民主主義の産物である議会の議決。
それが、市民の代表である議員が判断したにも関わらず、裁判で覆させられることは、基本的にはあってはならないものと考えられます。
学説「処分性否定説」:「立法府の固有の立法作用に基づく一般抽象的な規範の定立である法律・条例の定立は本来的な行政作用を意味する行政庁の行為に含まれないから、そもそも処分にはあたらない」(杉本良吉)
ただし、取消訴訟の訴訟要件である「処分性」が限定的に認められ、議決された条例の是非が裁判の対象となる場合があります。
学説「処分性限定肯定説」:「立法行為の形式をとるものであっても、単なる一般抽象的な規範の定立ではなく、行政庁の具体的な行為を待たずに直接国民の権利利益に具体的な影響を及ぼすものは、純粋な立法ではなく立法の形式をかりた処分というべきものであって、実質的に処分と同視できるときは、取消訴訟の対象となる」
実際、先日のブログでは、「処分性」が最高裁で初めて認められた判例をご紹介しました。
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/6265594d0d50e0326518e6020c332fa8
過去の判例では、
小学校廃止条例の処分性判断基準:法的地位に直接影響を及ぼすか
小学校廃止手続:市町村教育委員会が条例制定請求決議→市町村議会に条例提出→議会議決→長が公布→教育委員会が廃止告示→県教育委員会に提出→市町村教育委員会が保護者に就学校を指定
*処分性肯定判決:大津地判平成4.3.30 特定の1分校廃止条例無効確認請求訴訟
一旦利用関係が生じた以上、当該特定の学校で法廷義務年限まで教育を受けさせる具体的権利利益がある。
*処分性否定判決:最一小判平成14.4.25 千代田区内既存の全14小学校廃止し8校を新設する条例取消請求訴訟
「原審が適法に確定した事実関係によれば、上告人らの子らが通学していた区立小学校の廃止後に新たに設置され就学校として指定を受けた区立小学校は、上告人らの子らにとって社会生活上通学することができる範囲内にないものとは認められないというのである。これによれば、本件条例は一般的規範にほかならず、保護者らは、東京都千代田区が社会生活上通学可能な範囲内に設置する小学校においてその子らに法定年限の普通教育を受けさせる権利ないし法的利益を有するが、具体的に特定の区立小学校で教育を受けさせる権利ないし法的利益を有するとはいえないとし、本件条例が抗告訴訟の対象となる処分に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができる。」
水道料金改定条例処分性否定判決:最二小判平成18.7.14水道料金改定条例無効確認請求訴訟
公の施設利用の不当な差別的取扱いは自治法244条3項違反→差額分の債務不存在確認+支払分不当利得返還請求認容
「本件改正条例は、旧高根町が営む簡易水道事業の水道料金を一般的に改定するものであって、そもそも限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく(特定性がない)、本件改正条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできない」
改正条例に基づき料金請求手続がされるので直接性もない。
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「処分性」の側から見て、処分性があると判断する重要な要素は、以下5点。
1)公益実現のため法令に基づいてされる行政機関の一方的決定(公権力性)
2)法的地位に直接影響をもたらす法行為であること
3)法的地位に影響を受けるものが具体的に特定できること
4)現段階で実効的救済が必要であること(成熟性)
5)当該根拠法上特定の者に手続的権利を与え処分性を前提としていること