CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】銀しゃり抄

2013-05-29 21:53:24 | 読書感想文とか読み物レビウー
銀しゃり抄  作:稲垣瑞雄

小説というジャンルにしてみましたが、
内容は、どっちかというと随筆であります
私小説という形ともいえるんだろうか、
語り口が江戸っ子調子で、落語を聴いているというか、
むしろ、小沢昭一先生の名調子のアレ、
あんな小話にような雰囲気の文体と内容でありました
なかなか、面白かった

内容は、鮨(すし)が好きで仕方ない
そういう作者が、鮨と、すし屋を書き綴る
そんな内容であります
いろいろな板前さんが登場し、すしのここがこうだと
そんな講釈がいくつかかかれているわけですが、
鼻につくほどではなく、なるほどなぁと思いつつ
まあ、好きなものを語る文章というのはよいもので、
なんだか鮨食べたいなと思わされるそれでありました
いい鮨なんて、なかなか食えないねぇ

昭和のはじめが舞台といって差し支えない
そんな按配でありますので、
正直描かれている風景は、なんというか
もうひとつ浮かばないのでありますが、
親父よりももうひとつ上くらいの世代
それらが見たんであろう景色が
いきいき描かれているという点において、
なかなか読み応えがありました
ステキであります

食い物であれこれ講釈をたれるのは
あまりよろしくないなと、池波先生よろしく思ってましたが、
この文章では、どんだけ鮨が好きかということが
描かれているという按配なので、これはこれ、
確かにちょっと、趣味というか、こうだと決めてかかる部分が
ひっかかるのではありますが、それはもう、
老齢のアレだとしておけば、なんら気にならないと
そんな酷いことを思ったりしながら読むのでありました

だんだんと、読み進むにつれて、
この作者の生い立ちなんかも織り交ざってくるのでありまして、
それがなかなか破天荒で面白いのではありますが、
昭和初期風俗めいた人間模様はさらっと流して、
やっぱり、もっと鮨にクローズアップした内容で
描き描いてほしかったなぁと思ったりなのであります
どうにも、何かを褒めたりのときに、
何かしらをおとしめすというか、何か、対比が出てしまうのが
ちょいと残念でありました

とはいえ、本からおなかをすかすというのは
よい経験だと、ステキな本だったとメモっておくのであります


最新の画像もっと見る

コメントを投稿