「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

今日、うれしかったこと

2008-12-26 19:55:55 | 小児医療
 今日の診療が終盤に入った頃、とある少年が、クリニック3階に上がってきました。
 彼は、突然、診察室に入ってきて、回転する診察いすに座ってぐるぐる回ります。

 まだ、順番をよんでないので、外で待ってというのですが、なかなか出てくれません。が、注意がそれたようで、ようやく外に。
 親御さんをさがすも、見当たりません。
 クリニック内を珍しそうに、うろうろ歩きます。椅子に上がって、仮面ライダーのカレンダーをずっと眺めたりもしました。仮面ライダー好きなのでしょうか。

 どうも、親御さんとは来られず、ひとりで来たようです。

 名前を聞こうとするも、住所を聞こうとするも、電話番号を聞こうとするも、年齢を聞こうとするも、なにも応えてくれません。小学生ぐらいだとは思うのだけど、名前不詳、年齢不詳、、、。
 
 診察がようやく終了し、その子に再度、いろいろ聞いてみるも、いっこうに応えてくれません。
 服や靴で名前がないか探すけど、残念ながら何も書かれていませんでした。


 でも、過去に診察した覚えが自分もあるのですが、どうしても名前が出てきませんでした。

 途方にくれて、捜索願いが出ていないかと、警察に連絡しました。

 ほどなく、警察の方が来られるも、状況は変わらず。

 一旦、警察署に行って、対応を考えることになりました。
 パトカーに乗ろうといっても、診察室のぐるぐる回る椅子から離れずでした。気の利いた事務長の斉藤がおんぶの格好をすると、その子は、その背部にのって、おんぶに成功しました。階段を無事下りて、パトカー後部座席に乗り込みました。
 一人では不安でしょうから、うちの保育士さんが、一緒に付き添って警察へと行きました。

 結局、彼とは、ひとことも会話が出来ませんでした。言葉を用いた会話はできなかったけれど、私達スタッフと彼とは、「彼の帰る先をいっしょに考えている」という思いの共有ができていたと、私は思っています。
 

 診療の後片付けをしていますと、先ほど、警察から連絡がありました。

 となりの管轄の警察署で、捜索願いが出されている子と合致とのこと。

 よかったです!!

 
 でも、その子、コートやジャンパーも羽織っていない服装でした。冬の夕暮れ、一人で、道に迷って、寒い中、うちのクリニックへ来たのでしょうか?隅田川を渡って、結構な距離になります。

 いずれにしろ、無事親御さんに会えて、よかったです。
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臨床現場の気づきによる成育環境の改善

2008-12-26 16:42:41 | 小児医療
 子どもの育ちの環境整備を考える上で、参考になる記事がありましたので、著者の承諾を得て、掲載します。

 記事では、特に、乳幼児期の長時間テレビ・ビデオ視聴の悪影響を述べています。
 どうか、皆様、ご注意いただけますよう、お願い申し上げます。

****以下、掲載*****
●臨床現場の気づきによる成育環境の改善
                 国立成育医療センター
                  成育社会医学研究部 部長  谷村 雅子氏

 現代社会は、核家族化、少子・高齢化、世界不況、科学技術や医療の進歩、温暖化など、環境が急速に変容しています。
 特に核家庭の養育環境は両親によって形成され、最先端の生活用品や子ども用品が購入されるので、健康影響の調査が追いつきません。調査が終わった頃には次の世代が新しい生活様式を取り込んでいるのです。
 このような状況で、健康上の新たな異変を早期に把握して改善策に繋ぐ為には臨床医の気づきが極めて重要です。

 低出生体重の肝芽腫リスクの増加はわが国が世界に先駆けて1998年に報告したのですが、臨床医の気づきがきっかけでした。
 小児外科の先生が極低出生体重の肝芽腫を2例続けて経験されて疑問をもち、小児がん全国登録に問い合わせがありました。登録資料を解析した結果、肝芽腫の中の低出生体重の比率が1985年頃から徐々に増加して一般集団より顕著に高いこと、低出生体重児では出生体重が低いほど肝芽腫リスクが上昇することが示され、極低出生体重児の救命率の向上に伴ってこのような現象が現れたことが判りました。
 この関連性は、臨床からの指摘が無かったら肝芽腫の発生数がかなり増加するまで把握できなかったと思います。肝芽腫の発生率は低いので統計学的に検出することが難しいのです。
 また、肝芽腫は出生体重が大きい Beckwith-Wiedeman症候群でもリスクが高まるので、出生体重と肝芽腫との相関性の単純な検定では見逃されてしまうのです。

 テレビ・ビデオ長時間視聴の言語・社会性の遅れへの影響も小児科の臨床現場からの指摘によって判明しました。言葉や社会性の遅れをもつ幼児の中にテレビを習慣的に長時間視聴しているが、視聴を止めると症状が改善する一群があるとのことでした。
 そこで、2003年に1歳6カ月児の集団調査を行い、この関連性が確認されたので、小児科学会から「長時間視聴は危険です」という提言を出しました。
 これに対して、テレビ放映は50年も前に開始されたが子ども達はテレビを見ながら大きな問題なく育ってきた、何故今頃になってとの質問をよく受けました。実は私共も1987年に調査した時には明確な関連性は示されませんでした。
 しかし、環境が大きく変わったのです。ビデオが普及し乳幼児向けのビデオソフトもレンタルで安価で容易に入手できるようになり、長時間、反復視聴する子どもが増えました。特に、視聴時に親子のコミュニケーションもなく長時間見続け易いタイプのビデオが増えています。更に、親自身の視聴時間の増加、携帯やパソコンの使用、核家族・父親の帰宅時間の遅延などにより、乳幼児の家族との対人経験の時間が減少してきました。そのため、テレビによるコミュニケーションの減少が大きく影響するようになったのです。
 昔からあったものでも、内容や利用方法、背景の環境が大きく変われば影響が変わり得ることを忘れてはいけないと痛感し、また、やはり臨床現場の気づきの重要性を再認識しました。

 少数例であっても臨床からの報告に留意し、環境の変容による子どもの健康への悪影響の軽減に努力していきたいと思います。

****転載終わり****

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【ご案内】鈴木真砂女 俳句朗読会

2008-12-26 11:09:38 | ブログ目次 / イベント情報・会議日程

 来年のことになりますが、案内が届きましたので、お知らせします。  

 京橋図書館で、鈴木真砂女 俳句朗読会が、月に一回程度のペースで行われています。 
 主宰は、鈴木真砂女の俳句を英訳出版された宮下さん。

 俳句のご経験がある方も、私のようになくても、 
 とっても、心が和む時間になります。  
 是非、お気軽に、おでかけになられて見てください。  

朗読会の時間、お子様は、「みんなの子育てひろば あすなろの木」でお預かりも可能です。

以前の開催の様子:http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/593448d4873d54ec8dee193735c61372

 

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悲しい別れ 

2008-12-26 00:49:25 | 子育て・子育ち
月島にある『GRACE』という子どもを預かる民間施設があります。
そこの園長をされていた齋藤様が12月25日、朝、亡くなられました。

夜に悲報を聞きつけ、通夜の終った時間とはなってしまいましたが、会場へ急きょ駆けつけ、献花を致しました。
安らかな永遠の眠りにつかれていらっしゃいました。

私の息子、娘も非常にお世話になった方でした。
そのご縁で、今、私はその園の園医をさせていただいております。

息子、娘を、赤ちゃんの時から面倒を見てくださいました。
元気さとやんちゃしかとりえのない息子を本当にかわいがってくださいました。息子のよさをみつけてくださっては、優しい口調でほめてくださいました。
娘を、いつも「かわいかった。」といいながら、その日にあった、親にも気づかない小さなかわいい仕草をお伝えくださいました。
この方ほど、子どもに優しく接せられる方を私は知りません。
本当に穏やかで、優しい方でした。
ある時、保育でのご苦労を話してくださいました。お聞きするに、精一杯のご努力をされていらっしゃって、頭が下がる思いでした。

長く闘病生活をされていらっしゃいましたが、
最後は、ご家族に囲まれて、昔の写真を見ながら、
眠るように穏やかに逝かれたということでした。

ご冥福をお祈り申し上げます。
そして、今まで本当にありがとうございました。
子ども達がお世話様になりました分、少しでも園医として、お返しできればと思っております。


告別式 12月26日午後12時から
場所  イムマヌエル綜合伝道団 深川教会(東京都江東区住吉2丁目27-1)
    住吉駅徒歩3分
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