※ 今回の「月刊flowers」は「もしも東京」展で発表された「海が見える大井町」も掲載されているし、「ミステリと言う勿れ」も掲載で、読みごたえがありそうです。
「vol.2 アランが盗まれる」の感想・・・・-。
その表紙の扉絵、にこやかに笑うアランに目が行ってしまって最初は気がつきませんでしたが、笑っているのはアランだけ。エドガーは見守るように優し気にアランを見つめているので微笑んでいるのかと思いましたが、そこは微妙です。そして他の人たちは(ああ、人には非ずでしたが、)皆険しい顔をしていたのです。
夢のように巡るメリーゴーランド。だけどこの扉絵で、胸に迫って来るものを感じてしまいました。ずっと昔に、この「ポーの一族」と出会った頃のように。
エドガーが言った印象的な言葉。
「・・・大老は ”パンドラ”とか”炎の剣”とか 魔法使いのように いろんなグッズを持ってるんだな・・・」
このダークファンタジーは、意外と自由度が高いですね。
バリーは愛する美しい兄フォンティーンを救うべく、大老に「炎の剣」を渡してくれとエドガーに頼んで欲しいと頼む。それを拒めないように、バリーはアランを盗み去って行ってしまうのでした。
バリーも動き、そしてまた一方では大老も動いていました。
大老がフォルカの家に行った時、ちょうどフォルカとブランカの家では大きな悲劇が訪れていました。
一緒に生活していた子供が儚く消えて行ってしまったのです。
子供を助ける事は出来ず「幼い子供は早く消えて行ってしまう。」という大老に向かって、ブランカは
「ごたくばっかりしゃべって何も出来ない。 役立たず !」となじります。
このシーン、なんか凄いですよね。
大老ポーは、たぶんこの何千年、こんな風な口を利かれたことはなかったんじゃないかと思います。
なんたって大老ですから。
だけど大老は言いました。
「・・・・・アランを助ける方法を示唆するために来たのに」
この「・・・・・」の部分・・・・・、なんか可愛い^^
しかしはっきりと言いましたよね。「アランを助ける方法」と。
そして舞台はベニスへ。
ああ、行きたいな、ベニス !!
と、ここで終わっても良いのですが、あの夜のフォルカ家で起きた悲劇は凄く印象的でした。ファルカが何人もの子供を失ってきたのは、そういう事だったのですね。
あの二人は、凄く恐ろしい事を自分たちの満足の為にやってきたのですね。
小さな幼き者を、果てのない時間、ずっと慈しみ楽しい時間を持つことが、親と子の幸せではないし子育てでもないと思います。
それはたんに親子ごっこで、時を止められた子供たちは、・・・・と一緒のように感じました。
かつて二人の少年たちもリデルと言う少女を、森の中で育てていました。
だけど二人は(一人はいやいやだったけれど)手放したのですよね。
かつてエドガーに起きていた辛い出来事、アランにもまた辛い人間の時代がありました。
それらが彼らを熟成させ、心が既に大人だったから、彼らは姿は子供であっても消えていくことがなかったのでしょうか。
それらの真実は・・・・!?
まあ、それは萩尾先生の頭の中にしか無いと言えることかもしれませんね(笑)
そして次回は10月号です。