CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】ある男

2019-02-28 23:44:29 | 読書感想文とか読み物レビウー
ある男  作:平野 啓一郎

タイトルの通りといってしまってもいいのかもと思うのだけど、
人間、その人とは何によって定義されるものか、
戸籍や、過去といったものが、人格をどのように形成しているか
そんなことを考えさせられる物語でありました

死んだ男の名前、戸籍は、まったく別の男のものだった

ただの事故死だと思っていたのに、
その人を定義づけるものが急速に失われ、
さりとて、その触れ合った人たちの記憶には、
素直で純朴ともいえる人物像が浮かんでくる
その過去や、秘密を少しずつ解いて行くという物語なわけなんだが、
戸籍ロンダリングや、背乗りなんていうことが、
横行している世界を見せつつ、
どうしても戸籍を交換したいという要望があり、また、売り渡したいという人もいて
このビジネスが成り立ち、そこに関わる人物の
露悪的なまでの胡散臭さが、物凄い印象的で、
物語全体のなんともいえない暗さではない、闇のようなものを
感じさせるのでありました

いくつかの問題も同時に取り扱いつつ、
他人が、ある種のレッテルで判断するということの恐ろしさ、
それがキャラクタを作り上げていて、
偽りの過去の話を聞いていたことが愛を育んだとして、
その嘘が明らかとなったとき、愛していたのは誰のなんだったのか
そんな疑念すらも浮かべつつと
なかなか、考えさせられまくる内容だったのでありました

すかっとする物語とはとても呼べないものだけども
心に残るものがあったと思うのである