「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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尾瀬の自然を守って下さい。「東電の尾瀬売却が浮上」、皆様、売却の行方をきちんとフォロー願います!!

2011-05-12 12:21:00 | 防災・減災
 『東電の尾瀬売却が浮上、群馬知事「絶対に阻止」』との記事に遭遇し、少々動揺しています。
 東京電力があらゆる資産を売却し補償金捻出を進めることは当然のこととしても、記事にありますように、万が一、尾瀬が民間に売却され、自然景観を台無しにする開発が行われることにつながるようなことは、あってはならないと考えます。

 尾瀬は日本人のひとつの大切な心のふるさとです。
 これからもずっとその自然と景観を、後生に残していかねばならないと誰もが認めるところだと思います。

 皆様、売却の行方をきちんとフォローをよろしくお願いいたします。

****読売新聞(2011/5/12)****
http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20110512-OYT1T00103.htm?from=main2

東電の尾瀬売却が浮上、群馬知事「絶対に阻止」


 尾瀬国立公園(総面積約3万7200ヘクタール)の約4割の土地を所有する東京電力が、福島第一原子力発電所事故による補償金捻出のため、尾瀬の土地を売却する可能性が浮上していることについて、群馬県の大沢正明知事は11日の定例記者会見で、「売却については絶対に阻止したい」との考えを示した。


 県尾瀬保全推進室によると、東電は、尾瀬ヶ原や尾瀬沼が含まれ、土地の現状変更の禁止や動植物の保護などが求められる「特別保護地区」約9386ヘクタールの7割を所有している。同室は、「現時点で東電から売却の話はないので、今後についての具体的な話し合いもない」とした。

 知事は会見で、「自然を大切にする心が薄れている現状を考えると、尾瀬のような自然をもっと大事にしていくべき」と、尾瀬の重要性を強調した。

 尾瀬の自然保護を考える会の飯塚忠志さん(70)は、仮に売却が決まった場合について、「民間への切り売りは決してやらないでほしい。国が責任を持って買い上げ、東電がこれまで取り組んできた保護活動なども絶えないようにやってもらいたい」と話した。

(2011年5月12日08時57分 読売新聞)
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日本弁護士連合会による「エネルギー政策の根本的な転換に向けた意見書」5月6日の主旨に賛同します。

2011-05-12 09:08:42 | 国政レベルでなすべきこと
 日本弁護士連合会による「エネルギー政策の根本的な転換に向けた意見書」が5月6日出されました。
 日本のエネルギー政策の今後のあり方にかなり踏み込んで書かれています。

 日本の復興、再生、未来のために、今こそ日本は目覚めなければならないことのひとつと考え、私もこの意見書の主旨に大いに賛同致します。

 以下、抜本的転換の方向性

持続可能性を基本原則とするエネルギー政策にすること。

原子力発電所については,新増設を停止し,既設のものは段階的に廃止する
こと
。また,運転開始後30年を経過し老朽化したものや付近で巨大地震が発
生することが予見されているものについては運転を停止し,それ以外のものに
ついても,地震・津波に対する対策を直ちに点検し,安全性が確認できないも
のについては運転を停止すること。

石炭火力発電についても,新増設を停止すること。

再生可能エネルギーの推進を政策の中核に据えること。

エネルギー製造・供給事業の自由化を促進し,発電と送電を分離すること。

エネルギー消費を抑制するための実効的な制度を導入すること。

排出量取引制度等によってエネルギー供給の確実な低炭素化を図っていくこ
と。

エネルギー政策が多くの国民に開かれ,国民の積極的な参加を促すものとすること。



*****意見書*****
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/report/data/110506.pdf

エネルギー政策の根本的な転換に向けた意見書
2011年(平成23年)5月6日
日本弁護士連合会

第1 意見の趣旨
 当連合会は,エネルギー政策の抜本的な転換に向け,次のとおり意見を述べる。
1 持続可能性を基本原則とするエネルギー政策にすること。
2 原子力発電所については,新増設を停止し,既設のものは段階的に廃止する
こと。また,運転開始後30年を経過し老朽化したものや付近で巨大地震が発
生することが予見されているものについては運転を停止し,それ以外のものに
ついても,地震・津波に対する対策を直ちに点検し,安全性が確認できないも
のについては運転を停止すること。
3 石炭火力発電についても,新増設を停止すること。
4 再生可能エネルギーの推進を政策の中核に据えること。
5 エネルギー製造・供給事業の自由化を促進し,発電と送電を分離すること。
6 エネルギー消費を抑制するための実効的な制度を導入すること。
7 排出量取引制度等によってエネルギー供給の確実な低炭素化を図っていくこ
と。
8 エネルギー政策が多くの国民に開かれ,国民の積極的な参加を促すものとす
ること。

第2 意見の理由
はじめに

-福島第一原子力発電所の大事故を繰り返さないために,エネルギー政策の根本
的な転換を-

 石油ショック以降,わが国のエネルギー政策の主眼は,原子力発電の推進によ
って石油への依存度を減らすことに置かれてきた。その主役を担ってきたのは,
経済産業省,電力会社,一部の専門家であり,審議会などの場を通じて決定され
た原子力発電を基軸とする計画が「国策」として推し進められてきた。経済産業
省や政府与党と電力会社との間の強固な人的結合,さらには,いわゆる電源三法
交付金(注記1「電源開発促進税法」,「特別会計に関する法律」(旧電源開発促進対策特別会計法)及び「発電用施設周辺地域整備法」に基づく交付金。)などの金の流れがこうした政策を支えてきた。

 こうした政策によって,たしかに石油依存度は大きく低下し,エネルギー源の
多様化がある程度実現した。しかしその反面,こうした政策のもと,電力・ガス
供給事業における地域的な独占体制が堅持され,エネルギー事業の自由化は遅々
として進んでこなかった。各事業者の供給地域をまたぐ送電網も貧弱なままに整
備されず,今回の電力不足を招来する大きな要因になった。
 原子力の推進を基本とするエネルギー政策は,わが国の環境政策においても決
定的な影響を及ぼしてきた。原発推進政策の陰で,再生可能エネルギーの導入の
必要性がこれまで真摯に顧みられたことはなかった。再生可能エネルギーの推進
を目的として制定されたはずのいわゆるRPS法は,機能を失ったまま放置され,
逆に再生可能エネルギーの推進にブレーキをかける役割を果たしてきた。(注記2「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」。2003年4月1日施行。
電気事業者に一定の基準量以上の「新エネルギー」(太陽光・風力・バイオマス等の再生可能エネルギーが指定されている)の利用を義務付けている。しかし,基準量が再生可能エネルギーの発電需要を大きく下回る水準に設定されていること,電気事業者が電力買取価額を決定しうる制度になっていること,再生可能エネルギーに優先的な接続・買取請求権を保証していないことなどの問題を抱えており,現実には再生可能エネルギーの普及を阻害する役割を果たしてしまっている。)結果として,わが国は再生可能エネルギー政策において世界の潮流から取り残され,開発当初は先進的技術を生み出した風力や太陽光などの新しい産業分野における主導権を外国企業に奪われてしまった。
 地球温暖化対策においても,原子力発電の推進が低炭素化を実現するための施
策の中核に据えられ,経済構造の低炭素化などを促すための排出量取引などの方
策はいまだにほとんど実現していない。
 こうしたなかで,原子力発電をベース電源とし,これを安価で安定的に補完す
る電源として石炭火力発電所の新設が相次ぎ,二酸化炭素の排出量を押し上げる
大きな要因となってきた。電力会社は電力消費の抑制やピーク時の電力需要の抑
制(ピークカット)という課題に向き合うことなく,むしろオール電化住宅の推
進など電力消費を積極的に拡大していく営業策を展開してきた。建築分野におい
ても,エネルギー消費量の抑制のための対策はほとんど実現していない。これま
でのエネルギー政策においては,エネルギー需要の抑制にはほとんど関心が払わ
れず,むしろそのさらなる拡大を見込むことによって原子力発電所などの発電所
の建設が推し進められてきた。
 このような原子力発電の推進を基軸とするエネルギー政策は,原子力発電所の
安全性を大前提としていた。このため,電力会社と政府関係機関は一体となって
原子力発電所の「絶対の安全性」を喧伝し続けてきた。この命題は,いつしか原
子力発電を推進しようとする関係者が共有し,関係者自身が信じて疑わないドグ
マにまで成長してしまった。こうして生みだされた安全性への過信が,原子力発
電所の安全対策の不備,そして本年3月11日に発生した東日本大震災による福
島第一原子力発電所の大事故を招来した大きな原因の一つである。
 政府は2010年6月,発電における原子力の比率を2030年に当時の3
0%から50%に高めることを含むエネルギー基本計画を閣議決定し,さらに1
4基の原子力発電所を増設しようとしてきた。地球温暖化対策においても,こう
した原子力発電の推進をその前提としてきた。しかし,今回の大震災をきっかけ
とする福島第一原子力発電所の事故と電力危機は,われわれにこれまでのエネル
ギー政策からの決別を迫っている。福島第一原子力発電所の惨状は,わが国のエ
ネルギー政策の惨状にほかならない。取り返しのつかない巨大な失敗を二度と繰
り返さないために,われわれは,エネルギー政策そのもののあり方を根本的に見
直し,全く新しいエネルギー政策を構築していかなければならない。
 当連合会は,2000年の第43回人権擁護大会における「エネルギー政策の
転換を求める決議」において,以下の5点を決議した。
(1) 原発の新増設を停止し,既存の原発については段階的に廃止する。
(2) エネルギー消費削減に積極的に取り組み,再生可能エネルギーの研究・開発
のために,公的助成と電力買取義務の制度化を内容とする自然エネルギー促進
法を制定する。
(3) 原子力安全規制行政は,アメリカの原子力規制委員会にならって独立行政委
員会に一元化するなど,推進官庁からの独立を確保する。
(4) 使用済燃料の再処理を中止し,直接処分のための研究と法制度の整備を行う。
(5) 高レベル放射性廃棄物の地層処分政策を凍結し,処分場に直結しかねない東
濃超深地層研究所の建設を直ちに中止するとともに,「特定放射性廃棄物の最
終処分に関する法律」を抜本的に見直し,安全な処分方法及び地層処分以外の
多様な選択肢のための研究を推進する。
 さらに,2009年第52回人権擁護大会における「地球温暖化の危険から将
来世代を守る宣言」においては,地球温暖化による被害を現在及び将来世代の人
権問題であると位置づけ,持続可能な社会の構築に向けて,エネルギー政策に関
する提言を採択した。
 本意見書は,これらの当連合会の取組を踏まえて,これまでの誤ったエネルギ
ー政策を根本的に転換するために,さらに具体的な提案を行うものである。


1 持続可能性を基本原則とするエネルギー政策(趣旨第1項)
 エネルギーの供給は,人間の諸活動の源であり,その安定的な供給の確保は
いつの時代においてもエネルギー政策の基本に据えられるべき目標である。そ
のことは今後のエネルギー政策においても変わりがない。
 しかし,今回の大震災は,経済面,社会面,環境面での持続可能性を持たな
いエネルギー政策は結局のところ破綻を免れず,安定供給という目的を達成す
ることはできないことを示している。エネルギー政策においては,50年先,
100年先を見据えたうえで持続可能性を確保していくことが追求されなけれ
ばならず,常に持続可能性という観点から政策を評価し,再検討しなければな
らない。


2 原子力発電所については,新増設を停止し,既存のものは段階的に廃止する
こと等(趣旨第2項)
 国全体あるいは周辺諸国にまで回復不可能な損害をもたらす危険性をはらむ
原子力発電には,あらゆる意味で持続可能性を認めることはできない。原子力
発電の「経済性」が言われることもあるが,誰も引き受けられないような巨大
なリスクをはらみ,国家財政を危機に追い込むような損害を生み出した事業に
は経済的な意味でも持続可能性を認めることはできない。
 当連合会は,先に述べたとおり,2000年の人権擁護大会において「原発
の新増設を停止し,既存の原発については段階的に廃止する」旨を決議したが,
さらに「段階的」な「廃止」を具体的に実行するために,以下の観点を考慮す
べきである。
(1) 老朽化している原発については,速やかに運転停止すること。
 今回事故を発生させた福島第一原子力発電所では6基すべてが運転開始3
0年を経過していた。このことからすれば,1970年代に運転が開始され
すでに運転開始30年を経過した原子力発電所については,できる限り速や
かに運転停止し,廃止すべきである。その他の原子力発電所も,運転開始3
0年を基準として運転停止し,廃止すべきである。

(2) 巨大地震の発生が切迫し,大きな地震動・津波に襲われる危険性がある地
域にある原発についても,運転を停止すること。例えば,平成13年12月
にとりまとめられた政府の中央防災会議の「東海地震に関する専門調査会」
報告では,「駿河湾から九州にかけての太平洋沿岸では,南海トラフでの海
溝型地震が100から150年おきに発生しているが,駿河湾付近では18
54年の安政東海地震の後約150年間大きな地震が発生しておらず,プレ
ート境界での歪みが臨界状態まで蓄積している可能性が高く,いつ巨大地震
が発生してもおかしくないと想定されて」おり(同報告1頁~2頁),「想
定東海地震はいつ発生してもおかしくないものである」(同9頁)として,
想定東海地震発生の周期性と切迫性を指摘し,震度6~震度7の揺れと(同
報告7頁)5~10mの津波の発生(同報告図11)を予想している。
 この想定東海地震の震源域のほぼ中央に,中部電力の浜岡原子力発電所が
所在している。この浜岡原子力発電所について,菅直人内閣総理大臣は,5
月6日に緊急記者会見を開催し,稼働中の4号機及び5号機を含む全ての原
子炉の運転停止を中部電力に要請したことを明らかにした。本要請は,想定
される東海地震に十分耐えられるよう,防潮堤の設置などの実施がされるま
でという条件付きではあるが,菅首相の判断は,評価できるものである。当
連合会も,中部電力が本要請に従い,すべての原子炉を運転停止することを
求める。

(3) それ以外の原発についても,福島第一原子力発電所の大事故を受けて,地
震・津波の対策が十分かどうか,直ちに点検することが必要である。安全性
が確認できないものは,その対策が完了するまで,運転を停止すべきである。


3 石炭火力発電は代替手段たり得ない(趣旨第3項)
 今回の大震災を契機として,石炭火力発電所の建設をさらに推進していこう
とする意見が一部に存在する。しかし,多量の環境汚染物質,とりわけ二酸化
炭素を排出する石炭火力発電所に環境面での持続可能性は認めがたい。石炭火
力発電所を原子力発電所にかわる主要な発電源として据えることは,放射能汚
染というリスクを地球温暖化という別のリスクで置き換えることにほかならず,
非常に危険な発想である。石炭資源は石油と同様に大きな価格上昇リスクにさ
らされており,将来的な経済性にも大きな疑問符がつきまとう。コージェネレ
ーションの促進など既存の火力発電所における一層の効率化が図られることは
言うまでもないが,エネルギー供給の将来を石炭に託すという選択肢は存在し
ない。


4 再生可能エネルギーの推進を政策の中核に据えるべきである(趣旨第4項)
 この10年間で再生可能エネルギーをめぐる状況は一変した。欧米諸国だけ
でなく中国などの新興諸国においても再生可能エネルギーの導入が爆発的な勢
いで進んでいる。EUにおいてはここ数年,今世紀半ばまでにすべてのエネル
ギーを再生可能エネルギーによって供給することが技術的かつ経済的に実現可
能であるとの研究結果が相次いで発表されているが,再生可能エネルギーの躍
進は世界のエネルギー供給体制のあり方を根本的に変えつつある。
対照的に,わが国においては,再生可能エネルギーには「不安定」,「高い」
などの否定的な評価がつきまとい,その将来的な可能性を真摯に検討する動き
は限られたものにすぎなかった。わが国における再生可能エネルギーによる発
電量は,現在,発電総量の約10%を占めているが,その大部分は大規模水力
(ダム)発電によるものであり,太陽光,風力,バイオマスなど純粋な意味で
の再生可能エネルギーによる発電量は,発電総量の約1%に留まっている。最
近になってようやく,わが国においても固定価額買取制度の導入など再生可能
エネルギーの積極的な導入に向けた機運が高まりつつあり,この通常国会に,
固定価額買取制度の導入を基軸とする「電気事業者による再生可能エネルギー
電気の調達に関する特別措置法案」が4月5日付けで提出された。こうした動
きは再生可能エネルギーの普及に向けた大きな前進ではあるが,今回の法案で
は,肝心の買取価額・期間に関する定めを省令に委任しており,各施設発電コ
ストに見合った買取価額を保証していない。さらに,他の発電電力に優先する
買取請求権を明確に保障していないなど多くの問題点を抱えており,再生可能
エネルギーの推進をエネルギー政策の基本に据えるというにはほど遠い状況に
ある。再生可能エネルギーには,原子力発電に代わるべき十分なエネルギー供
給能力がある。(注記3 環境省の試算によれば,政府が提案している固定価額買取制度を導入することによって,風力発電だけでも原子力発電所7~40基分の電力の供給が期待できる(2011年4月21日朝日新聞)。この試算では,風力発電施設の稼働率は24%,原子力発電所は1基あたり出力100万kW,稼働率85%として算定されている。環境省地球環境局地球温暖化対策課「平成22年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査概要」(2011年4月21日発表)参照。)われわれは,再生可能エネルギーが,真に持続的なエネルギー供給を可能にする唯一のエネルギー源であるということを銘記し,再生可能エネルギーの推進を国のエネルギー政策の根幹に据えなければならない。再生可能エネルギーによるエネルギー供給量の変動を補うために,天然ガス発電を並
存させる必要性は今後も残ると思われるが,揚水発電等の蓄電設備及び送電網
の拡充を進めることによって再生可能エネルギーでエネルギーの全量を供給す
ることを目指していくべきである。再生可能エネルギーの活用は,エネルギー
自給率がわずか4%にすぎないわが国にとって,エネルギー安全保障の面でも
重要な意味を持っている。さらに,各地に小規模な発電施設を設置していくこ
とは,地域社会における雇用の確保や経済の活性化にもつながり,今回の大震
災における被災地の復興策としても重要な意味を持っている。
 今後のエネルギー政策においては,中期的,長期的な再生可能エネルギーの
導入目標を明示し,その達成に向けて固定価額買取制度の導入,送配電網の拡
充,立地計画や建設手続などの環境整備を進めて行くことが不可欠である。


5 エネルギー製造・供給事業の自由化を促進し,発電と送電を分離しなければ
ならない(趣旨第5項)
 これまで,エネルギー事業の全面的な自由化は安定供給の確保という要請に
反するかのように主張されることが多かった。しかし,今回の大震災は地域ご
とに分断された独占体制下でのエネルギー供給の脆弱さを露わにしている。エ
ネルギー事業の自由化は持続可能なエネルギー供給を実現するための要であり,
発電事業と供給事業においては自由化を促進すべきである。そのうえで,発電
事業における環境への汚染物質排出に対し排出規制や経済的賦課を課し,環境
面でも健全性を保った競争が行われる条件を整えるべきである。
 また,電力(ガス)事業においては,供給と送配電が一体的に行われている
が,送配電網(供給網)の所有は,発電(製造)・供給事業者から分離したう
えで,国あるいは公的機関の所有下あるいはその全面的なコントロール下にお
く必要がある。送配電網の拡充は,公正な競争の実現だけでなく再生可能エネ
ルギーの推進のための必要条件であり,国が責任をもってその拡充を進めてい
くべきである。さらに,送配電網への接続と利用(託送)に関するルールを法
律上明確にするとともに,高止まりしている利用料(託送料)を低減していく
こと,実質的に機能する電力取引市場を整備することなど,公正な電力市場の
創設に向けた条件整備を急ぎ進めていくべきである。


6 エネルギー消費を抑制するための実効的な制度の導入が必要である(趣旨第
6項)
 これまでのエネルギー政策においては,エネルギーをその消費者に届けるこ
とにその主眼が置かれ,届けられたエネルギーがどう消費されるのかについて
はほとんど関心が払われてこなかった。しかし,今回の震災及び原発事故によ
る電力不足は,ピーク時における電力需要の抑制(シフト)を促していくこと
が非常に重要な意味をもっていることを自覚させた。今後のエネルギー政策に
おいては,エネルギーの消費量を供給量に応じ適確にコントロールしていくた
めの実効的な施策を導入していかなければならない。
 欧米諸国においては,供給者と消費者の間を双方向的な情報通信システムで
結び,刻一刻変化するエネルギーの供給量に見合った消費者側の行動を引き出
し,エネルギー消費をコントロールしていくシステム(スマートグリッド)が
すでに確立しつつあり,その導入に向けた動きが急ピッチで進んでいる。わが
国においても,スマートグリッドの整備が急務である。さらに,ビルエネルギ
ー管理システムなどの省エネシステムの導入者向けの割引料金制度,時間帯別
の電力料金制度などの消費削減を誘導する経済的施策についても積極的に導入
していくべきである。
 また,エネルギー消費量表示制度(注記4 電力などの時間当たりや年間消費量など,消費者の選択の目安となるエネルギー消費量の表示を義務付ける制度)の建築物などへの適用,トップランナー方式(注記5 製品などの省エネルギー性能基準を市場に出ている最も優れた水準以上とする方式)による省エネ規制の拡充,建築物の断熱規制の導入など,省エネルギーのための実効的な対策を早急に実現していくことも不可欠である。一般消費者の意識を変え,自発的な消費削減のための行動様式をつくり出すためには,省エネ
対策に関する相談窓口を充実させるとともに,持続的な資金的援助制度を導入
し,「賢い」消費者を育ていくことにも力を注がなければならない。


7 排出量取引制度等によってエネルギー供給の確実な低炭素化を図っていくこ
とが必要である(趣旨第7項)
 これ以上の地球の温暖化を避けるため,われわれは,エネルギーの供給と消
費のあり方を大胆に転換していかなければならない。
 すでに多くの国や地域が排出量取引制度を導入しているが,排出量取引制度
は,最も低廉なコストで温室効果ガスの排出を確実に進めていくうえで非常に
有効な手段であって,こうした制度の導入によって燃料源の転換,化石燃料か
らの脱却を図っていくべきである。わが国における排出量取引制度の導入をこ
れ以上先送りすることは許されず,発電所を対象に取り込んだ排出量取引制度
を一刻も早く導入しなければならない。(注記6 日本弁護士連合会2010年3月18日「地球温暖化対策基本法案に関する意見書」,2011年2月17日「中央環境審議会地球環境部会国内排出量取引制度小委員会『我が国における国内排出量制度の在り方について(中間整理)』に対する意見書」参照)
 さらに,炭素税や再生可能エネルギーに関する固定価額買取制度の導入,省
エネルギー促進策などの対策を総合的に進めていく必要がある。こうした施策
によって,わが国においても2020年までに25%,2050年までに80%
削減するという目標(いずれも1990年比)を達成することは十分に可能で
ある。

8 主役の交代を(趣旨第8項)
 以上に述べたような新しいエネルギー政策において,その主役を担うのが,
中央官庁や電力会社の中枢にいる一握りの人々であってはならないことは明ら
かである。再生可能エネルギーを基軸とするエネルギー政策における国の役割
は,むしろ後見的なものが中心となる。再生可能エネルギーの活用を促進して
いくための制度の整備,エネルギー供給事業に伴う環境負荷が事業者のコスト
として適正に反映されるための経済的な仕組の導入,消費者が積極的に消費の
コントロールに寄与していくための環境の整備など,国に期待される役割は
依然として大きい。しかし,エネルギー政策は多くの国民に開かれ,国民の積極
的に参加を促していくものとならなければならない。これからのエネルギー政
策においては,意識ある無数の国民がその主役にならなければならないからで
ある。
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科学的な考察と施策展開のために、「低線量被ばくの人体への影響について:近藤誠・慶応大」ご参照を!

2011-05-12 00:19:34 | 築地を守る、築地市場現在地再整備

 低線量被ばくの人体への影響を科学的に分析し、施策展開をしていかねばなりません。

 低線量被ばくの人体への影響について書かれた記事がございましたので、こちらでも転載致します。

 一般社団法人サイエンス・メディア・センター ・(社)SMC」の記事です。

 http://smc-japan.org/?p=1627

 

近藤誠(こんどう・まこと)

慶応義塾大学医学部放射線科講師

1948年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学医学部卒。患者の権利法を作る会、医療事故調査会の世話人をつとめる。

 

 テレビや新聞で報道されている被ばくに関する専門家のコメントに100ミリシーベルトを基準として「これ以下の被ばくは問題ない」とするものが多々見受けられますが、この表現には問題があるので、指摘します。

「広島、長崎のデータなどから100ミリシーベルト以下では人体への悪影響がないことは分かっています」という記事がありました。

 確かに100ミリシーベルト以下の被ばくでは火傷のような急性症状は出ません。急性症状について言っているなら妥当な表現です。

 しかし、広島、長崎で被爆した人の追跡調査では50ミリシーベルト以下の低線量被ばくでも発がんによる死亡増加を示唆する研究結果があります。[文献1]

 放射線はわずかな線量でも、確率的に健康に影響を与える可能性があります。

 低線量被ばくについては、日本を含む世界15カ国で40万人の原子力施設作業員の調査をしたレポートがありますが、これによると、被ばく量が50ミリシーベルト以下でも発がん率は上昇しています。[文献2]

 また被ばく量が1シーベルト上がるごとに、がんによる相対過剰死亡数が率にして0.97(97 %)増える計算です。相対過剰死亡率の計算は若干難しいので、結果だけ示しますと、死亡統計により国民死亡の30 %ががんによる日本では、10ミリシーベルトを被ばくすれば、がんの死亡率は30.3 %、100ミリシーベルトの被ばくでは33 %になります。

 100ミリシーベルト以下は安全だとする説は、ここ数年でほぼ間違いだとされるようになっています。

 人間は放射線被ばくだけで発がんするわけではありません。

 私は、「発がんバケツ」という考え方をします。それぞれの人が容量に個人差のある発がんバケツを持っています。放射線だけでなく、タバコや農薬など、いろんな発がんの原因があり、それがバケツにだんだんとたまっていき、いっぱいになってあふれると発がんすると考えます。

 ある人のバケツが今どのくらい発がんの原因で満たされていたかで、今回被ばくした量が同じでも、発がんする、しないに違いがでます。ですから、放射線量による発がんの基準値を決めるのは難しいのです。

 たばこを吸う本数による発がんリスクも、吸う本数や年齢、吸ってきた年月により変わり、計算が難しい。ですから、放射線被ばくのリスクと喫煙による発がんのリスクを比較してより安全だということに疑問を感じます。

 同じ記事中に

「100ミリシーベルトを被ばくしても、がんの危険性は0.5 %高くなるだけです。そもそも、日本は世界一のがん大国です。2人に1人が、がんになります。つまり、もともとある50 %の危険性が、100ミリシーベルトの被ばくによって、50.5 %になるということです。たばこを吸う方が、よほど危険と言えます」とあります。

 0.5 %という数字は、国際放射線防護委員会(ICRP)の2007年の勧告中にある、1シーベルトあたりの危険率(5 %)に由来していると思います。つまり1シーベルトで5 %ならば、その10分の1の100ミリシーベルトならば、危険率は0.5%になるというわけです。しかし、この数字は発がんリスク(がんになるリスク)ではなく、がんで死ぬリスクです。ここでは、2人に1人ががんになるというのは発がんの確率ですから、ここに、危険率(がんで死ぬリスク)の0.5 %をプラスしているのは、発がんリスクとがん死亡のリスクを混同していると考えられます。

 リスクを混同している上に、喫煙量も明示せずにたばこの方が危険と言っている。

 メディアの方は、こういう乱暴な議論に気をつけ、科学的な根拠の誤用に気をつけていただきたいと思います。

 

参考文献

文献1:Brenner DJ, Doll R, Goodhead DT., et al. "Cancer risks attributable to low doses of ionizing radiation: assessing what we really know." Proc Natl Acad Sci U S A. (2003) Nov 25;100(24):13761-6.【PubMed

文献2:Cardis E, Vrijheid M. Blettner M., et al. "Risk of cancer after low doses of ionising radiation: retrospective cohort study in 15 countries." BMJ (2005) 9;331(7508): 77【PubMed

 

【関連記事:放射線被ばくに関して:近藤誠・慶応大

他関連文献: Shuryak I, Sachs RK, Brenner DJ. "Cancer risks after radiation exposure in middle age." J Natl Cancer Inst. (2010) Nov 3;102(21):1628-36. 【PubMed

 

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