この春に大多喜へ竹の子を食べに行った時、そろそろ海外へ出てもいいんじゃないかという話になり、3人でバリ島へ行こうということになった。
航空券を検索するとマレーシア航空が往復75,000円とお得、すぐに買ったがその後は減便に次ぐ減便で3回もフライト変更、それでもやっと出発の日を迎えることができた。
2022年7月8日~15日 バリ島ウブドの旅
7月8日
8時半に成田空港で同行のTrintrinさんと合流。
マレーシア航空のカウンターに並んでいるのはインド人家族ばかり。「チェンナイ、チェンナイ言ってた」とかで乗り継ぎに都合がいいらしい。
ガラガラの空港は保安検査も楽々、まして顔認証になった出国審査はあっという間に通過してしまう。
お買い物エリアにも当然人は少なく、シャネルなどは閉店していて免税店の化粧品売り場も品物が少ない。
そこでJLのラウンジのダイニングエリアに直行すると
ビュッフェ形式だったものが今はすべてオーダー式になってトレーで渡される。
となれば食べないわけにはいかないビーフカレー、鶴丸見ながらこれを食べるのも久しぶりだ。
これから搭乗する国旗柄のマレーシア航空を見ながらゲートに到着すると既に搭乗案内が始まっていて人も少ない。
乗り込んでみればその理由も納得、290席あるA330-300が今日は60人しか客がいないと言う。
「今日はお客様より貨物をいっぱい積むために大きな機材にしてま~す」とは夜会巻きの作り方まで教えてくれた日本人CAさん。「忙しい所、邪魔してごめんね」と言ったら、「いいえ~、こ~んな具合ですから」と余裕ありすぎのCAさんは楽しい。
機内ではこんなものが配られ、マスク着用必須とのアナウンスあり。
がほとんど機材の見えないT3を横目に飛び立てば座席は変わり放題で周りには他の人もろくにいない。
飲み物サービスの後の昼食もすぐに配られて、本日はフィッシュカレーを選択。
見た目はぱっとしないがこれがご飯によく合っておいしく、前回学んだ通り、マレーシア航空は魚が〇。キヌアサラダもミルクプリンもおいしかった。
お腹が膨れたら昼便なので映画三昧。
まずは渋い所で
The Outfit
この映画、日本公開は未定のようだがマーク・ライランス扮するイギリス出身の仕立て屋が主人公。
シカゴで店を開いているがアイリッシュマフィアの金の受け渡し場所に使われていて、ボスの息子が抗争相手に撃たれて担ぎ込まれたことから面倒に巻き込まれ、自分の命を守るためにマフィア相手と丁々発止のやり取りをする羽目になる。
その過程で仕立て屋の過去がわかってきたり、どんでん返しが何回もあるのだが、舞台はすべて夜の紳士服店内。限られた暗いスペースでほとんど二人か三人の芝居が続くので舞台劇のよう。
イギリス紳士だけれど実は、というあたりもマーク・ライランスだからこその凄みがあって、彼が主演でなければ成立しないような映画。となると渋すぎて日本での公開は難しいかもしれない。
どんでん返しの切れもいまいちかも。
続いてもまた渋いイギリス映画。
The Last Bus 「君を想い、バスに乗る」
既に日本公開されているとは知らなかったが、年老いて奥さんに先立たれた超高齢の主人公がスコットランドの北の端から訳あって大昔に離れた故郷コーンウォールのランズエンドまで旅する話。
このJohn O'GroatsからLand's Endまで1300㎞の縦断ルートはイギリスでは人気のコースらしいが、高齢の主人公は無料パスがあるのですべて公営バスを乗り継いでいくのだ。
その旅の間に回想シーンがあって旅の理由などが徐々に明かされる展開は定石通りだが、乗り合わせた人たちが折々スマホで主人公の様子をSNSに上げて、次第に有名になってしまう所が今風。ただしだからと言って大騒ぎをしたり、干渉したりする人がいないのはイギリス風。これがアメリカ映画だったら全く違う扱いになるだろう。
主演のティモシー・スポールはBBCのドラマやイギリス映画でよく見る顔。まだ60代なのだが90歳に扮してこれがまたうまい。心もとない歩き方など、90を超えた自分の父親を見るようでひやひやしてしまった。
イギリスの風景も魅力的だけれど、旅が終わった後のカタルシスがないのはちょっとつらい。
この後は「ベルファースト」を見てイギリス映画3本立てにしようかと思ったが、アイルランド訛りは字幕なしでは無理と断念。
4席で寝転がって本など読んでいたら軽食の時間になって
しかしこのパンはパサパサ、中の卵だけいただいた。
パイロットの見事なテクニックでクアラルンプール空港に定時の16:45に到着。
マレーシア航空のA380が2機並んでいたけれど、ずっとお休み中だろうか。
ターミナルに入るといつも人で一杯だったここも閑散、お店もシャッター通りと化していて寂しい限り。
さて、バリ島への飛行機は明朝だけれどマレーシアに入国するのは面倒なので今日はトランジットホテルに予約を入れてある。その前にゆっくりと夕食をいただこうとマレーシア航空のラウンジへ。
やって来たのは本館側のRegional Lounge。
あまり広くはないラウンジだけれど、中途半端な時間だったのか他にほとんどお客さんはなし。
飲み物などいただいてくつろごうとふとテレビに目をやると
なんで今頃安倍晋三?
と思って目を凝らすと「死亡」と出て、それがやがて「殺害」になり「暗殺」となって仰天。
この日はCNNもBBCもこのニュース一色。死亡直後では批判的なことは言わないのは東西同じだけれど、「銃規制の厳しい日本で、まして政治家の殺害は珍しい」という伝え方が多かった。
こんなニュースを見ながらも食べ物を物色。
小さいラウンジの割には意外に充実していて、しかし結局チキンフォーで軽く済ませる。
19時近くなったところでサテライト側に戻って、コンコースの一番端にあるホテルへ。
トランジットホテルの Sama Sama Express。
長~い廊下を歩いてたどり着いた部屋、カーテンを開けるとまったくの壁だったけれど、おかげで静かでよく眠れた。
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映画好き、すねこすりさんのレビューに触発されて、月曜の朝一から日比谷に映画を見に行ってきた。
「オフィサー・アンド・スパイ」 J'Accuse
このダサいタイトル、すねこすりさんの記事を読んでいなかったら興味を持たなかったかもしれない。フランス語の原題は「私は告発する」、作家のゾラの新聞投稿のタイトルで、有名なドレフュス事件が題材になっている、と知識のある人ならすぐわかるのだろう。もっとも映画会社の名誉(?)のために付け加えれば An Officer and a Spy は元々の英語タイトル。これもいいタイトルとは思えないが、冠詞を取るから余計ダサくなる。
監督は今年88歳になるというロマン・ポランスキー。波乱万丈の人生を歩んでいる人だが、同じく高齢になっても映画を撮り続けているクリント・イーストウッドやリドリー・スコットに比べて全く年を感じさせない所がすごい。
作中、ちょっとした音楽会の場面のエキストラとして本人がカメオ出演しているが、その姿にも変わりがなくてすぐにポランスキーだとわかった。
映画が始まってすぐに思ったのは空気がヨーロッパだということ。
鈍色の空、吐く息の白さ、石畳に響く馬車の音、部屋の調度。
フランス軍の制服もかっこいいが、19世紀末の衣装、特に男性のスーツが素敵。
これを着こなす主演のジャン・デュジャルダンは口髭のために若い頃のショーン・コネリーに似て見える。
さて、ドレフュス事件とはユダヤ人将校が人種ゆえにスパイ容疑をかけられ、ろくな証拠もないのに有罪とされた冤罪事件。
軍上層部の偏見もひどいが、ドレフュスが制服の徽章をはぎ取られるシーンや裁判の場面など、一般民衆の人種差別がひどかった様子も描かれていて、「外国人がこう増えてはこの国の文化は破壊される」なんてセリフもある。
映画全体を通して感じるのはポランスキーの理不尽な人種差別や冤罪に対する怒り。
ユダヤ人差別に関してはいわずもがなだが、アメリカでの淫行レイプ容疑についても本人は否定しているそうなのでやはり冤罪も自分のことかと深読みしてしまう。
ところでドレフュス大尉だが、自分はてっきり有罪判決後に死刑にされてしまったのだと思っていた。
実際は仏領ギアナの独房に入れられ、4年後に特赦、さらにその7年後にやっと無罪になったのだとか。
ドレフュスも、彼の冤罪を晴らすために左遷されてまで真実を追求したピカール中佐も、事件後も軍をやめなかったそうで、そこらへんは将校としてのプライドだろうか。
ピカール中佐が「正義のため」というよりも徹底的に真実を明らかにすべき、隠ぺい工作は許せない、と言うあたりもプライドがそうさせたという感じで、個人主義的な感じもフランスらしいと思う。
パリ、また行きたいなあ。
映画鑑賞後は有楽町の交通会館へ。
この地下にはおいしそうな店がいくつも入っていて、五島の海鮮ちらしと迷った挙句
「平戸からありがとう」という長崎県平戸市のアンテナショップで漬け丼のお昼。
ブリ、タイ、サバなどを甘辛タレにしっかり漬けたこの丼、うま~い!
アラ汁やお漬物もおいしくて、これは大当たり。
ご飯の上に猪ハンバーグがどーんと乗った平戸バーグ丼もおいしそうで、ここはまた来なきゃ。
食後はもちろんアンテナショップめぐりをして、交通会館 Forever!
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「シェイプ・オブ・ウォーター」で大いに気に入ったギレルモ・デル・トロ監督、新作の配役が好きな俳優ばかりなので映画館に足を運んだ。
「ナイトメア・アリー」 Nightmare Alley
はじめカタカナのタイトルだけ見た時はアリーという悪女の話かと思ってしまったが、英語のタイトルをよく見たら「悪夢小路」なのね。
ブラッドリー・クーパー扮する訳あり男がカーニバル一座にまぎれこみ、そこで読心術のトリックを会得して成り上がるが、悪夢小路に迷い込んで落ちて行くというお話。
ストーリーに驚きはないがデル・トロ監督の魅力はその世界観。
前半の場末のカーニバルは前回同様ティム・バートンやテリー・ギリアムを思い出させるが、子供っぽさがなくダークなところ、やっぱりバートンよりもギリアムに近いと思う。
後半は第二次大戦が始まる1940年のバッファロー、ここで登場する市庁舎やマホニー・ビルがアールデコで素敵すぎる。
ケイト・ブランシェットのオフィスはセットだそうだが、その内装にはよだれが出そう。
バスターミナルの男性トイレまで、監督の世界は完璧だ。
豪華キャストのケイトにト二・コレット、ルーニー・マーラにデビッド・ストラザーンはみんな好きな俳優だけれど、どれもいかにもこの人の役、という感じで意外性はなく、それぞれ楽な仕事だったのではないだろうか。
いささか物足りなくはあるが、ケイト・ブランシェットのメイクや衣装がローレン・バコールを彷彿とさせて、さすがかっこいい。
クレジットタイトルの不気味なバックまでいかにもこの監督らしくて気に入るが、誰にでもお勧めできる映画ではなさそう。そのためか公開2週目で平日一番とはいえ観客は20人ほど。
次作もちゃんと公開されることを祈る。
さて、今回は渋谷の映画館に行ったので、お昼はスクランブルスクエアで。
12階にある Carvaan Tokyo は中近東料理のお店。
アラビアン・ベジプレートを頼んでみると
まず登場したレンズマメのスープはクミンが効いてアラブらしく
ファラフェルはなぜか二色で、赤い方よりも空豆を使っているだろう緑の方がずっとおいしいけれど、まわりのホムスやタブーリ、タヒーニなどもちゃんとしていてパンとよく合う。
コーヒーの器も凝っていて、この店は演出が実にうまい。
と、お料理には満足したけれど、これで3,000円越えはいかにも高い。
この値段は外の景色代込みか。
眼下では東急東横店の解体が進行中。渋谷は行く度に変わっている。
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東京に開花宣言が出される直前のこと、好きな庭園美術館に行ってきた。
開催中だったのは「奇想のモード」展。
ぶっとんだファッションと言えばヨーロッパ中世の被り物とか、マリー・アントワネットの時代のフランス宮廷とか、それらの時代は図版でカバー。
この美術館が得意とするのは20世紀初めなので、主にシュールリアリズムの影響を受けたモード誌の表紙が多く並び、デザイナーとしてはスキャパレリの作品が何点かある。
スキャパレリは今見ても素敵だと思うけれど、1930,40年代にはシュールレアリストの影響を受けてシャネルと競う時代の最先端を行くデザイナーだったのだとか。
庶民出のシャネルが戦後もガツガツとファッション業界を牛耳ったのに比べて、イタリア名門出身のスキャパレリはさっさと一線を退いてしまったというのも面白い。
本館の展示は撮影不可だけれど、ガラス壁がきれいな影を落とす渡り廊下の先の新館では撮影OK。
こちらには日本人作家のぶっとんだ靴が並べられていて
レディ・ガガが履いて有名になった舘鼻則孝の作品がいっぱい。本物を見れば一層、よくこれで歩けたなと感心する。
他の作家の動物をモチーフにした作品などもまさに奇想。
薄暗い部屋に展示されていたのはスプツニ子!のアートユニットによる遺伝子組み換えシルクのドレス。
入り口で渡される色付き眼鏡を通すと青っぽいドレスに緑の模様が見える仕組み。
スプツニ子!さんはNHKの「魔改造の夜」という馬鹿々々しくてめちゃくちゃ笑える番組で見たことがあったけれど、こんなものを作っている人だったのか。
展示を見終わったら新館のカフェで一休み。
この日はとても暖かかったのでテラスのテーブルに着くと、庭先で一本だけ早咲きの桜が花をつけていた。
それを見ながらいただいたのはスキャパレリにちなんだショッキングピンクのケーキ。
イチゴムースの中にベリーとマンゴーのゼリーが隠れていて、やっぱりここのケーキはおいしい!
またケーキ食べに庭園美術館に行こう。
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丸の内に出たらスープカレーを食べて
久しぶりに三菱一号館美術館へ。
現在開催中なのは「上野リチ」展。
上野リチさんとは今回初めて知ったのだがオーストリア生まれのグラフィック・デザイナー。
1910年代にウィーン工房に入り、1925年に日本人建築家と結婚して来日、京都を中心に活躍した人なのだ。
ウィーン工房はウィーン分離派とも関係が深く、アールデコの先駆けのような存在なので趣味にぴったり。
ということでこの展覧会に行ってみたのだが、リチさんのデザインは「かわいい」。
以下、展示品は撮影不可なのでネットから拝借。
工房ではテキスタイル・デザインを主に担当していたようだが、植物をモチーフにしたものが多く、後年になるほどカラフルになって行く。
まるで落書きのようなタッチの絵がとにかくかわいくて
日本の屋台などをモチーフにしたものもキュート!
日本の影響では金箔、銀箔を使った屏風がとても素敵で、
ついお土産にクリアファイルを買ってしまった。
七宝の小箱やマッチ箱カバーもまったく時代を感じない。
リチさんは戦時中も日本にいたそうだが、出身国のオーストリアがドイツに加担したような形だったので迫害されなかったのだろうか。大体彼女はユダヤ系だったそうなので、生国にいたらそれこそ大変なことになっていただろう。
いずれにしろ戦前から日本に暮らすというのは並大抵の苦労ではなかっただろうと思うが、かわいいもの好きの日本はリチさんに合っていた、と言えるのではないか。
美術館の中で復元された建物の屋根裏がのぞける一室だけは写真撮影可。
作品に登場する魚や鳥もやっぱりかわいい!
細かいものを展示するにはぴったりのこの美術館、平日昼間でも多くの観覧者で予想よりも混んでいたが、お客の90%は女性だった。
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先週の金曜日のこと、まだ早いのはわかっていたけれど、春の日差しが気持ちいいので皇居の周りの花見に行ってきた。
地下鉄九段下で降りると、この日は武道館で日大の卒業式があるとのことで、きれいなお振袖に袴姿のお嬢さんたちがいっぱい。
この卒業式に袴姿、いつから定番になったのだろうか。自分が卒業した頃にはなかった風習だけれど。
インド大使館前のモクレンはきれいに咲いていたけれど
千鳥ヶ淵はこの日まだ2,3分咲きの状態。それでも結構な人が花を求めて歩いていて
ボートに乗る人もいっぱい。
代官山通りを竹橋方面に曲がると、皇居の周りを走る人たちがちらほら。
先日のタモリ倶楽部で「日本最大の居ぬきは江戸城を居抜いた皇居」と言っていたが、確かに皇居は広いと周りを歩くと実感する。
北の丸公園の一角にあるこのかっこいい建物は旧近衛師団司令部庁舎。
2年前までは東京国立近代美術館工芸館だったが、工芸館は金沢に移転してしまった。現在内部は公開されておらず、工芸館だった時に入っておけばよかった。
その先にあるのが東京国立近代美術館。
現在「美術館の春まつり」として桜をテーマにした展示があるというので入ってみると
暗い室内のぐるりに明るく照らし出された春らしい作品の数々。菊池芳文の屏風に
河合玉堂の屏風。桜の枯れ枝の大きな作品は写真かと思ったら日高理恵子さんと言う方の絵画。何年もかけて描いたそうで迫力。
跡見玉枝の《桜花図巻》は様々な桜を描き分けたものでボタニカルアートそのもの。
桜がきらいな日本人はいないよね。
この春まつりは美術館の収蔵品展の一部だったので、会期ごとに作品が入れ替わるらしいいわば常設展も拝見すると、明治以降、古い時代の日本人の絵は西洋の模倣が多くて正直「だれそれ風」と言うものが多い。物まねではなくなったのは20世紀も半ばぐらいからだろうか。
中で興味深かったのは戦争画を集めた一角。
日本画の戦争画は絵の具の色が美しすぎて複雑。
不勉強にして今まで知らなかった松本竣介という画家を知ったのも収穫。
美術館を出たらお堀端をぐるっと歩いて丸の内に出た。
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昨年買ったトーハクのメンバーズプレミアムパスももうすぐ期限切れ、鑑賞券が一枚残っていたので晴天の上野に行ってきた。
現在開催中なのはナポリ国立博物館からやってきた「ポンペイ」展。
入るとすぐに噴火の様子を伝えるビデオがあり、倒れた人型の石膏像。子供の頃、考古学の本を読むのが好きで、被災した人の形に残った穴に石膏を流したと読んだっけ。
しかし悲惨な展示はこれだけ、後はもちろん灰に埋もれたおかげで保存されたローマ時代の町からの出土品で
今回はありがたいことにすべて写真撮影可。なので場内はカメラを持ったお客さんで一杯。
ローマ遺跡は地中海沿岸にいっぱい残っているので、イタリアはもちろん、トルコやアルジェリア、リビアとずいぶん見てきた。しかし町の遺跡自体は金太郎あめのようにほぼ同じ造りなので、いくつか見ると正直飽きてしまう。
興味を感じるのは床に残っているモザイクぐらいなのだが、さすがポンペイでは保存状態が良くて
見事な細工の絵柄も多彩で楽しい。
面白いのは「猛犬注意」のモザイク。
右が特に有名らしいが、これなら犬がいなくても飾りたくなっちゃう。
ポンペイならではなのは普通では退色してしまうフレスコ画の美しさ。
壁は赤く塗られることが多いらしく
お屋敷や部屋の再現模型がわかりやすくて良い。
調度や工芸品もさすが贅沢な品が多いが
ブロンズ製とは言え水道のバルブなど現代の物かと思うほどだし
タコ焼き機(笑)や調味料入れは今でも使えそう。
装飾品などこのままほしい。
女性像に残る金箔の飾りもとてもおしゃれだけれど
有力者だったらしい男性は頭部と男性器だけというのが独特の趣味。ポンペイは男性器信仰が強くて、現地に行ったことのある同行の友人によるとナポリ博物館にはいっぱい展示があるそうだが、東京ではこれだけ。文部省推薦、お子様OKの展示内容だ。
予想以上に充実した展示を見終えてお土産売り場を覗くと
炭焼きになったパンのクッションって、この趣味もよくわからない。
ナポリにも行きたいが、コロナが落ち着いても今の状況ではヨーロッパに遊びになど行けるようになるかどうか。
誰かプー公をどうにかしてくれ。
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めったに映画館に足を運ばないくせに、一本見ると予告編につられてまた来ちゃうといういつものパターンで日比谷へ。
まずは日比谷シャンテで
「ゴヤの名画と優しい泥棒」 The Duke
日本語タイトルがダサいが、原題のDukeとはゴヤが描いたウェリントン公爵のこと。
ナショナル・ギャラリーが当時としては大枚をはたいて買取り公開した所、わずか19日後に盗難にあってしまったという、これは実話なんだそうだ。
時は1961年、その頃は防犯システムも何もなくて、はしごでトイレの窓から侵入、誰にも見られることなく絵を運び出すなんて、今では考えられないほどのんびりしている。
映画の冒頭、タイトルバックからしてスプリットスクリーンに文字のフォントまで60年代っぽい。
途中に登場するロンドンの街頭風景は古いフィルムを加工し、役者をはめ込んでいるのだろうがこれがうまい。特殊技術とはこういう風に使う物よ。
主人公は60代のおっさんなのだが、売れない戯曲を書き、社会正義を語る変わり者。
その主張の一つがBBCの受信料を老人にはタダにせよ、ってどこかでも聞いたことがあるようなものなのだが、このおじさんの場合には年季が入っているし筋も通っている。
ただし家族はたまったものじゃなくて、苦労する奥さんの役を実際にはゴージャスなデイム・ヘレン・ミレンが地味~な装いで演じていて、おかげで一見軽いこの映画に重みが付いている。すごい。
クライマックスはおっさんの裁判場面なのだが、「これはコメディアンのオーディションじゃない」と裁判長に怒られるほどおっさんの発言はふざけていて、しかしセリフのいくつかは実際の裁判での発言だというから驚く。イギリス人って本当に面白い。
裁判場面では弁護士役で「ダウントンアビー」に出ていたマシュー・グードがかっこよく決めるし、一家の息子役のフィオン・ホワイトヘッドもかわいい。
小品だけれど気持ちよくみられる映画。
と気分よく映画館を出て、今日のランチは久しぶりにファラフェルを食べようと以前に行ったことのある中東料理屋に行ってみると、運の悪いことにお休み。
さてそれではどうしよう、と歩いていると、泰明小学校のお向かいにポルトガル料理屋を見つけた。
地下にある「ヴィラモウラ」。
店内はちょっと驚くほど広くて、しかし12時少し前に入ったら先客は1組しかいない。
ちょっと不安を感じつつオーダーをすると、すぐに出てきたサラダはたっぷりの量でこれはうれしい。
メインのフェイジョアーダは豆が少なくて予想していたブラジル風の物とはずいぶん違うけれど、ほろほろに煮込まれた豚肉がいっぱいでとてもおいしい。
このお店は今まで知らなかったけれどいい感じ。次は鱈を食べに来よう。
で毎度のことで映画のはしご、次はミッドタウンに移動して
「オペレーション・ミンスミート ナチを欺いた死体」
副題が語っている通り、死体に偽文書を持たせてドイツ軍に渡し、シチリア上陸作戦から敵の目をそらせたという、これも実話だというからびっくり。しかも作戦名が「ひき肉」ってブラックすぎると思うがこれも実際の名前だそうで、まったくイギリス人って。
作戦の第一歩が適当な死体探しと言うことに驚いたが、その後の偽のアイデンティティ作りが周到を極めていて、相手の裏の裏のそのまた裏までかこうとするところ、日本人には絶対にまねできないと思う。
情報局の将校にイアン・フレミングがいてMやQが出てきたり、途中で「本を書かない将校はいないのか」なんてセリフがあって笑う。
死体がスペインに計画通り漂着しながら、なかなか思うようにドイツ側が動いてくれなくてやきもきするあたりもスリリングながらおかしい。
しかし全体のトーンはかなりシリアスで、これはもっと軽くしても良かったのじゃないだろうか。
主演のコリン・ファースはさすがに年を取ったと思うが海軍士官の制服姿はかっこよすぎ。
制服フェチにはたまらないが、部下の女性とのロマンスはいらなかったと思う。
いささかもったいないところはありながら、元ネタの面白さで最後までだれることなく見られる。
2本続けて見て、やっぱりイギリスは面白い。
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久~しぶりの映画館で日比谷へ。
数えてみたらなんと昨年の4月に岩波に行って以来だった。
こんなだから岩波ホールもなくなっちゃうんだよなあ。
本日の一本目は監督と出演者、それにのぞき見根性で選んだこちら。
「ハウス・オブ・グッチ」 House of Gucci
グッチ家の御曹司が嫁に殺された有名な事件、その首謀者パトリツィアは懲役29年を宣告されながら18年で出所していると知って興味を持ったのだ。
映画はパトリツィアとグッチ一族との確執を時系列でストレートに描いているのでわかりやすい。
リドリー・スコットに期待した映像的な華麗さは今回残念ながらないが、159分と長い映画が退屈せずに見られたのは豪華な俳優陣のおかげだろう。
主役のレディーガガは演技がうまいとまではいかないが、強烈な上昇志向などタイプとしてぴったり。
対する御曹司役のアダム・ドライバー、受け身で一見地味な役柄だが純情なボンボンが猛妻の言いなりになって振り回され、やっとその呪縛から逃れても己の無能さに気が付かないお人よしを説得力満点で演じている。
俗物的なアルドを演じたアル・パチーノ、そのバカ息子役のジャレット・レトはかなり誇張した演技ながらさすがのうまさ。
しかし一番好きなのはやっぱりジェレミー・アイアンズ。エレガントでいながら冷酷な父親、素敵すぎる。
面白く見られた映画だったが、不満はパトリツィアが夫の殺害にまで至る動機がはっきりしないこと。
当然金銭がらみの動機だっただろうと思うのだが、共犯者になった占い師の役割が中途半端でよくわからない。実行犯との橋渡しにしてはその前の登場場面が思わせぶりすぎて、その割に効果がないような。
ちなみに出所したパトリツィア、グッチ家から事件前からの契約で多額の年金を受け取り、今回の映画ではガガから挨拶がないと怒っているとか。絶対に何の反省もしてないな。
いつもながら存命中の人物でも容赦なく実名でネタにしてしまう欧米の映画界ってすごい。
日比谷で映画を見た後はシャンテのカレー屋に行ってしまうことが多いのだけれど、毎度同じではつまらない、と今回はミッドタウンの中のチーズ屋へ。
こちら店頭でモッツァレラ、ブラータ、リコッタを作っていて、注文したストラッチャテッラもリコッタも甘みがあっておいしい。半分づつの注文ができるのもポイント高し。
ついピザに走ってしまったのはイタリアの話を見ていたせいだろうか。
その割に食べるシーンがほとんどなかったのは監督がイギリス人だったからか。
お昼を食べたらまた映画館に戻って二本目。
「クライ・マッチョ」 Cry Macho
元ロデオの名選手だった主人公、事故で背骨を折って引退、しがらみから元雇い主の息子をメキシコからアメリカに連れてくる仕事を引き受ける。
今年91歳になるクリント・イーストウッド、さすがに背中が丸くなり、歩き方も心もとなくて、いくらなんでもこの役には年を取りすぎていると思う。
動いているだけでもひやひやするのだが、最初の馬の疾走シーンで「ブロンコ・ビリー」を思い出し、背骨の事故は「ミリオンダラー・ベイビー」、若者とのやり取りは「グラン・トリノ」を思わせる。
メキシコからの道中で「センチメンタル・アドベンチャー」のようなロードムービーになるのかと思ったら途中の田舎町で引っかかってしまって、年増美女との関係は「マディソン郡の橋」っぽい。
しかし最初は心配だったクリントが見ているうちにどんどん魅力的になって、この映画もなんてかわいい映画だろう、と幸せになった。
上映館は小さなスクリーンだったけれど、平日の昼間でも男性比率の高いお客さんでかなりいっぱい。グッチより客の入りは良かった。
みんなやっぱりクリントが好きなんだね。
映画館を出て銀座を歩けばグッチの路面店があり
三越の壁面もグッチだった。
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寒いけれどピーカン晴れの一日、Trintrinさんとトーハク始め。
本日はおなじみ平成館ではなく、明治42年、時の皇太子のご成婚記念に建てられたという表慶館へ。
おととしの3月に予定されながらコロナで中止の憂き目にあった「日本の伝統芸能」展を歌舞伎好きのTrintrinさんの解説付きで楽しもうというわけ。
会場に入って最初はその歌舞伎。
舞台に上がって石川五右衛門を拝んでみたり、舞台裏の効果音のための小道具を見たり、のっけから楽しい。
激しい舞台では一興業でだめになるらしい、なんて話を聞きながら見る衣装は松竹衣装さんからの出品。
五輪の開会式で海老蔵が演じた「暫」の衣装は見るからに重そう。あの開会式の演出は気の毒になるほどひどかったけど。
2階に上がると次は文楽。
3人で人形を操る、その右手と頭の担当者を主遣いと呼ぶそうだが、この人の履物が面白い。想像以上にバラバラな人形の構造も面白くて、これを3人で操るとは。
次は能楽の部屋で、こちらは先日友人の舞台を見たばかりなので興味津々。
能面を裏から覗けるところもあったので試してみると、こんな視界で舞っていたのか、と改めて感心。
1階に降りるとこれはなじみのない沖縄の組踊の舞台。
琉球王朝時代、中国からの使者をもてなすための踊りだったそうだが
現代の物とは言え紅型の衣装が美しい!
そして最後は雅楽の部屋。
こちらもとんとご縁がないのだけれど
歌舞伎、能楽と順に豪華になる中、こちらはさらに豪華で、出品者はなんと宮内庁。
実際に現在使用されている衣装だそうだが、メッシュの靴が履き良さそうで、どこかの靴屋で夏用に売ってくれないだろうか。
フォトジェニックな表慶館も堪能できて、この展示は楽しかった。担当者さんもリベンジできてさぞ嬉しかろう。
「伝統芸能展」は1時間半ほどで見終わったので、ついでに本館へもお参り。
玄関の両脇にも、正面の階段の上にもお正月らしい大きな生け花。
そして2階では「博物館に初もうで」なる特集展示がされていて、テーマはもちろん寅だけれど
一番気に入ったのは景徳鎮の皿に描かれた猫のような虎。
すぐ隣が大好きな高円宮の根付コレクションの部屋だったのでこれも覗いてみると、期待通り、今まで見たことのないものばかり。
もちろん寅もいるけれど
チェシアキャットの根付とか、かわいすぎる!このコレクション、いったいいくつあるのだろうか。
さらに国宝室で等伯の松林図。
彫刻室で美しい観音様を360°拝ませていただいて、Trintrin様ともども大満足。
今年創立150周年を迎えるというトーハク、特別展にも力入りそうだし、さて今年の年パスはどうしようかなぁ。
最後は外国人観光客はいなくてもすっかり「インターナショナル」になったアメ横で
魯肉飯と仙草を食べて解散。
Trintrinさん、また一緒に遊んでね。
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