「福島県原子力センター」なるものが福島県知事の下部組織としてあるそうです。
http://www.atom-moc.pref.fukushima.jp/top.html
概要は、ホームページから引用すると、「福島県原子力センターは、原子力発電所周辺の地域住民の安全を確保するために、昭和49年4月に福島第一原子力発電所の立地町である大熊町に、また、原子力センター福島支所(旧衛生公害研究所環境放射能分析棟)は、平成8年4月に県庁所在地である福島市に開設されました。
当センターでは、環境放射能の監視測定、安全確保協定に基づく通報連絡や立入調査のほか、原子力の知識の普及・啓発のための広報活動、環境放射性物質の調査研究(福島支所)を行っています。」
まさに、業務内容のひとつが、環境放射能の監視測定とあります。
「福島県原子力センターでは、原子力発電所周辺地域等の放射線や放射性物質の量などをたえず測定し、地域住民の健康安全上問題がないか、異常な傾向を示していないかなどを調査しています。
環境放射能の監視測定は、原子力発電所の周辺である広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町及び浪江町、並びに原子力発電所立地予定地に含まれる小高町、及びこれらの前面海域において実施され、測定計画に基づき、測定・評価・公表を行っています。
監視・測定の方法は、テレメータシステムにより空気中の放射線を常時監視する方法、蛍光ガラス線量計(RPLD)を環境中に配備・回収して積算線量を測定する方法及び環境中の試料を定期的に採取してその放射能を確認する方法があります。
また、緊急時においては、環境放射線測定車により放射線の監視を支援します。」
ツイッターでその環境放射能監視測定がなされていないということが書かれていましたので、私も見てみました。
ご指摘通り、
「~お詫び~
平成23年3月12日より6月10日までの間、停電により環境放射線測定結果の表示及び書き換えができませんでした。
お詫び申し上げます。
なお、現在表示されている測定値は機器点検前の値ですので、参考値となります。
(平成23年6月10日)」
早く復旧していただき、環境放射線測定結果の公表をぜひともお願いしたいと考えます。
すでに6月10日は過ぎていますが、まだ不具合が続いているのでしょうか?
学校も計画停電地域に入ってしまうとのこと。
病院は大丈夫なのでしょうか。
東京都中央区は、計画停電の地域外であったとしても、積極的に節電を進め、計画停電地域への負担が少なくなるようしていかねばなりません。
中央区は、ホームページでは、
http://www.city.chuo.lg.jp/saigaijoho/setudentaiou/index.html
『区役所および区施設の節電対策
区役所および区施設では、エレベーターの一部停止や不要な照明の消灯などの節電を行っています。
また、屋外で夜間照明を使用する月島・晴海・浜町運動場、学校施設(校庭)のスポーツ開放(スポーツ開放以外の利用を含む)について、夜間利用を休止するほか、公園灯、隅田川テラスの照明、噴水や流れ、橋梁のライトアップ、街路灯の一部において、節電を実施しています。
区民の皆さんのご理解ご協力をお願いします。』
再度、中央区の節電策を洗い直していくべきだと思います。
節電の効果の“見える化”もしていくべきでしょう。
節電策に向けたよいアイデアがございましたら、ご意見ご提案をお願いいたします。
*****ブログにいただいたコメント(2011-06-13 12:11:38)*****
はじめまして。
横浜市に住むみりと申します。
我が家は計画停電が行われる地域に住んでいます。
子供の学校はもちろん塾も停電になりました。
停電のときは学校は午前授業になりました。
街灯のないなかの登下校でした。
塾は休みになり、振替に大わらわでした。
夜間の停電時は自宅で勉強もできませんが、子供は毛布を巻きつけ
ラジカセでリスニングのCDを聞いておりました。
この夏、計画停電だけは避けてほしいです。
停電のない地域のみなさまには、「エアコンを使うときは、他の電化製品を使わないこと」を覚えてほしいです。
そういう簡単なことで停電で塾に行けない子供、停電で街灯のないなか下校する子供がいなくなるのです。
*****コメント以上*****
計画停電も行われるようです。
医療施設や学校施設は、当然停電を回避させねばならないと思いますが、大学受験など受験生に、冷暖房の環境が提供されるのかたいへん気がかりです。
本日、東洋大学を受験会場にしたある試験を受けたのですが、弱めの冷房空調が効いた部屋でした。
どんな環境でも、集中力があれば、寒さ暑さも忘れて、問題を解くことができるでしょう。ただ、私は、少しでも冷房が効いていてくれたことにたいへん救われました。
試験問題を解きながら、かつての大学受験の頃を思い出しました。
夏という時期は、大きく実力がついていく時期です。この時期を乗り越えると、秋以降必ず結果がついてきます。
受験は、人生を大きく左右するイベントに違いありません。
合格が人生の目的でなく、手段でしかありませんが、合格めざし、毎年多くの若者ががんばっています。
甘いというお叱りをうけるかもしれませんが、どうか受験生が少しでもよい環境で、受験勉強に励み、万全の体制で受験日当日を迎えることができるように、願っています。
久々の試験に臨む機会を得て、一瞬当時のことがよみがえり、ブログに書きました。
線量限度を大きく超える被ばくが明らかになってきました。
今後、このような事態が増えないことを願いながら、その後の対応を追っていきたいと考えます。
まずは、東京電力による、原因の究明及び再発防止対策の策定に(平成23年6月17日まで)注目していきたいと思います。
*****経済産業省ホームページより*****
http://www.meti.go.jp/press/2011/06/20110610009/20110610009-1.pdf
平成23年6月10日 原子力安全・保安院
福島第一原子力発電所の緊急時作業における放射線業務従事者の線量限度を超える被ばくに係る報告について
原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)は、平成23年6月10日、東 京電力より、福島第一原子力発電所の緊急時作業における放射線業務従事者の線量 限度(250mSv)を超える被ばく者が2名いることの報告を受けました。
東京電力に対し、放射線業務従事者の実効線量が、原子炉等規制法に定める線量 限度(250mSv)を超過し管理できなかったことは、遺憾であり、厳重に注意 するとともに、原因の究明及び再発防止対策の策定を行い、平成23年6月17日 までに、保安院に報告することを指示しました。
1.経緯
・ 平成23年6月3日、東京電力より、緊急作業に従事した男性社員2名の甲状腺の体内放射能量(ヨウ素131)が高いことが確認され、独立行政法人放射線医学総合研究所に内部被ばく線量の評価作業を依頼したとの報告がありまし た。A氏は210~580mSv、B氏は200~570mSv。(平成23年 6月3日お知らせ済み)
・ 本日(6月10日)、東京電力より、当該2名について福島第一原子力発電所の 緊急時作業における放射線業務従事者の線量限度(250mSv)を超えることが確定したとの報告を受けました。
2.東京電力の報告の概要
東京電力は、福島第一原子力発電所における緊急作業時に従事した社員の内部被ばく線量の評価作業を、順次実施しており、5月30日に、男性社員2名における甲状腺の体内放射能量(ヨウ素131)が高いことが確認された。
その後、独立行政法人放射線医学総合研究所で当該社員2名の被ばく線量の評価作業を行っていた。
6月10日に同研究所より、これまでの評価結果について報告があり、本日(6 月10日)、これをもとに東京電力は、内部被ばく線量の評価を行い、当該社員2 名とも緊急時の線量限度である250mSvを超えることを確認した。
なお、当該社員2名については、健康診断の結果、健康への影響はないことが確認されている。
また昨日新たに、男性社員1名における甲状腺の体内放射能量(ヨウ素131)が高めであることが確認されたとの報告が、独立行政法人日本原子力研究開発機構よりあった。
今後この1名については、独立行政法人放射線医学総合研究所による健康診断を受けるとともに、内部被ばく線量の評価を行い、被ばく線量の確定作業を行う。
A氏:678mSv(外部被ばく 88mSv、内部被ばく 590mSv) B氏:643mSv(外部被ばく 103mSv、内部被ばく 540mSv)
3.保安院の対応
保安院は、平成23年3月14日に実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則に基づく線量限度等を定める告示第8条の緊急作業に従事させることが出来る放射線業務従事者の線量限度を100mSvから250mSvに変更しました。
東京電力に対し、この変更した線量限度を超過し、管理できなかったことは、 遺憾であり、厳重に注意するとともに、原因の究明及び再発防止対策の策定を行い、 平成23年6月17日までに、保安院に報告することを指示しました。
【本発表資料のお問い合わせ先】
原子力安全・保安院 原子力発電検査課長 山本 哲也
担当者:米山、今里、舘内 電話:03-3501-1511(内線)4871
03-3501-9547(直通)
****以下は、250mSv決定の背景 文科省ホームページより****
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/05/11/1303577_3.pdf
(別添)
緊急作業時における被ばく線量限度について
平成23年3月26日 放射線審議会
当審議会では、人事院総裁、厚生労働大臣及び経済産業大臣から、緊急作業時における 被ばく線量の限度を250 mSvとする諮問に対し、妥当であるとの答申を行ったところである。
この理由は以下のとおりである。
わが国では、緊急作業従事者の被ばく線量の限度として、これまで実効線量で100 mSvが 決められていた。一方国際的には、この値として500 mSvが推奨値として示されており、当審議会としても本年1月に「国際放射線防護委員会(ICRP)2007 年勧告(Pub.103) の国内制度等への取入れについて-第二次中間報告-」(平成23年1月放射線審議会基 本部会)を策定し、緊急時被ばくの線量限度については、国際的に容認された推奨値との整合を図るべきである旨を放射線審議会基本部会の提言としてとりまとめたところである。
しかるに、今回の東北北関東大地震による福島原発の事故が発生し、これを制御することが、国として最重要課題となるに至った。これを受け、第113回放射線審議会総会では厚生労働大臣及び経済産業大臣から、また、第114回放射線審議会総会では人事院総裁から緊急時被ばくの線量の限度として250mSvとする諮問がなされ、これを妥当と判断した。当審議会の判断にあたっては、上記第二次中間報告の提言を踏まえ、国際的に容認された推奨値との整合が図られていることをもって妥当であるとの答申を行ったものである。
なお、国際的に容認された推奨値である500 mSv(ICRP2007年勧告において「緊急救助活 動に従事する者の線量として確定的影響が発生することを回避するための線量である500mSv又は1000mSvが推奨されており、国際原子力機関(IAEA)の国際基本安全基準(改訂 中ドラフト4.0)において「壊滅的状況への発展を防止するための活動に対する線量として500mSv以下」が推奨されている)は、組織影響が発症しない閾値であり、国際的にも確定的影響については、急性の障害(下痢、下血、出血等)および晩発の重篤な障害(心筋梗 塞などの脈管系障害)は認められない値とされている。
わが国は緊急時対応の線量の上限値の設定基準の見直しにおいては、国際的に対応が遅れていた。本改定での上限値であっても放射線の健康影響は最小限に保たれていることを、 まずは緊急事態に対応してくださっている事故現場の皆様方にご理解いただきたい。さらに本改定が、今回の大地震における人命の救助や今後の復興にとって、重要な意味をもつことを国民の皆様にご理解いただきたい。
被災地での災害医療支援を、本日東京新聞が特集を組んでいた。
以下、記載内容をまとめてみると、
<医療の状況>
津波の被害が大きく、亡くなった人が多い一方、重傷者が比較的少なかったのが特徴。発生直後の「急性期」を過ぎた後は、避難者が以前から患っていた慢性疾患や、避難所の衛生環境の悪化による病気への対応が中心。
<患者の状況>
遠慮して診療所に来ない人や、崩れかけた家に住み続けているお年寄りも多かった。
対応→避難者の中に入って話を聞きながら血圧を測ったり、自宅を訪ね歩いて診療したりして疾患を見逃さないように心がけた。
<医療体制のポイント>
被害の形態の違いや地域の状況、時間の経過などによって、必要とされる医療は変わる。全体をみる中心的な存在が必要。
模範例:石巻赤十字病院が各地から集まった医療チームの拠点となり、担当地域を割り振ったり、ミーティングを開いて各地の避難所の情報を集約。同病院に集まった薬剤を、各避難所の患者にバイクで届けるシステムがあった。
うまく機能しなかった例:情報がなく、どこで活動すればいいのかわからずに困った。支援チームや薬剤が到着しても、必要な場所に行き渡らないなどの問題も生じた。
その原因→放射線が理由の福島県での避難は、津波被害と違ってスタートが遅かった。自治体によって時期もバラバラだったため、県と市町村などの対応がかみ合わず混乱が生じた可能性がある。
以上。
******
震災後、約一週間後、二週間後、三週間後の石巻、そして、約二ヶ月後のいわき市・郡山市の災害医療支援を見、自らも行ってきたところである。
野戦病院化した石巻赤十字病院、記事にもあるように石巻の拠点として、機能を果たしていた。全国から集まったDMAT・JMATが献身的に医療を提供していた。行政との連携もまた、当該保健担当職員のご尽力をいただきながら、うまく行っていたのではないだろうか。
被災地災害医療支援も三ヶ月が立ち、拠点病院から地域への移行としての次のフェーズに入ってきたところであろう。
開業医としては、出来る形は限られているが、今後とも、できるかぎりの支援を行いたいと考える。
重要な指摘であります。
*****AFP(2011/06/10)*****
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/accidents/2805373/7322531
【6月10日 AFP】国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)は9日、東京電力(TEPCO)福島第1原子力発電所から約60キロ圏内の放射線量の高い地域から子どもと妊婦を避難させるべきで、日本政府はそのために資金や輸送の面であらゆる支援をすべきだとの見解を示した。
グリーンピースが独自に測定した放射線量のデータは日本政府が発表したものとほぼ同じだが、放射線が子どもの健康に与える影響などについての両者の見解には根本的な違いがある。
保護者らが放射性物質に汚染された園庭の表土を除去した福島県内の保育施設を訪れたグリーンピースのクミ・ナイドゥ(Kumi Naidoo)事務局長は、福島の人びとは放射線と情報不足という2つの問題に直面していると述べた。
都内で記者会見したグリーンピースのヤン・ベラネク(Jan Beranek)氏は、日本政府が震災後、子どもを含む人びとの年間被ばく線量の上限を1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げたことに対し、チェルノブイリ(Chernobyl)原発事故後、当時のソ連政府は年間被ばく線量が5ミリシーベルトを超える地域に住む人の避難を決めたと指摘し、年間20ミリシーベルトが安全だという日本政府の主張は全く容認できず、正当化もできないと述べた。
■適切な支援と情報を
成長期にある子どもは放射線で健康への悪影響を受けやすいことが分かっている。ベラネク氏は、放射線の影響を受けやすい人は避難させ、それ以外の人が自分の意志でその地域にとどまる場合には、適切な支援と情報を提供する必要があると述べた。
ベラネク氏は、放射性物質を吸い込まないようにマスクをして、風が吹いている時には屋内にとどまり、手に放射性物質がついている可能性がある時には飲食や喫煙をしないように助言した。
■子どもに線量計配布する自治体も
一方、福島県伊達市は9日、市内の幼稚園・保育園と小中学校に通う全ての子どもたち約8000人に小型線量計を配布すると発表した。(c)AFP
重要な指摘がなされています。
報告書にある小児甲状腺がんの発症が予想されることに対しての対応を、今後、検討していかねばなりません。
*****東京新聞(2011/06/10)****
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011061001000979.html
初動ミスで住民に余分な被ばく 助言チーム報告書判明
2011年6月10日 22時08分
東京電力福島第1原発事故で、政府の対応を批判して4月末に内閣官房参与を辞任した小佐古敏荘東大教授(放射線安全学)が、辞任直前に菅直人首相に報告書を提出し、「不適切な初動」で放射性物質の拡散予測結果が十分に活用されず、住民に「余分な被ばく」を与えたと指摘していたことが10日、分かった。
小佐古氏は報告書で首相官邸の指導力不足や原子力安全委員会の機能不全を挙げ初動を批判。「小児甲状腺がんの発症が予想される」ことから福島県と近県で「疫学調査が必須」としている。今後の検討事項として、被ばく者手帳の発給やメンタルケア対策を挙げた。
報告書は非公式な「助言チーム」の活動をまとめた記録。政府内で事故収拾に携わった当事者が政府対応の問題点を分析しており、今後の事故検証で注目されそうだ。
共同通信が入手した報告書「震災後、1カ月余の活動と今後に向けての提言」は小佐古氏が参与辞任を表明する2日前の4月27日付。それによると、3月16日に菅首相から参与に任じられた小佐古氏は、事故収束や公衆被ばくの対策が「講じられていなかった」ことから、政府内の専門家や与党議員らと「助言チーム」を同日立ち上げた。
(共同)
<原子力安全委員会委員>
班目 春樹 (専門:流体・熱工学)
1972.3. 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
1990.11. 東京大学工学部教授
1995.4. 東京大学大学院工学系研究科教授
2010.4. 原子力安全委員会委員(常勤)
久木田 豊 (専門:原子力熱工学)
1975.3. 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了
1990.4. 日本原子力研究所東海研究所安全性試験研究センター
原子炉安全工学部熱水力安全研究室長
1996.10. 名古屋大学大学院工学研究科教授
2009.4. 原子力安全委員会委員(常勤)
久住 静代 (専門:放射線影響学)
1972.3. 広島大学医学部医学科卒業
1988.5. 日米共同研究機関・放射線影響研究所臨床研究部副部長
1989.4. 広島大学原爆放射能医学研究所非常勤講師
1996.4. (財)放射線影響協会放射線疫学調査センター審議役
2004.4. 原子力安全委員会委員(常勤)
小山田 修 (専門:原子炉構造工学)
1970.3. 東京大学大学院工学系研究科修士課程修了
2002.4. (株)日立製作所技師長
2005.10. (独)日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究部門長
2007.10. (独)日本原子力研究開発機構原子力科学研究所所長
2009.4. 原子力安全委員会委員(常勤)
代谷 誠治 (専門:原子炉物理・原子炉工学)
1974.3. 京都大学大学院工学研究科博士課程単位取得退学
1996.4. 京都大学原子炉実験所教授
京都大学大学院エネルギー科学研究科教授(兼任)
2003.4. 京都大学原子炉実験所長
2010.4. 原子力安全委員会委員(常勤)
*****原子力安全委員会ホームページより*****
http://www.nsc.go.jp/info/20110610.pdf
原子力安全委員会記者ブリーフィング
日時:平成23年6月9日(木)15:27~16:11
場所:合同庁舎4号館6階643号室
参加者:班目委員長、久木田委員長代理、小山田委員、加藤審議官、水間課長
○ニコニコ動画七尾記者 ニコニコ動画の七尾と申します。いつもありがとうございます。
先ほど文科省からのご説明にもありましたけれども、南相馬市や伊達市の一部に放射線量が高い地域があることにつきまして、福山哲郎官房副長官は、本日の午前の会見で、南相馬市長とお会いしたそうで、何をおっしゃっているかというと、住民の意向も踏まえ、どう対応していくか、なるべく早く結論を出したい、と述べられておりました。
こうした避難区域外での高放射線地域への対応についてのご見解をお願いできますでしょうか。
○班目原子力安全委員長 安全委員会としては、助言機関ですので、我々としては、今ある意味では、ポイントで非常に線量が高いところが見つかっているという状況だと理解しています。それで、これを少し面に広げるというか、もうちょっと詳しくとって、まさに生活支援といいますか、本当に生活する上で、その影響がどうなのか、というところが分かるようなデータをまずとるべきではないか、というのが基本的な考えです。ただ、実際の行政組織としてどういうことをなさるかというのは、これはまさに行政行為そのものでございますから、原災本部の方でしっかりお考えいただけていると思っております。
○ニコニコ動画七尾記者 それで、今のもう少し面的にというのは、単純に言いますと、調査地点を増やすという、そういう理解でよろしいでしょうか。
○班目原子力安全委員長 基本的には、増やすというよりは、今日も文科省からの報告についての質疑の中でもあったと思うんですけれども、新たにポイントをとってみたら、実は高いと、増えているところがあると、そこがどうも谷か何かで、山の上の方から落ちてきているとか、結局、そういうような情報と一緒に考えていかないといけない。そのあるポイントが高いといっても、そこは何かちょうど道路が谷合を通過しているところで、常時、人がずっとそこにいるようなものでない可能性もあるわけですね。
そういうものであるにもかかわらず、住民避難を考えるというと、これはちょっと過度な介入になるかと思うんですね。ですから、その辺のきめ細かさというのが、むしろ大切なんだというふうに理解しています。
○ニコニコ動画七尾記者 あともう1点お願いしたいんですが、今度は関東の方なんですけれども、千葉や東京でも、国の基準を超える放射性物質の検出が相次いでおります。例えば、6日には東京大田区の下水処理施設内の空気中から、1年分に単純換算するとですが、計画的避難区域の対象となる年間積算量を上回る値が検出されております。
もう1点、これとSPEEDIのデータによりますと、放射性物質の放出が最大だったと見られる3月15日の午前は、関東に向かったとされておりますが、これとの関連と、都民等は非常に不安を感じているわけですが、今後、関東周辺におきまして、こうした点をどう見ていけばよろしいのか、この2点についてお願いします。
○班目原子力安全委員長 まず、例えば、下水処理場等の問題なんですけれども、私の知る限りでは、付近の住民の方に直接大きな影響があるような数値ではない、むしろある管理されたところだけがそうだ、というふうに理解しております。そういう意味では、特別なご心配はむしろしていただく必要はないのではないか、というふうに理解しています。
実際、現在の福島第一発電所のプラント状況を考えるならば、かなり安定な方向に行っておりますので、過度な心配はなさらないでいただきたい、というのが私からの希望です。
何か補足ございますか、よろしいですね。
○ニコニコ動画七尾記者 3月15日の関連というのは、やはり影響はゼロとは言えないと思いますけれども。
○班目原子力安全委員長 実は3月15日辺りのデータというのが、必ずしも十分なものがとれておりません。しかしながら、総合的に見たときには、いろいろなデータというのがどうもあちこちにあるかもしれないというので、原子力安全委員会としては、是非、その辺りのデータもできれば使って、もうちょっと精度のいい解析みたいなのは試みてみたいとは思っておりますけれども、ちょっと今の段階では、必ずしもできますとお約束できる状況ではございません。
○ニコニコ動画七尾記者 その辺りのデータというのは、どういうデータでしょうか。
○久木田原子力安全委員 最近、文部科学省や原子力安全・保安院から、事故の当初にとられていたけれども、いろいろな事情で公表されていなかった、この手のデータが公表されていますけれども、そういったものをできるだけ使うということで、事故当初については、当然ながら停電等もあって、十全なモニタリングが行われていなかったというところがあるわけですけれども、できるだけ、そういった情報を掘り起こして活用するということになると思います。
それから、先ほどのご質問ですけれども、15日にピーク的な放出がありましたけれども、その後もある程度、放出は継続していましたし、そういったものがいろいろな場所に集積して、例えば山とか、そういうところに集積したものが、最終的に下水の汚泥として出てきているというようなこともあるのだろうと思います。ですから、15日に関東地方にプルームが来た、それが直接の原因であるかどうかということも含めて、多分、それだけではないというふうに思います。
○朝日新聞石塚記者 朝日新聞の石塚といいます。
最初の福島県の学校のモニタリングの結果についてお伺いしたいんですけれども、表土状況について、一定の低減効果が見られたという報告がなされましたけれども、その件について委員長のご見解をお願いしたいんですが。
○班目原子力安全委員長 これはALARAの原則に従いますと、当然、よい方向だと思っております。ただ、実際問題として、ALARAの原則に従えば、学校のグラウンドさえ下げればいいというものでもないので、ちょっと今日、久住委員辺りからコメントもあったことかと思いますが、是非、そういうデータ、どういう処置をとったら、どれだけ下がるかというしっかりとした記録を残して、これが将来的には、例えば、現在、避難地域になっているところの避難の解除とか、そういうのにもつながるようにしていただきたいなというふうに思っている次第です。
○東京新聞榊原記者 東京新聞の榊原です。
主に2点ありまして、1つはストロンチウムの検出のことでお伺いします。
文部科学省の方では、6月7日のときに62�ぐらい離れた福島市の土壌からも検出されたということで、これまでもストロンチウムの評価については、こういった会見の場で何度も述べられていますが、今回の値についてと、その距離ですとか、についての安全委員会の見解を教えてください。
○班目原子力安全委員長 基本的にストロンチウムについては、その影響というのは、セシウムに含めて、今のところ考えていて、かなり厳しめというか、10分の1程度ということで考えています。要するに、ストロンチウムの測定となりますと、β核種ですので、それは理想的なことを言うと、たくさん採るのがいいのかもしれませんけれども、モニタリングをすることにもリソースの有効配分ということもありますので、適確な形でデータの蓄積をやっていただきたいと思っております。
例えば、セシウムとストロンチウムの比率がどういうふうになっているのか、というのを見ると、必ずしも測定しないところについても、大体こんなものかなというのが想像がついてくるのではないかと。今後、そういうような分析作業をもっともっとする必要がある、というふうに思っております。
○東京新聞榊原記者 値については、現時点で健康に影響を与えるレベルではないということでいいかと思うんですが、内部被ばくについて、体内の取込みへの危険性などについて、どう見たらよろしいんでしょうか。
○班目原子力安全委員長 内部被ばくは、これは何らかの形で、再飛散率のデータを我が国なりにとる必要があるのではないか、と思っております。要するに、現時点で、プラントの方から放出されているストロンチウムというのは非常に少ない。これはあくまでも、初期の時点で放出されたものが地面に沈着しているものだ、というふうに理解しています。
そうしますと、内部被ばくの可能性というのは、食物による経口摂取もあるのかもしれませんけれども、あとは、ほこりか何かでの呼吸による被ばくということになりますね。そういう意味では、例えば、そういう再飛散率なんかのデータなんていうのは、チェルノブイリ等々で用いられたようなものを、今のところ適用しているわけですけれども、そういうのも気候風土の違う我が国に本当に使えるのかとか、そういう、よりきめ細かな分析がこれから必要になってくるんだろう、というふうに思っています。
○東京新聞榊原記者 確認ですが、値としては健康に影響を与えるレベルではないと。
○班目原子力安全委員長 すみません。値自体は非常に小さなものだと理解していますので、これが直ちに危険なものだというふうには考えてございません。
○加藤審議官 今の関係で補足しますと、今、委員長がおっしゃられたことは、私も昨日、合同会見で申し上げたんですけれども、それに加えて、最近、IAEAの方でオペレーショナルインターベンションレベルというものを提唱しています。これは緊急時の初期において、容易に得られるモニタリングデータの形から、緊急に介入措置が必要かどうか、判断するための換算計数みたいなものなんですけれども、それを使って、今回、11か所の中で、一番ストロンチウム90の値が高かった地点、83番の地点ですけれども、250Bq/kgだったんですけれども、そこの地点について、吸入、それから、あとこのやり方だと、沈着したものからの直接線も含めて評価するやり方ですけれども、それでやってみますと、1年間そこにずっと居続けたとして、24時間、365日、居続けたとして受ける線量が、0.03mSvということでしたので、本当にこれは小さい線量です。
○東京新聞榊原記者 わかりました。もう1点ありまして、政府がまとめたIAEAの報告書についてなんです。そこの事故から得られた教訓のところで、SPEEDIについての項目というのがありまして、SPEEDIの計算結果について、当初段階から公開すべきであったと、今後、SPEEDIの活用結果を当初から公開するという表現があります。このことについて、3月16日からSPEEDIの運用を担ってこられた安全委員会としてのご見解ですか、そういうのを伺えたらと思います。
○班目原子力安全委員長 ちょっと誤解があるようなんですけれども、3月16日からも別に安全委員会の方で運用はしてございません。あくまでも、文部科学省の予算に基づいて、文部科学省の関係団体であるところの原子力安全技術センターが計算を行っていただけであって、たまたま、オペレーターに部屋貸しをしていたという状況です。したがって、今後のSPEEDIの活用についても、原子力安全委員会として何か言える立場ではないので、是非、その質問は文部科学省の方にしていただきたいと思います。
○東京新聞榊原記者 昨日、SPEEDIの公開について、改めて文部科学省の方に質問しましたら、結局、答えとしては、16日以降は公開するかしないかも含めて、安全委員会の方で判断するんだという文部科学省の見解は、当初の見解がまだ生きているというご説明だったものですから、ちょっと、改めてお伺いしたんです。
○班目原子力安全委員長 少なくとも、一元化された事実はない、というのが、これは政府全体としての判断のはずなので、ちょっと、もう一度、文部科学省の方に確認をお願いしたいと思います。
○水間課長 だれがそう言っているのか教えてください。言いますから。
○東京新聞榊原記者 全般的に、このSPEEDIの活用結果は、当初から公開すべきだというふうになった報告書についてはいかがですか。
これは活用結果というふうに表現されていて、計算結果じゃなくて、活用した結果を公開するという表現なんですけれども、計算結果をそのまま公開すればいいんじゃないのかな、というふうに個人的には思ったものですから、その辺、何かしっかり読み込まれて、何かご見解などがあれば。
○久木田原子力安全委員 活用結果という形になっていましたか。私は、そういうことを注意深く読んでいませんけれども、活用というのは何を意味するのかということも含めて、ちょっとよくわかりません。
○水間課長 事務局ですけれども、皆さんもうご存じのとおり、ホームページですべて公開をしておりまして、例えば、計算の前提を安全委員会が工夫をして計算した結果については、安全委員会が説明責任を当然負いますので、そこについては、いろいろご説明もしてきたと思いますけれども、単位放出というのは別に誰がやっても同じですし、それは予測そのものにダイレクトには使えないかもしれませんけれども、こちらの方へ飛んでいくとか、濃淡としてはこういう傾向が出やすい、とかというようなものは、毎時間当たり今でも続いておりますけれども、そういうデータが出ておりますので、いろいろな方がいろいろな計算結果でいろいろなインプットをすれば、いろいろ使い方ができるということで、ある意味では、そういう情報は公開されているというふうに思っています。
○NHK山崎記者 NHKの山崎です。よろしくお願いします。
ストロンチウムの件なんですけれども、今日、多分、文部科学省さんの方は情報が入っていると思うんですけれども、地元は、事前によく数値について、説明を受けていなかったというので、飯舘村とか、幾つかの自治体から多分クレームか何か、どういう形か分かりませんけれども、文部科学省の方に、もう少し事前にちゃんと、そういう関心の高いものについては、説明が欲しいという形で、午前中か、午後一か分かりませんけれども、そういう要望があったと聞いているんですが、これも再三、ずっとやっているミスで、地元が一体、今、何に関心が高いかというところを、どういうふうに把握していくかというところは、もう少し、特に、放射線に関わるところについては、何か、もっと工夫ができないのか、といったところについて、それは安全委員会だけの責任じゃないのは分かっているんですけれども、助言組織として、何度も同じことをやっているので、こんなことをやっていたら、住民の不安なんて絶対なくならないので、その辺の仕組みというか、マネジメントについては、もうちょっと、ちゃんと言っていただけないか、というところについての班目委員長のご見解と。
もうひとつは、話は変わりまして、保安院が7日に出した第4号の送電線等についてのところで、今日、大分、委員の先生方から、要はちょっと甘い、というようなご指摘が幾つか出たと思うんですけれども、僕も、それは妥当だと思っていて、大丈夫だとか何とか書いていても、こういう発想自体が間違っていると思うんですが、もう少し、具体的にどういうところを、これは差し替えるというか、指示し直すべきかというのを、ちょっともう一回、整理していただければなと思います。その2点です。
○班目原子力安全委員長 後の方は、ちょっと小山田委員にお願いします。
まず、現地の意見をきちっと反映させるということについては、安全委員会の方でも、大変気にしています。ただ、ちょっと、安全委員会は小所帯なもので、なかなか現地に委員を派遣して、本当の状況がどうなっているのか、というのをなかなか把握するに至ってない、というのが実情です。しかし、これからできる限り、その辺も努力して、現地の生の声をちゃんと聞いた上で、いろいろな場を通じて、行政庁の方に伝えるという努力は、やっていきたいと思っております。
例えば、実は福島市内といえども、道路の真ん中はいいけれども、側溝なんかは実はそれなりに放射線量の高いところになっているんだよとか、そういうような、多分、きめ細かい生活へのアドバイスみたいなものが必要なんであろうと思っていまして、少し、そういうようなことを我々なりにも把握した上で、行政庁の方に伝えるとか、そういう努力をやっていきたいと思っているところです。情報の伝達の仕方については、ちょっと、我々もどうしたらいいか、今のところ、いいアイデアを持ってないというのが実情です。
○小山田原子力安全委員 今日、送電線の鉄塔についての話があって、委員会の席上で申し上げたとおりですけれども、少なくとも、今までの地震で耐えられたから、強度が十分でありますという説明は、それでは、私どもとしては納得することはできないし、どのくらいのゆとりがあるのかということも含めて、きちんと評価をすべきである、というふうなコメントを申し上げたわけです。
それから、もうひとつは、鉄塔の基礎の部分について、それについても、十分な強度を持っていなければいけないということは、鉄塔を設置する者として、当然、考えておかなければいけない話であると思うんですよね。それが盛り土の部分で問題があって、鉄塔が倒れたというのは、大変に大きな問題であるというふうに思います。
今まで、鉄塔の設計に関わってきた人たちの多くが、鉄塔は地震で倒れるものではないというようなことを実績としても持っていたということはあると思うのですね。私も、鉄塔そのものはいろいろな話を聞くと、かなり頑丈なものではあると思うんですね。ただ、それが今回のような事態になったときに、どのくらいのゆとりを持っているのか、ということをきちんと示していただきたい、というのが私が申し上げたことであります。
例えば、私自身は、配管の耐震ですとか、それから、原子炉の構成構造物の耐震強度というものが、そもそも、どのくらいゆとりがあるものかということは、自分で、いろいろな評価をしたり、実験を目の当たりにして分かっております。
これは班目委員長も、今までいろいろなところで申し上げていることですけれども、Ss地震動というものを少し超えたところで損傷することはないというのは、そもそも配管や何かの持っている強度特性だと思うのですけれども、それが鉄塔においてはどうなのかと、先ほどの40mの強風があっても大丈夫なようにしてある、ということでありますけれども、今回、起こった事象は、残念ながら40mという自然災害を設定をしても、それを超えてしまう可能性があるということに対して、それが、直ちに大きな災害をもたらすことにはならないということを示す必要があるということですので、そういうことも含めて、もう少し、現実的なきちんとした評価をして、我々に説明するようにというふうに要求をしたつもりです。
以上です。
○NHK山崎記者 最初の質問は、安全委員会が直接人を送ってという意味合いで、私はちょっと申し上げたつもりではなくて、文科省と政府、官邸も含めてですけれども、どういった情報の出し方というんですか、住民に分かりやすい情報の出し方、逆に言うと、今一番ストロンチウムは福島県内でもご専門の方に聞くと、住民が知りたい関心のひとつだというふうに聞いていたので、我々もニュースで取り上げるわけで、そういうところ、報道の仕方とか公表の仕方等も含めて、もう少し、しっかり調査をされるアドバイスというのは非常に大事だと思うんですが、もう少し情報をどう出していくか、といったところも多分、ご助言していかないと、これまでの混乱は、全く理解につながらないのではないかなと思ったので、安全委員会直接、ということではなくて、その辺りも目配せをしていくべきではないかな、という意味合いの質問でありました。
○班目原子力安全委員長 ご趣旨は理解しました。まさに原災本部の方に生活支援チームなるものがあって、そちらの方でしっかりとした対応をとるべきことなんだと思います。どういう助言ができるかどうか、ちょっと内部で議論してみたいと思いますけれども、今現在、ちょっと答えを持ち合わせてないというのが実情です。
○加藤審議官 今の関係で言うと、これは決して原子力安全委員会として、という話じゃないんですけれども、政府の対策本部の現地対策本部もあるわけでして、ここにはそれぞれの班の役割に応じて、各省からいろいろな人が参加しているわけでして、そこでは日に1回、県の方も入ってミーティングをやっておられるようですし、そういったミーティングの概要なんかも毎日送られてくるわけで、うちも当然、事務局職員とか専門員を出していまして、そういう彼らからの情報とか、そういうのを見たり、あと地元の新聞、原子力関係の記事だけじゃなくて、全体を見ると、全体の中で原子力関係がどれぐらいの重みを持って報じられているかというのが、すごい大事なポイントだと思うんですね。
それから、あと合同記者会見なんかで、地元の人の懸念を背景に質問されているご質問もかなりありますよね。だから、そういうところで、アンテナを張って、そのつもりになって聞いていれば、かなり分かるのではないかなというふうに思うんですけれども。
○NHK山崎記者 加藤さんのおっしゃるとおりだと思いますので、実際に人を送って、そういう仕組みを作っていらっしゃるのはよく分かっているので、例えば、昨日のストロンチウムでも、1枚ぺら、あれだけ単独でちゃんとつくって、抜き出して、しかも開会の前に地元、11か所については、一言説明をしておいてあげると、その数字の意味合いはどうだというのを言っておいてあげると、そうして欲しいと彼らは数か月前から言っているわけで、そこまでアンテナを伸ばしているのであれば、そこまで出し方まで丁寧にしてあげるところは、安全委員会としても目配せを多分、もっとしていってあげた方がいいんじゃないかと、そういう趣旨であります。
あと小山田さんに追加で、今の委員のおっしゃるところもそのとおりだと、僕の一番気になるのは、評価結果のところ、2ページ目で十分な供給信頼性を有しているものといって、9発電所がいわゆる異なる2つ以上の変電所から受電しているため、外部電源が喪失しないものというふうに、電力事業者から報告があり、保安院もそれを妥当というふうにしているんですが、そもそも、今回まさにIAEAの報告書にあったように、広域に複合災害が来たときに、複数あったって、それは同時に壊れるわけだし、特に、敦賀半島なんて途中からどうせ1本でしか送電線がいってないわけで、半島がやられれば止まるわけで、これはそもそも喪失しないものと言っていること自体がおかしいんじゃないかと思うんですけれども、ここについては、安全委員としては、これはよしとしますか。
○小山田原子力安全委員 私は、今日の質問の中で、最初に細かいことについて話をしますというふうに申し上げたのは、そういうことも含めてでして、これの評価については、今日の段階で了解をしましたというつもりではありません、あの中でよく調べてみて、それで保安院の評価についての見解を出したいというふうに思っています。
○日本テレビ小林記者 日本テレビの小林と申します。
SPEEDIの公開の件で、非常に重要だと思うので、再度、確認をしたいんですけれども、これはIAEAの報告書でもここまで明記されていて、実際に3月15日、16日辺りの時点で、何があったのかというのが、今ちょっと宙に浮いているような状態になっているのではないかと思うんです。
昨日ああいった報告書が出て、改めて文部科学省の方に、15日の夜の時点で文部科学記者会の方では、記者からSPEEDIの公表についてかなり質問が相次ぎました。それについて、文科省は確認をすると言って、翌日の会見で、副大臣がこのSPEEDIの公開についての質問に対して、原子力安全委員会がやる、やらないということも含めて決定することです、というお答えをはっきりしております。
文科省としては、昨日の時点でも、その見解ですということだったんですが、実際に原子力安全委員会の方では、この3月16日以降は、オペレーション及び公開の是非についても、安全委員会でお願いしますというような指示なり、要請なりが国の原災本部などからあったんでしょうか、なかったんでしょうか。
○班目原子力安全委員長 少なくても、私の知る限りはそのような要請はありません。
○日本テレビ小林記者 ということは、23日に最初のSPEEDIの試算結果というのを安全委員会の方で報告されましたけれども、そこまでのオペレーションというのは、どういうふうになっていたんでしょう。
○久木田原子力安全委員 水間課長が一番詳しいと思いますが、文部科学省からの委託契約によって、原子力安全技術センターが単位放出の予測計算を定常的に行っていた。それから、文部科学省、経済産業省、保安院、それから安全委員会も一部行っていますけれども、今言った単位放出の計算とは別の個別発注についての計算も、文部科学省からの委託業務として安全技術センターが行っていた。そういう状況だったと理解しています。
○日本テレビ小林記者 ただ、実際には、事故直後から単位放出量で毎時計算はされていたということが大分後になって分かって、データも公表されたわけですけれども、あれらを公表するかどうかについての決定の責任者というのは、やはり文科省だったんでしょうか、それとも安全委員会だったんでしょうか。
○久木田原子力安全委員 安全委員会は公表、非公表について一切関与をしない、文部科学省からの委託業務として、すべての計算は行われていたという理解です。
○日本テレビ小林記者 ということは、文部科学省が3月16日の記者会見及び昨日の記者会見でもおっしゃった、原子力安全委員会がSPEEDIの公開についても決定する、という認識は、そこに誤解があるということですか。
○水間課長 誤解のあるなしよりも、文部科学省が何を考えているかについては、私どもは承知しておりません。
○加藤審議官 SPEEDI問題についての政府としての統一的な見解、これは文科大臣も出席した閣議で決まった統一的見解は、上野通子先生あての質問主意書に書かれています。そこでは、単位放出の計算については、事故発生当日の16時から、それは文科省が原子力安全技術センターに指示してやりなさいと言ったと、それでそれは後ずっと続いていると。
それで、原子力安全委員会について言えば、16日の時点からオペレーターをここに出しますので、その人を介して自由にやりたいように使ってくださいと、特に、放出源情報がなかったので、環境モニタリングデータから放出源を逆推定するようなことをやってくれと、これは官房長官なんかもそれを期待されていたわけですけれども、そういうことをやって、まさに23日には逆推定した放出源から、小児甲状腺の積算線量を出して、これは大事な情報なので発表したということです。
○日本テレビ小林記者 ということは、確認ですが、情報の公開については、原子力安全委員会は当時から今に至るまで、主体となって責任を負っているということはないということですね。
○加藤審議官 少なくとも、全体については、16日の時点でも言われてないです。
○水間課長 そういう認識はありませんで、当時は、文部科学省の方からは、SPEEDIのオペレーターを送り込んできて、ある意味では何で16日かといいますと、官房長官から指示があって、モニタリングを強化しなきゃいけないので、文部科学省の方はデータをとる方を一生懸命やりなさいと、安全委員会の方は、文部科学省が自らとる、あるいは取りまとめたデータを評価することについては、原子力安全委員会の方がやってくださいと、やるようにというご指示がありましたので、それはそれでしっかりご指示をいただいたという認識はございましたが、SPEEDIについてまでデータを全部、どのように公開するとか、しないとか、そこまでを指示されているわけではございませんし、文部科学省からオペレーターがこちらへ移ってきたということについては、直接指示というか、計算の依頼を文科省を通じてやらなくてもいいということのみ、我々としては受け止めたということでございますので、すべてもともと文部科学省の方から配信をするという仕組みになっておりましたから、その部分についてまで、文部科学省に代わってやりますという、そういう約束を取り交わしたとか、そういう認識はございませんでした。
○日本テレビ小林記者 では、あくまでデータ、試算結果についての分析及び評価などは安全委員会がやるけれども、公開については、今現在、文科省が言っていることは、間違っているということですね。
○水間課長 間違っているかどうか、文科省が何をおっしゃっているのかは、ちょっと細かく伺っておりませんけれども、もしもそういうことがあるとしたら、我々の認識とは違います。政府内の認識の違いというのがまたまた明らかになったとか何かということになると、きついと思いますけれども、私どもは正直に、あったことをそのまま申し上げているつもりです。
○久木田原子力安全委員 今、水間課長からありましたように、3月16日の段階で安全委員会がやるようにということになったのは、モニタリング結果の評価ということでして、文科省がやっていた単位放出のSPEEDIの計算の評価までやれと、そういう趣旨ではないと私たちは理解しています。
そして、公表について安全委員会が判断したのは、安全委員会自身が3月16日以後、独自に行った計算結果、3月23日に公表したような放出源情報を安全委員会が推定して行った計算については、3月23日に安全委員会の判断のもとに公表したと、そういうことです。
○小山田原子力安全委員 もう少しつけ加えると、1時間ごとに計算をするというのは、最初の段階で指示を出したので、その後は、つきっきりで指示をしなくとも、それは自動的にいわば続けられると。一方で、原子力安全委員会が試みた計算というのは、こういうことをやってもらいたいということがオペレーターがすぐ近くにいて、そのとおりにインプットをしてもらわないといけないわけで、そういう意味で、我々の近くにいる人にやってもらうことにしたということです。初めの段階では、文部科学省に、オペレーターに対して、こういうことをやってもらいたいけれども、いいでしょうかという確認を文部科学省に対して、しておりました。それが、3月16日以降、それについては一々その件については確認はしなくていいよと、こちらの方でいろいろなトライアルを、つまり通常のSPEEDIの使い方ではないトライアルを、我々から直にオペレーターに頼んでよい、ということになったということです。
○日本テレビ小林記者 IAEAの報告書にまさに書かれていることが、何か今現在、解決してないというか、問題になっているのかなという気もするんですけれども、いずれにしろ、文部科学省の見解と安全委員会の見解はいまだに食い違っていると。
○加藤審議官 だから、そこは基本は、それぞれ使ったところが、使ったジョブについては説明責任を負う、これが原則だと思います。
○久木田原子力安全委員 単位放出については、繰り返し申し上げているように、事故当日から1時間置きの計算というものが自動的に行われていた。そして、それは関係機関に配信されていて、安全委員会はその関係機関のひとつとして、それを受け取っていた、そういう立場です。
○時事通信松田記者 時事通信、松田です。
先ほど委員会の中で、高い放射線量のところの場所の写真をつけて、是非という話がありましたが、まさにどういった集まりやすいかというか、それが分かっていけば、ある共通性といいますか、それが浮かび上がってきて、そうすると逆に、積極的に高そうなところを探していって、こういうところは確かに高いとか、あるいは住民の方々が写真を見て、こんなような地形でこんなふうなところは危なそうなんだろうなとか、そういうことが分かるようになるんじゃないかと思うんですが、それはいつ頃どのような形でということについて、何かもう少し具体的なアドバイスというのはございますか。
○班目原子力安全委員長 きめ細かいモニタリングということになると、データをとるのにはそれなりの時間がかかりますので、一定の期間は必要だろうと思っています。
ただ、まさにこのモニタリングも、モニタリングの強化計画によって、第2フェーズに入っているというふうに我々は認識していて、初期の段階のひたすらとにかくたくさんとるという状態ではなくなっているんだと思うんですね。
むしろ、多くの方にご理解いただきたいのは、ひとつの点をとにかく毎日、測るといっても、ほとんど変動がないんですね。そういうところにせっかくのリソースを割いてしまって、そういうきめ細かい配慮ができないようでは、これはつまらないことになる。結局、何のためのモニタリングをやっているかというと、これはまさに生活している人の支援、あるいは避難地域となっているところの避難の解除が目的なわけです。そのためには、ひたすら何か大きな地点をとにかく毎日、毎日、測っていることがいいのだという考えから、皆さんが脱却していただきたいというふうに希望しています。その上で、まさにおっしゃるように、どういうところには注意しなきゃいけないかとか、そういうデータこそをとる方向に変えていかなきゃいけない時期に来ている、というふうに思っております。
○読売新聞野依記者 読売新聞、野依と申します。
保安院さんから説明がありました所内の電気設備の津波対策の関係で、委員から、高さ以外にもいろいろ影響を評価すべきではないか、というご意見があったと思うんですけれども、津波というのが、地震と違って絶対的にサンプル数が少なくて、どういう影響が出るのかというのがわからない中で、どういうものを評価項目に加えていくかということは、難しいと思うんですけれども、そこら辺に関して、何かご見解があればお尋ねできればと思います。
○班目原子力安全委員長 津波については、例えば1メートル想定を超えた場合に、とにかく水が入ってくることは事実ですね。しかし、原子力発電所の場合、水が入ってきたらすぐアウトになるような設計になってはいけないわけですね。
例えば、水密構造にして、水がやってきても、重要な機器は使い続けられるようにしておくとか、さらにはその水密構造が破れた場合には、予備の電源車を用意しておくとか、とにかく、分厚く守らなきゃいけないわけですよね。その分厚さというのが大切なのであって、ただ単に、津波については、これだけの高さを想定しましたから、もうあとは知りません、という態度では、これは許されないというふうに思っています。
そういう意味では、是非、津波というものが、どうしたってこれは今、最大で15mで、プラス9.5mでしたっけ、という緊急対策をとっていらっしゃる。それは、それでわかるんですけれども、それをまた上回ったときには、一体何が起こるのか、ということもちゃんと検討して、配慮がなされているかどうか、という辺りを安全委員会としては、これからちゃんと見ていきたいというふうに思っております。
以 上
6/4第2回目小勉強会、多数のご参加ありがとうございました。
6/11土曜日午後1時から第3回目小勉強会を企画いたしましたので、お知らせいたします。
今回から「参加者からの情報提供」の時間を加えてみました。
参加者皆様のお子様が通われている学校保育園の状況や、ご自身やグループで測定されているかたがいらっしゃればそのご報告、会社企業などでの取り組みの紹介など、ぜひとも有益な情報を共有させていただければと思います。インターネットの有益なサイトのご紹介もありがたいです。
情報提供してくださるかたがいらっしゃれば、合わせてご連絡をお待ちいたしております。(あて先:kazuki.kosaka@e-kosaka.jp)
すでに参加希望のメールをいただいている方には、お返事のメールを差し上げているはずです。
*****以下、第3回目のお知らせ*****
放射線被ばくに関連して、このブログでも多くのコメントをいただいています。
様々な情報、ご意見に深く感謝申し上げます。
情報発信の必要性、それら情報をもとに、では、どうすべきか考える場の必要性を小児科医師として強く感じています。
このたび、「放射線被ばくから子ども達を守るために、今、なすべきこと」をテーマに、勉強会を開催いたします。
会では、まずは、私のほうから、放射線医学に関する情報提供をさせていただきます。
その後、ご参加されている皆様と、では、何をするべきかを、一緒に考えたいと思います。
このような機会は、いろいろな方がご参加できるように開催の時間帯を変えつつ、また、私も放射線医学を専門としていないため今後は専門の先生方もお招きしながら継続して開催をしていきたいと思っています。
今回は、開催日時として希望の多かった土曜日の日程といたしました。
すでに、第1回5/30(月)、第2回目6/4(土)開催をいたしたところです。
毎回、基本的知識の部分では重複もありますが、第1回第2回で皆様が関心を寄せられた部分の充実や新しい動きの追加を行い内容を新しく更新をさせていきます。
新しいかたのご参加で、その後の会場トークの内容もいろいろな視点が出されることと思います。
前回参加された方でも、ぜひ、ご参加ください。
皆様のご参加をお待ちいたしております。
貴重な声をお届けください。
なお、皆様が今後企画されるこのような勉強会へ出前もいたしますので、お気軽にお声掛けください。
記
いっしょに学びましょう! いっしょに考えましょう!
お子様連れ大歓迎の小勉強会(第三回目)
『放射線被ばくから子ども達を守るために、今、なすべきこと』
日時:平成23年6月11日(土) 午後1時~2時半
場所:みんなの子育て広場 あすなろの木
(こども元気クリニック隣り)
中央区月島3-30-4 飯島ビル1F
電話:03-5547-1191
大江戸線勝どき駅A1出口徒歩2分
有楽町線月島駅 徒歩6分
参加費:無料、(ただし、資料コピー代は実費100円)
内容:
一、放射線医学のイロハ 講師:小坂和輝(小児科医師、医学博士) 45分
放射線被ばくに関する情報を、そのイロハから、わかりやすくお伝えします。
一、ご質問の時間 15分
一、参加者からの情報提供
一、会場トーク 30分~白熱すれば60分程度
皆様が日ごろ不安に思っていらしゃることや、ご意見ご提案などいろいろ出し合って、
意見 交換しましょう。
参加申し込み:
資料の準備の都合上、メール(あて先:kazuki.kosaka@e-kosaka.jp)でご一報いただけますと助かります。
会場は、子どもの遊び場と一体型になっています。お子様連れ大歓迎!
主催:みんなの子育て広場 あすなろの木
以上、
**************
*上記、小勉強会は、何度でもやりますので、無理に日程をあわされなくとも大丈夫です。(土曜日や、夜の開催も考えています。)
*万が一、メール申し込みなさっていなくとも、また、時間に間に合わなくて途中からでも、参加可能です。
*疑問にお思いの点やご提案は、前もって紙に書いて持参し、当日ご提出いただけますと幸いです。
***************
たいへん勇気付けられます。
原文はまだ、当たっておりませんが、以下、要旨まで。
****東京新聞(2011/06/10)*****
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011061001000226.html
村上春樹さんのスピーチ要旨
2011年6月10日 09時47分
【バルセロナ共同】作家の村上春樹さんがカタルーニャ国際賞の授賞式で行ったスピーチの要旨は次の通り。
一、東日本大震災で全ての日本人は激しいショックを受けた。今なおたじろぎ、無力感を抱いている。
一、だが、われわれは精神を再編成し、復興に向けて立ち上がっていくだろう。われわれはそうやって長い歴史を生き抜いてきた。
一、日本は唯一核爆弾を投下された国だ。放射能が世界や人間の身にどれほど深い傷痕を残すか、われわれは被爆者の犠牲の上に学んだ。
一、福島第1原発事故は日本人が体験する2度目の大きな核の被害だが、今回は爆弾を落とされたわけではない。自らの手で過ちを犯した。
一、理由は「効率」だ。原子炉は効率が良い発電システムだと電力会社が主張し、政府も国策として推進した。
一、地震国の日本は世界第3の原発大国となり、原発に疑問を呈する人には「非現実的な夢想家」というレッテルが貼られた。
一、だが原発は今、無残な状態に陥った。原発推進派の「現実」とは「便宜」にすぎなかった。論理をすり替えていたのだ。
一、(福島事故は)すり替えを許してきた日本人の倫理と規範の敗北でもある。われわれは自らも告発しなければならない。
一、日本人は核に対する「ノー」を叫び続けるべきだった。技術力を結集し、持てる叡智を結集し、社会資本を注ぎ込み、原発に代わる有効なエネルギー開発を国家レベルで追求すべきだった。それが、広島、長崎の犠牲者に対する、集合的責任の取り方となったはずだ。
一、損なわれた倫理や規範は簡単に修復できないが、それはわれわれ全員の仕事だ。新しい倫理や規範と、新しい言葉を連結させなくてはならない。
一、夢を見ることを恐れてはならない。「効率」や「便宜」という名前を持つ災厄の犬たちに追い付かせてはならない。われわれは力強い足取りで前に進んでいく「非現実的な夢想家」でなくてはならない。
低線量放射線被ばくの体への影響に対する考え方は、科学的な論争の起こるところです。
以下、「社団法人日本医学放射線学会」の考え方をお示しします。
低線量放射線被ばくの体への影響について、特に着目してみると、以下の6つのポイントが述べられています。
1)100mSv以下の低線量への考え方として、リスクは低くみてよい。
100mSv以下の低線量での増加は、広島・長崎の原爆被爆者の長期の追跡調査を持ってしても、影響を確認できない程度である(ICRP Publ. 103, 105)。原爆被爆では、線量を一度に受けたものであるが、今回は、線量を慢性的に受ける状況であり、リスクはさらに低くなる(ICRP Publ.82, 103)。
2)100mSv以下の低線量の影響は小さな影響と考えてよい。
今後100万人規模の前向き研究を実施したとしても、疫学上影響を検出することは難しいと考えられている。日本人のがん死が30%に及ぶ現代においては100mSv以下の低線量の影響は実証困難な小さな影響であるといえる。
3)内部被ばくを特別扱いする必要はない。
内部被ばくであっても外部被ばくであっても、その影響は臓器の吸収線量で決まり、内部被ばくを特別扱いする必要はない。
4)内部被ばくより、外部被ばく管理を確実に実施することが優先される。
現時点においては、放射性ヨウ素による内部被ばくへの寄与は小さく、外部被ばく管理を確実に実施することが優先されるが、市民を対象とした種々の計測も実施されており、内部被ばくについては今後の結果に留意することが必要である。
5)小児において、特別な配慮がなされなければならない。
被ばく時の年齢が大きく影響することが明らかとなっている。たとえば、白血病以外の全てのがんの相対リスクは被ばく時年齢が10歳以下の場合では、対照者の2.32倍となっている。先の項で述べたごとく、100mSv以下の低線量における発がんリスクは、小児においても確認されてはいないが、小児の被ばくに対しては、多くの場面で特別な配慮がなされなければならない。
6)市民に対しては、最善の努力がなされなければならない。
災害による被ばくが発生した場合は、市民の安全を考えた緊急避難や、緊急時の特別な線量管理、緊急被ばく医療体制の整備などの対応策がとられるべきであり、考え得るリスクに対する総合的・合理的な判断に立って、健康への悪影響が発生しないように、最善の努力がなされるべきである。
以下に、放射線医学ではなく、小児科学を専門にする医師として述べます。
5)と6)は、まったく同感です。
5)でいう子ども達の放射線被ばくの影響を考え、社団法人日本医学放射線学会からも、その対策の強化をぜひとも国に提言して行っていただきたいと考えます。
1)~4)の考え方に対しては、同意しません。
なぜならば、
1)100mSv以下の低線量の影響については、一度にあびる量は少なくても、「慢性的に長期間あび続けること」のリスクを過小評価していると考えます。
2)「100万人規模の前向き研究を実施したとしても、疫学上影響を検出することは難しいと考えられている。」とあきらめるのではなく、まずは、被ばくされた皆様の健康管理を第一義的にするなかで、疫学の「精度」を高めることができると考えます。
3)臓器の吸収線量は、ひと個人によっても異なるし、また、臓器ごとに異なってくることも意味します。
臓器の吸収線量で、影響を受けやすい臓器(造血器幹細胞、神経細胞、生殖細胞など)での内部被ばくをもっと深刻に捕らえるべきでないでしょうか。
4)放射性ヨウ素による内部被ばくへの寄与は小さくとありますが、セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどの影響について、もっと深刻に捕らえるべきではないでしょうか。
以上、
1)~4)が、果たして自分が書いたことがらが確からしいかどうかは、
これからも追求していけねばならないと考えています。
*****日本医学放射線学会ホームページより*****
http://www.radiology.jp/modules/news/article.php?storyid=931
原子力災害に伴う放射線被ばくに関する基本的考え方
2011-6-2 21:36:23
2011年6月2日
社団法人 日本医学放射線学会
東日本大震災において発生した原子力災害に伴う放射線被ばくに関する基本的考え方を発表するにあたり、不幸にしてお亡くなりになった方々、被災された方々に、衷心より弔意とお見舞いを申し上げます。
今回の震災は、地震、津波に加えて、過去の震災に例を見ない、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、近隣市町村一般住民の居住環境に放射線量の上昇をもたらした。その後、関東に及ぶ広範な地域で、水道水、農産物、大気など生活のあらゆる場面で放射性物質が検出されるにつれて、一部市民の間には飲料水の買い占めなどパニックに近い状況が一時的に広がった。
日本医学放射線学会は、医療関係者への正確な情報発信と意識統一を学会の責務と考え、2011年3月27日に、日本医学会の後援を受けた緊急チャリテイ講演会*)を東京で開催した。その後、放射線防護委員会アドホック委員会を開催し、以下の基本的考え方をまとめた。
今回提示する基本的考え方が、日本医学放射線学会会員はもとより、多くの医療関係者にとって放射線防護に関する考え方の基本となることを願っている。
*放射線影響量と防護量
放射線影響量とは、放射線による人体への影響を生物学的ないし疫学的な研究に基づいて科学的に解析して得られた線量である。一方、放射線防護量とは、防護のための考え方から、基本的には社会的合意の上に定められたものである。被ばくにより何らの利益も受けない人が放射線を浴びる意味はないという観点から、公衆の被ばく限度は、自然放射線と医療被ばくを除いた被ばく線量が年間1mSvという、自然放射線被ばくを下回るほどのきわめて小さな線量に規定されている。また、放射線作業者に対しては、5年間で100mSv以下、単年度は50mSvを超えないように管理することが義務づけられている。これらの、線量限度と総称する規制値は、各種の施策を実行するための防護量であり、影響量とは区別されなければならない。
*低線量の放射線影響
放射線はそのイオン化作用でDNAに損傷を与えるので、放射線量の増加に伴い、がんなどの確率的影響が発生する危険性も増加する。しかし100mSv以下の低線量での増加は、広島・長崎の原爆被爆者の長期の追跡調査を持ってしても、影響を確認できない程度である(ICRP Publ. 103, 105)。原爆被爆では、線量を一度に受けたものであるが、今回は、線量を慢性的に受ける状況であり、リスクはさらに低くなる(ICRP Publ.82, 103)。そのため今回の福島の事故で予測される線量率では、今後100万人規模の前向き研究を実施したとしても、疫学上影響を検出することは難しいと考えられている。日本人のがん死が30%に及ぶ現代においては100mSv以下の低線量の影響は実証困難な小さな影響であるといえる。
*内部被ばくと外部被ばく
内部被ばくは吸入または経口、経皮摂取により体内に取り込まれた放射性物質からの被ばくを、外部被ばくは身体の外にある放射線源からの被ばくを指す。アルファ線のように極めて高い生物効果ではなく、通常のガンマ線やベータ線のように同等の線質係数をもつものについては、内部被ばくであっても外部被ばくであっても、その影響は臓器の吸収線量で決まり、内部被ばくを特別扱いする必要はない。そのため、人への放射線被ばくの影響を考慮する場合には、内部被ばくと外部被ばくを合算する。今回の福島原発災害では、現時点においては、放射性ヨウ素による内部被ばくへの寄与は小さく、外部被ばく管理を確実に実施することが優先されるが、市民を対象とした種々の計測も実施されており、内部被ばくについては今後の結果に留意することが必要である。
*小児への放射線影響
広島・長崎の原爆被爆者の調査結果などから、放射線影響による発がんの生涯リスクには被ばく時の年齢が大きく影響することが明らかとなっている。たとえば、白血病以外の全てのがんの相対リスクは被ばく時年齢が10歳以下の場合では、対照者の2.32倍となっている。先の項で述べたごとく、100mSv以下の低線量における発がんリスクは、小児においても確認されてはいないが、小児の被ばくに対しては、多くの場面で特別な配慮がなされなければならない。
*原子炉作業者の被ばく
今回のような原子炉災害に伴う緊急作業者に対しては、事前に、通常よりも充実した内容の、放射線影響に対する教育が実施されるべきである。作業者が作業の重要性を理解し、安全に安心して作業を継続できるように、また、緊急時の線量限度(250mSv/年)に近い放射線を被ばくした場合でも過剰な不安に陥ることがないように、メンタルな面を含む十分なケアが必要となる。
なお、常に健康管理を充実させ、線量限度を超えた可能性のある緊急時には直ちに健康診断を実施しなければならない。
*学校生活や住民生活の制限
ICRP(国際放射線防護委員会)は、災害時の公衆の線量管理について、緊急時は20~100mSv、緊急事故後の復旧時は1~20mSvとしている(ICRP Publ. 103)。また、残留した放射性残渣によって生じる長期被ばくに関して、10mSvを下回る被ばく線量の場合に、これをさらに低減するために実施する行為は、正当化されにくいと勧告している(ICRP Publ. 82)。いずれにしろ、長期的には1mSv以下が目標であり(ICRP Publ. 111)、できる限り早く平時の状態に戻す必要がある。学校生活や市民生活の制限に際しては、市民の感情、学校教育の実施、線量低減のための費用、生活の制限に伴う苦痛などを総合的に考慮した判断がなされることを望む。
*医療被ばく・職業被ばくと災害による被ばくとの違い
医療被ばくは患者の健康を守るという利益を保証した上での被ばくであり、放射作業者の被ばく(職業被ばく)は、放射線利用に伴う作業という社会的利益のための被ばくである。これに対して、災害による被ばくは公衆に何らの利益ももたらさない被ばくであり、これらの3種類の被ばく量を相互に比較する意味は少ない。
このため、災害による被ばくが発生した場合は、市民の安全を考えた緊急避難や、緊急時の特別な線量管理、緊急被ばく医療体制の整備などの対応策がとられるべきであり、考え得るリスクに対する総合的・合理的な判断に立って、健康への悪影響が発生しないように、最善の努力がなされるべきである。
*)緊急講演会の基調講演の資料として次の報告書(2004年)の参照を推奨する。
・丹羽太貫(主査),甲斐倫明,久住静代,佐々木正夫,佐藤文昭,柴田義貞,島田義也,清水由紀子,米澤司郎,渡邊正巳(以上専門委員),酒井一夫,笹川澄子,佐渡敏彦(以上協力者);原子力安全委員会・放射線障害防止基本部会・低線量放射線影響分科会報告書;低線量放射線リスクの科学的基盤‐現状と課題‐, ,2004年3月
http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/houbou/houbou001/ssiryo5_1.pdf#page=14
自分の謎がひとつ解けました。
テレビで移される福島第一原発を襲う津波が、報道では「15m」とされてきましたが、本当にそれだけのものがあるのかと、見るたびに思っていました。
私が見ていたのは、「浸水深」で、原子力発電所建屋の建つ地面から津波の水面までの深さをいい、それが、「4~5m」であったということです。
政府報告書では、通常の海面から津波の水面までの「浸水高」を用いて「14~15m」と言っていたのでした。
原子力発電所は、通常の海面からは、盛り土をして海抜「10m」の土地に建てられています。よって建屋の浸水は、「4~5m」で済んだのでした。
本来もっと盛り土をする計画もあったということですが、それであれば、原子力発電所は、津波被害から余裕で免れたということになります。
残念でなりません。
ただ、もしかして、津波にあっていなくても、同様の原発事故は、大地震で起きていたのかもしれません。
「津波15m」と誤記載をして、印象づけたかったものが、何かあったのでしょうか。
原発事故に限りませんが、津波の規模、高さを表現する場合、厳密に用語を使い分けねば、混乱が生じるので、気をつけねばなりません。
<津波の規模をあらわす用語>
津波の高さ:通常の海面から津波の頂部までの高さ
浸水高:海面から建物等が水につかった地点までの高さ
遡上高(そじょうだか):津波が陸地を駆け上がった地点までの高さ

***津波の写真****
http://mainichi.jp/select/jiken/graph/20110519/index.html
中央区で言うならば、大地震に備え中央区の防災計画の全面改定を急ぐとともに、重要な問題として、例えば、臨海学校、林間学校において、大地震に遭遇することをきちんと想定し、子ども達の身の安全を確保する対策を立てなければなりません。
*****NHK(2011/06/09)******
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110609/k10013433381000.html
三陸~茨城沖 M7超余震のおそれ
6月9日 21時56分
政府の地震調査委員会は、3月に巨大地震が起きた三陸沖から茨城県沖にかけての海域では、今後もマグニチュード7を超える大きな余震のおそれがあり、内陸の一部の活断層でも地震の危険性がこれまでより高くなっている可能性があると発表しました。
政府の地震調査委員会は、9日に開いた定例の会合で、今回の巨大地震が国内の地震活動に与える影響などを検討しました。それによりますと、巨大地震の震源域となった、三陸沖の中部から茨城県沖にかけての海域では、今後もマグニチュード7を超える大きな余震が起きるおそれがあるほか、三陸沖から房総沖にかけての日本海溝に近い沖合では、巨大地震に誘発される形で津波を伴う大きな地震が起きるおそれがあるとしています。また、内陸の活断層のうち、宮城県と福島県に延びる「双葉断層」と、本州の中央に延びる「糸魚川-静岡構造線断層帯」のうち、長野県の「牛伏寺断層」の区間、それに、埼玉県西部から東京の多摩地域に延びる「立川断層帯」の3つの活断層では、巨大地震の影響で地震の危険性がこれまでより高くなっている可能性があると指摘しています。地震調査委員会の阿部勝征委員長は記者会見で、「巨大地震から時間がたち、各地の地震の回数は全体的に減ってきているが、どこで地震が起きてもおかしくない状況には変わりがなく、引き続き注意する必要がある」と述べました。また、今回の会合では、日本周辺の海底で起きる地震の長期的な評価のうち、巨大地震が起きた三陸沖から房総沖にかけての地震をことし秋ごろまでに、東海地震と東南海・南海地震についても来年春をめどに見直していく方針を決めました。
以上、
中央区の職員、学校幼稚園保育園職員、各施設職員、防災拠点運営委員会、町会自治会、消防団、多くの皆様が、その対応に追われたことが、どの会合にいっても話題として上ります。
本来、防災拠点は、地域住民の避難場所でもあります。
受け入れた帰宅難民であふれてしまうと実際の機能が果たされなくなる可能性があります。
お隣の千代田区でも、帰宅難民対策を含め地域防災計画を全面改定をするということ。
中央区も再開発の場合、帰宅難民の待機場所となる広場や防災倉庫を設ける配慮をしていることは存じ上げておりますが、各企業が帰宅難民を出すことなくそれぞれの企業自身で対応頂けることも含め、企業と地域と行政が一体となって体制整備していかねばならないと考えています。
中央区は、交通の要である東京駅や、銀座日本橋築地など観光客、外来者が多く集います。この方々の受け入れ対応も行う必要があります。
医療面で言えば、各防災拠点には、医師の配置担当が決められています。
防災拠点運営委員会において、医師との連携がなされるきっかけづくりもまた、必要です。
****東京新聞(2011/06/09)*****
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011060902000035.html
「帰宅難民」の宿泊先確保へ 千代田区 防災計画見直し
2011年6月9日 朝刊
東京都千代田区が震災時の帰宅難民対策の強化に乗り出す。東日本大震災の当日は約一万七千人が区内の施設に寝泊まりする事態に陥ったため、大量の宿泊先を確保する。九日の区議会本会議で石川雅己区長が表明し、年内をめどに区地域防災計画を全面改定する。
現行の防災計画は、日比谷公園や皇居外苑など六カ所を「帰宅困難者支援場所」に指定。区内の大学や企業からも災害時に避難施設提供を受ける。しかし、いずれも主に一時的な避難所の位置づけで、多数の宿泊は想定していなかった。
震災当日は帰宅できない人が鉄道駅などにあふれ、区や企業などが急きょ、区役所本庁舎や丸ビルなど約六十カ所を自主開放。また比較的遠方から電車などで通学する子どもたち約二百人が、学校で一夜を明かした。
新計画では、帰宅困難者の受け入れ施設を確保するほか施設に関する情報発信や施設への誘導、食料配給などを強化。区職員の到着が遅れることも考えられるため、避難者自身が備蓄物資を運び出すなど避難所開設作業を行うことも想定する。
以上、
****過去の関連ブログ*****
東日本大震災を受け東京の大震災に備える(1)保育園児、幼稚園児、学童、生徒の安全は守られたか?
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/0cb0043b24b48c4fffee05ae7bedcc0e
昨日は、以下、五点。
今後、検討を深めていきたいと思っています。
一、ヘルパー等介護従事者のスキルアップの場を積極的に作って行くこと
在宅療養を進める上で、ヘルパー等介護従事者のスキルアップは、重要な要素のひとつ
→下記、東京新聞記事参照
一、利用者の声を反映し老健施設をさらに利用しやすくサービスの向上を目指していくこと
例えば、訪問なしでの入所登録を可能にすること
胃ろうがあっても入所可能にすること
送迎時間を利用者の利便性にあわすこと
家族付き添いなしでも食事を可能にすること
家族が毎日面会に来なくてもよいようにすること
認知症も受け入れて行くこと
一、特養まちをなくしていくこと、
特養を増設も大事であるが、老健もさらに大事であるかもしれない
一、「ステップ中央」の重要性
今後役割がさらに重要になる
認知症のひとが消費者トラブルに巻き込まれないようにする
一、高齢者の精神疾患への対応
受診につながるようにする仕組みづくり
対応ができると家族、周囲の負担は、多いに減ることが期待できる
*****以下、勉強会のメモ*****
1、ヘルパー等介護従事者のスキルアップの場を積極的に作って行くべき
現在は、サービス責任者が教えている。行う事業所は、年に4回ほどの講習の場。
港区では、技術のすぐれたヘルパーの表彰も行っている。
ヘルパーの仕事は、リスクが大きい。
在宅医療の鍵である。
今後、ヘルパーの行うことができる医療行為が増え、さらにスキルアップの場が必要になる
2、老健施設について
胃ろうがあると入ることができない場合がある
送迎時間が早い場合がある
施設内での洗濯
入所登録で施設来院が必要(家族ならよいが、一人暮らしでは難)
家族が施設で食事介助
毎日面会
特養まち
認知症が重度でも受け入れ
3、成年後見
本人の同意で、支援施設を利用可能になるが、その本人の同意を得ることが難しい
4、高齢者の精神疾患(統合失調症など)
受診につながらない
認知症の診断で、かかりつけ医が自立を診断、調査では重度と判定と差が出る場合がある。
5、特養まち
「特定」の施設では、施設内でケアプランを立てる、訪問看護の診療点数も低くなる
入所に2億、月50万円の施設
入居の代金が不要で、月々高いところもある
など
*****東京新聞(2011/6/8 夕刊第一面)*****
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2011060802000198.html
介護職員にも医療ケア研修
2011年6月8日 夕刊
胃ろうやたんの吸引など原則として医師や看護師にしか認められていない「医療的ケア」を近い将来に介護職員にも担ってもらおうと、東京都新宿区は、看護師を障害者施設に派遣して職員の実地研修を進めている。国が研修を条件に介護職員にも認める制度改正を準備しており、区は改正時に障害者と家族の要望に迅速に応えようとの狙いだ。 (松村裕子)
区は四月から訪問看護事業所など三カ所と連携し、重度身体障害者が入所するグループホーム二カ所を看護師が二週に一度のペースで訪問している。実地研修は制度改正後も継続する方針で、都内では他の自治体に先駆けた取り組みという。
五月下旬。ホームを訪れた看護師は、職員の介護福祉士に入所者のための胃ろうの処置方法を指導した。「作業自体はそれほど難しくないが、顔色や体重から健康状態をチェックしたり、嘔吐(おうと)などの異常に対処したりするには専門知識がないと難しい」と看護師は注意点を挙げる。
介護福祉士は「介護職員ができるようになっても、助言してくれる看護師がいると安心。自分たちでは気づかない入所者の体調の変化も見てもらえる」と感謝し、入所者の家族も「看護師の支援態勢ができれば、安心できる」と喜ぶ。
全国的に胃ろうやたん吸引を必要とする要介護者は急増しており、看護師だけでは対応できない状況になっている。障害者施設に看護師が常勤する割合は低く、障害者にとって施設の選択肢や活動の幅を狭める原因となり、入所後に医療的ケアの必要が生じて退所を余儀なくされるケースもあるという。
新宿区でも医療的ケアを必要とする障害者は約百六十人いるが、看護師常勤の入所施設は一カ所のみ。本人や家族が処置するか、ときには医師から指導を受けている介護職員が家族の同意を得て処置せざるを得ないのが現状だ。
同区では、連携する訪問看護事業所が、介護職員向けのマニュアルを作り、今月下旬から集団研修会も手がける。研修事業の窓口を務める医師の藤本進さんは「将来的に連携できる事業所を増やしたい」と話している。
厚生労働省は、多くの障害者と家族の要望に加え、本来なら緊急避難的な措置であるはずの介護職員による医療的ケアが、もはや例外ではなくなっている現場の実態も踏まえ、改正方針を決定。二〇一二年度の実施を目指して関連法案を開会中の国会に提出している。
<胃ろうとたんの吸引> 胃ろうは、内視鏡を使って腹の皮膚から胃に穴をあけて作った小さな口に、体外とつなぐ管を取り付け、管を通して栄養補給する。飲み込む機能が低下した嚥下(えんげ)障害の高齢者や食道手術後などで口から食べられないときに利用。たんの吸引は、人工呼吸器を装着するなどして自らたんを排出できない患者らのため、吸引器でたんを除去する行為。ある程度、危険を伴うため、ともに原則として看護師ら医療職にしか認められていない。
以上