Annotated Critique of United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation (UNSCEAR) October 2013 Fukushima Report to the UN General Assembly
http://www.psr.org/assets/pdfs/critique-of-unscear-fukushima.pdf
原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の国連総会への2013年10月のフクシマ報告書についての注釈付き論評
http://fukushimavoice2.blogspot.jp/2013/10/unscear201310.html
原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)の国連総会への2013年10月のフクシマ報告書についての注釈付き論評
社会的責任を果たすための医師団(PSR)、米国
核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、ドイツ
社会的責任を果たすための医師団/核戦争防止国際会議、スイス
核戦争防止医師協会、フランス
核戦争防止医師協会、イタリア
人類の福祉のためのナイジェリア医師会
社会的責任を果たすための医師団、マレーシア
オランダ医学戦争学協会、オランダ
Independent WHO−原子力と健康への影響
「骨に癌ができ、血液は白血病を患い、肺に毒が入ってしまった子供たちや孫たちの数は、自然由来の健康被害と比べると統計的に小さいと思えるかもしれない。しかし、これは自然由来の健康被害ではない。さらに、統計的な問題でもない。人間の命が1人分でさえも失われるということ、あるいは、赤ちゃんが1人でも奇形を持って生まれてくるということは、例えその赤ちゃんが、我々が皆死んでしまったずっと後に生まれて来るかもしれなくても、我々全員にとって重要なことであるべきだ。我々の子供たちや孫たちは、我々が無関心を装ってもよいような、単なる統計ではない。」
ジョン・F・ケネディー、1963年7月26日
「リスクモデルによる推定は癌リスクの増加を示唆するが、放射線誘発性の癌は、現時点では、他の癌と区別がつかない。ゆえに、この集団における、事故による放射線被ばくのせいである癌発症率の識別し得る増加は予期されない。」
UNSCEARの国連総会への報告書、2013年10月25日
概要
I.
はじめに
II.
考慮すべき10の問題
1) 日本でより大きな大惨事を防いだ主要因は風向きだった
2) 原子力災害は進行中であり、放射性物質を放出し続けている
3) 放射性物質の放出と放射線への被ばくの推定は、中立的な情報源に基づくべきである
4) 福島産の農作物の推奨は、放射線被ばくのリスクを増加させる
5) ホールボディーカウンターは、内部被ばく量を過小評価する
6) 東電の作業員の線量評価は信頼できない
7) 胎児の放射線への特別な脆弱性が考慮されていない
8) 甲状腺癌や他の癌は何十年もモニタリングする必要がある
9) 非癌疾患や放射線の遺伝的影響も、またモニタリンングされるべきである
10) 放射能フォールアウトと自然放射線との比較は誤解を招く
III.
結論
*****
I) はじめに
核戦争防止国際医師会議(IPPNW)は、より健康的で、より安全で、より平和な世界を目指して活動する医師達の世界的な連盟である。IPPNWの支部は、60ヶ国以上で、核廃絶を支持し、核のない世界を提唱する団体として活動している。IPPNWの活動は、1985年にノーベル平和賞を授賞した。この論評は、IPPNWの米国支部、ドイツ支部、フランス支部、オランダ支部、マレーシア支部、ナイジェリア支部、イタリア支部、およびスイス支部によって提出された。
2011年に、IPPNW役員会は、核兵器がない世界というゴールに向けて、核の連鎖の中の軍事部門と民生部門の間の強い相互依存性を指摘することで、より包括的なスタンスをとることに全会一致で同意した。核兵器が存在しない世界は、我々が原子力から手を引かなければ可能ではない。医師として、我々はまた、ウラン採掘や放射性廃棄物処理場の公衆衛生への影響、世界中で高濃度放射性の核分裂性物質を処理および輸送することに伴う危険、原子力の民生利用に伴うコントロール不能のリスク、核分裂性物質の民生および軍事での重複利用の可能性とその結果である核兵器拡散のリスクから、核兵器実験の世界的な健康影響と解決されていない核廃棄物の問題などの核の連鎖のすべての側面による環境および健康影響を深く懸念している。地球上に存在するすべての人間は、軍および工業による放射能汚染が存在しない、健康と幸せと一致した環境に住む権利を持つ。
2011年3月のフクシマの炉心溶融の後で、IPPNWの医師達は、福島県の被災した多くの家族、地元の政治家や医師達から連絡を受け、放射能フォールアウトによる健康影響についての専門的知識を求められた。これまでの2年半で、IPPNWの医師達は、汚染地域の住民が有効な科学的情報を収集し、子供達を放射線の有害な影響から守るのを支援してきた。
多くの場合、IPPNWは、原子力産業とロビー団体による、大惨事の影響を隠そうとする試みに批判的に立ち向かい、公的に非難しなければいけなかった。子供の年間放射線被ばく許容量を1mSvから20mSvに上げるという政府の法令に反対した家族、医師や科学者らを支え、放射線被ばくの増加は有害ではなく、健康被害は予測されないと公的に宣言した日本の原子力ムラの支持者に対して、強い姿勢を取った。
2012年5月と2013年2月に、我々は、WHO/IAEAのフクシマに関する報告書についての批判的評価を公表した。そして、福島および日本各地の市民社会、医師、活動家や影響を受けた家族らと連絡を取り続けている。2012年8月に広島で開催されたIPPNWの第20回世界大会では、IPPNWの医師達は、これらの繋がりを深めるために、福島県の汚染区域を訪問し、また、科学会議、市民集会や大学の講義に参加した。
国連人権理事会の「健康に対する権利」特別報告者のアナンド・グローバー氏のように、我々は、フクシマの放射能フォールアウトに影響を受けた人達が、健康と幸せを保てるような生活水準への権利を系統的に奪われていると懸念している。
10月25日に、UNSCEARは、国連総会に年次報告を提出する。フクシマ原子力災害に関しては、この報告書は、「被ばくした人達において、放射線由来の健康影響の発症の識別し得る増加は予期されない。」と述べている1。これは、2013年5月31日のUNSCEARプレスリリース2で述べられた、「福島第一原子力発電所事故後の放射線被ばくは、即時に健康に影響を及ぼさなかった。一般市民と作業員のほとんどにおいて、将来、いかなる健康影響でも起こるとは考えにくい。」の繰り返しである。
健康と健康な環境への人権を懸念する医師や科学者として、我々は、謹んで反対の意を表明する。フクシマについての科学文献や現在の研究からは、そのような楽観的な仮定は正当化されない。広範囲に渡る複雑なデータの評価に尽力されたUNSCEAR委員会のメンバーに感謝の念を表し、原子力災害の公衆衛生と環境への影響の評価において役立つ情報が含まれていると信じてはいるが、この報告書は、また、大惨事の真の影響を隠蔽することを助長している。
UNSCEARの仮定の多くは、2012年5月と2013年2月に公表された WHO/IAEA報告書3,4に基づいているが、これらの報告書は、真の放射線被ばく量を正しく伝えておらず、不完全な仮定に従っており、過去2年半以上に渡って継続している放射能放出を無視し、放射線の非癌影響を除外していた5,6。
現在のUNSCEAR2013年10月報告書に関して、10の重要な問題に注意を促したい。これは事前にUNSCEARに送られ、総合的なフクシマ報告書の起草において考慮するように委員達に依頼してある。下記で、この10の重要な問題について詳述し、なぜ我々がUNSCEAR報告書はフクシマ原子力災害による健康影響の系統的な過小評価であると考えるのかについて、我々のコメントが一般市民と政治家の理解を促すことを望む。
II) 考慮すべき重要な10の問題
1) 日本でより大きな大惨事を防いだ主要因は風向きだった
炉心溶融による放射能フォールアウトの約80%が太平洋に運ばれ7、大都市部に届かなかったために、日本国民が最悪のシナリオを回避できたということを認識することが重要である。この理由は、入念に練られた救助計画や技術的知識のおかげではなく、むしろ、風向きが南ではなく北東に向かったために、3,500万人以上が住む首都圏が激しく汚染される危険をもたらさなかったという、単なる幸運のせいである。しかし、ある1日に、風が沿岸方面に向かって吹いたために、破壊された発電所から何十kmもの内陸部に多くの放射性物質が到達してしまい、小さな町や村から何万人もの住民が避難せざるを得なくなった。フクシマ事故は、日本のような高度の工業先進国でさえも、原子力につきものの危険をコントロールすることができなかったのを明白に示した。
日本のほとんどは幸運にも大きな放射能フォールアウトを免れたが、福島県だけが影響を受けたわけでもない。日本全国の住民は、大気中または水や食物中の放射性物質に晒されただけでなく、これからも、主に汚染食品を通して被ばくをし続けるであろう。それ故に、個人および集団被ばく線量の推計が、千葉県、群馬県、茨城県、岩手県、宮城県と栃木県の近隣6県のみならず、2011年3月15日と21日両日にかなりのフォールアウトがあった都道府県でも行なわれることが重要である。これには、千葉県と同じく南関東に位置する東京都、神奈川県と埼玉県、そして東海地方の静岡県が含まれる8。東京から140km南の静岡県の茶葉でさえ、放射能フォールアウトによって汚染されていたのが見つかっている9。
「被ばくした人達において、放射線由来の健康影響の発症の識別し得る増加は予期されない。」というような発言が、原子力事業者や原子力規制当局が将来の事故やメルトダウンを心配しなくても良いというシグナルとして理解されるのではないかと我々は懸念している。また、我々は、UNSCEAR報告書の結論が、放射線安全基準や緊急対応ガイドラインに影響を与え、将来の世代により大きな被ばくリスクがもたらされるのではないかとも懸念している。
我々は、日本中の住民が、放射能レベルの増大によって直接影響を受けるであろうということを強調することが重要だと感じる。最大の実効線量がみられたのは、作業員と福島県の汚染区域の住民だったとは言え、最終的には、福島県外の大集団における慢性の低線量被ばくが、癌と非癌疾患の過剰発生のほとんどを引き起こすことになるのである。これは、将来の原子力安全ガイドラインや推奨を考慮するにあたって重要な問題である。
また、日本がもう少しでもっと重大な災害にみまわれる所だったということ、2011年3月中旬に風向きが南もしくは西向きであったなら、より優れた緊急計画や、より効率的な避難や除染でさえも、二次的な役割しか果たせなかっただろうということを忘れてはいけない。
2) 原子力災害は進行中であり、放射性物質を放出し続けている
フクシマ原子力災害は、しばしば、2011年3月の当初の炉心溶融後から継続している放射能放出を無視し、単独の出来事であると誤って描写されている。特に、福島第一原発で進行中の作業や福島県内の除染作業による放射性粒子の継続した拡散、放射能汚染水貯蔵タンクや損傷した炉心からの土壌や地下水への漏えい、そしてまた、野原や森林や都市部の居住地から洗い流される放射性同位体による土壌と地下水の放射能汚染を考慮することが大切である。除染の試みは、雨期には森林や野原などの自然の蓄積場所から、またや風の強い日や春には花粉の飛散が放射性粒子の拡散に寄与したりして、放射能が以前に除染された地域に再分布されるために、市町村によっては一時的な対策にしかならないということが証明されて来た10, 11。
フクシマ原子力災害は、特にセシウム137やストロンチウム90などの半減期が長い放射性核種を考慮すると、汚染の蓄積量の再評価が絶えず必要となる、進行中の大惨事であると認識されなければいけない。将来、地下水や海に放射性核種の放出が起こらないとは言いきれない。現に、UNSCEARの国連総会への報告で「海洋への低量水準の放出は、2013年5月の時点で持続していた。」と述べられている12。 将来的に、このような地下水と海への漏えいは、地下水源と食物連鎖からの放射性核種を通して、一般住民の内部被ばくの増加に繋がるであろう。このシナリオは、バーバリア地方さえも含む欧州東部と中部のいたる所で、きのこや野生鳥獣に含まれている放射性セシウム137が、チェルノブイリ炉心溶融から25年も経った今でさえも公衆衛生に懸念をもたらしていることを考えると、現実的な評価である13, 14。
フクシマの個別の事例としては、放射性廃棄物の地下水と海への継続した漏えいと流出が、固有の問題となる。日本政府の公式報告15によると、東電は、2011年4月4日から10日の間に、10,393トンの放射能汚染水を意図的に海に放出した。海洋汚染全体の当初の推定は、東電によると4.7 Pbq (ペタベクレル= 1015ベクレル)だった。しかし、過去最大の太平洋汚染は、最初の炉心溶融直後の何週間かの放射能フォールアウトから起こっており、これは、東電の推定には含まれていない。京都大学の科学者達が太平洋の放射能フォールアウトの度合いを測定しようとし、最終的に、ヨウ素131とセシウム137両方からの海洋汚染の合計が15 PBqだと計算した16。しかし、この推計値でさえも低過ぎることが分かった。海洋汚染を測定するにあたり、UNSCEARは、2011年8月の川村氏らによる研究論文を主に用いたが、この研究論文17では、海洋汚染の合計が、ヨウ素131が68 PBqでセシウム137が9 PBqであると決定された。
これらの推計値は、フクシマの炉心溶融後にあり得た海洋汚染の範囲の概要としては十分ではあるとは言え、いくつかの誤差要因を考慮する必要がある。川村氏は、「モニタリングデータがなかったので、3月21日の前に海への直接の放出はなかったと仮定した。」と述べている18。また、この研究での計算は、「4月6日以降に大気に放出された量の情報はない。故に、4月6日以降には放射性物質が大気へ放出されなかったと仮定した。」と、現実主義的な立場から、4月6日以降の大気への放出を考慮していない19。最も不可解なのは、東電が先日明らかにしたように、事故の当初から毎日約300トンの放射能流出が海に到達しており、過去31ヶ月での合計が290,000トンになるにも関わらず、2011年4月30日以降の放射能流出がすべて無視されていることである。川村氏らでさえも、「おそらく、将来のある時点で、海洋および大気への放出のソースタームの推定をより正確に行なう事が必要となるだろう。」と渋々と認めている20。
まとめると、これまでに説明した不確定さと過小評価すべてを合わせても、UNSCEARは、海洋汚染を77 PBqかそれ以上であると仮定していると言え、これは、京都大学の推定の5倍以上、そして東電の最初の計算の15倍以上にもなる。これらの数字を見ると、フクシマのフォールアウトは、これまでに記録された中でも唯一無二の最大の海洋への放射能流出を構成すると、明確に述べられなければいけない21,22。IAEAの包括的な報告によると、フクシマの放射能フォールアウトは、既に、大気圏核兵器実験、チェルノブイリからのフォールアウト、およびセラフィールドやラ・アーグなどの核燃料再処理工場に並ぶ、世界の海の主要な放射性汚染物質であると位置付けられている23。
UNSCEAR報告書には、米国西海岸の住民にとって興味深い事実が含まれている。直接流出した放射能の約5%のみが、福島第一原子力発電所から半径80km以内に沈着したのである。残りは、太平洋に分布された。環太平洋地域の3−Dシミュレーション24が行なわれており、放出された放射能は5−6年以内に北米沿岸に到達すると言われているが、食品の安全性や地元住民の健康への影響は不確定である。
3) 放射性物質の放出と放射線への被ばくの推定は、中立的な情報源に基づくべきである。
科学的研究のいくつかは、フクシマの「ソースターム」、すなわち、原子力事故で放出された放射性物質の総量の計算を扱った。福島第一からの放射性物質の放出が現在でも続いており、また、出回っているソースタームの推計値が事故直後の数週間の放出のみを扱っているという事実を考慮する間でもなく、集団ベースの健康影響を計算する場合にどのソースターム推計値を用いるかと言うのは重要なことである。UNSCEARのソースタームの計算は、日本原子力研究開発機構(JAEA)の推計値に基づいているが、JAEAとは、フクシマ事故の国会事故調査委員会で、原子力業界からの独立性や安全分野での不注意を厳しく批判された組織である25。
有名なノルウェー大気研究所(NILU)によると、、セシウム137の放出はJAEAの推定の3倍26だった。もしも、主な懸念が住民への健康影響の可能性を十分に評価することであれば、なぜ、UNSCEARが、批判のあるJAEAの、中立的な国際機関よりも低いソースターム推計値に頼るのか不明である。日本の原子力業界でなく、中立的な国際機関のデータに頼れば、選択的なデータサンプリングに対する非難を減らすことができる。また、大気放出の評価には、JAEAのようにヨウ素131とセシウム137だけを考慮するのでなく、福島県の土壌、地下水および河川の堆積物から検出された27、ヨウ素133、ストロンチウム89/90や、プルトニウム同位体のような放射性核種も含めることが重要である。
ソースターム推定値と同様に、食物と飲料水からの放射性物質の摂取の推定は、原子力災害後の個人の放射線被ばく量全量にかなりの影響を及ぼす。どれほど専門的に行なったとしても、内部被ばくによる健康リスクの評価は、それが基づく仮定よりも正確ではあり得ない。さらに、どのような線量計算も、食物サンプルの選択およびサンプルサイズの決定の方法に左右される。選択的なサンプリング、歪曲や省略などの理由で妥当性に疑問が持たれるデータに基づく推計値は、(健康影響の)予測や健康政策の推奨を行なう際の根拠として容認できない28。
食物内の放射線量に関しては、UNSCEARは唯一無二の情報源として、国際原子力機関(IAEA)のデータベースを用いている。IAEAは、「原子力技術の安全、安心で平和的な利用を推進」し、「原子力の世界中での平和、健康および繁栄への貢献を加速および拡大する」という特定のミッション29の下に設立されたため、 甚大な利益相反がある。IAEAの食物サンプルデータに頼ることは、内部被ばく量評価の信用を落とし、評価結果が操作されているという非難を受けやすいために、賢明ではない。さらに、食物サンプルがどこで誰によって集められたかということを特定することは、選択的サンプリングの疑惑を避けるために得策である。
最後に、客観的に測定された低線量被ばくの人間以外の生物相への影響を理解すれば、人間への真の影響の理解に役立つ可能性がある。UNSCEARは、実際の放射線の影響を決めるのに、最新の生物学的科学的野外調査にあまり頼っているように見えない。その代わりに、1996年と2008年の放射線の人間以外の生物相への影響に関する独自の報告書に言及している。これは、ムソー、マラーやリンドグレンらのような科学者による多くの研究30,31が、チェルノブイリとフクシマでの放射能フォールアウトの影響を調べたにも関わらず、UNSCEARはそれらの報告書以降、新しい知見を得ていないことを暗に示している。
4) 福島産の農作物の推奨は、放射線被ばくのリスクを増加させる
しばしば、日本国民のほとんどがスーパーマーケットから食品を購入すると仮定されている。これは論理的に見えるかもしれないが、被災地のかなりの部分が農業地域であり、多くの住民が青空市場や自家菜園から食物を調達しているという事を無視している。「地産地消」、すなわち、「地元で生産された食物の消費」という主義は、福島県で広く奨励され、市町村が地元産の農作物を学校給食で使うことを奨励あるいは命じる所まで行った32, 33,34。それに加えて、日本全国で、政府が「食べて応援」キャンペーンを実施し、福島県産の食べ物の購入と消費が連帯行動の一環として推進された。福島県民が日本全国で流通している食物を摂取するという仮定は、おそらく、実際の放射能汚染された食物の摂取の過小評価に繋がることになる。最後に、この原子力災害が発生した当初には、地震と津波のために住民には新鮮な食物と飲料水が不足していたことを思い出す必要がある。この期間中、農作物の放射能検査を行なうことはできなかった。故に、適切な検査や規制が実施された前に、住民が高濃度に汚染された地元の食物や飲料水を摂取したかもしれない。この事実は、UNSCEAR報告書で言及されていないが、内部被ばく線量の計算における誤差要因のひとつとなる可能性がある。
5) ホールボディーカウンターは、内部被ばく量を過小評価する
チェルノブイリの経験によると、吸入あるいは経口摂取された放射性物質による内部被ばくは、被ばくした集団においての将来の健康影響の最も重要な決定要因の1つである。多数の要素があるため、原子力災害後の内部被ばく量の評価が難しい事は共通理解の下にある。公衆衛生の疫学で一般的に行われるのは、注意深い仮定に基づいて影響を受けた集団の健康リスクの可能性を適切に考慮すると言う保守的な推定である。簡単に言うと、「安全を確保し、後悔しないようにする」(備えあれば憂いなし)である。WHO/IAEAの健康リスク評価35は、放射能放出、分布および取り込みの科学的評価を日本国民の被ばく量推計に用いることにより、この原則に従おうとした。我々は、WHO/IAEA報告書内の計算の多くの科学的根拠を批判する一方で、この保守的な取り組み方が被ばくした集団の健康に対する懸念と対処する正しい方法であるとみなしている。
しかし、UNSCEAR報告書は、ホールボディーカウンター(WBC)によって得られたデータに基づいて内部被ばく線量を推定することにより、このアプローチを阻んだ。、単独のパラメータの測定結果に基づいて、広範囲にわたる医学的な勧告を行なうことは、根本的な誤りである。さらに、ホールボディーカウンターの検出限界値は通常セシウム134/137両方で300 Bqほどであり36、それ以下の被ばく量は、健康に影響があるかもしれなくても、無視されている。また、ホールボディーカウンターが測定できるのはガンマ線だけである。セシウム134や137のような放射性核種のベータ崩壊は、ガンマ線の量から概算しなければならない。これは、ホールボディーカウンターを、ある特定の放射性核種で校正しなければならないという意味である。ベータ放射線やアルファ放射線を放出する他の放射性物質の影響は、ホールボディーカウンターでは評価ができない。その上、ホールボディーカウンターは、測定時のガンマ線量のみを検知するのであり、過去の放射線被ばく量に関しての情報は得られない。セシウム137の生物学的半減期が70日であるのは分かっているが、その期間が過ぎると、約半分の放射性物質が体内から排出されていることになる。過去2年半に渡って継続された放射性物質の経口摂取および吸入による取り込みのために、放射線被ばくの真の度合いの評価がより困難となり、過小評価の可能性がさらに高まることになる。最後に、ベクレル単位で測定された放射能の、シーベルトの等価線量推計値への変換に関わる不確実性は、UNSCEAR報告書では言及されていないが、エラー要因のひとつである37。
6) 東電の作業員の線量評価は信頼できない
既に述べたように、ロビー活動の影響が疑われない、独立した機関によるデータを提示することは重要である。これまでの福島第一原子力発電所の24,500人の作業員の健康評価は、東電そのものから提供されたデータのみに基づいている。UNSCEARは、ヨウ素132とヨウ素133の影響が無視されているために、作業員の内部被ばく量が20%過小評価されていると正しく批判した。しかし、これは氷山の一角に過ぎない。東電は、公式統計に含まれない日雇い労働者を雇用する多くの下請業者と契約していると報告されている38,39。これらの下請には、雇用している労働者の医療検診を全く行なっていない業者もあると非難されている。また、線量計の紛失、線量計をわざと鉛のケースに入れて測定できないようにした意図的な操作や、放射線測定機器の不具合などの報告も多数である40,41,42。これらの理由によって、東電から提供されたデータを、予測値を算出するための代表的で妥当な根拠として受け止めるのは困難である。
被ばくした作業員において、「放射線由来の健康影響の発症の識別し得る増加は予期されない43。」と述べるのは間違いである。慢性の低線量放射線被ばくに関しては、ウラン鉱山労働者44,45,46,47,48,49、核実験場の風下の住民50,51,52、核工場の労働者53,54,55,56、原子力発電所近辺の住民57から、チェルノブイリの清掃作業員58,59,60,61までもを含む非常に多様な集団において重要な健康影響がみられたことが、多くの研究で示されている。これは最終的には、研究デザインと、科学研究の原理の厳守の問題である。東電の場合は、これまでの意図的な操作の試みの回数から判断して、これが厳守されていると仮定できない。
7) 胎児の放射線への特別な脆弱性が考慮されていない
UNSCEARは、胎児の放射線感受性が1歳児と同じだと認識したWHO/IAEAの健康リスク評価62に頼っている。この慣行は、UNSCEARの推計にも取り入れられているが、新生児の生理学と放射線生物学の原理を否定するものである。胎児と子供には、電離放射線への感受性という観点では、大きな違いがある。母親の皮膚、腹筋と子宮によって遮断されるために、胎児の外部被ばく量が子供や大人に比べると低いことが知られている一方、これは、原子力災害においてより関連性が高い要因である内部被ばくには当てはまらない。胎児は、臍帯静脈を通して摂取する放射性物質に被ばくし、母親の膀胱に溜った核種からのガンマ線の照射を受ける可能性もある。母親が経口摂取あるいは吸入したヨウ素131は、胎児の甲状腺に蓄積し、誕生後に甲状腺疾患や甲状腺癌の発現に繋がる可能性がある。また他の放射性核種であるセシウム137は、胎盤を自由に通り抜けて胎児に入り込み、また、羊水や膀胱にも溜まり、誕生前の胎児をあらゆる方向からベータ線とガンマ線で照射する。さらに重要なのは、一定の放射線量は、もっと年上の子供においてよりも、胎児においての危険性が高い。すなわち、胎児では、体組織の代謝と細胞の有糸分裂率が高いため、ゲノムの突然変異の機会が増えるのである。胎児は、免疫システムと細胞修復メカニズムがまだ完全に発達していないため63、悪性腫瘍の発達を十分に防ぐことができない。科学界では、「電離放射線への胎内被ばくは、催奇性、発癌性、突然変異誘発性である。この影響は、被ばく量と胎児の発達段階と直接相関する。胎児は、器官形成期(受精後2−7週間)と初期の胎児期において放射線への感受性が最も高い64。」と一般的に認められている。胎児と成長した子供の間での生理学的な差異を考慮しないと、この、特に脆弱性のある集団においての健康リスクを深刻に過小評価することになる。電離放射線への被ばくひとつひとつが定量化できるリスクを伴うが、これは、1950年代後半から多くの研究で示されてきたように、胎児での方が、もっと大きな子供や成人でよりも、はるかに大きい。
•
アリス・スチュワート博士は、レントゲンの胎内被ばくに起因した小児癌の最初の疫学研究65, 66に携わった。スチュワートは、妊婦の腹部が一度レントゲン照射を受けたら、小児癌の発症が50%増加したと示すことができた。また、スチュワートの研究は、直線的な影響が15 mGyという低線量まで見られたのを確認したが、これは、小児癌リスクがレントゲンへの胎内被ばくの量に比例して増加すると言うことを意味する。これらの影響についての他の説明となる交絡因子を見つけることはできなかった。
•
1997年に、ドールとウェイクフォードは次のように結論づけた67。「様々な国々での多くのケースコントロル研究で、一貫した関連性が見つかっている。これらの研究結果を合わせて得られた過剰相対リスクは統計的有意性が高く、過去に、妊婦の腹部のレントゲン検査が約40%の比例したリスク増加に繋がったことを示唆する。(中略)胎児が胎内で10 mGyの放射線被ばくを受けると、結果として小児癌のリスクが増えると結論付けられる。」
•世界中での多くの大規模研究68, 69, 70により、スチュワートらの研究結果が確認され、生前の放射線被ばくに対して、より注意深いアプローチが取られるようになった。
8) 甲状腺癌や他の癌は、今後数十年間に渡ってモニタリングする必要がある
チェルノブイリ事故後、最も顕著に見られた癌のタイプは甲状腺癌だった。福島県での悪性疑惑のある甲状腺生検の有病率は、現在、18歳以下の小児10万人中22.3人(絶対数:43人)であり、甲状腺癌が確定した症例の有病率は、10万人中9.3人(絶対数:18人)である71。日本の小児(19歳未満)における2000年から2007年の間の甲状腺癌の発生率は、10万人中0.35人にすぎなかった72。スクリーニング検査で検出された有病率をフクシマ事故前の発生率と直接比較することはできないにしても、これは、懸念される人数であり、これほど多い症例数は、誰も予期していなかった。UNSCEARの国連総会への報告書73は、「福島県の小児において明らかに増加している検出率は、放射線被ばくと無関係である。」と示唆している。実際、福島県での甲状腺異常の状況はまだ展開中であり、将来の傾向について現時点で語れることは非常に少ない。いくつかの国際研究によると、小児における甲状腺結節の悪性率は成人よりはるかに高く、おおよそ25%(2−50%)である74,75,76。
さらに、福島県のより遠方の地域の約10万人の子供達は、まだ甲状腺検査の一次検査を受けておらず、一次検査で重要な結果(例:普通より大きな甲状腺結節や嚢胞)が出た子供達の約半数が、二次検査を受診していない。これに関連しては、日本政府の緊急対策本部が安定ヨウ素剤投与を指示せず、多くの子供達を、事故後3ヶ月まで牛乳、水道水、野菜や果物に危険な高濃度レベルで含まれていた放射性ヨウ素131に被ばくさせた可能性があることを思い出すことが重要である。旧ソビエト連邦では現代的な超音波機器がなく、政府規制や資金不足のために炉心溶融直後の数年の精密検査が制限されたので、チェルノブイリとの比較は困難である。
また、原子力災害後に甲状腺癌が顕著となるのは、疫学調査の選択バイアスのせいである可能性があり、稀な小児癌の突然の増加を検出するのは簡単であるが、他の固形癌、リンパ腫や白血病などはベースラインの発症率が比較的高いか、潜伏期がより長いために検出しにくいことを、記憶に留めておくことが重要である。甲状腺エコー検査の他に、今後は、白血病、リンパ腫と固形癌のスクリーニングも開始されるべきである。これらはすべて、チェルノブイリ原子力災害の被ばく者や、原子力発電所周辺の住民で見つかっている77,78。
9) 非癌疾患や放射線の遺伝的影響も、また、モニタリングされるべきである
循環器疾患、不妊症、子孫における遺伝子突然変異や流産などの非癌健康影響は医学文献で報告されてはいるが、UNSCEARが計算の基盤としているWHO/IAEAの健康リスク評価79では考慮されていない。UNSCEAR報告書は、胎内被ばくによって、自然流産、流産、周産期死亡率、先天性の影響、あるいは知能低下の発症率は増加しないだろうと述べている。また、著者らは、放射線の非癌影響が確定的影響に違いないと仮定しているが、その一方で、非癌影響は、放射線の発癌影響同様に、本質的に確率的影響かもしれないと仮定することも妥当である。電離放射線の循環器系への確率的リスクを示唆する研究論文は多数存在するが、これは、血管内皮の放射線による損傷の可能性があり、高血糖症、高コレステロール血症、高脂血症、高血圧症や他の独立したリスク要因の影響と似ている。リトルらは、低線量電離放射線への分割した被ばくによる循環器系疾患の妥当なモデルを提案した80。 また、ロシアの研究者数名が、チェルノブイリ原子力災害後に被ばくした集団における非癌影響についての研究論文を発表した81, 82。
10) 放射能フォールアウトと自然放射線との比較は誤解を招く
UNSCEARの国連総会への報告書では、「福島第一原子力発電所事故による実効線量の推計値は、自然由来の放射線源(宇宙放射線や食物、大気、水や環境の他の部分での放射線源)への被ばく線量と比較することにより、総合的な視野で捉えることができる。」と述べられている。このような比較は、度々、低線量放射線の健康影響を軽視するために例として挙げられ、誤解を招くだけでなく、原子力災害の公衆衛生への影響を系統的に過小評価する結果を招く。日本人が1年間で受ける自然バックグラウンド放射線量の平均値は約1.5 mSvであり、その内訳は、約0.3 mSvが宇宙線、約0.4 mSvが地殻内の放射性核種からの地殻放射線、年間約0.4 mSvが大気中の放射性核種の吸入(ほとんどが家屋内のラドンガス)、そして、ほとんどの飲食物には元々いくらかの放射線が含まれているために、年間約0.4 mSvが経口摂取からである83。
この自然バックグラウンド放射線は無害ではなく、これは、宇宙線への高線量被ばく(例:頻繁な長距離フライト)や、家屋内あるいは土壌のラドンレベルの高数値の癌発症率への影響に見られる84,85,86,87。「自然」発生している癌の一定割合は、「自然」バックグラウンド放射線への絶え間ない被ばくに起因すると仮定できる。ラドン含有量が少ない建築素材の使用、ある種の食物に関しての公衆衛生上の警告や、飛行機での旅行を控えるなどの自然バックグラウンド放射線への被ばくを減らす対策を実施することは困難とは言え、人工放射線への被ばくは、大抵の場合コントロールできる。CTスキャンやレントゲンからの不必要な医療被ばくを避けることは、重要な公衆衛生対策であり、過剰な癌発症を防ぐことができる。放射能フォールアウトからの過剰な放射線を避けることは、現時点で、福島県民にとって最も重要な側面である。
国際的な科学的コンセンサスによると、それ以下では放射線が害を及ぼさない閾値はない。むしろ、放射線量と癌発症率には直線的関係がある。例えば、10,000人が1 mSvの放射線の全身照射を受けたら、確率的にはこの集団で過剰癌が1症例出る。すなわち、1 mSvの全身照射量に被ばくした人では、この被ばくによって発癌する可能性が10,000人に1人ということになる。10 mSvでは、このリスクは既に1,000人に1人に増え、100 mSvでは100人に1人、または1%に増える。WHO/IAEAのフクシマ事故の健康評価88は、この古いモデルの2倍のリスク係数(線量・線量率効果係数またはDDREF)を用いている4。最終的にどちらのリスク係数が使われても、このリスク計算は、自然バックグラウンド放射線、医療被ばく、および原子力災害の結果の放射能フォールアウトすべてに当てはまる89。
III) 結論
UNSCEARの国連総会への報告書は、「リスクモデルによる推定は癌リスクの増加を示唆するが、放射線誘発性の癌は、現時点では、他の癌と区別がつかない。ゆえに、この集団における、事故による放射線被ばくのせいである癌発症率の識別し得る増加は予期されない。」と述べている。癌には何由来かというラベルが表示されていないので、これは、確かに正しい。しかし、電離放射線が発癌物質であり、人間や動植物の健康に独特のリスクをもたらすのは周知の事実である。電離放射線への長期にわたる低線量の被ばくの影響についての15カ国の合同コホート研究90では、520万人年の追跡調査が行なわれたが、放射線量と線量に依存した癌死の増加に、有意な関連が見られた。
また、一定の放射線量から癌の発症率と死亡率を予測する方法が確立されており、国際的に認知もされている。米国科学アカデミーの電離放射線の生物学的影響に関する諮問委員会は、BEIR VIIリポートで、放射線損傷には閾値が存在せず、ごく微量の放射性物質でさえも体組織の有害な損傷や遺伝的突然変異を引き起こすと証明した。故に、大集団における低線量放射線被ばくは、小集団における高線量放射線被ばくと同様の影響を起こす。標準的な国際BEIR VII線量リスクモデルを用いれば、10,000人の集団への平均1 mSvの被ばくの結果、1人が発癌することになる。これは、10人への1,000 mSvの被ばくと同様であり、この場合も結果として1人が発癌の過剰ケースとなる91。最後の章で述べた通り、WHOのフクシマ健康評価は、これの2倍のリスク係数が用いる強い論証となっている。
日本における特別の状況に適用すると、この科学的事実は、明確な結果を示す。フクシマ原子力災害による日本のほとんどの住民での過剰な放射線被ばくは比較的少ないようにみえるが、この過剰の放射線被ばくを受ける人数が大変多いと言うことは、この集団で予測される癌の過剰発生が最大数になると言うことになる。チェルノブイリ事故後にWHOに関連した国際ガン研究機関が研究を行い、2006年に国際がんジャーナル誌で論文を発表したが、この研究92では、チェルノブイリから放出されたヨウ素131への被ばくにより、欧州で甲状腺癌の過剰発生が16,000件起こるだろうと計算した。これらの地域では、個人の平均生涯被ばく量はわずかにみえるかもしれないが、最終的には、これは確率的問題であり、人々は、個々の癌と放射能フォールアウトとの因果関係が分からなくても、チェルノブイリ災害の結果として癌を発症したことになる。
数字で比較すると、特に比較的高い日本のベースライン発癌率93(年間10万人の内、約494人が新規診断、あるいは、絶対数では、2000年から2008年の間に、すべての年齢層と性別でのすべての癌において、約63万の新規診断)と比べると、フクシマの放射能フォールアウトによる癌の過剰発症は、重要ではないとみえるかもしれない。しかし、個人の観点から見れば、癌の症例はたとえひとつでも多過ぎるのであり、そして我々医師は、癌がその人の身体的および精神的健康および家族全体の状況にもたらす悲劇的な結果を知っている。
「被ばくした人達での、放射線由来の健康影響の発症の識別し得る増加は予期されない。」と述べて、フクシマ原子力災害の何千もの家族にとっての怖ろしい影響を単なる統計学的問題に狭めてしまうのは皮肉である。その代わりに、より中立的なデータを使用し、被ばく線量推計につきものの不確かさを認めて指摘し、特定の集団においては脆弱性が高いことを考慮し、可能性のある被ばく線量の範囲全体を発表し、進行中の放射能放出の最新データを取り入れることにより、UNSCEARは、これから数十年の間に放射能フォールアウトからどのような影響が予期されるかという現実的な状況を描くことができるはずである。これには、チェルノブイリ原子力災害の影響を受けた集団でも見られている、甲状腺癌、白血病、固形癌、非癌疾患や先天性奇形などすべての疾患に関する予測だけでなく、さらに、原子力災害が全国民にもたらした精神的および社会的影響の評価も含まれるべきである。この件に関しては、精神的影響は、圧倒的に、放射能汚染とそれによって必要となった避難の結果の社会的混乱と崩壊のせいであり、原子力ロビーが度々示唆するような、放射能に対する過剰な恐怖心や、被ばくのリスクに伴う恐怖と負のレッテルのせいではない。
いわゆる、国家の原子力、特に原子力発電を中心とする原子力の平和利用への「不可譲の権利」は、世界中の人々を無差別に放射能汚染のリスクにさらすことを伴う。それは、将来の世代の健康と権利を蝕み、核兵器拡散に向けての手段を提供することにより、核戦争の危険とその破壊的・人道的影響を増大させる。安全で再生可能なエネルギー源への移行は、人権と健康を促進することができる。日本の原子力発電所を永久停止することは、日本国民にとってのさらなる破滅的な放射能放出のリスクを、現在と将来にわたって軽減するのに最も効果的な方法である。フクシマでの大半の放射能フォールアウトが、東京のような大都市部でなく海に流れたことは、日本国民にとって幸運なことだったと言うべきである。しかし、フォールアウトが大都市で起こると言うことはあり得たし、日本が、原子力エネルギー生産からの段階的撤退を国のエネルギー政策指針として既に宣言した他の国々の後に続くことを選ばない限り、将来においても起こり得る現実的なシナリオであり続ける。日本が震災以降2年以上もの間、ほぼ全部の原子炉が予期なく停止された状況下において電力不足の回避に成功したことは、これが実行可能であることの証明である。
原子力災害に影響された人々の健康を主に懸念している医師として、我々は、国連総会と日本政府に、被ばくした住民には、これ以上の被ばくからの防護が必要だと認識するように勧告する。日本が大きな国際的支援なしでこの惨事をコントロールできないであろうことは明らかになった。故に、今後の膨大な作業には、外部の専門的意見が含まれるべきである。最も重要なことには、炉心損傷した原子炉と使用済み核燃料プールからの進行中の放射能放出を最小限に留めるだけでなく、将来のより大きな放出を防ぐためのさらなる努力が必要である。また、放射能汚染された市町村に居住し、汚染が少ない地域に移住したい若い家族達への移動サポートおよび経済的支援も、将来の健康影響リスクの軽減に役立つだろう。
日本のほとんどの都道府県においての効率的な癌登録制度と、長期的な健康影響の評価に使える被ばく量推計値を伴う、被ばく者の包括的な登録制度の、どちらも存在しないと言う事は、多くの可能な影響が検知されないままであるかもしれないことを意味する。政府が放射能汚染による将来の健康影響をモニタリングして対応する気が本当にあるのなら、そのような登録制度が設置されるべきである。
福島県民にとって、健康影響が予期されないという主張や安心感は、何の助けにもならない。必要なのは、正しい情報、健康モニタリングや支援であり、何よりも、住民の不安や懸念をきちんと聞く耳である。UNSCEAR報告書の著者らは、汚染地域の住民達への将来的な治療や支援を減らす可能性を持つような報告書を草案する前に、自ら汚染地域を訪問し、住民と話をすれば良かったのかもしれない。それを変えるのには、まだ遅くない。国連総会と日本政府においては、アナンド・グローバー氏の福島県での経験についての報告書を検討し、彼の建設的な提言を留意するように願いたい。多分、そうすれば、健康と幸せと保てるような生活水準への権利を、福島県民が取り戻すことができるであろう。
我々が放射線被ばくの真の影響を理解することは、放射能フォールアウトを受けた人達全員が適切な医学的モニタリングを受けるためには、大変重要なことである。最終的に問題となるのは、健康と幸せを保てるような生活水準へのすべての人間の普遍的権利なのである。これこそが、原子力災害による健康影響の評価においての指針となるべきである。
「人間の命が1人分でさえも失われるということ、あるいは、赤ちゃんが1人でも奇形を持って生まれてくるということは、例えその赤ちゃんが、我々が皆死んでしまったずっと後に生まれて来るかもしれなくても、我々全員にとって重要なことであるべきだ。我々の子供たちや孫たちは、我々が無関心を装ってもよいような、単なる統計ではない。」
ジョン・F・ケネディー、1963年7月26日
とても大切な視点です。
原発事故で、放出されたのは、セシウムだけではく、ストロンチウム、プルトニウム等様々な放射性物質であったはずです。
それが、放射性物質といえば「セシウム」と、単純化した構図が頭に抱くようにうまく情報提供がなされてきました。
例えば、ストロンチウムは、半減期も長く、Caと構造が似て、骨に吸着の可能性があり、いったん体に入るとそのままとどまると言われています。
プルトニウムは、最も危険な化学物質だと言われています。
きちんと福島原発事故による放射性物質汚染を、あらゆる各種で広がりを見ていく必要があります。
その点で、上記論考の視点はすばらしい。
論考では、「水産物に含まれるストロンチウム90の調査データは、水産総合研究センターが調査したものとしては、原発事故以降の約2年半で40件しかなく、しかもその調査海域は北海道から九州まで及んでおり、そのうち福島県沖で採取したものはわずか5件しかない。また、その最も新しい検体は昨年6月のものである。このほか、東京電力が第一原発から半径20キロ圏内で行っている調査結果もあるが、これも累計で7件のデータしかない。」とストロンチウムの調査不足を指摘しています。
引き続きの取材、報道に期待致しております。
教科書採択において、子ども達の教育効果よりも、政治団体の意向が重要視されるのは、誤りです。
押し付けの教育をしてはなりません。
*************************************
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/politics/article/46415
大阪府教委で批判合戦 「維新に花」発言暴露
2013年10月15日(最終更新 2013年10月15日 23時28分)
大阪府の中原徹教育長は15日の府議会委員会で、大阪維新の会府議団が反対した実教出版の高校日本史教科書採択に絡み、府教育委員会の陰山英男教育委員長が補完教材の内容を決める際に「大阪維新に花を持たせる」と発言と明かし、政治的中立性を欠くと批判した。
陰山氏は2日の府議会本会議で、中原氏が採択前に実教出版教科書の使用を希望する学校名を大阪維新府議団に伝えたことに苦言を呈した。府教委トップ同士が大阪維新との関係を互いに批判する事態となった。
実教出版の教科書は国旗国歌法に関し「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」と記述。府教委は補完教材使用を条件に採択。
組織としては、よくある生々しい状況が浮かんできます。
組織のことを思い、行動するも、結局は、その組織により背後から撃たれる事例。
本問の分析の手順
1、そもそもやっていることは、組合活動にあたるのか、個人的活動か
2、組合活動としても、それは、正当性があるのか
*ビラ配布をのぞき、違法の判断がなされてきている。
3、正当性はなかったとしても、懲戒処分の対象とするのは、いかがか
4、(懲戒)処分とするなら、どの程度のものか
〇どの懲戒処分か
〇刑事罰は
〇損害賠償は
*********司法試験 労働法平成20年第二問****************************
http://www.moj.go.jp/content/000006417.pdf
〔第2問〕(配点:50)
次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。
【事例】
1 Y株式会社(以下「Y社」という。)にはA労働組合が存在し,従業員500人のうち300
人がこれに加入している。ところが,平成18年ころから,同組合の一部の組合員の間で,Y
社との協調路線を採る執行部に対する批判が高まり,数名の組合員(以下「Xら」という。)が
執行部を批判する活動をしたり,執行委員の選挙に立候補するなどの行動をとるようになって
いた。
平成19年に至り,Xらは,「A労働組合を良くする会」を名乗り,一層の執行部批判に加え
て,Y社に対する批判をも行うようになり,同年夏ころからは,同会名義で,執行部批判及び
Y社批判を内容とするビラを,Y社に無断で,Y社施設内において従業員に配布したり,Y社
施設外で通行人等に配布し,自分たちへの支持を訴えるようになった。
さらに,Xらは,「A労働組合を良くする会」の名で開設したホームページでY社批判や組合
批判を行うようになり,Y社が業務上従業員に使用させているパソコンを利用してこのホーム
ページに書き込み等も行うようになった。
2 著しい誇張や曲解を含む悪質な会社批判のビラがまかれる,ホームページ上で会社に対する
誹謗中傷や批判が書き込まれる,会社のパソコンを業務と関係なく使用されるという状況に危
機感を抱いたY社は,Xらの行動が別紙の就業規則に反するとして,「本件行為は,就業規則に
違反する行為であり,今後同様の行為を行った場合には,本件行為と併せて,就業規則にのっ
とり,厳正な懲戒処分を行う。このような行為を直ちに中止するよう警告する。」旨の警告書を
Xらに交付した。しかし,この警告にもかかわらず事態は一向に改善されなかったので,Y社
は,Xらに対する懲戒処分を行うこととして,まず,A労働組合及びXらからそれぞれ言い分
を聴いたところ,次のとおりの回答があった。
(A労働組合の言い分)
「当組合は,会社批判のビラ配布やホームページの開設等を行っていない。Xらの行動は,当組
合の方針に基づくものでもなければ,当組合の承認に基づくものでもない。言ってみれば,これ
らは,勝手に行った個人の行為であって,当組合の組合活動ではない。よって,懲戒処分につい
て組合は関知しないし,組合として会社に対して何らかの行動を起こすことは考えていない。」
(Xらの言い分)
「我々が行った行為は,所属労働組合を本来のあるべき姿に戻すための良識ある行動である。組
合員として組合執行部批判及び会社批判が許されることは当然であり,我々の行為は,正に組合
活動である。また,我々の行為によって,会社の業務上,何らかの支障が発生したわけではない。
そもそも,ビラ配布は,企業における組合活動として当然認められるべきであり,いちいち会社
の許可が必要というわけではない。更に言えば,従来組合がビラ配布を行うにつき,必ずしも会
社の許可を得て行っていたわけではない。また,ホームページの開設はだれでも自由であるし,
そこにどのような書き込みをするかについて会社の許可など必要ない。さらに,会社のパソコン
を使って書き込みをしたからといって,業務上何らかの支障が発生したという事実はないし,他
の従業員も,会社のパソコンを使って私的にサイトにアクセスし,閲覧したり,書き込みをした
りしている事実がある。にもかかわらず,今回の我々の件についてだけ,突然,会社の許可が必
要であるとか,就業規則違反であるという言い分は,筋が通らない。」
〔設問〕
1. あなたが,弁護士として,Xらから,「懲戒処分を受けそうだ。懲戒処分には納得できないが,
労働組合は動かないので,何とか争って我々の権利を守ってもらいたい。」との相談を受けた場
合,どのような機関にいかなる法的救済を求めることができるかについて,その論拠と併せて
述べよ。
その際,前記両者の言い分も踏まえて,いかなる法的救済が可能であるか,なぜ懲戒処分が
違法となるのかにつき,論点を挙げて考え方を述べること。また,不当労働行為を主張する場
合には,当該不当労働行為の該当条項を挙げ,なぜその条項に該当するのかも述べること。
2. あなたが,弁護士として,Y社から,「このような違法状態を認めるわけにはいかない。就業
規則の意味がなくなってしまうので,厳正な懲戒処分を行いたい。」との相談を受けた場合,X
らのどの行為を対象として,いかなる懲戒処分を科すように助言するべきか,及びその懲戒処
分を正当とする根拠について,懲戒処分を行うに当たって留意すべき点及びXらの言い分に対
する反論も指摘しつつ,述べよ。
別紙
【就業規則(抜粋)】
第60条
1 従業員が次のいずれかに該当する場合は,懲戒する。
(中略)
④ 就業時間中に会社の許可なく業務以外の行為を行ったとき。
⑤ 会社の信用を毀損し,会社を誹謗中傷する等の行為を行ったとき。
⑥ 許可なく会社の施設・設備を利用し,又は会社施設内において,集会を開き,若しくは
放送,掲示,印刷物等のちょう付,配布等をしたとき。
⑦ 業務上の指示命令に反し,職場の秩序を乱したとき。
(中略)
⑨ その他前各号に準ずる行為があったとき。
2 前項各号に該当する場合,情状により,減給,出勤停止又は懲戒解雇のいずれかの懲戒処
分を科する。
第61条
懲戒解雇処分を科する場合には,賞罰委員会を開催し,本人の弁明を聴いた上で,賞罰委員会
の答申を経なければならない。
月島、住んでみると、いろいろと発見があります。
そんなおり、こんな本が出版されました。
「月島再発見学」
http://www.anika.jp/pages/265.html
志村 秀明 著
第1章 佃・月島から考える
ケーススタディとしての佃・月島/まちづくりに大切な、市民の参加/まちを見つめる/発見的調査方法/ やる気・前向きな姿勢/本書の流れと月島路地マップ
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第2章 大川端リバーシティと「石川島」
2.1 鎧に見る「石川島」の由来
2.2 江戸幕府海軍基地と 霊岸島検潮所
2.3 石川島灯台
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第3章 佃島から近代のまちへ
3.1 佃島の位置
摂津国佃村一行の江戸移住/佃村漁師と徳川家康/摂津国佃村の現在/佃島と石川島の関係/佃島の造成/江戸の面影を伝える佃島
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3.2 佃島の街並みと人々の生活
佃島のレイアウト・設計/住吉神社の配置/島の微地形/江戸時代の敷地割りと路地、住宅/明治期以降の変化/歴史地区佃島
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3.3 近世と近代の交差路・新佃島
「半端」を生かしたコミュニティ・パーク/佃島への入口/看板建築のコンバージョン
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3.4 月島式コミュニティー・ガーデン
堤防沿いの利用/植木を育てる人々/コミュニティー・ガーデン島
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第4章 近代に生まれた江戸のまち
4.2 六間道路と三間道路
第5章 月島の庶民的都市生活
5.2 現代に生きる長屋・月島式住宅
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5.3 西仲通り商店街ともんじゃストリート
商店街の形成/看板建築群と歴史的建物/商店街の個性/商店街組合とその運営/西仲通りまちかどミュージアム
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第6章 月島を取り巻く運河と島
6.2 周辺からの月島
第7章 これからの月島へ
年表(月島の履歴) |
今年の5月の司法試験 公法系(憲法)の論文問題です。
前半の処分は、第三回デモ行進許可申請の不許可処分。
後半の処分は、B県立大学の学内での講演会開催における教室使用許可申請の不許可処分。
それら処分で、
デモのほうは、制限を受けた人権:憲法21条1項が保障する表現の自由のうちの集団行動の自由
制限によって守られる人権、権利:平穏な生活環境、商業活動
講演会のほうは、制限を受けた人権:憲法21条1項が保障する集会の自由、憲法23条が保障する学問の自由のうちの学問研究の自由、研究発表の自由
制限によって守られる人権、権利:学内秩序
さて、
B県立大学教室使用規則では,「政治的目的での使用は認めず,教育・研究目的での使用に限り,これを許可する」とある中で、
同時期に企画された経済学部ゼミ生の講演会「グローバリゼーションと格差問題:経済学の観点から」(演者:2名の評論家)では、教室の使用が許可。
一方、法学部Cゼミ生の講演会「格差問題と憲法」では、教室の使用が不許可。
不許可された法学部Cゼミ生の講演会
プログラム
1 「B県 次年度以降の財政の在り方 社会福祉関係費の削減について」
〇知事の施策方針に賛成する県議会議員
〇知事の施策方針に反対する県議会議員
2 「今回のデモ行進の不許可処分について」
〇B県立大学法学部C教授(憲法ゼミナールCゼミ担当)
大学の不許可の理由
:大学側は,Aらが中心となって行ったデモ行進が県条例に違反すること,ニュースで流されたAの発言は県政批判に当たるものであること,また講演者が政治家であることから,Cゼミ主催の講演会は政治的色彩が強いと判断した。
皆様は、いかがお考えですか?
法学部Cゼミ生の講演会「格差問題と憲法」は、学問ではないのだろうか?
県議会議員の講演は学問とは、言えないだろうか?
もちろん、
〇部分社会論
「大学は、一般市民社会とは異なる特殊な部分社会を形成している。大学の行為は、他にそれが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを是認するに足りる特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきものであって、司法審査の対象にならない。」
〇学問の自由が保障されているのは、教授であって、学生ではない
の議論をクリアーした先の議論として。
*****法務省ホームページ******************
http://www.moj.go.jp/content/000111057.pdf
[公法系科目]
〔第1問〕(配点:100)
Aは,B県が設置・運営するB県立大学法学部の学生で,C教授が担当する憲法ゼミナール(以下
「Cゼミ」という。)を履修している。Cゼミの202*年度のテーマは,「人間の尊厳と格差問題」
である。Cゼミ生は,C教授の承諾も得て,ゼミの研究活動の一環として貧富の格差の拡大に関して
多くの県民と議論することを目的としたシンポジウム「格差問題を考える」を県民会館で開催した。
そのシンポジウムでの活発な意見交換を経て,「格差の是正」を訴える一連のデモ行進を行うことに
なった。そのデモ行進については,Cゼミ生を中心として実行委員会が組織され,Aがその委員長に
選ばれた。実行委員会は,第1回目のデモ行進を202*年8月25日(日)に行うこととして,ツ
イッター等を通じて参加を呼び掛けたところ,参加希望者は約1000人となった。そこで,Aは,
主催者として,B県集団運動に関する条例第2条(【参考資料1】参照)の定めにより,B県の県庁
所在地であるB市の金融街から市役所,県庁に至る片道約2キロメートルの幹線道路を約1000
人の参加者が往復するデモ行進許可申請書を提出した。デモ行進が行われる幹線道路沿いには多く
の飲食店があり,市の中心部にある県庁や市役所の周りは県内最大の商業ゾーンでもある。B県公安
委員会は,デモ行進は片側2車線の車道の歩道寄りの1車線内のみを使うことという条件付きで許
可した。
第1回目のデモ行進の当日,Aら実行委員会は,デモ参加者に対し,デモ行進中は拡声器等を使用
しないこと,また,ビラの類は配らず,ゴミを捨てないようにすることを徹底させた。第1回目のデ
モ行進は,若干の飲食店から売上げが減少したとの県への苦情があったが,その他は特に問題を起こ
すことなく終えた。そこで,Aら実行委員会は,第2回目のデモ行進を同年9月21日(土)に,第
1回目と同じ計画で行うこととし,同月5日(木)にデモ行進の許可申請を行った。これに対し,B
県公安委員会は,第1回目と同様の条件を付けて許可した。
B県では,次年度以降の財政の在り方をめぐり,社会福祉関係費の削減を中心として,知事と県議
会が激しく対立していた。知事は,同月13日(金)に,B県住民投票に関する条例(【参考資料2】
参照)第4条第3項に基づき,「社会福祉関係費の削減の是非」を付議事項として住民投票を発議し,
翌10月13日(日)に住民投票を実施することとした。
第2回目のデモ行進も,拡声器等を使用せず,ビラの類も配らずに無事終了した。ただし,住民投
票実施ということもあって参加者は2000人近くに達し,「県の社会福祉関係費の削減に反対」と
いう横断幕やプラカードを掲げる参加者もいたし,「社会福祉関係費の削減に反対票を投じよう」と
いうシュプレヒコールもあった。また,デモ行進が行われた道路で交通渋滞が発生したために,幹線
道路に近接した閑静な住宅街の道路を迂回路として使う車が増えた。第2回目のデモ行進終了後,市
民や町内会からは,住宅街で交通事故が起きることへの不安や騒音被害を訴える苦情が県に寄せら
れた。また,第1回目よりも更に多くの飲食店から,デモ行進の影響で飲食店の売上げが減少したと
いう苦情が県に寄せられた。
Aら実行委員会は,第3回目のデモ行進を同年9月29日(日)に行うことにして,参加予定人員
を2000人とし,その他は第1回目・第2回目と同様の計画で許可申請を行った。しかし,B県公
安委員会は,住民投票日が近づいてきて一層住民の関心が高まっており,第3回目のデモ行進は,市
民の平穏な生活環境を害したり,商業活動に支障を来したりするなど,住民投票運動に伴う弊害を生
ずる蓋然性が高いと判断し,当該デモ行進の実施がB県集団運動に関する条例第3条第1項第4号
に該当するとして,当該申請を不許可とした。
この不許可処分に抗議するために,Aら実行委員ばかりでなく,デモ行進に参加していた人たち約
200人が,B県庁前に集まった。そこに地元のテレビ局が取材に来ていて,Aがレポーターの質問
に答えて,「第1回のデモ行進と第2回のデモ行進が許可されたのに,第3回のデモ行進が不許可と
されたのは納得がいかない。平和的なデモ行進であるのにもかかわらず,デモ行進を不許可としたこ
とは,県の重要な政策問題に関する意見の表明を封じ込めようとするものであり,憲法上問題があ
る」と発言する映像が,ニュースの中で放映された。そのニュースを,B県立大学学長や副学長も観
ていた。
AたちCゼミ生は,当初から,学外での活動の締めくくりとして,学内で「格差問題と憲法」をテ
ーマにした講演会の開催を計画していた。デモ行進が不許可になったので学内講演会の計画を具体
化することとなったが,知事の施策方針に賛成する県議会議員と反対する県議会議員を講演者とし
て招き,さらに,今回のデモ行進の不許可処分に関するC教授による講演を加えて,開催することに
した。C教授の了承も得て,Aたちは,Cゼミとして教室使用願を大学に提出した。同じ頃,Cゼミ
主催の講演会とは開催日が異なるが,経済学部のゼミからも,2名の評論家を招いて行う「グローバ
リゼーションと格差問題:経済学の観点から」をテーマとした講演会のための教室使用願が提出さ
れていた。
B県立大学教室使用規則では,「政治的目的での使用は認めず,教育・研究目的での使用に限り,
これを許可する」と定められている。この規則の下で,同大学は,ゼミ活動目的での申請であり,か
つ,当該ゼミの担当教授が承認していれば教室の使用を許可する,という運用を行っている。同大学
は,経済学部のゼミからの申請は許可したが,Cゼミからの申請は許可しなかった。大学側は,Aら
が中心となって行ったデモ行進が県条例に違反すること,ニュースで流されたAの発言は県政批判
に当たるものであること,また講演者が政治家であることから,Cゼミ主催の講演会は政治的色彩が
強いと判断した。
Aは,B県を相手取ってこの2つの不許可処分が憲法違反であるとして,国家賠償訴訟を提起する
ことにした。
〔設問1〕
あなたがAの訴訟代理人となった場合,2つの不許可処分に関してどのような憲法上の主張を
行うか。
なお,道路交通法に関する問題並びにB県各条例における条文の漠然性及び過度の広汎性の問
題は論じなくてよい。
〔設問2〕
B県側の反論についてポイントのみを簡潔に述べた上で,あなた自身の見解を述べなさい。
【参考資料1】B県集団運動に関する条例(抜粋)
第1条道路,公園,広場その他屋外の公共の場所において集団による行進若しくは示威運動又は集
会(以下「集団運動」という。)を行おうとするときは,その主催者は予めB県公安委員会の許可
を受けなければならない。
第2条前条の規定による許可の申請は,主催者である個人又は団体の代表者(以下「主催者」とい
う。)から,集団運動を行う日時の72時間前までに次の事項を記載した許可申請書三通を開催地
を管轄する警察署を経由して提出しなければならない。
一主催者の住所,氏名
二集団運動の日時
三集団運動の進路,場所及びその略図
四参加予定団体名及びその代表者の住所,氏名
五参加予定人員
六集団運動の目的及び名称
第3条B県公安委員会は,前条の規定による申請があつたときは,当該申請に係る集団運動が次の
各号のいずれかに該当する場合のほかは,これを許可しなければならない。
一~三(略)
四B県住民投票に関する条例第14条第1項第2号及び第3号に掲げる行為がなされることと
なることが明らかであるとき。
2 B県公安委員会は,次の各号に関し必要な条件を付けることができる。
一,二(略)
三交通秩序維持に関する事項
四集団運動の秩序保持に関する事項
五夜間の静ひつ保持に関する事項
六公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合の進路,場所又は日時の変更に
関する事項
【参考資料2】B県住民投票に関する条例(抜粋)
第1条この条例は,県政に係る重要事項について,住民に直接意思を確認するための住民投票に
係る基本的事項を定めることにより,住民の県政への参加を推進し,もって県民自治の確立に資
することを目的とする。
第2条住民投票に付することができる県政に係る重要事項(以下「重要事項」という。)は,現在
又は将来の住民の福祉に重大な影響を与え,又は与える可能性のある事項であって,住民の間又
は住民,議会若しくは知事の間に重大な意見の相違が認められる状況その他の事情に照らし,住
民に直接その賛成又は反対を確認する必要があるものとする。
第4条(略)
2 (略)
3 知事は,自ら住民投票を発議し,これを実施することができる。
4 住民投票の期日は,知事が定める。
第14条何人も,住民投票の付議事項に対し賛成又は反対の投票をし,又はしないよう勧誘する
行為(以下「住民投票運動」という。)をするに当たっては,次に掲げる行為をしてはならない。
一買収,脅迫その他不正の手段により住民の自由な意思を拘束し又は干渉する行為
二平穏な生活環境を害する行為
三商業活動に支障を来す行為
2 (略)
以上
表現の自由と、その規制(事前抑制・検閲)が許される場合を考えさせる問題です。
伊藤正己裁判官の補足意見は、とても参考になります。
表現の自由は守るべきである前提に立ちながら、しかし、青少年保護のための制限の必要性を説いています。
よって、ご自身の補足意見を、「本件条例を憲法に違反するものと判断することはできず、これを違憲と主張する所論は、傾聴に値するところがないわけではないが、いずれも採用することができないというほかはない。」と締めくくられています。
***********************************
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=50356&hanreiKbn=02
事件番号
昭和62(あ)1462
事件名
岐阜県青少年保護育成条例違反
裁判年月日
平成1年09月19日
法廷名
最高裁判所第三小法廷
裁判種別
判決
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
刑集 第43巻8号785頁
原審裁判所名
名古屋高等裁判所
原審事件番号
原審裁判年月日
昭和62年11月25日
判示事項
岐阜県青少年保護育成条例六条二項、六条の六第一項本文、二一条五号の規定と憲法二一条一項(補足意見がある)
裁判要旨
有害図書の自動販売機への収納を禁止処罰する岐阜県青少年保護育成条例六条二項、六条の六第一項本文、二一条五号の規定は、憲法二一条一項に違反しない。
参照法条
憲法21条1項,岐阜県青少年保護育成条例6条1項,岐阜県青少年保護育成条例6条2項,岐阜県青少年保護育成条例6条の6第1項,岐阜県青少年保護育成条例21条5号,岐阜県青少年保護育成条例施行規則2条,昭和54年7月1日岐阜県告示539号
判決文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319115519744709.pdf
主 文
本件上告を棄却する。
理 由
一 弁護人青山學、同井口浩治の上告趣意のうち、憲法二一条一項違反をいう点
は、岐阜県青少年保護育成条例(以下「本条例」という。)六条二項、六条の六第
一項本文、二一条五号の規定による有害図書の自動販売機への収納禁止の規制が憲
法二一条一項に違反しないことは、当裁判所の各大法廷判例(昭和二八年間第一七
一三号同三二年三月一三日判決・刑集一一巻三号九九七頁、昭和三九年(あ)第三
〇五号同四四年一〇月一五日判決・刑集二三巻一〇号一二三九頁、昭和五七年(あ)
第六二一号同六〇年一〇月二三日判決・刑集三九巻六号四一三頁)の趣旨に徴し明
らかであるから、所論は理由がない。同上告趣意のうち、憲法二一条二項前段違反
をいう点は、本条例による有害図書の指定が同項前段の検閲に当たらないことは、
当裁判所の各大法廷判例(昭和五七年(行ツ)第一五六号同五九年一二月一二日判
決・民集三八巻一二号一三〇八頁、昭和五六年(オ)第六〇九号同六一年六月一一
日判決・民集四〇巻四号八七二頁)の趣旨に徴し明らかであるから、所論は理由が
ない。同上告趣意のうち、憲法一四条違反をいう点が理由のないことは、前記昭和
六〇年一〇月二三日大法廷判決の趣旨に徴し明らかである。同上告趣意のうち、規
定の不明確性を理由に憲法二一条一項、三一条違反をいう点は、本条例の有害図書
の定義が所論のように不明確であるということはできないから前提を欠き、その余
の点は、すべて単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、適法な上告理由に当た
らない。
二 所論にかんがみ、若干説明する。
1 本条例において、知事は、図書の内容が、著しく性的感情を刺激し、又は著
しく残忍性を助長するため、青少年の健全な育成を阻害するおそれがあると認める
- 1 -
ときは、当該図書を有害図書として指定するものとされ(六条一項)、右の指定を
しようとするときには、緊急を要する場合を除き、岐阜県青少年保護育成審議会の
意見を聴かなければならないとされている(九条)。ただ、有害図書のうち、特に
卑わいな姿態若しくは性行為を被写体とした写真又はこれらの写真を掲載する紙面
が編集紙面の過半を占めると認められる刊行物については、知事は、右六条一項の
指定に代えて、当該写真の内容を、あらかじめ、規則で定めるところにより、指定
することができるとされている(六条二項)。これを受けて、岐阜県青少年保護育
成条例施行規則二条においては、右の写真の内容について、「一 全裸、半裸又は
これに近い状態での卑わいな姿態、二 性交又はこれに類する性行為」と定められ、
さらに昭和五四年七月一日岐阜県告示第五三九号により、その具体的内容について
より詳細な指定がされている。このように、本条例六条二項の指定の場合には、個
々の図書について同審議会の意見を聴く必要はなく、当該写真が前記告示による指
定内容に該当することにより、有害図書として規制されることになる。以上右六条
一項又は二項により指定された有害図書については、その販売又は貸付けを業とす
る者がこれを青少年に販売し、配付し、又は貸し付けること及び自動販売機業者が
自動販売機に収納することを禁止され(本条例六条の二第二項、六条の六第一項)、
いずれの違反行為についても罰則が定められている(本条例二一条二号、五号)。
2 本条例の定めるような有害図書が一般に思慮分別の未熟な青少年の性に関す
る価値観に悪い影響を及ぼし、性的な逸脱行為や残虐な行為を容認する風潮の助長
につながるものであつて、青少年の健全な育成に有害であることは、既に社会共通
の認識になつているといってよい。さらに、自動販売機による有害図書の販売は、
売手と対面しないため心理的に購入が容易であること、昼夜を問わず購入ができる
こと、収納された有害図書が街頭にさらされているため購入意欲を刺激し易いこと
などの点において、書店等における販売よりもその弊害が一段と大きいといわざる
- 2 -
をえない。しかも、自動販売機業者において、前記審議会の意見聴取を経て有害図
書としての指定がされるまでの間に当該図書の販売を済ませることが可能であり、
このような脱法的行為に有効に対処するためには、本条例六条二項による指定方式
も必要性があり、かつ、合理的であるというべきである。そうすると、有害図書の
自動販売機への収納の禁止は、青少年に対する関係において、憲法二一条一項に違
反しないことはもとより、成人に対する関係においても、有害図書の流通を幾分制
約することにはなるものの、青少年の健全な育成を阻害する有害環境を浄化するた
めの規制に伴う必要やむをえない制約であるから、憲法二一条一項に違反するもの
ではない。
よって、刑訴法四〇八条により、主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官伊藤正己の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見によ
るものである。
裁判官伊藤正己の補足意見は、次のとおりである。
岐阜県青少年保護育成条例(以下「本件条例」という。)による有害図書の規制
が憲法に違反するものではないことは、法廷意見の判示するとおりである。いわゆ
る有害図書を青少年の手に入らないようにする条例は、かなり多くの地方公共団体
において制定されているところであるが、本件において有害図書に該当するとされ
た各雑誌を含めて、表現の自由の保障を受けるに値しないと考えられる価値のない
又は価値の極めて乏しい出版物がもっぱら営利的な目的追求のために刊行されてお
り、青少年の保護育成という名分のもとで規制が一般に受けいれられやすい状況が
みられるに至っている。そして、本件条例のような法的規制に対しては、表現の送
り手であるマス・メディア自身も、社会における常識的な意見も、これに反対しな
い現象もあらわれている。しかし、この規制は、憲法の保障する表現の自由にかか
わるものであつて、所論には検討に値する点が少なくない。以下に、法廷意見を補
- 3 -
足して私の考えるところを述べておきたいと思う。
一 本件条例と憲法二一条
(一) 本件条例によれば、六条一項により有害図書として指定を受けた図書、
同条二項により指定を受けた内容を有する図書は、青少年に供覧、販売、貸付等を
してはならないとされており(六条の二)、これは明らかに青少年の知る自由を制
限するものである。当裁判所は、国民の知る自由の保障が憲法二一条一項の規定の
趣旨・目的から、いわばその派生原理として当然に導かれるところであるとしてい
る(最高裁昭和六三年(オ)第四三六号平成元年三月八日大法廷判決・民集四三巻
二号八九頁参照)。そして、青少年もまた憲法上知る自由を享有していることはい
うまでもない。
青少年の享有する知る自由を考える場合に、一方では、青少年はその人格の形成
期であるだけに偏りのない知識や情報に広く接することによって精神的成長をとげ
ることができるところから、その知る自由の保障の必要性は高いのであり、そのた
めに青少年を保護する親権者その他の者の配慮のみでなく、青少年向けの図書利用
施設の整備などのような政策的考慮が望まれるのであるが、他方において、その自
由の憲法的保障という角度からみるときには、その保障の程度が成人の場合に比較
して低いといわざるをえないのである。すなわち、知る自由の保障は、提供される
知識や情報を自ら選別してそのうちから自らの人格形成に資するものを取得してい
く能力が前提とされている。青少年は、一般的にみて、精神的に未熟であって、右
の選別能力を十全には有しておらず、その受ける知識や情報の影響をうけることが
大きいとみられるから、成人と同等の知る自由を保障される前提を欠くものであり、
したがつて青少年のもつ知る自由は一定の制約をうけ、その制約を通じて青少年の
精神的未熟さに由来する害悪から保護される必要があるといわねばならない。もと
よりこの保護を行うのは、第一次的には親権者その他青少年の保護に当たる者の任
- 4 -
務であるが、それが十分に機能しない場合も少なくないから、公的な立場からその
保護のために関与が行われることも認めねばならないと思われる。本件条例もその
一つの方法と考えられる。このようにして、ある表現が受け手として青少年にむけ
られる場合には、成人に対する表現の規制の場合のように、その制約の憲法適合性
について厳格な基準が適用されないものと解するのが相当である。そうであるとす
れば、一般に優越する地位をもつ表現の自由を制約する法令について違憲かどうか
を判断する基準とされる、その表現につき明白かつ現在の危険が存在しない限り制
約を許されないとか、より制限的でない他の選びうる手段の存在するときは制約は
違憲となるなどの原則はそのまま適用されないし、表現に対する事前の規制は原則
として許されないとか、規制を受ける表現の範囲が明確でなければならないという
違憲判断の基準についても成人の場合とは異なり、多少とも緩和した形で適用され
ると考えられる。以上のような観点にたって、以下に論点を分けて考察してみよう。
(二) 青少年保護のための有害図書の規制について、それを支持するための立
法事実として、それが青少年非行を誘発するおそれがあるとか青少年の精神的成熟
を害するおそれのあることがあげられるが、そのような事実について科学的証明が
されていないといわれることが多い。たしかに青少年が有害図書に接することから、
非行を生ずる明白かつ現在の危険があるといえないことはもとより、科学的にその
関係が論証されているとはいえないかもしれない。しかし、青少年保護のための有
害図書の規制が合憲であるためには、青少年非行などの害悪を生ずる相当の蓋然性
のあることをもって足りると解してよいと思われる。もっとも、青少年の保護とい
う立法目的が一般に是認され、規制の必要性が重視されているために、その規制の
手段方法についても、容易に肯認される可能性があるが、もとより表現の自由の制
限を伴うものである以上、安易に相当の蓋然性があると考えるべきでなく、必要限
度をこえることは許されない。しかし、有害図書が青少年の非行を誘発したり、そ
- 5 -
の他の害悪を生ずることの厳密な科学的証明を欠くからといって、その制約が直ち
に知る自由への制限として違憲なものとなるとすることは相当でない。
西ドイツ基本法五条二項の規定は、表現の自由、知る権利について、少年保護の
ための法律によって制限されることを明文で認めており、いわゆる「法律の留保」
を承認していると解される。日本国憲法のもとでは、これと同日に論ずることはで
きないから、法令をもってする青少年保護のための表現の自由、知る自由の制約を
直ちに合憲的な規制として承認することはできないが、現代における社会の共通の
認識からみて、青少年保護のために有害図書に接する青少年の自由を制限すること
は、右にみた相当の蓋然性の要件をみたすものといってよいであろう。問題は、本
件条例の採用する手段方法が憲法上許される必要な限度をこえるかどうかである。
これについて以下の点が問題となろう。
(三) すでにみたように本件条例による有害図書の規制は、表現の自由、知る
自由を制限するものであるが、これが基本的に是認されるのは青少年の保護のため
の規制であるという特殊性に基づくといえる。もし成人を含めて知る自由を本件条
例のような態様方法によって制限するとすれば、憲法上の厳格な判断基準が適用さ
れる結果違憲とされることを免れないと思われる。そして、たとえ青少年の知る自
由を制限することを目的とするものであっても、その規制の実質的な効果が成人の
知る自由を全く封殺するような場合には、同じような判断を受けざるをえないであ
ろう。
しかしながら、青少年の知る自由を制限する規制がかりに成人の知る自由を制約
することがあつても、青少年の保護の目的からみて必要とされる規制に伴って当然
に附随的に生ずる効果であつて、成人にはこの規制を受ける図書等を入手する方法
が認められている場合には、その限度での成人の知る自由の制約もやむをえないも
のと考えられる。本件条例は書店における販売のみでなく自動販売機(以下「自販
- 6 -
機」という。)による販売を規制し、本件条例六条二項によって有害図書として指
定されたものは自販機への収納を禁止されるのであるから、成人が自販機によって
これらの図書を簡易に入手する便宜を奪われることになり、成人の知る自由に対す
るかなりきびしい制限であるということができるが、他の方法でこれらの図書に接
する機会が全く閉ざされているとの立証はないし、成人に対しては、特定の態様に
よる販売が事実上抑止されるにとどまるものであるから、有害図書とされるものが
一般に価値がないか又は極めて乏しいことをあわせ考えるとき、成人の知る自由の
制約とされることを理由に本件条例を違憲とするのは相当ではない。
(四) 本件条例による規制が憲法二一条二項前段にいう「検閲」に当たるとす
れば、その憲法上の禁止は絶対的なものであるから、当然に違憲ということになる
が、それが「検閲」に当たらないことは、法廷意見の説示するとおりである。その
引用する最高裁昭和五七年(行ツ)第一五六号同五九年一二月一二日大法廷判決(
民集三八巻一二号一三〇八頁)によれば、憲法にいう「検閲」とは、「行政権が主
体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目
的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を
審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備える
ものを指すと解すべきである」ところ、本件条例の規制は、六条一項による個別的
指定であっても、また同条二項による規則の定めるところによる指定(以下これを
「包括指定」という。)であっても、すでに発表された図書を対象とするものであ
り、かりに指定をうけても、青少年はともかく、成人はこれを入手する途が開かれ
ているのであるから、右のように定義された「検閲」に当たるということはできな
い。
もっとも 憲法二一条二項前段の「検閲」の絶対的禁止の趣旨は、同条一項の表
現の自由の保障の解釈に及ぼされるべきものであり、たとえ発表された後であって
- 7 -
も、受け手に入手されるに先立ってその途を封ずる効果をもつ規制は、事前の抑制
としてとらえられ、絶対的に禁止されるものではないとしても、その規制は厳格か
つ明確な要件のもとにおいてのみ許されるものといわなければならない(最高裁昭
和五六年(オ)第六〇九号同六一年六月一一日大法廷判決・民集四〇巻四号八七二
頁参照)。本件条例による規制は、個別的指定であると包括指定であるとをとわず、
指定された後は、受け手の入手する途をかなり制限するものであり、事前抑制的な
性格をもっている。しかし、それが受け手の知る自由を全面的に閉ざすものではな
く、指定をうけた有害図書であっても販売の方法は残されていること、のちにみる
ように指定の判断基準が明確にされていること、規制の目的が青少年の保護にある
ことを考慮にいれるならば、その事前抑制的性格にもかかわらず、なお合憲のため
の要件をみたしているものと解される。
(五) すでにみたように、本件条例は、有害図書の規制方式として包括指定方
式をも定めている。この方式は、岐阜県青少年保護育成審議会(以下「審議会」と
いう。)の審議を経て個別的に有害図書を指定することなく、条例とそのもとでの
規則、告示により有害図書の基準を定め、これに該当するものを包括的に有害図書
として規制を行うものである。一般に公正な機関の指定の手続を経ることにより、
有害図書に当たるかどうかの判断を慎重にし妥当なものとするよう担保することが、
有害図書の規制の許容されるための必要な要件とまではいえないが、それを合憲の
ものとする有力な一つの根拠とはいえる。包括指定方式は、この手続を欠くもので
ある点で問題となりえよう。
このような包括指定のやり方は、個別的に図書を審査することなく、概括的に有
害図書として規制の網をかぶせるものであるから、検閲の一面をそなえていること
は否定できないところである。しかし、この方式は、法廷意見の説示からもみられ
るように、自販機による販売を通じて青少年が容易に有害図書を入手できることか
- 8 -
ら生ずる弊害を防止するための対応策として考えられたものであるが、青少年保護
のための有害図書の規制を是認する以上は、自販機による有害図書の購入は、書店
などでの購入と異なって心理的抑制が少なく、弊害が大きいこと、審議会の調査審
議を経たうえでの個別的指定の方法によっては青少年が自販機を通じて入手するこ
とを防ぐことができないこと(例えばいわゆる「一夜本」のやり方がそれを示して
いる。)からみて、包括指定による規制の必要性は高いといわなければならない。
もとより必要度が高いことから直ちに表現の自由にとつてきびしい規制を合理的な
ものとすることはできないし、表現の自由に内在する制限として当然に許容される
と速断することはできないけれども、他に選びうる手段をもっては有害図書を青少
年が入手することを有効に抑止することができないのであるから、これをやむをえ
ないものとして認めるほかはないであろう。私としては、つぎにみるように包括指
定の基準が明確なものとされており、その指定の範囲が必要最少限度に抑えられて
いる限り、成人の知る自由が封殺されていないことを前提にすれば、これを違憲と
断定しえないものと考える。
二 基準の明確性
およそ法的規制を行う場合に規制される対象が何かを判断する基準が明確である
ことを求められるが、とくに刑事罰を科するときは、きびしい明確性が必要とされ
る。表現の自由の規制の場合も、不明確な基準であれば、規制範囲が漠然とするた
めいわゆる萎縮的効果を広く及ぼし、不当に表現行為を抑止することになるために、
きびしい基準をみたす明確性が憲法上要求される。本件条例に定める有害図書規制
は、表現の自由とかかわりをもつものであるのみでなく、刑罰を伴う規制でもある
し、とくに包括指定の場合は、そこで有害図書とされるものが個別的に明らかにさ
れないままに、その販売や自販機への収納は、直ちに罰則の適用をうけるのである
から、罪刑法定主義の要請も働き、いっそうその判断基準が明確でなければならな
- 9 -
いと解される。もっとも、すでにふれたように青少年保護を目的とした、青少年を
受け手とする場合に限っての規制であることからみて、一般の表現の自由の規制と
同じに考えることは適当でなく、明確性の要求についても、通常の表現の自由の制
約に比して多少ゆるめられることも指摘しておくべきであろう。
右の観点にたって本件条例の有害図書指定の基準の明確性について検討する。論
旨は、当裁判所の判例を引用しつつ、合理的判断を加えても本件条例の基準は不明
確にすぎ、憲法二一条一項、三一条に違反すると主張する。本件条例六条一項では
指定の要件は、「著しく性的感情を刺激し、又は著しく残忍性を助長する」とされ、
それのみでは、必ずしも明確性をもつとはいえない面がある。とくに残忍性の助長
という点はあいまいなところがかなり残る。また「猥褻」については当裁判所の多
くの判例によってその内容の明確化がはかられているが(そこでも問題のあること
について最高裁昭和五四年(あ)第一三五八号同五八年三月八日第三小法廷判決・
刑集三七巻二号一五頁における私の補足意見参照。)、本件条例にいう「著しく性
的感情を刺激する」図書とは猥褻図書よりも広いと考えられ、規制の及ぶ範囲も広
範にわたるだけに漠然としている嫌いを免れない。
しかし、これらについては、岐阜県青少年対策本部次長通達(昭和五二年二月二
五日青少第三五六号)により審査基準がかなり具体的に定められているのであって、
不明確とはいえまい。そして本件で問題とされるのは本件条例六条二項であるが、
ここでは指定有害図書は「特に卑わいな姿態若しくは性行為を被写体とした写真又
はこれらの写真を掲載する紙面が編集紙面の過半を占めると認められる刊行物」と
定義されていて、一項の場合に比して具体化がされているとともに、右の写真の内
容については、法廷意見のあげる施行規則二条さらに告示(昭和五四年七月一日岐
阜県告示第五三九号)を通じて、いっそう明確にされていることが認められる。こ
のように条例そのものでなく、下位の法規範による具体化、明確化をどう評価する
- 10 -
かは一つの問題ではあろう。しかし、本件条例は、その下位の諸規範とあいまって、
具体的な基準を定め、表現の自由の保障にみあうだけの明確性をそなえ、それによ
って、本件条例に一つの限定解釈ともいえるものが示されているのであって、青少
年の保護という社会的利益を考えあわせるとき基準の不明確性を理由に法令として
のそれが違憲であると判断することはできないと思われる。
三 本件条例と憲法一四条
条例による有害図書の規制が地方公共団体の間にあって極めて区々に分かれてい
ることは、所論のとおりである。たしかに本件条例は、最もきびしい規制を行う例
に属するものであり、他の地方公共団体において、有害図書規制について、単に業
界の自主規制に委ねるものや罰則のおかれていないものもみられるし、みなし規制
を含め、包括的な指定の方式を有するところは一〇余県で必ずしも多くはなく、自
販機への収納禁止を定めながら罰則のないところもある。このようにみると、青少
年の保護のための有害図書の規制は地方公共団体によつて相当に差異があるといっ
てよいであろう。
しかし、このように相当区々であることは認められるとしても、それをもって憲
法一四条に違反するものではないことは、法廷意見の説示するとおりである。私は、
青少年条例の定める青少年に対する淫行禁止規定については、その規制が各地方公
共団体の条例の間で余りに差異が大きいことに着目し、それをもって直ちに違憲と
なるものではないが、このような不合理な地域差のあるところから「淫行」の意味
を厳格に解釈することを通じて著しく不合理な差異をできる限り解消する方向を考
えるべきものとした(法廷意見のあげる昭和六〇年一〇月二三日大法廷判決におけ
る私の反対意見参照。)。このような考え方が有害図書規制の面においても妥当し
ないとはいえないが、私見によれば、青少年に対する性行為の規制は、それ自体地
域的特色をもたず、この点での青少年の保護に関する社会通念にほとんど地域差は
- 11 -
認められないのに反して、有害図書の規制については、国全体に共通する面よりも、
むしろ地域社会の状況、住民の意識、そこでの出版活動の全国的な影響力など多く
の事情を勘案した上での政策的判断に委ねられるところが大きく、淫行禁止規定に
比して、むしろ地域差のあることが許容される範囲が広いと考えられる。この観点
にたつときには、本件条例が他の地方公共団体の条例よりもきびしい規制を加える
ものであるとしても、なお地域の事情の差異に基づくものとして是認できるものと
思われる。
このことと関連して、基本的人権とくに表現の自由のような優越的地位を占める
人権の制約は必要最小限度にとどまるべきであるから、目的を達するために、人権
を制限することの少ない他の選択できる手段があるときはこの方法を採るべきであ
るという基準が問題とされるかもしれない。すなわち、この基準によれば、他の地
方公共団体がゆるやかな手段、例えば業界の自主規制によって有害図書の規制を行
っているにかかわらず、本件条例のようなきびしい規制を行うことは違憲になると
主張される可能性がある。しかし、わが国において有害図書が業界のいわゆるアウ
トサイダーによって出版されているという現状をみるとき、果して自主規制のよう
なゆるやかな手段が適切に機能するかどうかは明らかではないし、すでにみたよう
に、青少年保護の目的での規制は、表現の受け手が青少年である場合に、その知る
自由を制約するものであつても、通常の場合と同じ基準が適用されると考える必要
がないと解されることからみて、本件条例のようなきびしい規制が政策として妥当
かどうかはともかくとして、他に選びうるゆるやかな手段があるという理由で、そ
れを違憲と判断することは相当でないと思われる。
以上詳しく説示したように、本件条例を憲法に違反するものと判断することはで
きず、これを違憲と主張する所論は、傾聴に値するところがないわけではないが、
いずれも採用することができないというほかはない。
- 12 -
平成元年九月一九日
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 伊 藤 正 己
裁判官 安 岡 滿 彦
裁判官 坂 上 壽 夫
裁判官 貞 家 克 己
- 13 -
個別にお伝えしているところですが、万が一の場合、併せて急病対応いたしますので、お気軽にご相談下さい。
インフルエンザ予防接種も増え、クリニックの通常診療での予防接種枠が窮屈になって参りました。
クリニック事情としても、日曜祝日枠での予防接種枠をご利用いただけると助かります。
また、月曜日からの登園登校に備え、「治癒証明」が必要な場合、日曜日に書かせていただきます。月曜日わざわざクリニックによる必要がなくなると思いますので、ご利用下さい。
mission:日本の小児医療救急問題の解決と、地域の子ども達の24時間365日の安全安心。
医療法人小坂成育会
こども元気!!クリニック・病児保育室
東京都中央区月島3-30-3 ベルウッドビル2~4階
電話03-5547-1191
*******小坂クリニック10月のお知らせ******
【1】インフルエンザ予防接種を開始致しました。
インフルエンザは冬に猛威を振るいます。
毎年、インフルエンザ脳症で幼い命が奪われています。
小児科医としては、どうしても不幸な事態は防ぎたいと思っています。
第一にできることは、予防接種です。
(第二、第三は、十分な休養と人ごみを避けること。外出時のマスクと帰宅後の手洗いうがい。)
ご家族でまずは、予防接種をして防いでください。
受験等大切な行事のあるかたも、接種をお忘れなく。
親御さんの接種も実施致します。
ご予約:03-5547-1191(日曜日も接種致します。)
【2】10月の日曜日(10/14祝も含め)は、お休みなしで診療致します。
*月曜日朝一番で登園できるよう治癒証明なども日曜日に書きますのでご利用ください。
【3】日曜日の予防接種を実施中です。
患者様からの御要望にお応えし、日曜日の予防接種(予約制)を実施しています。
ご希望の方は、お電話でお申し込み下さい。
以上です。
急に涼しくなって参りました。
気候の変動から喘息の発作が出たり、風邪をひくこともあり難しい季節です。
どうか体調をくずされませんように。
ご無理をなさらず、十分に休養をとって、励んでください。
食欲の秋、行楽の秋、読書の秋、芸術の秋…
お元気でお過ごしください。
小坂和輝
*************************
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013100802000119.html
衆院選結果とねじれ 武蔵野市長選 与党推薦候補が大敗
2013年10月8日 朝刊
六日投開票の東京都武蔵野市長選で、自民、公明両党の推薦候補が民主党など野党勢力が支援する現職に大敗した。昨年の衆院選では、武蔵野市を含む東京18区で自民党の土屋正忠氏が民主党の菅直人元首相(比例代表東京ブロックで復活当選)を破ったものの、わずか十カ月で与野党の形勢は逆転した。高い支持率を維持する安倍政権だが、首長選では取りこぼしが続き、もろさも抱えている。 (関口克己)
武蔵野市長選は、民主に加え共産、社民両党が支持した邑上(むらかみ)守正氏が三選を果たし、与党推薦の木崎剛氏は落選した。
邑上氏の得票数は約二万五千票。衆院選で菅氏が武蔵野市で得た得票を千票以上も上回った。衆院選では公認候補を出した共産の支援を今回は受けたとはいえ、衆院選から約26ポイントも下がった投票率の影響は少なかった。
一方、木崎氏の得票は、衆院選で土屋氏が得た約二万七千票の半分。市長経験者の土屋氏が全面支援したものの、投票率低下の影響をもろに受けた。首相が一日に消費税率8%への引き上げを発表したことで、衆院選で土屋氏に投票した有権者の自民離れが進んだ可能性がある。
菅氏は七日、自らのブログで市長選などに触れ「安倍政権も掲げている経済成長至上主義に対し見直し気分が広がっている」と指摘した。
皆さんの学校のエピペン対応は、大丈夫でしょうか?
「アレルギーのショック症状を緩和する自己注射薬「エピペン」を教職員ではなく、保護者が打つことなどを記した念書」
常時保護者が、学校にいるとは限りません。といいますか、いないのが普通。
親の到着を待てるような疾患でないからこそ、エピペンがあります。
「学校で発作が起きて後遺症が出ても学校は責任を負わないとの念書」
このような都合のよい念書が、世の中に存在してはいけません。
この学校には、法律が存在しませんといっているようなもの。
特殊な事例であることを願いますが、きちんとエピペンが学校で使用されるように、私達かかりつけ小児科医も、学校の先生方と一緒に、学校の安全体制を確立していかねばならないと考えます。
****************************
http://mainichi.jp/feature/news/20131008ddm012040117000c.html
食物アレルギー:「後遺症、責任負わぬ」 山形の小学校、保護者と念書
毎日新聞 2013年10月08日 東京朝刊
山形市の市立小学校が昨年3月、食物アレルギーのある児童1人について、学校で発作が起きて後遺症が出ても学校は責任を負わないとの念書を、校長と保護者の間で交わしていたことが分かった。市教委は昨年4月、不適切だとして学校を指導した。市教委によると、校長は「アレルギー対応の経験がなく、発作時の対応を保護者と相談するうちに不安になった」と説明しているという。【前田洋平】
山形市教委によると、アレルギーのある児童の保護者が昨年3月、発作時の対応を学校に相談し、保護者への連絡方法や発作薬服用などを話し合った。その際、教職員の対応によって後遺症が出ても学校に責任を問わないことや、アレルギーのショック症状を緩和する自己注射薬「エピペン」を教職員ではなく、保護者が打つことなどを記した念書を交わしたという。
文部科学省のガイドラインは、緊急時は児童・生徒に代わって教職員がエピペン注射をするなどの対応策を示している。市教委の吉田勝彦・学校教育課長は「アレルギーに対する知識や経験が少ないために起きてしまった事態。研修などを通じて、教職員がしっかりと対応できるようにしていきたい」と話した。
山形県教委によると、児童・生徒のアレルギーなどについては、保護者と学校側が十分に相談して発作時の対応を確認する「同意書」を交わすことはあるが、学校側の責任を回避するための「念書」は例がないという。県教委は同様の事例がないか7日、県内市町村教委に聞き取り調査を始めた。
当然のことである。
法が子ども達を、言われのない差別から守った判決。
日本人は、差別や憎しみをあおるのではなく、美しくありたいと思う。
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街宣は人種差別と賠償命令、京都 在特会ヘイトスピーチ、初判決
2013年10月7日 12時31分
朝鮮学校の周辺で街頭宣伝し、ヘイトスピーチ(憎悪表現)と呼ばれる差別的な発言を繰り返して授業を妨害したとして、学校法人京都朝鮮学園が「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などを訴えた訴訟の判決で、京都地裁(橋詰裁判長)は7日、街宣禁止と1200万円の賠償を命じた。
橋詰裁判長は、在特会側が実施した街宣と、一連の行動を動画で撮影しインターネットで公開した行為について「(日本も批准する)人種差別撤廃条約で定めた人種差別に当たり、違法だ」と指摘した。
原告弁護団によると、特定の人種や民族への差別や憎しみをあおり立てるヘイトスピーチ訴訟の判決は初めて。
(共同)
******毎日新聞*******
http://mainichi.jp/select/news/20131007dde041040022000c.html
朝鮮学校授業妨害:街宣損賠訴訟 在特会街宣に賠償命令 識者の話
毎日新聞 2013年10月07日 東京夕刊
◇地裁の見識に敬意−−在特会に詳しいフリージャーナリスト、安田浩一さんの話
判決文を詳しく読んでいないが、在特会の発言内容をヘイトスピーチ(人種差別表現)であると京都地裁が踏み込んで判断したものと受け止められ、地裁の見識に敬意を表したい。判決は、在特会の言葉が現に被害者を生み出し、人種差別はいけないことだと社会に知らしめる第一歩となるだろう。
◇当たり前の意識示した−−前田朗・東京造形大教授(刑事人権論)の話
当たり前の社会意識を示した画期的な判決だ。国連の人種差別撤廃委員会に対し「差別はない」と回答してきた日本政府の対応が問われることになる。「ヘイトスピーチデモ」が横行する状況をこのまま放置すれば、少数者の人格権を保障する民主主義社会の価値を損ねることを日本社会の多数者こそが気づくべきだ。
京都地裁:在特会街宣に賠償命令…人種差別と認定
毎日新聞 2013年10月07日 12時46分(最終更新 10月07日 14時40分)
京都朝鮮第一初級学校(京都市)の校門前で行われた学校を中傷する大音量の街頭宣伝などヘイトスピーチ(憎悪表現)で授業を妨害されたとして、同校を運営する京都朝鮮学園(京都市右京区)が、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」と元メンバーら9人を相手取り、3000万円の損害賠償と同校の半径200メートル以内での街宣活動禁止を求めた訴訟の判決が7日、京都地裁であった。橋詰均裁判長は在特会の街宣を「著しく侮蔑的な発言を伴い、人種差別撤廃条約が禁ずる人種差別に該当する」と認定した。
◇朝鮮学校周辺の街宣活動禁止
学校事業に損害を与えたとして在特会側に1226万円を支払うよう命じた。学校周辺の街宣活動についても請求通り禁止を命じた。いわゆるヘイトスピーチの違法性を認定したのは全国で初めて。裁判所が、ヘイトスピーチとして問題になっている特定の民族に対する差別街宣について「人種差別」と判断したことで、東京・新大久保や大阪で繰り返される在日コリアンを標的にした差別街宣への抑止効果が予想され、ヘイトスピーチの法規制議論を促すことになるとみられる。
判決は、2009年12月〜10年3月、在特会メンバーらが京都朝鮮第一初級学校(当時。現在は京都朝鮮初級学校=京都市伏見区=に移転)に押しかけ、「朝鮮学校を日本からたたき出せ」「何が子どもじゃ、スパイの子やんけ」などと拡声機で怒号を浴びせた演説について、憲法が保障する「表現の自由」の範囲内かどうかなどについて検討した。
橋詰裁判長は街宣やその映像をインターネットで公開した行為について「在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴える意図のもとに示威活動及び映像公開をしたものと認められ、人種差別に該当」と判断した。
朝鮮学校側の「民族教育権」が侵害されたとの主張については、言及しなかった。【松井豊】
◇子どもの励みに…原告弁護団長
原告側の塚本誠一弁護団長は「同種の街宣事案について、強い抑止効果を発揮すると期待している。日本全国の朝鮮学校で学んでいる子どもたちの大きな励みになる」と話した。
◇認められず残念…在特会副会長
在特会の八木康洋副会長は「我々の行為が正当であると認められなかったのは非常に残念。判決文を精査して控訴するかどうかを考えたい」と話した。
裁判官は、判決文の後の方で、
「補足意見」「意見」「反対意見」を述べています。
「反対意見」は、当然、判決に対し、反対なのは、わかるとしても、
「補足意見」と「意見」の違いは何か。
「補足意見」は、判決の理由・論理の補足の説明。
判決文が、なぜ、そういっているかの理解が深まります。
「意見」は、判決文がとった理由・論理と異なる理由・論理をとりながらも、結論は判決と同じもの。
判決とは違う事案において、考え方の参考となるものです。
労働法を選択科目として選び、演習等が始まって来ます。
今後、記載を増やしていきたいと思います。、
<労働法>
6)懲戒処分の有効性の検証方法
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/e83484206f773abaeb12dd51def6e695
5)働けることって、義務の前に、権利ですよね。「業務命令としての自宅待機」の可否について。
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/8c35694366b639cd2f81c9d726c6e573
4)重要賃金問題!賃金の相殺は原則禁止。退職金不支給条項は違法か?賞与支給日前に退職するともらえない?(2013-04-22 23:00:00 2年目)
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/2147f5723bc62c34c620992726cd6011
3)重要!改正労働契約法本年4/1施行19条1号2号。有期契約雇止めが一定の場合禁止が明文化(2013-04-16 15:31:45 2年目)
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/ab98f5cdea9e7d39744928679fd1b77f
2)労働法:就業規則を理解することの大切さ ぜひ、ご自身の就業規則のご確認を!(20130409 2年目)
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/98f14b972998cde370b85ec98dec323e
1)労働法:個別的労働契約における「労働者」と「使用者」(20130409 2年目)
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/4ec6ef365e969fe096b647ab2c4cc614
(時間が変則的になっております。)
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インフルエンザは冬に猛威を振るいます。
毎年、インフルエンザ脳症で幼い命が奪われています。
小児科医としては、どうしても不幸な事態は防ぎたいと思っています。
第一にできることは、予防接種です。
(第二、第三は、十分な休養と人ごみを避けること。外出時のマスクと帰宅後の手洗いうがい。)
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【2】10月の日曜日(10/14祝も含め)は、お休みなしで診療致します。
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急に涼しくなって参りました。
気候の変動から喘息の発作が出たり、風邪をひくこともあり難しい季節です。
どうか体調をくずされませんように。
ご無理をなさらず、十分に休養をとって、励んでください。
食欲の秋、行楽の秋、読書の秋、芸術の秋…
お元気でお過ごしください。
小坂和輝
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=62606&hanreiKbn=02
事件番号
平成16(行ツ)178
事件名
差押処分無効確認等請求事件
裁判年月日
平成17年04月26日
法廷名
最高裁判所第三小法廷
裁判種別
判決
結果
棄却
判例集等巻・号・頁
集民 第216号661頁
原審裁判所名
札幌高等裁判所
原審事件番号
平成15(行コ)5
原審裁判年月日
平成16年03月18日
判示事項
水稲等の耕作の業務を営む者について農業共済組合への当然加入制を定める農業災害補償法(平成11年法律第69号による改正前のもの)15条1項,16条1項,104条1項,農業災害補償法(平成11年法律第160号による改正前のもの)19条と憲法22条1項
裁判要旨
農業共済組合の区域内に住所を有する水稲等の耕作の業務を営む者でその業務の規模が一定の基準に達するものは当該組合の組合員となり当該組合との間で農作物共済の共済関係が当然に成立する旨を定める農業災害補償法(平成11年法律第69号による改正前のもの)15条1項,16条1項,104条1項,農業災害補償法(平成11年法律第160号による改正前のもの)19条の規定は,憲法22条1項に違反しない。
参照法条
憲法22条1項,農業災害補償法(平成11年法律第69号による改正前のもの)15条1項,農業災害補償法(平成11年法律第69号による改正前のもの)16条1項,農業災害補償法(平成11年法律第69号による改正前のもの)104条1項,農業災害補償法(平成11年法律第160号による改正前のもの)19条
判決文全文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130713821212.pdf