『ゲゲゲの思い出』その2。
①は、結局は夢の話ですみませんと言うところなんだけれど、そこから話さなくては想いは伝わりづらいかなと思って書きました。子供の頃から知っていた『ゲゲゲの鬼太郎』は自分の意識の中にしっかりと入り込んでいたのですね。
②はアジアの片隅ならぬ、貸本屋での片隅のお話です。
【貸本屋のその片隅に】
ドラマの「ゲゲゲの女房」の中にも、貸本屋業界の厳しい裏事情が描かれていましたが、私の子供の頃にはまだその貸本屋なる物が存在していました。私の母は漫画などには理解のある人で、子供の私がお小遣いを握り締めて、そういうところに出入りしても何も言わない人でした。姉妹社の「サザエさん」が5円。普通の本が10円で借りられる時代もあったのです。
だけど、貸本屋が潰れてしまっても無理はないなと、今だと思います。いつ行っても客は私一人しか居ませんでしたから。一人ずつがパラパラと来るようなお店だったのだと思います。もういつ止めても良いと思っていたのだと思います。本の裏には売る場合貸す場合の両方の値段があったように思います。もちろん定かな記憶ではありません。
時々は買って、時々は借りていたようにも思います。
でもそこに並んでいたのは、紛れもない貸本屋専門の本たちでした。既に世は雑誌の漫画の時代でした。
寂しげに並ぶあまりなじみのない人たちの漫画。ところが、その本の中には、なんとも言えない魅力を放っているものもあったのです。その漫画家さんたちは、次の時代にしっかりと生き残っていけたのでしょうか。
どうもあのドラマを見ていると、とっても難しかったように感じてしまいます。
貸本屋の本で私が借りるお話は、少女マンガやホラーなどが多かったように思います。
ちょっとお話は「ゲゲゲ」から外れますが、今でも面白かったなと思い出すお話があるのです。
時代劇でいなせな感じのちょいと小悪党の作家の若者が、風邪を引いて薬問屋を訪れますが、金はないが薬を出せと言うと、薬屋の亭主がどうにでもなれと、いつの時代にこしらえたのか分からない丸薬を持っていって良いと渡します。だけどそれを飲んだ若者は異世界の者達が見えるようになってしまうのです。しゃきしゃきの芸者に助けられ、また幽霊の娘と恋をしながら、起きた難事件を解決して行くと言う非常に面白かった物語です。
いったいどこの誰が描いたのやら。
名作かどうかは分かりませんが、秀作はたくさんあったのですよ。
私は今でもそんなお話を、藤原竜也主演で見てみたいと思うのですよ。時代劇・ちょっと不思議・ちょっといい加減・下町探偵帳。なんか良くないですか?
まあ、その話は置いておいて、お話元に戻しますね。
だけど貸本屋の想い出は一軒ではなく、もう一軒あります。そのときサザエさんは10円、その外の本は20円だったと思います。だけど本のほとんどは、貸本専門の漫画家さんたちによるものではなく、週刊誌に掲載された漫画のコミック本でした。少年誌を買うことのなかった私は、そこで手塚治虫などのさまざまな漫画を知ることが出来たのでした。ほんの数年でも貸本業界にもそのような変化があり、そして消えていってしまったのですね。
ドラマ「ゲゲゲの女房」の中にも、貸本屋さんの苦労なども描かれており、また貸本業界の苦節と変化には知らない世界の歴史を見たように思いました。子供の頃、あの本屋を埋め尽くしていた漫画家の人たちが、そのような苦労をしていたとは夢にも思いませんでした。なぜなら漫画といえども一冊の本をなし、自分の作品を発表している人たちなのですよ。子供の目から見たら、成功者の何者にも見えませんでしたよ。
だけど実際には、水木しげる氏さえ貧乏のどん底だったのですから驚きです。
だけど、私はそのどちらかの貸本屋さんで、水木しげる氏の「墓場鬼太郎」を見た事がありますよ。そのとき彼は既に有名人でした。でも本屋の一番下の片隅にあった、その本のタイトルは「ゲゲゲの」ではなかったので不思議な感じがしました。
その内容は、目玉の親父誕生のシーン。
子供を残して父は死に、だけど乳を求めてなく子に死んでも死に切れないのです。死んだ体から目がどろりと抜け落ちます・・・
とっても気持ちが悪いのです。
でも、今思うと肝心なことを忘れてしまいました。目玉になった親父は、どうやって鬼太郎を育てたのだったかしら。何か獣の乳を飲ませたのだったかしら・・・
このブームも手伝って、復刻版とか出ていたりすると思うので、「墓場鬼太郎」を読めばわかることかもしれませんね。
ただ、この漫画を借りる時に、お店のおじさんか常連だったおじさんかのどちらかに、「あんた、こんな本を借りるのか。」と変な顔をされたのでした。ドラマの中でも漫画を敵対視する人が、水木氏の漫画を見て「気持ち悪い」と嫌な顔をするシーンがあったのですが、なんとなく笑ってしまいました。しっかりと記憶の中にある場面と重なったからでした。ドラマの中でも、水木氏の漫画は最初は片隅にありました。私の記憶の中でも同じだった事が、微妙に嬉しかったりもしたのです。
既に消えてしまった世界のお話ですが、そこはもしかしたら意外なもの、意外なお宝を発見できる、宝島スペースだったかもしれませんね。
ちなみに母は、家に4人の姉妹がそれぞれにたくさん漫画を持っていたので、老後は小さな貸本屋などをやりたいなどと夢見ていたこともあったかな。「時代」ではないし、本の内容も偏っているので、ささやかな夢であってもすぐに潰れてしまったと思います。
墓場鬼太郎 (1) (角川文庫―貸本まんが復刻版 (み18-7)) | |
水木 しげる | |
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墓場鬼太郎 (2) 貸本まんが復刻版 (角川文庫) | |
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墓場鬼太郎 1 貸本版 限定版BOX | |
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