森の中の一本の木

想いを過去に飛ばしながら、今を見つめて明日を探しています。とりあえず今日はスマイル
  

「ペンギンは空を見上げる」を読みました。

2024-03-05 16:21:37 | ユーモレスクを聴きながら(book)

2月に読んだ本の感想です。

次に何を読もうかと思う時、ブログで読んだ皆さんの感想や紹介を参考にしたり、またはツイッターでの評判などを参考に選ぶことが、最近では多いかもしれません。私の場合は、映画の原作と言うのもかなりあります。以前は本屋さんや図書館の棚の間をふらふら歩き、インスピレーションで探すと言うこともしていたと思いますが、今はそれは意外と稀です。本屋さんにあまり行かなくなって、ネット注文で本を買ったり、または図書館では予めの予約が多いからです。

だけど本屋さんや図書館でのウロウロは、宝探しのような面白さがあって楽しいですよね。

これを書いている途中で、その楽しさを思い出し、また本屋さんに行きたくなりました。

 

しかし本との出会いは、意外なところからもありますよね。

実は子供の国語の教科書からとか、またはテキストの問題の文からとか。

もちろんテキストなどは抜粋がほとんどですが、この文の前後の物語はどうなっているのだろうかと、凄く気になるものがあり、本を知るツールとして侮れないものがあると思います。

 

この本も、中学生の受験用テキストに載っていた文から気になり選んだ1冊でした。

風船ロケットを打ち上げたい6年生のハル。その費用をおじいちゃんに借りたいと申し出ます。

気骨のあるおじいちゃんは、孫にお金を貸す事は出来ないと言います。ハルは資金を調達できるのか‥‥というよりも、その小学生にしては大掛かりなロケットは果たして成功するのか気になりました。その場で検索して、そのテキストを解いている中学生に教えてあげようと思いました。

あらすじ

【「おれはNASAのエンジニアになりたいんだ」それが彼の将来の夢。小学六年生の佐倉ハルくんは、ひとりで風船宇宙撮影を目指しています。できる限りおとなの力を借りず、自分だけの力で。そんなことくらいできないようでは、NASAのエンジニアになんて到底なれないから。意地っ張りな性格もあってクラスでは孤立、家に帰っても両親とぎくしゃくし、それでもひたすらひとりで壮大な目標と向き合い続けるハルくんの前にある日、金髪の転校生の女の子、鳴沢イリスが現れました。教室でなくなったうさぎのぬいぐるみを一緒に捜したことから、妙にイリスになつかれたハルくんの日常は、次第に賑やかなものになってゆきますが……。生きてゆくにあたって“夢”というものは、光り輝く道標でしょうか、それとも自分たちを縛る鎖でしょうか? ハルくんの、夢と努力の物語。奮闘するこの少年を、きっと応援したくなるはずです――読み終えたあとは、もっと。】→平成30年度 第34回坪田譲治文学賞 | 岡山市 (city.okayama.jp)

そのリンクしたページの選者のコメントの中に

【思いがけないどんでん返しもあり】とありました。

また誰かのネタバレなしの感想の中に、『最後にこの小説がこのタイトルになった事が分かる』とあり、何かこの物語には更なる秘密の匂いがしました。

と言うわけで読んでみました。

ネタバレなしです。

数ページ読むと、「もしかしたら」と言うこの物語が最後まで明かさない秘密が分かるような気がしました。

何の説明もないし、だけれど嘘もない書き方で、それでも「もしかしたら」と匂わせる、上手い書き方だと感じました。

世の中には「映像不可」と言う小説があると思います。

大がかりなセットや小道具に凝らなければならないとか、CGがむつかしいとか言うのではなくても、この小説は、その「映像不可」だと私は思いました。

 

どんなにハルとイリスと幼馴染の少年の友情の物語が良くても、また彼らの冒険譚が良くても、それで映画化しようと思って、その部分を取り上げてシナリオを描き直したとしても、それは若き作者が物語以外に仕込んだアイデアがつぶれると言うものです。

お話は夢と冒険以外にも、深刻ないじめの問題や、思春期に入ろうとしている少年少女の親との関わり合いと多様な面白さがありました。

夢と未来は無限に広がっていたように思えたそんな時代の風を感じさせる、そんなお話だったと思います。

 

 

 

・・・


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「硝子の塔の殺人」

2023-11-25 18:06:33 | ユーモレスクを聴きながら(book)

次に何を読もうかなと思う時、意外とブログや✕(ツイッター)で情報を拾うことが多いです。

みんなが褒めている「硝子の塔の殺人」、読みたくなりました。

硝子の塔と言う特殊な建物、その立地環境。そこで起きる密室殺人。探偵ではなく名探偵であるということに拘る探偵と、医者と作家と編集者と刑事、占い師メイドに執事にコック、そしてオーナーである科学者でありコアな推理マニアの男。

一日目、二日目、三日目そして最終日と言う構成でなるこのミステリーは、本当に面白かったです。

ただ、三日目までの起きた殺人の説明部分では、私はちょっと首をかしげる部分もあったのです。

まるでそれは、「金田一少年の事件簿」の「便器が上がっていたから男」と言う推理並みだなと感じさせるような部分が・・・。

 

だけどそれもちゃんと最後には拾ってありました。(注:便器の話は出てきませんからね。滑らせたと言うあそこです。)

 

私はけっこう騙されました。

確かに面白いし、ドラマにしたらなかなか見られそうなお話だけれど、なぜ推理マニアの皆さんが、このチープなお話を絶賛するのか分からなかったからです。

(だけどこの「チープなお話」と言う部分が、私には意外と面白かったのです^^

本当はそのお話の続きが気になりました。)

そしてその謎は「最終日」を読むと分かるのでした。

この「チープなお話」を丸ごと包み込むもう一つの大きな物語がそこにはあったからです。

人の作品を「チープ」などと評して、なんとも失礼な感じですが、そこは作者も別の言葉でそのように評しているので、かまわないことだと思います。

(追記)だけどやはり少し説明足りずで、失礼マックスだったかと読み直して思いました。つまり本当はその続きが気になったお話自体に秘密があるのです。そこの部分を名探偵や推理作家や推理マニアの医者たちは、違う言葉で評しています。

実際の推理マニアの方々が絶賛するミステリーが完成するのが、起承転結の結に当たる「最終日」なのですね。

 

私は国語の長文や数学の文章題と解くときには「たいがいはその文章を読みながら、予測し推理しているものだよ。」と子供たちにいう時があります。

ミステリーを読むときも、実は多くの人が同じようなことをしているのではないかと思います。

この予測の中に、実はこの「最終日」で語られた物語は入っていたと思います。

「思ってた通り」と言うやつです。

もちろんすべてではないですが、つまり真犯人は誰か程度・・・。

それでも面白さには遜色はなかったです。

 

それでやっぱりと確認したことがあるわけですが、つまりミステリー小説と言っても、その面白さを感じさせるのは動機を含めてのドラマ部分であり、そしてキャラの魅力であり、その者たちの生き生きとした会話なのではないかと。

この名探偵に拘る探偵、碧月夜の推理小説の解説は本当に面白かったです。

それで私は次に読む本を決めました。

 

 

次に読もうと思っている本です。↓

 

 

こちらも要チェック。↓

 

 

中学生時代、私はアガサよりも先にエラリー・クィーンに嵌っていました。

ちょっと懐かしかったです。

 

 


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「CONTACT ART 原田マハの名画鑑賞術」

2023-08-20 00:26:55 | ユーモレスクを聴きながら(book)

8月12日に読了。

wowowの「CONTACT ART~原田マハと名画を訪ねて~」と言う番組が好きです。

ランダムで放送するので見逃しも多いのですが、とっても楽しい番組です。

それが本になったもの。

「ARTは友達。美術館は友達の家。」と言う、彼女の言葉が好きです。

好きな画家のお話も面白いのですが、それと共に「友達の家」である美術館回りも面白いと思います。

 

確かに「島根県立美術館」や「福岡市美術館」には簡単には行けないと思います。

だけど「長野美術館」や「山梨県立美術館」には、決意すれば行くことが出来ると思うし、思っていれば「愛知県美術館」や「豊田市美術館」には、いつか行けるかもしれません。

それらの美術館にいつか訪れて、彼女がその絵画から受け取ったメッセージを感じてみたいです。

メッセージと言うのは、例えばグスタフ・クリムトの「人生は戦いなり」と言う絵画からは「『強い』は『美しい』と同義語である」とか。

いちいち頷いてしまいます。

絵画を愛する人には、たまらない1冊だと思います。

 

 

 

この本を読み終わったころ、何かで、またwowowで再放送することを知りました。

これからだと8月21日からチェックです。こちらで確認してみてください→CONTACT ART~原田マハと名画を訪ねて~ | 情報・バラエティ | WOWOWオンライン

CONTACT ART~原田マハと名画を訪ねて~ シーズン2 | 情報・バラエティ | WOWOWオンライン

 

《以下は私的メモで、昨晩には書かなかった追記です。》

これから読んでみよう、見てみようと思われる方は気を付けて。単なるメモですが、ある意味ネタバレしています。

・モネ「アヴァルの門」島根県立美術館

・クールベ「波」島根県立美術館

・ミレー「種をまく人々」山梨県立美術館 →絶対に行きたい&見たい !!

・ドービニー「オワーズ河の夏の朝」山梨県立美術館

・ダリ「ポルト・リガトの聖母」福岡市美術館 →福岡に行くことは簡単な事じゃないかも。でも今まで何となく避けてきた「ダリ」。心にとどめておくことにする。

《全身全霊で闘ってこそアーティストだ。》

・ウォーホル「エルヴィス」福岡市美術館

→以前森ビルで「ラファエル前派展」を見に行った時、その隣で「アンディ・ウォーホル展」をやっていました。その頃、あまり興味もなかったので帰ってきてしまい、のちに後悔しました。友達はその逆で、やはり後悔していました。チャンスがある時は「食わず嫌い」は止めて見るべしってところですね。

《受け止める誰かがいてこそアートになる。》

・クリムト「人生は戦いなり(黄金の騎士)」愛知県美術館

→多くの人が熱狂した「東京都美術館」にての「クリムト展」。私は行かなかった。意外と食わず嫌いが多い ?
でも焦らずゆっくり行く予定^^ それにエゴン・シーレを受け入れた私には、もうクリムトを嫌う理由がないからチャンスがあればぜひこの場所で見てみたいものです。

《『強い』は『美しい』と同義語である》

・シーレ「カール・グリュンヴァルトの肖像」豊田市美術館

→「国内でシーレの油彩作品が鑑賞できるのは同館のみ。短い活動期間の中で残された貴重な一作。」だそうです。ぜひ行きたいですね。今年の3月に開催された「エゴン・シーレ展」は「レオポルド美術館」のものだから、たぶんその絵は見てないはずだから。→「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展」

 

なんか疲れた(笑)

この続きは番組の方を見ながらか、または手元にあるメモを見ながら、また気まぐれに追記することにします(;^_^A




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名倉有里「夕暮れに夜明けの歌を 文学を探しにロシアに行く」

2023-08-11 14:41:26 | ユーモレスクを聴きながら(book)

(トップ画像は記事には関係ないです。8月2日の空です。)

 

7月に読んだ本の感想です。

この本を「ツイッター」の「ツイート」で教えてもらいました。教えて戴いた時には、なんか今の悪の秘密結社のような名前ではなく「ツイッター」でしたのでそのまま書きますね。

この本を教えて戴けて、「ありがとう~ツイッター」と私は言いたくなってしまいました。

 

この作者の名倉有里さんは1982年生まれ。

私は、そんなところにふと本の内容とは、少し違う感想を持ってしまうのでした。

もしも私の最初の子供が普通に生まれてきていたならば、この人と同じ学年だったのではないかー。

 

私は40代半ばの頃、何か特別なことをしたわけではありませんでしたが、ふつふつと心の底から沸き起こってきた感情がありました。

それは「とうとう我らが時代が来た。」と言うものだったような気がします。時代を動かす中心の年代になったという自負が、そこにはあったと思います。

しかしそこから時が進んだからと言って、ネガティブな気持ちになってもう私は片隅の人などとは思いませんが、やはりその40代の頃とは違うし違っていいのだと思うのです。そして彼女のような人の文章を読むと、次の時代を担う人がいる安心感のようなものを感じたのでした。

 

そしてまた、私はこの若き人から「学びの精神」と言うものを学んだように感じました。

好きなものを学ぶとき、それらを愛して全身全霊をかけて勤しむ彼女の姿に強い衝撃を受け、自分の中に反省を促すものがありました。

 

それにこの本は情報の宝庫です。

この本は図書館で借りたので、ロシアの音楽や本の情報にメモを取ろうとしましたが、きっと音楽の方は後からチェックをすることはないなと思いました。また文学の方は、途中で後ろに資料が載っていたのでメモはいらないと思い込んでしまいました。

ところが昨晩、たまたまメモを取っていたアクショーノフの「クリミア島」と言う作品を画像保存してあったそのページで確認をしようとしたら、載っていないではないですか。

「えっ、なんで ?」と思い、よくよくその画像を見直してみたら「日本語に翻訳されているもの」と書いてあったのです。

彼女が本の中で紹介してくれたお話は、非常に興味深いものでした。アンドレイ・クルコフの「灰色のミツバチ」も同じです。検索さえ苦労しましたが、それを読むには、彼女の論文が載っている専門の本にたどり着かねばならず、今の私にはそこまでの熱情はないので、今は諦めて、いつか彼女が翻訳して本にしてくれることを望むばかりです。

 

「学びの精神」とか日本語に翻訳されてない本の話などを先に書くと、何やら堅苦しい感じを感じさせてしまったかもしれませんが、決してそんなことはなく読みやすい文体で、彼女のロシアでの日常に引き込まれます。

そしてその生活にさりげなく織り込まれている、ロシアの突然人がいなくなると言う日常や、今のロシアと言う国の問題点などが見え隠れしているのです。そしてそこに綴られている友情や、そして師弟愛なのかそれともそこには違う感情があったのかが切なく綴られていたドラマチックな物語に、泣き虫Kiriyは思わず涙してしまいました。

ドラマを愛する私はまた、この本がスペシャルドラマにならないかなと願ってしまいました。

確かにその願いは難しいことなのかもしれません。

だけれど、この本を読んだ読書人の多くは、最近の読んだ本のベスト10にこの本を入れている人が多いように感じました。

 

強くお勧めできる本だと思います。

 

 

検索でウロウロしていたら、作者のツイッターでのアカウントを見つけました。お名前で検索したら見つかります。

そこで彼女が日経新聞の水曜日の夕刊に「プロムナード」と言うコラムを載せることが分かりました。

星子さんが日経新聞を取っているので、真夜中にもかかわらず「送って」と言うと、これもまた真夜中にかかわらずすぐに送っていただき読みました。

そこに載っていたヘルマン・ヘッセの「ガラス玉演戯」は読む本のリストにさっそく入れました。

・・・・


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上大岡トメ「ずさんな家計を整えました」

2023-07-24 02:36:46 | ユーモレスクを聴きながら(book)

(画像は記事とは関係はありません。マンションの向日葵です。)

 

7月1日読了。

 

 

これ、「コミックエッセイ」と言うもので、開いてみたら漫画と文で綴られたエッセイでした。

主に漫画だったので、あっという間に読み終わり、最初の感想も「もっと若い時に読みたかった本だな。」と言うものでした。

要するに、ライフプランからお金を考えると言うものが印象に残ったからだと思います。子供の進学や夫の一回目のリタイアなど、かなり過ぎてきてしまいました。また、私の方が作者よりも少々と言うか、かなり年上ですでに学んできてしまった事が多かったからともいえるでしょう。

 

これは、本の感想ではなく、私の事ですが、家計簿をスーパー主婦の様につけ続けると言うのは、私にはやっぱり無理なことなんです。

だけど経験から言うと、あれは極まれにちょっと頑張って、1か月でもつけると、のちの数年は勝ったようなものです。

要は自分の家の、お金の流れとだいたいの予算が分かれば良いのですよね。

生活なんかが変わったときには、ほんのちょっと頑張って1か月くらいは、大まかでも良いのでつけた方が良いのかと思っています。

「その時がまさに今」のような気になっている私なので、それで、この本に手が伸びたのです。

実は私、今年の目標と言うか「めあて」と言うか、私的スローガンの一つは(すぐ、そういうのは作るの^^)、

「守銭の民になる」と言うものだったのです。

「守銭奴」はお金の奴隷でしょ。でも守銭の民は、お金を正しく守る人。

言葉ってちょっと大切で、お金の流れを意外と意識していました。

(でもここのところ、少々忘れていたかも。反省)

 

また本の感想に戻ります。

それで、最初は上に書いたような感想だったわけですが、もう一度手に取ってみたんです。パラパラとページをめくると、世代が合わなくても、またはライフプランの残りが少なくても(涙)、役に立つことが書いてあるなと思いました。

上手な家計管理のポイントは「特別出費の見直し」。

確かに、子供進学のお金はすでに無用でも、今度はお葬式の事なんかありますでしょう。

もちろんそれは予定には書き込めないことですが、欄外に書いて、しっかり向き合って考えていかなければならない項目です。

また医療費も・・・・。

 

一つ一つ丁寧に、特別出費の項目にも向き合うことは大切ですよね。

また年二回の通帳チェックで、家計の収支をつかむというのは即やってみようという項目でした。

(ある年の12月末の通帳残高を全部足す。→(A)翌年の7月1日の残高を全部足す。→(B)

A-B=我が家の収支)

でもタンス貯金のへそくりはこの場合どうなるのかな・・・・・なんてくだらないことを思うワタクシ(;^_^A

 

この本は、作者の経験談や思い付きで書いているのではなく、ファイナンシャル・プランナーの方に話を聞いて書いているので分かりやすく為になりました。

40代、もしくは50代の前半の方が読めば、私の三倍は役に立つかと思いますが、それは私が勝手に思っただけです^^

 

この方の他の作品も面白そうですね。

 

 


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「小さなひとり暮らしのものがたり」みつはしちかこ

2023-06-12 14:40:23 | ユーモレスクを聴きながら(book)

若い頃の結婚する前、小さな私と背の高い夫殿が歩いていると、近所の人から

「チッチとサリーみたいね。」とよく言われました。

私たち夫婦も結婚してから、まあまあの年数が経ってしまいましたが、その漫画「小さな恋の物語」は未だに続いていて、作者のみつはしちかこさんも82歳になられました。

 

私は最近、年齢的には立派なおばあさんの明るいエッセイを読むのが好きになっています。

昨年は田村セツコさんの本に嵌っていたと思います。嵌ると言っても3冊ですが。

田村セツコさんの本を二冊

「人生はごちそう」と「知識ゼロからの日本絵画入門」

 

「年齢的には立派なおばあさん」などと一見失礼な言い方ですが、わたしは「おばあさん」にネガティブなマイナーなイメージは持っていないので、やはりある程度の年齢になったら、その言葉も自然に受け入れたっていいのではないかと思っています。

80を過ぎても現役で、自分の考えをしっかり持っているなんて、私から見れば、それこそがキラキラしているように見えるんですね。

80歳という年齢は、残念ながら誰でも迎えることが出来る歳ではないのだと、最近では思っています。だけどもしその年齢を迎えることが出来るのならば、「いつか行く道」です。そのいつか行く道でキラキラしている人の言葉を敢えて聞いてみたいと思うのは、普通の感情だと思います。

 

みつはしちかこさん、いろんなものに片思いをしながらときめいて生きていらっしゃいます。素敵です。

だけどそんな彼女にも、鬱という病気と闘う日々があったりしたのです。

 

その病気にもうまく付き合いながら彼女は、日々に感謝しながら過去や今を大事にしていました。

 

印象深かったのは、彼女と手塚治虫氏のエピソードかもしれません。

それを読むと、ますます手塚氏の事が好きになってしまいました。神様のような存在だったのに、気さくでファンにも優しく、そしてマメな人だったのだなと分かるのです。

サイン会でファンの人のリクエストに応えて、さらさらとイラストを描いて渡す氏の様子が書かれており、私もそんなサイン会に参加したかったな心から思いました。

みつはしさんは新作が出ると、親しい人たちに本を贈呈するのだそうですが、手塚氏からの温かいお返事、そしてそれが最後の手紙になってしまったお話は、さらに印象的でした。

家宝なのに、今それがどこにあるのか分からないという点も含めて^^

 

また「出来ないことはできないと降参したっていいんじゃない。」という考え方にも新鮮な印象を受けました。

日々進歩していってしまう日常で、取り残されていろいろな事を「やらない人」が結構周りにもいませんか。「やれない」のではなくて、最初から「やらない」のです。その「やらない」というのも実は「やれない」の一つなんですよね。

なんだかそれは情けない事のように感じて、自分はずっと頑張っていきたいと思っていました。おおむね、他の人の著書を読んでも「頑張っている」という姿に共鳴し、勇気を貰ったりもするのですが、みつはしさんのはちょっと違うような気がするのです。

一言で言うと、なにげに「ゆるい」。でもその「ゆるさ」がたまりません。

それはもしかしたら、鬱という病気で苦しんだ方のある種の悟りかもしれません。

一人暮らしになったときに、一軒家からマンションに引っ越した時にかなり捨てたからというのもあるかもしれませんが、「断捨離」はしないとはっきり言っているのもいい感じです。

「過去のことを悔やまない 未来の事を心配しない」

「老後ではなく まだ老中だと認識して暮らす」

励まされますね。

 

「想像の翼を広げて 毎日を輝かせる」

深く共鳴します。

 

今日も雨。

楽しい雨の日を ♪

 

 

 

(6月1日に読了)

・・・


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「介護ど真ん中 ! 親のトリセツ」

2023-06-10 01:49:04 | ユーモレスクを聴きながら(book)

かつてカータンさんのブログの愛読者でした。だけど彼女がブログを書く場所を変えた時から、あまり訪問はしなくなっていたのです。

だけどある日、ずっと彼女のファンだった友人が、今のカータンさんの介護生活の事を教えてくれたのです。

検索して、この本を見つけました。

ぜひ読みたいと思いました。

 

もしもこの本を数か月前に読んでいたら、私はそんなには感情移入はせずに、カータンさんのおうちの出来事として、もっと客観的に読んだのではないかと思いました。

だけど今この本を読むと、いちいち状況が見たかのように分かるのです。

そして役に立ちました。

 

彼女のお父さんは目の病気で老いてから失明してしまいました。

それまで面倒を見ていたお母さんが認知症になってしまったのです。

そこから姉妹の奮戦記が始まります。

私の父は10年以上前に亡くなってしまっているわけですが、それでも施設に入るお話は参考になりました。

 

コロナ禍での施設に入所した父と、その家族の関わり合い方にも深く胸を打ちました。

 

私も常々思っていることですが、認知症の人との関わり方は、少し突き放して見てみると、悲劇ではなくまるでコメディの様にも感じるなということなんです。

 

カータン家のお母さんとお父さんの介護も、明るく元気な介護で、いろいろと声を出して笑ってしまいました。

 

だけどこの先の事を書けば、大いなるネタバレになるので書けませんが、2022年は私も妹を失い夫も兄を失って、とんでもない一年に感じていました。

だけどその年が大変な年であったのは、我が家のみならず彼女の家もそうで、大きな出来事が二つあったのです。

 

本当にハラハラと涙が落ちました。

 

(注:主に漫画です。故に分かりやすく構えずに読めました。)

 

 

トップ画像は、マンションの花壇に咲いていた百合の花です。

////

 


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「身辺整理 わたしのやり方」曽野綾子

2023-05-20 01:01:09 | ユーモレスクを聴きながら(book)

(画像は記事には関係ないのですが、マンションの花壇のお花です。)

4月に読んだ本の感想です。

 

 

こういう本を読むと、何となく、自分の家にある物も全部捨てちゃえという気分にはなるものの、実際にはそうはいかないものですね。

作者様とは年齢も違うものですから、100に近い共鳴はあっても、やっぱり同じというわけにはいかないのです。

そしてまずは読んだ内容を捨ててしまっている自分がいます。

つまり忘れている(笑)

それでも印象深かった言葉がありました。

それは

「老年は、一つ一つ、できないことを諦め、捨てていく時代なんです。

執着や俗念と闘って、人間の運命を静かに享受するということは、理性とも勇気とも密接な関係があるはずです。諦めとか禁欲とかいう行為は、晩年を迎えた人間にとって、素晴らしく高度な精神の課題だと私は思うのです。」

 

これこそは、今の私が漠然と思っていたことの、明確な言葉だと思われました。

確かに「老年は」「晩年を迎えた」という言葉に、この内容自体を跳ね返してしまう人もいるかもしれません。まだ早いというように。または「諦め」という言葉をネガティブにとらえ拒否してしまう方も。

だけど私は思います。老年、晩年に到達していなくとも、時の流れとともに、やはり出来なくなっていくことが普通にあると思います。

 

私の場合、例えば2009年、私は月に1本のお芝居、月に2本の映画を観ようと目標を立てていました。

だけどその時、朝思いついてチケットを買ってそして出かけ鑑賞し、とんぼ返りで帰って来て仕事をするという体力があり、そして仕事の量に比例して自由に使えるお金もあったからできたことなんです。月2本の映画はともかく、今の私には月1本のお芝居を見に行く体力も財力もありません。

でも全く哀しくもないことです。

むしろそんな時代を持てたことが、人生の中の小さな誇りです。

仕事をデクレッシェンドの様に終わらせていこうと思ったときに、もうこんな事は出来ないなと「諦め」たのです。とても大事な選択だったと思います。

 

他にも

「ダメになった人間関係を深く悲しまない」

まったくそうだなと思います。

「一日に必ず一個、何かものを捨てる」

以前、「徹子の部屋」で菊川怜さんが「『一日一捨て』に嵌ってる。」と言っていて、ちょっとだけ今も影響を受けています。最近忘れかけていたので、思い出しました。

思考のヒントが一杯でした。

それを思うと、最初に書いた「(読んだ)内容を捨てた。」など、とんでもないことを言っていないで、二度読んでもいい内容なのかもしれませんね。

 

この本は図書館で借りようとしたのですが、リクエストが多かったのです。ところが姉が持っていて借りました。

姑が読むと言ったので貸そうかと思っていますが、97歳になっても本を読もうとするだけで、彼女は偉いと思います。

すでに目はしょぼしょぼの私ですが、ゆっくり少しずつであったとしても、私もいくつになっても、この読書習慣は捨てたくないものですね。

 


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「 ビール・ストリートの恋人たち 」を読み、そして見ました。

2023-03-28 11:35:28 | ユーモレスクを聴きながら(book)

本当は、なぜこの本を読もうと思ったのか、そこから書き始めたいところなのですが、やたら長くなってしまいそうなので、今回は読んだ本と見た映画の感想を、いつもながら簡単に書いておこうと思います。

19歳のティッシュと22歳のファニー。幼馴染の二人でしたが、お互いがこので一番自分にとって愛おしく美しい人なのだと理解したころ、二人は愛し合い、そして結婚に向けて二人で暮らす部屋を探し始めます。

そこに降ってわいたようなファニーのレイプ犯としての逮捕。

いきなり婚約者は、刑務所の中に入れられてしまいます。

どうしてそんなことが起きてしまうのかという流れは、その前の親友ダニエルの口から語られていたので、同じことが起きたのだと読み手にはわかります。

要するに白人警官たちは、黒人たちに罪を押し付けて検挙すれば、それで終わりです。目をつけられたらお仕舞という感じがします。

本当の犯人は野放し。

治安はどんどん悪くなっていっても無理はないことですよね(と、そんなことは一言も書いていませんが。)

この作品が書かれたのは、1974年。

1970年代のハーレムが描かれています。

 

思わず、今とその時代は違うよねと思いたくなりますが、どうなのでしょうか。

 

私的には、やはりこの時代背景は大事なのだと思いたいです。

 

冤罪で檻の中に入れられた恋人のために、ティッシュとその家族たちは奔走します。そこに描かれているのは、清々しいほどの家族愛です。

特にティッシュが妊娠を家族に告げるシーンは、胸が熱くなります。

ただ本の中の彼らの言葉は、かなりきつくて、時には下品に感じてしまう場合もあります。もちろんそれは私が感じた感覚で、それこそが生きる場所の違いが表れているのかもしれません。

それでも彼らは、娘とその婚約者、生まれてくる孫のために働いてお金を稼ぎ、弁護士費用や、被害者女性から正しい証言を得ようと、その彼女が居るプエルトルコに飛ぶ費用などを捻出します。最初はぼんやり構えていた弁護士も、あまりの理不尽な事件に本腰を入れ始めます。

弁護士も気合を入れて、母はプエルトルコに飛ぶー。

さあ、いよいよな展開になってきたぞと、普通はなるところですが、この物語はサスペンスではありません。

「恋人たち」とタイトルにあって、ラブストーリーメインかというと、そうではなく、この物語は1970年代のニューオリンズの黒人たちの生活を描いたもので、そして私には、ティッシュのその世界でも堂々と生きていこうとする成長譚のように感じたのです。

ネタバレになるので、この先のあらすじは書けませんが、変な言い方ですが、静かでない余韻が残ります。

生きていく人生で、ドラマの終わりのような終わりはないと思います。常に何かが終わりそして何かが始まっているからです。その始まった何かが、自分の新たなる世界の扉を開ける、または自分の人生の戦いの幕が開く・・・この物語はそんな終わり方をしていたなと感じました。

読んで良かったと思いました。

 

ジェイムズ・ボールドウィン←作者についてはここ

 

あと4日で終わってしまう、GYAOに映画がありました。間に合わなかった方は下記のプライムもしくはDVD(レンタル落ちでお安いです。)でどうぞ。映画の感想はこれの下からです。

 

もちろん省いている部分もありますが、ほぼ原作に忠実に作られているこの作品は、ラストだけが少し手が加えられています。

それでもジェイムズ・ボールドウィンという人の作品が原作であるということを知らずに、冤罪事件に家族で戦う物語(ある意味間違ってはいない)と思って映画を見続けた人には、ラストには肩透かしを食らう方もいらっしゃると思います。事実、レビューなどを読んでいると、それで☆の数が少ない方もいたようです。

私も、原作を読まずに先に映画を見ていたら、「あれっ?」と思ったかもしれません。

最近は、ネタバレを嫌って、ほとんど情報を入れていかない私ですが、時々それで失敗しています。ある程度の予習というものは、時には必要かもしれませんね。

そしてこの作品の感想ですが、自分の頭の中で描いていた以上の美男美女で、感情移入がしやすかったです。

そして映像が美しい。監督は「ムーンライト」でアカデミー作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス。

見て良かったと思いました。


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標野凪「伝言猫がカフェにいます」

2023-02-09 19:32:15 | ユーモレスクを聴きながら(book)

この本も病院の売店で買い求めました。前の本の感想(村上春樹「猫を棄てる」)にも書きましたが、わずか10冊程度の本の中から選んだ割には、素敵な出会いが出来、その出会いに私は感謝したくなりました。

退院までには読み切れませんでしたが、退院後に整形外科に行き(2月3日)、その待合室で読み切りました。その時ふとハンカチを目に当てると、そのハンカチが微かに濡れました。

泣き虫なんだから~、私。

でもジワッと来ますよ、これ。

帯には「もう会えない人からの『想い』を猫が届けます。」とあり、これはあの世とこの世の堺にあり、「会いたい人に会わせてくれる」と噂のカフェ・ポンで、天寿を全うした猫のふー太が、「仕事を5回達成すると、会いたい人に会える」と言う報酬につられて、店主・虹子の元で働く物語です。

5つのエピソード+エピローグ、皆素敵です。ただ涙涙のお話だけではなく、時には苦い気持ちにもなったり、時にはざまあみろと言うようなお話もあり、読んでいて楽しかったです。

だけど私が、ポンのポストに「ももちゃん」と名前を書いて、または「スノウさん」と名前を書いて入れたとしたら、いったいどんな形で会いに来てくれるのだろう・・・・

ほんのちょっぴり、そんな気持ちにもなって切なかったです。

 

この本の装丁(長崎綾)は綺麗だし、装画(日下明)の猫さんもとっても可愛らしい。

標野凪さんの本は初めてです。初めての方の本を手に取るのは、やはりタイトルも大事ですが、表紙も大事だと思います。

この本を評価する時、やはり作者の方にばかり目が行きますが、実は1冊の本と読者が出会うには、多くの人の手がそれを支えているのだとしみじみと思いました。

 

 

ただその後は、作者の力です。今日、また本屋に行きました。2月2日発売の新刊が出ていました。

今月はちょっとお預け。

でもきっとまたこの方の本を読むと思います。

 

 

 


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