CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】ヒルビリー・エレジー

2018-09-29 21:20:12 | 読書感想文とか読み物レビウー
ヒルビリー・エレジー  作:J.D.ヴァンス

アメリカの貧困白人、その出身である著者が過ごした世界、生活と
そこから脱出し成功した体験を綴ったものでした
ドキュメンタリのようでもあるけど、私小説と判断したわけだが、
時折、ここが問題であるという提起も含まれていて
なかなか読み応えのある一冊でありました
面白かったが、不思議な世界ともいえる

アメリカでは、トランプ旋風が起きたときに
この本が注目を浴びたのだそうで、彼の支持層である
貧困白人の生活が赤裸々に語られていて、また彼ら独特の文化、
読んでみれば、西部劇的といえばいいのか、
身内贔屓の強さと、粗暴という言葉が柔らかく聞こえるような暴力性というか
気性の荒さが家庭内に物凄くはびこっていて、
まぁなんといったらいいか、日本でもこういう家庭あるなぁと
自分の育ちをかんがみて、学区内の粗暴な同級生を思い出すような
そういう気分になったのであります
もっとも、荒々しすぎて、そのスピリットは敬意に値するというか
凄いと思えてならんのが面白いところなのであるけども

そんなわけで、一種ギャグではないかというくらい
いかにもアメリカの田舎者という典型にあたろう、
口を開けば「ファック(クソ)」がつく言葉をあげつらい、
殺すといえば本当に殺し、
身内をバカにされれば襲い掛かり、
家庭内のいざこざはよそ者に決して言わないと、まぁ、なかなかのものでありました
それを体現するかのような、お爺さんとおばあさんに
著者は育てられていて、そのスピリットも受け継ぎつつ
さりとて、その貧困の中にとらわれずに、
成功するためには勉強と努力が必要だという
もっとも大切なことを教えてくれたという
これは、こういう定番の映画でも作ったら
いまどきのアメリカでは大当たりするんじゃないかと思うような
なかなかステキな家庭っぷりが堪能できたのでありました

ただ、それをバカにするでも、笑うでもなく、
純粋に、本当に大切なこと「学ぶこと」「バカにされたら怒ること」と、
学習と自尊心、その二つについて一つの見解を示していたとも思えるし
むしろ尊敬できると思えてしまうのでありました
ただ、暴力で解決するというか、まぁ、なんだろう
その粗暴性を最終的に我慢できたというシーンが描かれていて
印象的な一文ではあるのだけども、
なんとも寂しいではないが、不思議な、その生き方もひとつあるが
なぜだか、今にはあわないそれだねと思わされたりしたのでありました

アメリカに関わらず、田舎物というのは世界的にそういうもの
あるいは、そういう人たちを田舎物と呼ぶのかもしれないなと
自身にも当てはまりそうな危うさを覚えたりしながら、
海兵隊での訓練が自尊心を呼び覚ませてくれるよい機会とできた、
それは著者の凄いところでもあろうし、
そこをドロップアウトして、とやかくいうというのもまた、
この層、貧困白人の特徴でもありと
なかなか悲しいというか、成功とは何かを考えさせられる
彼らの何が悪いのかというのも語ることができない
そんな風に思ったりしたのでありました、面白かった