10月20日、上野東京国立博物館にて「特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」を見てまいりました。
「やまと絵」は好きなジャンルです。
ところがこの美術展を、今思い返すと、心のどこかが微かにキリリと痛みます。
ちゃんとしっかり見ることが出来て、ちゃんと何かを得ることが出来たのかしら。行った甲斐はあったのかしら。
展示が列をなして流れていくようにはなっていないはずなのに(つまり普通の絵画展のように空いているところから見ていいのです。)、内容的に言って、みな列を出して流れようとするのです。絵巻ですからね。そうなるのも分かるのですが、その絵巻解説は、いたって不親切で内容がほとんど分かりません。絵を見るだけです。だから人が列をなしてしまっても、実はへばりついて動かなくなる人が出るわけがないはずなのです。
ところがその列は、本当に淀んで動きが悪い。ショーケースの前から動かない人が多数いるからです。
もしかしたら音声ガイドに詳しい解説が流れているのかもしれず、またはアプリ版の方にも絵巻の内容が流れているのかもしれません。
でもそう言うのって、なんか変 !
それにまた、それがうまく流れない原因になっているかもしれず、音声ガイドを以前は借りて聞くことが好きでしたが、最近は気まぐれですが、今回は借りなくて良かったと流れの悪さを見てそう感じました。
会場整備の人が(学芸員ではなかったようです。)、前に進むように、または事もあろうか飛ばすことを促していました。
私は前に進めないのなら、飛ばす派です。
そして空いているとこに顔を出し、そこから少しだけ丁寧に見るわけですが、ふと、こういう事をしてると、中には横入りとか勘違いする美術館鑑賞不慣れな人が居そうでやだなぁと、ふと思いました。
私はこういう絵巻の展示だったらとアレが良かったなと思いました。アレと言うのは、2015年の外で90分待ちで建物の中に入っても90分待ちだった「鳥獣戯画展」です。それでも見始めると、人は列に沿って前に進まざるを得ない展示になっていて、へばりつくと、そこから後ろが大渋滞になってしまうので進まざるを得ないわけですが、絵巻の解説が丁寧で、読みたい人はそれを読み、かったるい人は読まずに前にどんどん流れていき、すこぶる記憶に残り、来た甲斐も待った甲斐もあったと感じたのでした。
→「鳥獣戯画展」
ある程度は、見方の指示は必要な場合もあると言うことで、展示の方法も解説の有無も、少々工夫が必要にも思いました。
と、ここまでは、あくまでもワタクシ個人の感想ですから、悪しからず。
列に辛抱強く並んでしっかり見られた方は、こういう感想は持たないと思いますから。
こんな少々不満を抱えた鑑賞でも、心に残ったものが実は少々はあったのです。
第2節「王朝貴族の美意識」と言うコーナーで、それは「古今和歌集」などが書かれた紙について・・・。
私のイメージでは、そういう古いものは、みな味気ない白い和紙に書かれているのかと思い込んでいたのです。
透かし絵の入っているお洒落な色とりどりの中国から来た紙に書かれていました。
はっきり言って素晴らしい~。
私は室町時代のやまと絵に、ちょっと心惹かれたのかもしれません。
絵を見ただけで一目瞭然の「百鬼夜行絵巻」など、大好きだなあと思いました。下の方にHPをリンクする予定ですが、そこに載っているものの、実はさらに左側がこれは良いんですよ。なぜならそれを見ると、漫画の「陰陽師」や「千と千尋の神隠し」の湯屋にやってきた者たちの姿を見つけることが出来るから、ワクワク感も倍増すると言うものです。
また平安時代の王朝絵巻。
来年の大河にも思いが馳せますが、やはり源氏物語の世界観には心躍らされる何かがあるような気がします。
また大迫力の山水屏風など・・・・・。
またこの時代の文化が背景にある絵で「病草紙」など。
「餓鬼草紙」「地獄草紙」・・・・・
あっ、ごめんなさい。そんなものばっかり。でも人々の心の戒めを感じて、心に残りました。
それから会場での、人々の会話を拾うのが、結構好きな私ですが、修学旅行で来ていたのか女子高校生たちが、絵の前で良い意味ではしゃいでいたのが印象的でした。
何かを発見して、それを友人たちと共有して喜び合っていたのです。
また若いペアの人たちが、山水屏風の一つの月の画法を見て「こういう表現の方法もあるんだな。」と感心しあっていたり、また別の人たちが、熱心に見ている彼女さんに「君はこう言うのをどう思うの。」などと聞いていたりで、微笑ましかったのです。
余計なおばさんは去れってなものですが('◇')ゞ
若い人が美術を前に素直な心でいるのを見ると、私も文句を言ってないで素直に見ようっていう気持ちにもなると言うものです。
私自身もちょっと楽しい触れ合いがありました。
ある古い漢から来た箱の絵は、よく目を凝らさないと見えなかったのです。
何だろう、この黒い箱はと思って、私もその中に絵を見つけたばかりの時に、その男の人がさっぱり分からないと呟いていたので、ついついおせっかいおばさんの私は
「いや、目を凝らすと見えるんですよ。ほらっ、こことか。」と話しかけてみました。
「あっ、本当だ。こりゃ、心が澄み切っていないと見えなかったりする絵なのかな。」などと言うので笑いあいました。
また仏に信仰するものがいつの間にか傲慢になったと、それを揶揄するのに天狗として表されたという絵の前で、シニアグラスも書けずに見ていた私には、さっぱり分からずに、横にいた綺麗な女性に聞いたのでした。
「すみません。どこに天狗がいるのですか。」と。
すると彼女は丁寧に「ここにいるのは全部天狗として描かれているのですよ。これなどは羽根などつけていてわかりやすいですよ。」
なるほど~。
「でもこの人たちはみな熱心に働いていて、傲慢だと言われ天狗として描かれているなんて気の毒ですよね。」とついつい感想を。
するとその綺麗な女性の後ろに立っていたセンスのいい年配の方が、本当にこんな風に描かれて、気の毒だと思って見ていたわと言いました。
おお、同意見。
私はお礼を言ってその場を離れましたが、こういう美術展に行くと、たいがいは誰とも話さないことが多いと思います。ましてや感想の交換などはないことです。
ささやかな幸せの時間でした。
ちゃんとしっかりは見られなかったかもしれませんが、こうして書くと、確かに行った甲斐はあったと言えたかもしれませんね。
あとは後日のあれやこれやで補完したいと思います。
あれやこれや↓
チラシ
HPは→特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」/2023年10月11日(水)~12月3日(日)/東京国立博物館 平成館(上野公園) (yamatoe2023.jp)
ついでながらの東京国立博物館の画像
ベンチに座りながら、振り向いて撮った画像↓
この時は庭園などによる元気がなかったので、また近いうちに行きたいなと思いました。
東京も色づき始めましたから。