「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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夫婦の片方はあらゆる財産を処分しうるし、処分された一方は、その責任を負うことになってしまうのか。

2012-05-15 16:38:09 | シチズンシップ教育
 夫婦の財産関係を、的確に示した有名な判例です。

【事案の概要】

妻Xが婚姻前から持っていた妻固有の財産である土地建物を、夫Aが事業失敗の債権回収をうけ、昭和37年4月2日Yに対して土地建物の売買契約を締結し、その代金で債務を弁済しようとした。(正確には、Xがその土地をYに売り、その代金として、Yの夫Aに対する債権をXに譲渡することとした。)Xは、これを全く知らなかった。同月12日付で各所有権移転登記。

妻Xは、昭和39年夫Aと離婚。

Xは、Yに本件土地を売り渡したことはなく、登記は無効として、Yに対し登記の抹消手続きを求めた。

********************

 妻に内緒で、妻個人の財産である土地を夫が処分した事案です。

 妻と夫は、日常家事においては、代理権授与の関係があるとされています。

 妻が買い物した場合、代金を取りに来たひとに夫がお金を支払うことや、その逆もよくあることです。

 そのやりとりの根拠は、民法761条にあります。


*****民法*******

(日常の家事に関する債務の連帯責任)
第七百六十一条  夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
**************


 代理権授与の関係を、「基本代理権」と考えた場合、

 民法110条で前条109条を準用して、権限外の行為であるが、第三者が、代理人の権限があると信じ、その法律行為の責任を本人が負うことになります。



*****民法*******

(代理権授与の表示による表見代理)
第百九条  第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。

(権限外の行為の表見代理)
第百十条  前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。


**************


 事案の場合は、妻固有の財産の処分は、夫Aの権限外であるけれども、夫婦は日常家事の連帯責任を負う関係から、夫に代理権があると信じ、夫による妻の土地売却の法律行為は、妻Xが負うことになるとして、Y側は主張しました。

 もし、この論理が通じると、夫婦のかたほうは、あらゆる財産を処分しうるし、財産を処分されたほうは、その責任を、いくら知らなくてなされても、負うことになってしまいます。

 最高裁は、そのような民法110条の類推適用を封じる方向で、判決をしました。
 すなわち、「当該越権行為の相手方である第三者においてその行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、民法一一〇条の趣旨を類推適用して、その第三者の保護をはかれば足りるものと解するのが相当である。」として、日常家事に関する法律行為の範囲内で、民法110条を類推適用する枠をはめたのです。


 夫婦別産制の制度が壊れないように、維持する形で、方向付けをしたことになります。

 皆様ご夫婦に、財産的独立があるかどうかの現実は、さておき、法は、その独立を守る制度を整えています。


 


****最高裁ホームページより****
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=51933&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120411723572.pdf




事件番号

 昭和43(オ)971



事件名

 土地建物所有権移転登記抹消登記手続請求



裁判年月日

 昭和44年12月18日



法廷名

 最高裁判所第一小法廷



裁判種別

 判決



結果

 棄却



判例集等巻・号・頁

 民集 第23巻12号2476頁




原審裁判所名

 東京高等裁判所



原審事件番号

 昭和41(ネ)1792



原審裁判年月日

 昭和43年06月26日




判示事項

一、民法七六一条と夫婦相互の代理権
二、民法七六一条と表見代理




裁判要旨

一、民法七六一条は、夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解すべきである。
二、夫婦の一方が民法七六一条所定の日常の家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権を基礎として一般的に同法一一〇条所定の表見代理の成立を肯定すべきではなく、その越権行為の相手方である第三者においてその行為がその夫婦の日常の家事に関する法律行為に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、同条の趣旨を類推して第三者の保護をはかるべきである。




参照法条

 民法761条,民法110条


判決文 全文

   主   文

 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。

       理   由

 上告代理人小宮正己の上告理由第一点について。
 本件売買契約締結の当時、被上告人が訴外Aに対しその売買契約を締結する代理権またはその他の何らかの代理権を授与していた事実は認められない、とした原審の認定判断は、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)挙示の証拠関係および本件記録に照らし、首肯することができないわけではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の適法にした証拠の取捨判断および事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
 同第二点について。
 民法七六一条は、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによつて生じた債務について、連帯してその責に任ずる。」として、その明文上は、単に夫婦の日常の家事に関する法律行為の効果、とくにその責任のみについて規定しているにすぎないけれども、同条は、その実質においては、さらに、右のような効果の生じる前提として、夫婦は相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解するのが相当である。
 そして、民法七六一条にいう日常の家事に関する法律行為とは、個々の夫婦がそれぞれの共同生活を営むうえにおいて通常必要な法律行為を指すものであるから、その具体的な範囲は、個々の夫婦の社会的地位、職業、資産、収入等によつて異なり、また、その夫婦の共同生活の存する地域社会の慣習によつても異なるというべきであるが、他方、問題になる具体的な法律行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属するか否かを決するにあたつては、同条が夫婦の一方と取引関係に立つ第三者の保護を目的とする規定であることに鑑み、単にその法律行為をした夫婦の共同生活の内部的な事情やその行為の個別的な目的のみを重視して判断すべきではなく、さらに客観的に、その法律行為の種類、性質等をも充分に考慮して判断すべきである。
 しかしながら、その反面、夫婦の一方が右のような日常の家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権の存在を基礎として広く一般的に民法一一〇条所定の表見代理の成立を肯定することは、夫婦の財産的独立をそこなうおそれがあつて、相当でないから、夫婦の一方が他の一方に対しその他の何らかの代理権を授与していない以上、当該越権行為の相手方である第三者においてその行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、民法一一〇条の趣旨を類推適用して、その第三者の保護をはかれば足りるものと解するのが相当である。
 したがつて、民法七六一条および一一〇条の規定の解釈に関して以上と同旨の見解に立つものと解される原審の判断は、正当である。
 ところで、原審の確定した事実関係、とくに、本件売買契約の目的物は被上告人の特有財産に属する土地、建物であり、しかも、その売買契約は上告人の主宰する訴外株式会社千代田ベヤリング商会が訴外Aの主宰する訴外株式会社西垣商店に対して有していた債権の回収をはかるために締結されたものであること、さらに、右売買契約締結の当時被上告人は右Aに対し何らの代理権をも授与していなかつたこと等の事実関係は、原判決挙示の証拠関係および本件記録に照らして、首肯することができないわけではなく、そして、右事実関係のもとにおいては、右売買契約は当時夫婦であつた右Aと被上告人との日常の家事に関する法律行為であつたといえないことはもちろん、その契約の相手方である上告人においてその契約が被上告人ら夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由があつたといえないことも明らかである。
 してみれば、上告人の所論の表見代理の主張を排斥した原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審の適法にした事実の認定を争い、または、独自の見解を主張するものにすぎず、採用することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官  入江俊郎
            裁判官  長部謹吾
            裁判官  松田二郎
            裁判官  岩田 誠
            裁判官  大隅健一郎
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住み慣れたご自宅で、健康についても、自分の生活についても安心して老いをまっとう出来る中央区

2012-05-15 15:21:39 | マニフェスト2011
 ひとり暮らしのご高齢者、体がご不自由で外になかなか出かけられないとすると、日常家事の買い物は、ヘルパーができるとしても、銀行・郵便局のお金の出し下しや各種手続きは、たいへんだろうと思います。

 それをお手伝いするサービスが求められることになります。
 お金や、ご本人の生活状況に立ち入ることになり、信頼できる立場からのサービス提供が必要です。

 年金が振り込まれた銀行に、その月の生活費とするお金をおろしに行く。
 たかがこれだけと思われますが、これだけのことであっても、体がご不自由になるとたいへんなことです。


 今、中央区では社会福祉協議会ステップ中央がその役割を担っているところです。

 中央区では、約60名のご利用者が、同協議会5名のスタッフで支えられています。

 潜在的なご利用の希望者は、もっと多いのではと感じるところです。


 また、このような金銭管理から、例えば認知症が進行し、実際に被後見人になられた場合、これまでと同じ顔見知りのかたが、続いて後見人の形でサービス提供できる選択肢もあってもよいのではないかと思います。
 ただ、このような人員では、回らない話であり、実際に行うには、それなりの基盤を整える必要はあるでしょう。



 住み慣れたご自宅で、健康についても、自分の生活についても安心して、老いをまっとう出来る中央区でありたいものです。
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適正な行政手続きを考える:紋別市 市立安養園民間移管受託事業候補者選定過程で生じた事案よりH20年

2012-05-15 09:44:59 | シチズンシップ教育
 受託事業候補者選定委員会の審査を経て事業者公募の適正な手続きを踏んだと思われる決定が、市長の裁量で取り消された事案に出会いました。

 最高裁は、市長の裁量で出された通知が、処分性がないという判断でしたが、一方、原審の札幌高裁では、処分性があるという判断でした。

 それら判断がどういう理由で出されているか、考察を深めていかねばならないと思う次第です。


 この事案で、私がひっかかるところは、紋別市が設置した『紋別市立安養園民間移管受託事業候補者選定委員会』において審議され、A会がYが求めている要求水準を満たしているとして、受託事業候補者に決定されたことを紋別市長が裁量で採用せず、覆している点です。
 ただの1つ事業所の応募しかなかったこと、応募してきた事業所の理事に前市長が名を連ねていたことなど事情はあろうかと思いますが、それでも選定委員会で決定された以上は、その選定委員会の意思を尊重すべきなのではないかと考えるところです。
 なんのための選定委員会開催だったのか、その選定委員会の意思が反映されなかったことが、しっくりいきません。

 札幌高裁も、同様に「甲第10及び第11号証によれば,選定委員会は,審査の結果,Aが被控訴人が求めている要求水準を満たしているとして,受託事業候補者に決定し,紋別市長に報告していたことが認められる。紋別市長は,選定委員会が出した結論に拘束されるものではないが,本件募集要綱の記載に鑑みれば,紋別市長が選定委員会の結論と異なる処分をするときは,それだけの合理的理由が必要である。ところが,上記のとおり検討したところによれば,被控訴人の挙げる理由は,いずれも合理的でなく,選定委員会が出した結論を覆すに足りるものではない。したがって,紋別市長がした本件処分は,紋別市長がその裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用して行ったものであるから,違法なものとして取り消されるべきである。」と判事しているところです。


【事案の概要】
Yは,平成20年2月8日,自ら設置し管理する老人福祉施設である紋別市立安養園を民間事業者に移管すること(以下「本件民間移管」という。),

その手法として,長期的に同じ事業者が経営を継続することのできる効用を期待して,

指定管理者方式(地方自治法244条の2第3項に基づき事業者に施設の管理を一定期間行わせる方式)を避けて施設譲渡方式(事業者に施設の資産を譲渡する方式)を採ること,

当該老人福祉施設の資産の譲渡先としてその運営を引き継ぐ事業者(以下「受託事業者」という。)を公募により選考することを決め,

「紋別市立安養園民間移管に係る受託事業候補者募集要綱」(以下「本件募集要綱」という。)を定めた。


本件募集要綱には,

Yは受託事業者に対し上記施設の建物及び備品(以下「本件建物等」という。)を無償で譲渡するとともに上記建物の敷地(以下「本件土地」という。)を当分の間無償で貸与すること,

受託事業者は移管条件に従い上記施設を老人福祉施設として経営するとともにYと締結する契約の各条項を信義誠実の原則に基づいて履行すべきこと,

Yは受託事業者の決定後においても移管条件が遵守される見込みがないと判断するときはその決定を取り消すことができること

などが定められていた。


Yは,同年2月25日から同年3月24日まで受託事業者の募集(以下「本件募集」という。)をし,設立準備中の社会福祉法人であるA会は,同日付け提案書を提出してこれに応募したところ,他に応募者のない中で,Yの設置に係る受託事業候補者選定委員会においてその候補者として選定された。(「A会がY求めている要求水準を満たしているとして、受託事業候補者に決定し、紋別市長に報告」:札幌高裁判決文)

同年4月9日紋別市長と副市長がX1のもとを訪れて、「二人の理事を変更できないか。」と申し入れ、
4月11日には、再度X1に「前市長と前助役を理事からはずせないか。」と述べたが、X1がこの申し入れを断った。

同年5月2日,紋別市長から,A会を相手方として本件民間移管の手続を進めることは好ましくないと判断したので提案について決定に至らなかった旨の通知(以下「本件通知」という。)を受けた。

Xらは、本件通知が不当であるとして、紋別市長に対し、行政不服審査法6条に基づく異議申し立てをした。

紋別市議会 会期同年6月3日-12日(平成20年度第2回定例会)
 紋別市長答弁:本件通知には,「先般開催いたしました『紋別市立安養園民間移管受託事業候補者選定委員会』におきまして、社会福祉法人A(予定)が受託事業候補者として選定されました。しかしながら、当方の事務的に拙速なスケジュールにより公募期間が短かったことにより、1法人のみの応募となり、このことにより、公平な応募の準備機会が損なわれることとなり、これらを含め、更に総合的に判断をした結果、市の説明責任や今後の行政改革推進の観点から、このまま手続きを進めることが安養園の民間移管に当たり、好ましくないと判断いたしましたので、社会福祉法人A(予定)の紋別市立安養園民営化移管に係わる提案について、決定に至らなかったことでご理解願います。」(甲第15号証)。
 「Aに対する回答書の中で、事務的に拙速なスケジュールで1法人のみの応募では市民に理解されないとみずから申し述べられたことから、私どもの反省点も踏まえ、記述し、理解を得たものと考えております。また、私の役員変更についての申し出を受けていただけるということになれば、受託事業者の決定について再検討する考えでありました。」(甲第21号証の1)。



紋別市長は、同年8月22日付で、本件却下決定をした。




Xらは、Yに対し
1)行政事件訴訟法3条3項に基づき本件却下決定の取消し
2)同条2項に基づき本件通知の取消し
3)同条6項1号に基づき、受託事業候補者としてAが決定された旨の通知をすることのYへの義務付け
を求めて訴えを提起


第1審は、本件通知には処分性がないとして請求を棄却。
Xらは、これを不服として、控訴を提起。

******最高裁ホームページより該当箇所を引用*****
(ブログでは、最高裁と高裁の匿名のアルファベットを統一して記載をしたため、原文と匿名の記号が一致しない点はご了承ねがいます。)

<最高裁判決について>
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110614143812.pdf

事件番号

 平成22(行ヒ)124



事件名

 行政処分取消等請求事件



裁判年月日

 平成23年06月14日



法廷名

 最高裁判所第三小法廷



裁判種別

 判決



結果

 破棄自判



判例集等巻・号・頁

 集民 第237号21頁




原審裁判所名

 札幌高等裁判所



原審事件番号

 平成21(行コ)12



原審裁判年月日

 平成21年11月27日




判示事項

 市営の老人福祉施設の移管先の公募に提案書を提出して応募した事業者が市長から受けた,提案につき決定に至らなかった旨の通知が,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないとされた事例




裁判要旨

 市営の老人福祉施設の民間事業者への移管に当たり,その相手方となる事業者の選考のための公募に提案書を提出して応募した者が,市長から,その者を相手方として上記移管の手続を進めることは好ましくないと判断したので提案について決定に至らなかった旨の通知を受けた場合において,上記移管は市と相手方となる事業者との間で契約を締結することにより行うことが予定されていたものであり,上記公募は法令の定めに基づくものではなく上記移管に適する事業者を契約の相手方として選考するための手法として行われたものであったという事情の下では,上記通知は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。




参照法条

 地方自治法234条1項,地方自治法234条2項,地方自治法238条の4第2項,地方自治法238条の4第5項,地方自治法238条の5第1項,地方自治法238条の5第4項,地方自治法238条の5第6項,地方自治法238条の5第7項,地方自治法施行令167条の2第1項2号,行政事件訴訟法3条1項,行政事件訴訟法3条2項

 主   文

 原判決中上告人敗訴部分を破棄し,同部分につき被上告人らの控訴を棄却する。
 控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする。

       理   由

 上告代理人林孝幸,同山本利幸,同安部光典の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
 1 本件は,上告人の自ら設置し管理する老人福祉施設の資産の譲渡先としてその運営を引き継ぐ事業者の選考のための公募において,設立準備中の社会福祉法人が,提案書を提出してこれに応募したところ,紋別市長から提案について決定に至らなかった旨の通知を受けたことから,上記法人の理事又は理事長の就任予定者である被上告人らが,上記通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たることを前提にその取消し等を求めている事案である。
 2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 上告人は,平成20年2月8日,自ら設置し管理する老人福祉施設である紋別市立安養園を民間事業者に移管すること(以下「本件民間移管」という。),その手法として,長期的に同じ事業者が経営を継続することのできる効用を期待して,指定管理者方式(地方自治法244条の2第3項に基づき事業者に施設の管理を一定期間行わせる方式)を避けて施設譲渡方式(事業者に施設の資産を譲渡する方式)を採ること,当該老人福祉施設の資産の譲渡先としてその運営を引き継ぐ事業者(以下「受託事業者」という。)を公募により選考することを決め,「紋別市立安養園民間移管に係る受託事業候補者募集要綱」(以下「本件募集要綱」という。)を定めた。本件募集要綱には,上告人は受託事業者に対し上記施設の建物及び備品(以下「本件建物等」という。)を無償で譲渡するとともに上記建物の敷地(以下「本件土地」という。)を当分の間無償で貸与すること,受託事業者は移管条件に従い上記施設を老人福祉施設として経営するとともに上告人と締結する契約の各条項を信義誠実の原則に基づいて履行すべきこと,上告人は受託事業者の決定後においても移管条件が遵守される見込みがないと判断するときはその決定を取り消すことができることなどが定められていた。
 上告人は,同月25日から同年3月24日まで受託事業者の募集(以下「本件募集」という。)をし,設立準備中の社会福祉法人であるA会は,同日付け提案書を提出してこれに応募したところ,他に応募者のない中で,上告人の設置に係る受託事業候補者選定委員会においてその候補者として選定された後,同年5月2日,紋別市長から,A会を相手方として本件民間移管の手続を進めることは好ましくないと判断したので提案について決定に至らなかった旨の通知(以下「本件通知」という。)を受けた。
 3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,本件通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとした上で,本件通知の取消請求を認容した。
 本件民間移管に当たっては,指定管理者方式と施設譲渡方式とが検討された上で,長期的に同じ事業者が経営を継続することのできる効用を期待して,後者が選択されたところ,紋別市公の施設に係る指定管理者の指定手続に関する条例(平成17年紋別市条例第11号)及び同条例施行規則(平成17年紋別市規則第46号)によれば,上告人においては,指定管理者方式を採る場合には原則として指定管理者の候補者を公募することとされているから,本件募集要綱を定めて本件募集を行ったのは指定管理者方式を参考にしたものと推認され,より慎重に受託事業者を選定する必要のある施設譲渡方式においては公募によることが地方自治法の解釈上要求されているものと解される。以上によれば,本件募集は法令の定めに基づいてされたものということができ,本件募集に応募した者には本件募集要綱に従って適正に選定を受ける法的利益があり,本件通知はこの法的利益を制限するものであるから行政処分性がある。
 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 前記事実関係によれば,本件民間移管は,上告人と受託事業者との間で,上告人が受託事業者に対し本件建物等を無償で譲渡し本件土地を貸し付け,受託事業者が移管条件に従い当該施設を老人福祉施設として経営することを約する旨の契約(以下「本件契約」という。)を締結することにより行うことが予定されていたものというべきである。本件募集要綱では,上告人は受託事業者の決定後においても移管条件が遵守される見込みがないと判断するときはその決定を取り消すことができるとされており,本件契約においても,これと同様の条項が定められれば解除権が留保されるほか,本件土地の貸付けには,公益上の理由による解除権が留保されており(地方自治法238条の5第4項,238条の4第5項),本件土地の貸付け及び本件建物等の無償譲渡には,用途指定違反を理由とする解除権が留保され得るが(同法238条の5第6項,7項),本件契約を締結するか否かは相手方の意思に委ねられているのであるから,そのような留保によって本件契約の契約としての性格に本質的な変化が生ずるものではない。
 そして,本件契約は,上告人が価格の高低のみを比較することによって本件民間移管に適する相手方を選定することができる性質のものではないから,地方自治法施行令167条の2第1項2号にいう「その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないもの」として,随意契約の方法により締結することができるものである。また,紋別市公の施設に係る指定管理者の指定手続に関する条例及び同条例施行規則は,上告人の設置する公の施設に係る地方自治法244条の2第3項所定の指定管理者の指定の手続について定めたものであって(同条例1条参照),本件契約の締結及びその手続につき適用されるものではない。そうすると,本件募集は,法令の定めに基づいてされたものではなく,上告人が本件民間移管に適する事業者を契約の相手方として選考するための手法として行ったものである。
 以上によれば,紋別市長がした本件通知は,上告人が,契約の相手方となる事業者を選考するための手法として法令の定めに基づかずに行った事業者の募集に応募した者に対し,その者を相手方として当該契約を締結しないこととした事実を告知するものにすぎず,公権力の行使に当たる行為としての性質を有するものではないと解するのが相当である。したがって,本件通知は,抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきである(最高裁昭和33年(オ)第784号同35年7月12日第三小法廷判決・民集14巻9号1744頁,最高裁昭和42年(行ツ)第52号同46年1月20日大法廷判決・民集25巻1号1頁参照)。
 5 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,同部分につき,被上告人らの訴えを却下した第1審判決は正当であるから,被上告人らの控訴を棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 那須弘平 裁判官 田原睦夫 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦)




<札幌高裁控訴審判決について>

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=38231&hanreiKbn=04
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091207104918.pdf


事件番号

 平成21(行コ)12



事件名

 行政処分取消等請求控訴事件



裁判年月日

 平成21年11月27日



裁判所名・部

 札幌高等裁判所    第2民事部



結果

 破棄自判



原審裁判所名

 旭川地方裁判所



原審事件番号

 平成20(行ウ)10



原審結果

 その他




判示事項の要旨

  市が設置管理していた老人福祉施設を民間に移管するに際し,受託者を公募し,市の設置した選定委員会が応募者(控訴人)を候補者として選定したにもかかわらず,市長がこの候補者を受託者としないこととした処分が取り消された事例

判決文 全文

 主   文

 1 原判決を次のとおり変更する。
  (1) 紋別市長がA民間移管受託事業候補者への審査の結果について「決定に至らない」旨を平成20年5月2日付けで通知することによってした処分を取り消す。
  (2) 紋別市長に社会福祉法人B(予定)に対しA民間移管受託事業候補者として決定したことの通知を義務付ける請求に係る訴えを却下する。
  (3) 控訴人らのその余の請求を棄却する。
 2 訴訟費用は第1,2審を通じて3分し,その2を控訴人らの負担とし,その余を被控訴人の負担とする。

       事実及び理由

第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人ら
  (1) 原判決を取り消す。
  (2) 紋別市長が平成20年8月22日付けでした,控訴人らのA民間移管受託事業候補者への審査結果に係る異議申立てを却下した決定(以下「本件却下決定」という。)を取り消す。
  (3) 紋別市長が平成20年5月2日付けでした,A民間移管受託事業候補者への審査の結果について,「決定に至らない」との通知(以下「本件通知」という。)を取り消す。
  (4) 紋別市長は,社会福祉法人B(予定)に対し,A民間移管受託事業候補者として決定したことの通知をせよ。
  (5) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
 2 被控訴人
  (1) 本件控訴を棄却する。
  (2) 控訴費用は控訴人らの負担とする。
第2 事案の概要
   被控訴人は,老人福祉施設「紋別市立A」を設置し,管理していたところ,この施設を民間に移管することとし,施設の譲渡先として運営を引き継ぐ社会福祉法人(以下「受託事業者」という。)を公募した。控訴人らは,社会福祉法人B(以下「B」という。)を設立する予定であるとして,これに応募し,被控訴人の設置した紋別市立A民間移管受託事業候補者選定委員会(以下「選定委員会」という。)は,Bを受託事業候補者に選定したが,紋別市長は,平成20年5月2日付けで,本件通知をした。これに対し,控訴人らは,本件通知が不当であるとして,紋別市長に対し,行政不服審査法6条に基づく異議申立てをしたところ,紋別市長は,同年8月22日付けで,本件却下決定をした。
   そこで,控訴人らは被控訴人に対し,①行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)3条3項に基づき本件却下決定の取消し,②同条2項に基づき本件通知の取消し,③同条6項1号に基づき,受託事業候補者としてBが決定された旨の通知をすることの被控訴人への義務付け,を求めて訴えを提起した。
   原審は,本件通知には処分性がないとして,上記②及び③の請求に係る訴えを却下し,異議申立手続に違法はないとして,上記①の請求を棄却した。
   控訴人らは,これを不服として,控訴を提起した。
 1 前提事実,争点及び当事者の主張は,次の2のとおり補正するほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の「1 前提事実(証拠を摘示した部分を除き,争いがない。)」及び「2 本件の主な争点」のとおりであるから,これを引用する。
 2 原判決の補正
  (1) 原判決書9頁21行「争点)」の次に,「,処分性がある場合における本件通知の違法性」を加える。
  (2) 原判決書9頁25行「の有無」を,「及び違法性」と改める。
  (3) 原判決書11頁6行の次に,改行して次のとおり加える。
   「ウ 本件通知は違法な処分である。
      紋別市長は,選定委員会がBを受託事業候補者として選定したにもかかわらず,Bに対し「決定に至らない」との本件通知をしたのは,裁量権の範囲を逸脱し,裁量権を濫用したものであるから,違法である。」
  (4) 原判決書11頁25行の次に,改行して次のとおり加える。
   「 仮に,本件通知に処分性が認められた場合において,本件通知が行政処分として適法である理由は,本件通知の記載事項(前記1(4))及び紋別市議会(平成20年度第2回定例会)における紋別市長の答弁(甲第21号証の1)のとおりであり,要するに,①1法人の応募では市民に理解されず,公平な応募の準備機会が損なわれることとなり,これらを含め,更に総合的に判断をした結果,市の説明責任や今後の行政改革推進の観点から,このまま手続を進めることがAの民間移管に当たり,好ましくないこと,②紋別市長が申し出た役員の変更を受け入れなかったこと,である。」
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所は,本件通知には処分性があり,本件通知によってされた処分(以下「本件処分」という。)は,紋別市長が裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用したものであるから,違法なものとして取り消すべきであり,本件異議申立手続に違法はなく,義務付けの訴えは不適法である,と判断する。その理由は,次のとおり補正するほか,原判決書「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1及び2(原判決書12頁19行から17頁17行まで)のとおりであるから,これを引用する。
  (1) 原判決書12頁19行「の有無」を,「及び違法性」と改める。
  (2) 原判決書13頁17行「ということができ」から14頁1行「解される」までを削る。
  (3) 原判決書15頁4行「ということが」から10行までを,「。したがって,Bは,今後新たな募集に応じて選定されない限り,本件移管契約の相手方とはなり得ないことが確定するものである。」と改める。
  (4) 原判決書15頁11行「これに対し」から16頁18行までを,次のとおり改める。
   「 甲第1号証によれば,Aの民営化に当たっては,指定管理者方式と施設譲渡方式とが検討された上で,3年から5年の指定管理期間ごとに事業者が変わる可能性のある前者の方式を避け,長期的に同じ事業者がAの経営を継続することができる効果を期待して,後者が選択されたことが認められる。指定管理者方式については,地方自治法244条から同条の4までに規定があり,これを受けて制定された紋別市公の施設に係る指定管理者の指定手続に関する条例(甲第25号証)及び紋別市公の施設に係る指定管理者の指定手続に関する条例施行規則(甲第26号証)によれば,市長等が指定管理者に公の施設の管理を行わせようとするときは,原則としてその候補者を公募することとされている。したがって,本件募集要綱を定め,これに従って平成20年2月25日9時から同年3月24日17時まで募集(以下「本件募集」という。)を行ったのは,地方自治法に規定のある指定管理者方式を参考にして,施設譲渡方式における適切な受託事業者を選定するためであると推認される。また,上記のとおり,指定管理者方式では,3年から5年の指定管理期間を管理する事業者として適切な者を選定するために公募を行うのに対し,本件募集は,公の施設の無償譲渡を受け,指定管理期間よりも長い期間事業を継続することが予定されている受託事業者,すなわち,指定管理者よりも利権が大きく,かつ,重い責任を負う事業者を選定するために公募を行うものである。被控訴人においては,民営化の一手法である指定管理者方式においてすら公募を原則としていることに鑑みれば,同じ民営化のために,より慎重に受託事業者を選定する必要のある施設譲渡方式においては,公募によることが地方自治法の解釈上要求されているものと解することができる。
    以上によれば,本件募集は,法令の定めに基づいてされたものということができ,被控訴人が私人と同じ立場で,本件移管契約の相手方を選定するために任意に行ったものということはできない。したがって,本件募集に応募した者には,本件募集要綱等に従って適正に受託事業者の選定を受ける法的利益があり,紋別市長がBを受託事業者として選定しないことを通知する本件通知は,この法的利益を制限するものであるから,処分性があり,控訴人らは,本件処分の違法性を行政訴訟において争うことができる。
  (5) 被控訴人は,本件通知に処分性が認められた場合において,本件通知が行政処分として適法である理由は,本件通知の記載事項(甲第15号証。前記第2の1(4))及び紋別市議会(平成20年度第2回定例会)における紋別市長の答弁(甲第21号証の1)のとおりであると主張する。
    本件通知には,「先般開催いたしました『紋別市立A民間移管受託事業候補者選定委員会』におきまして、社会福祉法人B(予定)が受託事業候補者として選定されました。しかしながら、当方の事務的に拙速なスケジュールにより公募期間が短かったことにより、1法人のみの応募となり、このことにより、公平な応募の準備機会が損なわれることとなり、これらを含め、更に総合的に判断をした結果、市の説明責任や今後の行政改革推進の観点から、このまま手続きを進めることがAの民間移管に当たり、好ましくないと判断いたしましたので、社会福祉法人B(予定)の紋別市立A民営化移管に係わる提案について、決定に至らなかったことでご理解願います。」との記載がある(甲第15号証)。また,紋別市議会(平成20年度第2回定例会)において,紋別市長は,「Bに対する回答書の中で、事務的に拙速なスケジュールで1法人のみの応募では市民に理解されないとみずから申し述べられたことから、私どもの反省点も踏まえ、記述し、理解を得たものと考えております。また、私の役員変更についての申し出を受けていただけるということになれば、受託事業者の決定について再検討する考えでありました。」と答弁している(甲第21号証の1)。
    しかし,1法人しか応募しなかったことは,本件募集の募集期間の満了時である平成20年3月24日(甲第4号証)には判明することであるが,紋別市長は,その時点で募集期間を延長して追加募集を実施する挙に出ていない。また,唯一の応募者であるBに対する選定委員会の審査手続は延期されることなく,同月28日には,控訴人らによるプレゼンテーションが行われ,選定委員会によるヒアリング審査が実施されている(甲第9号証)。さらに,本件募集は本件募集要綱に従って行われているところ,本件募集要綱の案は,同年2月8日に市長まで決裁が完了している(甲第1号証)から,募集開始(同月25日)まで十分な期間があり,「事務的に拙速なスケジュール」とは認められない。被控訴人は,紋別市長が控訴人らに対して申し出た役員の変更が受け入れられなかったことを本件処分の理由とするが,Bの役員予定者に欠格事由があるなどの具体的問題点の指摘はなく,本件通知には役員について全く記載がない(甲第15号証)。甲第16号証によれば,被控訴人の主張する役員の変更とは,同年4月9日に,紋別市長と副市長が控訴人Cのもとを訪れて,「二人の理事を変更できないか。」と申し入れ,同月11日には,紋別市長が再度Cに「D前市長とE前助役を理事からはずせないか。」と述べたが,控訴人Cがこの申入れを断ったことを指すものと認められる。Bの理事予定者に,法令や本件募集要綱に定める欠格事由があることなどにより,これを変更しなければ受託事業者とすることができなかったのであれば,そのことを理由として本件処分を行うべきである。したがって,役員の変更が受け入れられなかったことは,何ら本件処分の適法性を基礎づけるものではない。
    甲第10及び第11号証によれば,選定委員会は,審査の結果,Bが被控訴人が求めている要求水準を満たしているとして,受託事業候補者に決定し,紋別市長に報告していたことが認められる。紋別市長は,選定委員会が出した結論に拘束されるものではないが,本件募集要綱の記載に鑑みれば,紋別市長が選定委員会の結論と異なる処分をするときは,それだけの合理的理由が必要である。ところが,上記のとおり検討したところによれば,被控訴人の挙げる理由は,いずれも合理的でなく,選定委員会が出した結論を覆すに足りるものではない。したがって,紋別市長がした本件処分は,紋別市長がその裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用して行ったものであるから,違法なものとして取り消されるべきである。」
  (5) 原判決書16頁19行の次に,改行して「 上記のとおり,本件通知には処分性が認められるから,その違法性は,原処分について判断され,本件異議申立手続については,その手続に固有の瑕疵のみが問題となる。」を加える。
  (6) 原判決書17頁17行「訴え」を,「請求」と改める。
  (7) 原判決書17頁17行の次に,改行して次のとおり加える。
   「3 控訴人らの義務付けの訴えについて
      控訴人らは,行訴法3条6項1号に基づき,受託事業候補者としてBが決定された旨の通知をすることの被控訴人への義務付けを請求する。
      しかし,義務付けの訴えは,一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり,かつ,その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り提起することができるものであるところ,控訴人らに上記の事情があると認めるに足りる証拠はないから,上記請求に係る訴えは不適法である。」
 2 以上によれば,本件通知には処分性があり,本件処分は,紋別市長が裁量権の範囲を逸脱し,又は裁量権を濫用してしたものであるから,違法なものとして取り消すべきであり,本件異議申立手続に違法はなく,義務付けの訴えは不適法である,と判断する。よって,これと異なる原判決を変更することとし,主文のとおり判決する。
    札幌高等裁判所第2民事部
        裁判長裁判官  末永 進
           裁判官  古閑裕二
           裁判官  住友隆行
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