二月になって、春が近づいてきたなと思う頃、ふと口ずさんでしまう歌 .。
♪二月の扉を開けてはならぬ
開ければ悔やむ~ 開ければ悔やむ~ ♪
そこしか歌えないのですが、それは谷山浩子の「二月の部屋」の一節です。この曲は「もうひとりのアリス」の中に入っている曲なのですが、私が口ずさんでいる部分なら視聴できます。ココ
この歌は民話の「見るなの座敷」をモチーフにしたものなんですが、歌が摩訶不思議な雰囲気なのは、そのもとのお話がなんともいえない不思議さがあるからだと思うのです。
民話なのでいろいろなバージョンがありますが、大まかなざっとしたものは以下のようなものです。
昔々、男が山の中で道に迷ってある館にたどり着くと、その館から出てきたのは、世にも美しい女性でした。その彼女は男を館の中に案内すると、ご馳走を出してもてなすのです。ほどなくその女性は、用があるからと出て行きます。その時に、この部屋のどの襖を開けてもいいけれど二月の襖だけは開けてはいけないというのです。
その部屋には12枚の襖があって、それぞれに素晴らしい季節の絵が描いてあるのです。男は酒を飲みながら、それらの襖を開けていきます。一月の部屋を開ければ正月の賑わい、三月の部屋からは桃の節句、と季節季節の美しい日本の風景屋楽しみがそれらの座敷にありました。
とうとう最後の座敷まで開けてしまっても、女性は帰ってきません。すると男はどうしても二月の部屋を開けてみたくなってしまいました。
そして男は自分の心の誘惑に勝てずに、とうとう二月の襖を開けてしまうのです。
その部屋には何にもありません。梅の木が一本あって、そこに止まっていた鶯、ホーホケキョと鳴いて空高く飛んでいくと、それまであった館は消えて男は一人、山の中にポツンと立っていました。
このお話はなんともいえない幻想的な雰囲気がして好きなんです。
想像力を友にすると、いくらでも物語が膨らみます。
ある部屋には百花繚乱、ある部屋には潮騒、また別の部屋には真っ赤な山へと通じる道。その時々に人は花見で賑わい、海へと繰り出し、そして秋祭りに興じるのでした。一年がその館の中では一気に楽しめるのです。
このお話は調べだすと、結構奥が深いのですよ。
なので、続きはまた明日です。
でも明日はどちらかと言うと、なぜ急にこの記事を書こうと思ったのかと言う内容です。
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谷山浩子のその曲、不思議な感じで大好きでした。昔話についてのいろんな解釈が大好きです。ついでにユーモレスクも好きです。
3回シリーズまとめて読んで、いろいろイマジネーションが広がりました。私は「三月の座敷だけは開けてはならぬ」だと思っていたのですが、谷山浩子は「二月の扉」でしたね。付き比べたことがなかったので新鮮でした。
ご指摘どおり「見るな」「開けるな」のタブー系民話は世界中にたくさんありますね。(浦島太郎、鶴女房、イザナミ、パンドラ、オルフェウス神話、「食べるな」のアダムとエヴァなど)
「見るなの座敷」は特にひどい罰が下るわけではなく、中途半端な感じがえもいわれぬ余韻を生み、また非常に印象的なのは明るいことです。
奇妙な明るさは「浦島太郎」に似てますよね。中途で終わることが怖さを呼ぶところは「壺の中」(ラフカディオ・ハーンの採取した話)と似てます。・・・私にはやはり怖い話です。因果応報じゃないので余計に。
>実は「見るな」は「見ろ」の仕掛け言葉だったのではないかと思うのです。
そう思います。民話のタブーは破られなかったことがないですよね。
>自分達では開ける事が出来ない扉があり、それを通りがかりの者に開けさせると言う、異界の者の策略
これ面白いです。生きているものに対する異界のものの妬みや恨みのようなものも感じます。
「浦島太郎」についてハーンが触れた随筆「夏の日の夢」をご存知ですか?私のところの昨年8月14日の記事の後半に紹介してありますのでよろしければ。
また、松居友「昔話とこころの自立」(宝島社)は私が非常に影響を受けた本です。精神分析風なので好みに合うかわかりませんが・・・。
私は実はまだ頑張っているのですよ(笑)完全に結果が出てしまったら、コメントを書こうかなと思って居た所だったのです。
民話の、または神話の「見るな」のタブーは面白いものがありますよね。きのこさんも前に「怪談」について、続けて記事を書いていましたので、きっと興味のある共通のテーマかと思いました。
そう言えば「歌うな」と言うタブーの物語もありました。「かきつばた」と言うお話。「怪談」に書いてあったのか「雨月物語」に書いてあったのか忘れてしまいましたが、それも怖いお話でした。「なぜなのか」が分からないものほど恐怖が増すと思います。
8月14日の記事はすぐに読まさせていただきました。言われてみればなるほどなと思うことがいっぱい書いてありました。「浦島太郎」のお話は、話は単純でも、奥の深さは半端ではないですね。
松居友「昔話とこころの自立」は、上半期中には読んでみようと思います。目標期間が長いのですが、今年まだ一冊も読了していないので、近いうちにと言うと、とっても嘘っぽくなってしまうかなと思いまして
気の向いた記事にポツリポツリとコメントしていくくらいなのですが、細く長くお付き合い願います。
本や、図々しくも自分の記事の紹介など失礼しました。丁寧なレスポンス恐れ入ります。昔話解釈は私も大好きなので、関連記事も楽しみにしております。
『ムサシ』観られるといいですね!多分追加ありのロングラン公演になるんじゃないかと思います。私はそんなに舞台は観にいけませんが、野田さんの新作が観られたのは羨ましいです。
ではまた。コメントレスはどうぞ気になさらずに。
私は年々症状が酷くなってきています。でもだからと言って、若返っていくと言う人生ではありませんが(笑)
>細く長くお付き合い願います。
私も、あまりコメントをまめに残す方ではないので、同じくお願いいたします。
また、本や記事の紹介は嬉しかったです♪
「パイパー」は本当に良かったです。この勢いで是非「ムサシ」も観たいところです。今日の夕方、また抽選発表があるのですよ。祈っていてくださいね。