付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「YASHA 夜叉」 吉田秋生

2009-09-16 | その他フィクション
「同情って“同じ情”と書くのよね。つらさや哀しみ……寂しさを共有してその心に寄りそう。あたしは悪いことだとは思わない」
 それは人間に神様が与えた贈り物なのだとルー・メイの言葉。

【YASHA】【夜叉】【吉田秋生】【インフルエンザ】【沖縄】【バナナフィッシュ】【遺伝子操作】【バイオハザード】
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「異次元の女王~ノースウェスト・スミス」 C・L・ムーア

2009-09-16 | 宇宙・スペースオペラ
 熱線銃一丁を武器に太陽系の星々を渡り歩く無宿者のガンマン、ノースウェスト・スミスを主人公にした短編集の第2弾。これを訳し損なったと野田昌宏が悔しがったと訳者あとがきにありました。あとがきの冒頭4頁を費やして、野田昌宏の紹介と彼がいかにこのシリーズ(に登場するシャンブロウ)に惚れ込んでいたか、そしてそれなのになぜ自分が訳すことになったかを書き記しています。なんだかなー(笑)。
 毎回、怪しげな美女妖女に狙われて、いつも他人の助けか幸運によってかろうじて難を逃れるスミスは、とてもヒーローとはいえません。単眼の異次元の女王ジュリ、金星の歌姫ジュダイ、炎の美女イヴァラ、そして時を渡るセレス人……。
 この話は登場する奇々怪々な美の化身たる妖女を愉しむためのシリーズであり、松本零士のカラーイラストやさしえは見事にベストマッチ。そういえば、松本零士の初期SF作品もこんな感じの話が多かったから、本当に相性が良いのでしょうね。

【異次元の女王】【ノースウェスト・スミス】【C・L・ムーア】【松本零士】【地球の緑の丘】【シャール】【異次元の門】【滅びた都市】
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「塔上の奇術師」 江戸川乱歩

2009-09-16 | ミステリー・推理小説
「じゃあ、名のりましょう。びっくりしないように気をおちつけて聞いてください。ぼくはね、カイジン、シジュウメンソウです」

 名探偵・明智小五郎の助手は小林芳雄だけではない。『妖人ゴング』事件以来、明智の姪である花崎マユミも助手として事務所に住み込んでいる。
 そんなマユミに憧れて、なかば押しかけるように弟子になった中学1年生の淡谷スミ子と森下トシ子だったが、3人はある日、林の向こうに建つ洋館の時計塔に奇妙な人影を目撃する……。

 怪人四十面相が初っ端から名乗りを上げる比較的珍しい話です。まあ、宇宙人だろうが電人だろうが、結局、怪人四十面相ということは読者には丸わかりではありますが。
 雑誌『少女クラブ』に連載していたということもあって、明智小五郎のもう1人の助手・花崎マユミの他に、探偵志願の少女たちも加わっての怪事件です。ところが、活躍しないんですよね。少女探偵マユミさんが。
 冒頭に出てきて怪人にびっくり、続いて暗い庭で張り番していて警官に犯人と間違えられて取り押さえられて出番はおしまい。ひどい扱いです。そりゃあ、小林少年のキャリアにはかないませんが、これじゃああんまりです。思わず出番は本当にこれだけか再確認してしまいました。
 怪人四十面相に狙われた家に乗り込むのも、年ごろの少女がいる家なのにまず小林少年。マユミさんは庭で張り番です。最後に捕まっていた少女の身代わりとなって入れ替わるのも「少女のようなきれいな顔」の少年探偵団員です(まあ、マユミさんは18歳前後で中学生の少女たちとは頭1つ分背が違いますが)。それにイラストも3箇所ありますが、いずれも冴えない容姿。表紙のクリクリ目の小林少年の方がなんぼか可愛いという扱いです。少年探偵シリーズといえばまず柳瀬茂画伯だけれど、武部本一郎画伯の担当だったらもうちょい美人になっていたはず。ちなみにカット左は『塔上の奇術師』本編挿絵の山内版マユミ、右は『夜光人間』の柳瀬版。
 冒頭に出てきて、物語中途でチョイ役、大団円には出番無し……あんまりです。でも、電話番しか出番の無かった『仮面の恐怖王』事件の時よりはマシかもしれません。
 このあたりが戦後という時代だったのかもしれません。今なら、最低でも小林少年率いる少年探偵団と花崎マユミ率いる少女探偵団でどちらが犯人をつかまえるか競争する話になっていたことでしょう。『夜光怪人』事件ではもう少し活躍しているらしいので、こちらも近々読んでみることにします。

【塔上の奇術師】【江戸川乱歩】【柳瀬茂】【山内秀一】【村崎友】【花崎マユミ】【道化師】【テレパシー】【文字盤の穴】【探偵犬「五郎」】
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「飛べ!ぼくらの海賊船」 鷹見一幸

2009-09-15 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「人間ってのはね、じぶんの知らなかったことを知る、わからなかったことがわかる、そういうときに喜びば感じるようにできているとよ」
 荻平地区歴史民俗博物館の“センセイ”の言葉。

 小学6年の夏休みに東京から九州の山奥にやってきた少年が見つけた、隠された海賊船の秘密とは?

 『銀河乞食軍団黎明篇』や『でたまか』の鷹見一幸初のジュブナイル小説です。いや、油断ならないぞ。
 話としてはオーソドックスなジュブナイル小説。子供が元気なのはもちろん、登場する大人も一見怪しげにみえても根っこのところは良識ある社会人なので、安心して子供たちの冒険を追いかけられます。結果的に命令無視の独断専行がベターな選択だったとしても、最初から無謀ありきな話ではがっかりしてしまいますから。

【飛べ!ぼくらの海賊船】【鷹見一幸】【岸和田ロビン】【そなえよつねに】【来島十傑衆】【村上水軍】【安宅船】【ワンピース】
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「月は無慈悲な夜の女王」 ロバート・A・ハインライン

2009-09-15 | バイオシップ・人工知能
「人間というのものは、わかっている危険に立ち向かうことができる。だが、不可解なものには慄え上がるのだな」
 ベルナルド・デ・ラ・パス教授の言葉。革命の正否は仲間同士の意志の疎通をいかに図るかにあり、情報の流れを統制できる方が勝つのだ。

 文庫版で588頁というのは刊行当初は超大作という感じだったけれど、今となっては並サイズ。発表スタイルの変化と原稿料の支払いシステムのせいもあるだろうけれど、最近の作品はとにかく長すぎ。

 2076年、資源採掘と流刑の地として発展してきた月世界が、ついに地球政府に対して独立を宣言した。しかし、彼らは兵器らしい兵器を保有していない。
 知る者は多くなかったが、この反乱が成功するか失敗するかの鍵を握るのは、自意識を持った巨大コンピュータ<マイク>だった……。

 革命は始めることより、続けることの方が難しいのです。そして、革命そのものはあっさり終わるけれど、そのあとの内政や外交の方が難問山積みで、結局は事実上の独立戦争に突入してしまうという話でした。
 ハインラインが有名にした言葉「タンスターフル(There ain't no such thing as a free lunch)」が登場する作品です。タイトルは「月世界は厳格な女教師だ」という主旨の教授の言葉ですね。愚か者や卑怯者は生き残れないという話です。「mistress」は女教師と女王のどちらでも訳せます。意味的には「女王」より「女教師」の方が正確なのだけれど、そうするとまったく別の本みたいになってしまいますので、無慈悲な女教師……にしなかった訳者と編集部の選択は正解です。

【月は無慈悲な夜の女王】【ロバート・A・ハインライン】【地球虫】【ヤンキース】【竜騎兵】【独立宣言】【マスドライバー】
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「スター・パニック」 伊吹秀明

2009-09-14 | ミリタリーSF・未来戦記
「いまからきみは地球防衛軍の長官だ」
 17歳のアイドルが一日地球防衛軍長官になったちょうどその日に異星人襲来! 宇宙大名行列ともいうべき<天の轍>は行く手を遮るものすべてを無礼討ちしつつ進撃する。その行く手にある小さな星など彼らには虫けらの如く踏みつけるだけの存在だった……。
 一方、中枢コンピューターがアイドル・山口ロリエを太陽系統合作戦会議議長と認識してしまった地球防衛軍ODEは、なんとしてもこれから24時間をロリエを長官として乗り切らねばならなかった!

 人類文明圏の存亡を賭けた24時間の戦い(アイドル付き)。
 やたら日本人が目立つ地球防衛軍だけれども、これは北米が15年前の<天襲>事件で壊滅したことと、そのとき手に入れた異星のテクノロジーをコピーして使うのに長けていたからということらしい。なるほど!
 宇宙大名行列に宇宙御家騒動にアイドルとおふざけな話になるかと思ったら、艦隊戦闘シーンはきちんと描写しています。やっと太陽系に広がった人類文明が星間文明に挑む殲滅戦です。ここがおふざけだと死んでいった者が浮かばれません。だから、面白いんですよね。

【スター・パニック】【一日地球防衛軍長官ロリエ】【伊吹秀明】【新世紀シミュレーション】【宇宙由美かおる】【妖星ゴラス】【オッドマン仮説】【降伏の儀式】
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「オオカミさんとスピンオフ」 沖田雅

2009-09-14 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 スピンオフというより、スピンアウトといった方が良い気がしないでもありませんが、本編3巻の裏話から始まって本編終了の1年後までを舞台とし、サブキャラのバカップルを主役にした外伝の短編集です。グインサーガでいうと『七人の魔導師』みたいな感じ?
 今回は「傘地蔵」「かちかち山」「こぶとりじいさん」「舌切り雀」がモチーフでした。

「恋する少女はなにやったって許されるし、どんな格好だってかわいいのよ!!」
 裸エプロンに近藤さんというセッティングを進める宇佐見さんの宣言。

 ピッキングが得意なカタブツ少女の地蔵亜美さんと、心は青春17歳、見た目は爺の花咲さんの波瀾万丈の恋物語です。困った人たちだねえとニヤニヤしながら読んでしまいましたが、この巻だけでも愉しめる構成にはなっていますのでお試しに手を付けるにはちょうど良いと思います。

【オオカミさんとスピンオフ】【地蔵さんとちょっと変わった日本恋話】【沖田雅】【ボーイ・ミーツ・ガール】【避妊具】【ドラフト会議】【児童虐待】【裸エプロン】【お守り】【腹黒三人娘】
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「先輩とぼく」 沖田雅

2009-09-13 | 学園小説(不思議や超科学あり)
「この世に等しいものなどそうそうない。だから迷った時はその選択で得るものから失うものを引いた時、プラスになる方を選べばいい。マイナスでないということは失っていないということだ」
 平賀つばさ先輩のことば。

 わが家の最近のスマッシュヒットは『先輩とぼく』。美人で頭が良いけれど性格が悪くて変わり者の先輩と、優しくて料理上手な後輩の話。宇宙人とか幽霊は出てくるけれど、ネタ自体は取り立てて珍しいものは無いし、某ハルヒみたいにストーリーの構造的にスゴイというところもないのだけれど、なんか終始にやにやしながら読んでしまうタイプ。
 登場するキャラもクセがあるけれど、嫌悪感を抱くタイプじゃないのがいいんだな。唯我独尊とかオタクなキャラって、往々にして鼻につくじゃない?(2007.8/25)

 先輩は凰林高校一番の美少女だけれど変人としても有名で、かくしてぼくは聖夜だというのに先輩とふたりきりでUFOウォッチングに励むことに。
 それで甘い展開でもあればいいのに、いきなり宇宙人に誘拐されてしまい、その上宇宙人のミスから脳みそが入れ替わってしまうことに!
 「先輩がぼくでぼくが先輩で」という状況に、家族も学校のみんなも意外にあっさり慣れてしまうのだけれど……。

 文学少女の太宰治篇ではありませんが、この話の「先輩」も人としての感情が欠落しているタイプ。ただ、それを抱え込んで苦しむのではなく、客観的に観察対象として愉しんでしまうところがマッドサイエンティストの資質ありというところでしょうか。先輩の巻き起こし拡大させる騒動に振り回される元・少年には気の毒な話ですが、「先輩が好き」という点に代わりはありませんし、むしろ他人にはどうにもできない固い絆ができたのは幸運……だったのかな……。(2009.5/16)

 表紙イラスト他追加。(2009.9/13)

【先輩とぼく】【沖田雅】【乳酸菌飲料】【人格交換】【おたく】
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「サマーウォーズ公式ガイドブック」 角川書店

2009-09-13 | VRMMO・ゲーム世界
「(日本テレビ所属のプロデューサーの)伊藤くんのように実写もアニメも見る人が、しかも彼は中身を知っていても、5回も泣いた」
 高橋プロデューサーの証言。

 さすがにこれまでは買うつもりはなかった。
 フィルムストーリーに、キャラクター設定集に、スタッフインタビュー……。昔でいうところのロマンアルバム。劇場で買ったパンフレットが物足りなかったり、イラストを描くのに急いで資料が欲しいというなら別だけれど、そうでないなら半年先だか1年後に出るであろうDVDを待った方が絶対におトクだ。
 でもさ、行きつけの書店に「これがおすすめ!」とかポップ付きのスタンドで陳列してあるやつがいつまでも売れ残っていたら、誰かが買うしかないじゃないか! そうだろ!? あんたならどうする?

……などと開き直って購入した税別1600円のムックです。まあ、フィルムストーリーにこまごまと書き加えられていた解説は面白かったです。それから1つだけ気がついたのは、巻末に映画のエンドロールそのままに出演やスタッフなどの一覧が掲載されているのですが、劇場では取材協力あたりに名前が載っていた「防衛省 防衛研究所」がすっぽり落ちています。そこだけ気になりました。

 さて、民主党を核とした連立政権樹立で大騒ぎの9月9日。三流スポーツ紙が民主党の鳩山代表が夫人との映画デートで『サマーウォーズ』を観てきたと報じており、ご丁寧にも「なぜアニメ映画なのか。政治家が観る映画といえば、ヒューマンドラマか歴史スペクタクル、国家危機の絡むハリウッド映画とだいたい相場が決まっている」という永田町関係者のコメント付き。その記事のお馬鹿さ加減に笑わせてもらいました。実写映画だろうがアニメだろうが歌舞伎やミュージカルだろうが、良い物もある……けれど悪い物もあるんですよ。
 物事を表面的な枠組だけで考えるような人では、これからの政治経済は語れませんよ?

【サマーウォーズ公式ガイドブック】【サマーデイズメモリー】
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「メグレ警視の料理」 西尾忠久・内山正

2009-09-13 | 食・料理
「ご飯として炊いたほうがおいしいお米を、どうしてパイ地なんかに包んでしまうのか、いまだにわからないわ」
 ベルギー人の好きな米のタルトについての日本人の感想。

 フランスを代表する名探偵「メグレ警視」とその生みの親である作家ジョルジュ・シムノンの足跡を、料理をキーワードに追っていく旅行記。著者自身によって収蔵品が寄贈されたシムノン図書館を皮切りに、リエージュからアルデンヌ、リンブルグ、ナント、メグレの勤務地であるパリ、ブリュッセルと、シムノンやメグレ警視の故郷、通った学校、住んでいた街、買い物をした通り、引退した後の住まい屋などを見て回り、彼らが食べたであろう料理を食べて回ります。
 彼らの好物、お気に入りの酒、生の白アスパラガス、腸詰めソーセージは葡萄の枝で焼いて、手作りチーズや山ウズラのひな料理で悪魔ビールやシャンペンを楽しみます。
 原作からの引用も多く、カラーイラストも豊富で、なんて愉しく美味しそうな旅行記でしょうか。

【メグレ警視の料理】【西尾忠久】【内山正】【シムノン】【ベルギー料理】【シグネチャー誌】【パリ警視庁】【愛川欽也】【市原悦子】
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「となりにヴァンパイア」 湖山真

2009-09-12 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 携帯電話の付喪神ミコトに取り憑かれている草太は、妖異を取り締まる機関、いってしまえば妖怪相手の警察組織である“耳鳴坂”でバイト中。
 そんなある日、妖怪にカバンをひったくられた少女を草太は助けるが、彼女はいきなり草太の首筋にかぶりつき……

 料理上手で働き者の吸血鬼ルチヤが“耳鳴坂”の仲間に加わったシリーズ第二弾……第二弾? 1冊目を知らないぞ! またやっちまった……どこに2冊目と書いてあったん……? もしかして、「となりに」の「に」か!?
 人の噂や思いこみが新たな妖怪を生み出したり力を与えるという設定はグループSNEの『妖魔夜行』を彷彿とさせるし、妖魔と人間が共同で秩序維持の組織を設置するというあたりは菊地秀行の『闇ガード』的なフレーバーを感じるけれど、それらよりもコミック色が強いですね。なんというか、重い話なんだけれど暗さがあまり無いです。それが良いか悪いかは好きずきってレベルですが。

【となりにヴァンパイア】【耳鳴坂妖異日誌】【湖山真】【みかづきあきら!】【吸血鬼】【流行病】【狩人】【チェーンメール】
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「チムニーズ荘の秘密」 アガサ・クリスティー

2009-09-12 | ミステリー・推理小説
 ロンドン郊外のチムニーズ荘は歴史的な大邸宅であり、所有者のケイタラム卿が政府の高官にも顔が利く関係上、非公式に外国からの賓客をもてなすために使われることがしばしばであった。そのため、殺人事件が起きたとき、そこではバルカン半島の小国ヘルツォスロヴァキアにおける石油利権を解決すべくヘルツォスロヴァキアの王子や各国政財界の要人が集結していたのである。
 この事件の捜査を担当することになったバトル警視以下英米仏の探偵たちの前に姿を現したのは、最近になって南アフリカから帰国したばかりの旅行会社の社員アンソニー・ケイドだった……。

 クリスティーの初期代表作でスパイ小説っぽいやつでバトル警視もの。
 とにかく石油利権の争奪だの回顧録の秘密だの巨大なダイヤを狙う怪盗だのが入り乱れ、さらに主人公となるべきアンソニーが何を考えているかわからないキャラだけに、話がどこへ行くか最後まで分かりません。荒削りと言えば荒削り。でも、そこが面白い。
 それでも、続編の『七つのダイヤル』の方がわかりやすい性格の主人公なので、安心して読めるんですけどね……。

【チムニーズ荘の秘密】【アガサ・クリスティー】【回顧録】【秘宝コイヌール】【七つのダイヤル】【チムニーズ荘】
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「三ヶ月の魔法」 上島拓海

2009-09-11 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 ある日突然、松本市全域で不思議な現象が発生した。「意志による非接触動作」つまり身体が触れることなく思ったモノを動かせるようになったのだ。この城下町に住んでいた人だけではなく、たまたま立ち寄った人も含めて、誰もが持つようになった魔法の力。ただ1人を除いて。
 ただ一人、魔法を使うことのできない大町大五だったが……。

 もうひとひねり欲しかった。このネタだけで1冊は長い。超少女明日香みたいな話になるかと思ったらそうでもなく、あらすじを1行で書いたらネタバレしてしまうくらいの話。素材は良いけど惜しかった。

【三ヶ月の魔法】【上島拓海】【ほうき】【紅茶】
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「アルサラスの贖罪(1)~黒猫の家」 ディヴィッド&リー・エディングス

2009-09-11 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「この世のあらゆるものは売り物ですよ、殿下」
 オッソスの支配者アンディーヌに奴隷売買を持ちかけるアルサラス。

 幸運の女神に愛されている男、アルサラスは泥棒で、嘘つきで、殺し屋で、大ボラふき。だが、ここしばらくはツキに見放され、つい怪しい男の依頼を引き受けてしまう。遠く北の果て、<世界の果ての家>にまで行き、1冊の本を盗んでこいというのだ……。

 伝説の盗賊が1枚も2枚も上手の猫に弄ばれながら、使命を果たすために仲間を集めていくという……エディングス的に解説するなら「女神アフラエルに尻を叩かれるシルク」みたいな主人公の話。
 遺作となった『ドラル国戦史』が今ひとつで今回はどうだろうかと心配だったけれど、とりあえず滑り出しは好調。序盤のツキに見放された盗賊アルサラスの顛末はちょっと長すぎでだれかけたけれど、<世界の果ての家>に向かってからは一気呵成に物語が進みます。またもや世界の運命を賭けた、2柱の神の代理人による対決ゲームです。これもパターンですね。宿敵とみなされている相手を機会あるごとに「後腐れが無くなるから、ここで殺してしまおう」と提案するアルサラスを黒猫エミーが何度も却下するシーンはギャグですか? まあ、運命のゲームって面倒くさいのさとニヤニヤしながら読むのが吉です。
 全3巻ということで2巻は11月予定。楽しみです。

【アルサラスの贖罪】【黒猫の家】【ディヴィッド&リー・エディングス】【碧風羽】【岩塩抗】【黒猫】【お風呂】【のうたりん】【宗教の核心】【魔女狩り】
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「ヒトミ~グランプリからの風」 矢沢翔

2009-09-10 | スポーツ・武道
「私は風を受け止めているときが好き。なにか、こう、自分が鳥になったみたいで、気持ちが良くて」
 そういう人はライダーになります。

 夏休みに旅行に出かけたオランダで、高校1年生の瞳はダッチTT、世界グランプリに連れて行かれる。それが彼女とモータースポーツの出逢いだった。
 やがて未熟なロード・レーサーである輝明と付き合うようになった瞳は……。

 最初に講談社の新書ノベルスから刊行されたのに、いつの間にか講談社X文庫ティーンズハートになっていて、続編の『テルアキ~風のチェッカーフラッグ』もX文庫から刊行されて男性には手を出しにくくなったシリーズ。
 ちょうど『バリバリ伝説』を読んでいた頃で、バイクものは登場人物が事故で死なないと話が盛り上がらないのか!?と怒った記憶もあります。若かったなあ……。

【ヒトミ】【グランプリからの風】【矢沢翔】【バイク】【江口寿史】【サーキット】【熱い風】【カタナ1100】
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