この本は、読まれた方が多いだろう。今も、本屋に平積みになっている。
ほとんどの人と同じように、私も、NHKの放送が始まって、この本の存在を知った。
この本を読んで私が共感するのは、水木さんの漫画が世間に受け入れられていく過程と、昭和の都下の風景だ。
水木さんは、世代的には親の世代だが、田舎から、わけもわからず都会に出てきて、苦労する姿は、親の姿ともだぶる(私の親は、福島と、金沢出身である)。
今週は、悪魔くんのTV放映の場面になっているようだが、まさにその時の視聴者ど真中が我々世代であった。
特に漫画マニアでもない私が、この悪魔くんを見たのは、当時、特撮物や、怪奇物がはやりだったのだ。ゲゲゲのアニメが最初だったら、見ていたかわからない。
その中でも、悪魔くんは、異色だった。テーマソングは、今でも覚えているが、水木さんご自身の作詩だそうだ。
『エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、回れ地獄の魔法陣!』
そんなに怖かった記憶はない。赤影とか、怪奇大作戦とか、結構、もっとおどろおどろしい番組があったように思う。
もちろん、水木さんが原作者だったなど、知るよしもない。
その後、ゲゲゲもTVデビューを果たし、長期ヒットになるのだが、私の頭の中では、てっきりゲゲゲが先だと思っていた。
本書によれば、ゲゲゲを先にしようと思ったが、悪魔くんが先になってしまったようだ。もしかすると、我々世代のブームを勘案しての決定だったのかもしれない。
もう一つのポイントは、昭和30年代から40年代の、質素な、でも何故かみんな明るい未来を思い描いているあの空気だ。
調布にお住まいだったそうで、私も当時その隣町に住んでいて、深大寺公園には、よく親に連れて行ってもらった。回りは、畑だらけで、養豚場が臭かった。家は、板葺のボロ屋で、道路はあちこち工事中で、泥団子で、戦争ごっこをして、よく怒られた。
派手な物語ではないが、広い世代が共感できる物語だからこそ、そして、前向きだった日本を思い起こさせるからこそ、じわじわ人気が続いているのだろう。
水木さんご夫妻ありがとう。