の末負けると、疲労が倍になる。まだ2局を終えたばかりなのに、私は早くもクタクタになってしまった。
3局目はHon氏と戦う。Hon氏も強豪だが私としては気楽に戦える相手で、オアシス的要素がある。
私の先手で、Hon氏の三間飛車。だが私は前局のS戦を考えていて、盤面が網膜に映っていない。Hon氏が穴熊でなく美濃囲いに囲っていたことさえ、だいぶ後になって気付いた。
「それは相手に失礼ですよ」
とOg氏。確かにそうで、目の前の将棋に集中しなければならない。
将棋は中盤で銀得になった私が、以後もHon氏の攻めを的確に受け、最後はHon玉を寄せて勝ち。お陰さまで癒された。

4局目はKom君と指す。昨日はKom君の右四間飛車に惨敗したが、今日はどうか。
Kom君は帰りの電車の時間があるので、今回は10分切れ負け。これは5分に比べてだいぶ余裕があるので、指し手が荒れることはあるまい。
序盤でいろいろ駆け引きがあったが、私はまたも中飛車に振る。
中盤、Kom君の猛攻が始まったが、私は丁寧に受ける。残り時間は私が6分余、Kom君が5分余。が、まだこれから一勝負というところで、Kom君が投了してしまった。
私はまだ難しいと考えていたのだが、投了後に数手進めると私の必勝形になっていた。
だが私は別の手を読んでいたので、まだ指し継いでいれば、いい勝負になった可能性はある。しかしKom君、投げっぷりがいいのは好感が持てるぞ。

5局目はFuj氏と指す。11月28日に逆転負けした将棋を私がボヤいていたから、W氏が手合いを付けてくれたのだ。
私は2局目の疲労を引きずっているのだが、指す。
私の先手で、▲2六歩△3四歩▲7六歩△4四歩。Fuj氏は居飛車党なので、ここからウソ矢倉になるのだろう。だが実際は、Fuj氏の雁木だった。
▲3五歩にFuj氏が△同歩と取らなかったので、▲3四歩△同銀▲3八飛。ここで△3三歩だったので、私はポイントを挙げたと思った。
しかしFuj氏が△3五銀~△3六銀と突っ込んできたのがいい勝負手で、こちらが劣勢に陥ってしまった。

第1図以下の指し手。▲4八銀△2五桂▲4六歩△3七桂成▲同銀△同桂成▲同桂△4四銀▲4八飛△4六歩▲同角△同角▲同飛△6四角(第2図)

▲4八銀△2五桂の次、私は▲4六歩と突いたが、苦し紛れ。以下△4六同歩▲3六歩△4七歩成▲2五飛△4八と進めば、と金が残ったうえ△1九角成もあり、後手が有利だったと思う。
本譜は△3七桂成だったので、桂得になった私が指しやすくなった。
▲3七同桂には△4六歩と指したかったのだろうが、▲6五桂△6四角▲5三桂成△同角▲4六角で先手有利。よって△4四銀は仕方ないところか。
私は▲4八飛と回り、▲4六同飛まで綺麗に駒が捌け、よくなったと思った。

第2図以下の指し手。▲4四飛△同金(第3図)

ここで▲4九飛と引いては、△3七角成で優位が吹っ飛ぶ。私は「ええぃま、いっちゃえ」と、▲4四飛と切り飛ばした。
△4四同金までの第3図は、先手の駒に角銀銀桂歩とあり、▲3七桂の応援もある。
私は「飛車を切ってから考えてる」と軽口を飛ばしたが、この将棋は勝ったと思った。
ところが…。

(つづく)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする