Luntaの小さい旅、大きい旅

ちょっとそこからヒマラヤの奥地まで

南極旅行 10 洋上の一日

2014-03-19 18:02:29 | 北米/南米/南極
2月7日

船上で過ごす一日目、朝の6時に目が覚めた。

船では毎日のアクティビティに合わせて食事時間などが決められるため、毎朝スピーカーでモーニング・コールがある。
しかしベッドに入るのが早いためか、毎朝モーニング・コールよりかなり前に目が覚めてしまって、すっかり早起き族になってしまった。

まずは外の様子を見ようと最上階(6階)にあるブリッジにあがってみる。
 外はどんよりとした曇り空だが、外気温は8℃もあって、フリースでも着ていれば十分。ちなみに船の中は24℃もあって、Tシャツ一枚でも暑いくらい。

この船では「オープン・ブリッジ・ポリシー」を採っていて、天候が悪かったり、入出港で忙しい時以外はブリッジに自由に入ることができる。
 
船長は小柄ながら白いひげで威厳たっぷりのロシア人。しかしこのキャプテンはまったく愛想がなくて、自分だけではなく、クルーにも乗客とのやり取りを禁じているらしい。姉妹船のロシア人船長やクルーはすごくフレンドリーだった、と乗ったことのある人が話していたから、船の雰囲気というのはリーダーの性格や考え方で決まるらしい。
キャプテンは王様なのだ。

ブリッジの左半分では航海士が常に海上を見張っているが、右半分ではツアースタッフの鳥類学者が朝から鳥の姿を確認し、何が見えたか記録を付けている。
 
スイスイと飛ぶ鳥を「あれはなに、これはなに」と教えてくれるのだが、こちらはアルバトロスがアホウドリぐらいしかわからないし、細かい違いなど見分けもつかない。それでも教えを受けているうちには興味もわいてくるが、飛んでいる鳥の写真を撮るのは難しい。

ブリッジと同じ6階にはバーラウンジがあって、ここは明るくて気持ちがいいので暇な時はたいていここで過ごすことになる。
朝食の30分前になると、バーテンダーのおじさんが毎朝スムージーを作ってくれる。
 
ちなみにこのイギリス人のおじさん、大阪に10年住んでいたとかで、暇な時は日本語でおしゃべりしてくれた。
ツアースタッフはユニークな人が多くておもしろい。

さて、今回の19日間の航海ルートは地図の赤線の通り。

本日はフォークランド諸島へ向かってウシュアイアから北東へ一日海の上。
おかげで悪名高きドレーク海峡を通過することなく、海はいたって穏やか。
乗客の多くが船酔い止めのパッチを耳の後ろに貼っているが、そんなもの必要なさそう。
 その証拠に朝食のテーブルに空きはほとんど見られなかった。

朝食の後には明日からいよいよゴムボートに乗って上陸が始まるため、まずは全員必須のゴムボートの乗り降り説明会。
 プレゼンテーションの部屋は船の一番下、デッキ1にあるので、ここまで階段を上り下りすると結構いい運動になる。

その後はアルゼンチン人の南極研究者からフォークランドの植物についてのレクチャー。
フォークランドには固有種が13あるのだが、イギリス人入植者の持ち込んだ羊が増えすぎて、ほっておくと絶滅してしまうとか。

昼食とお昼寝タイムの後にはツアーリーダーのレクチャー。
今回のリーダーはオーストラリア人だが、南極に何十回と来ているベテランで、著書や関わった映画、テレビ番組多数。
船の運航と安全に関しては船長が、停泊地での活動に関してはツアーリーダーが責任を負うことになる。

本日のお題は「フォークランドの自然と歴史」。

フォークランド諸島は1592年にイギリス人によって発見され、1776年から正式にイギリス領となったのだが、1540年に先にスペイン人が発見したとの説もあって、それがアルゼンチンが領有を主張する根拠になっているとか。でもそれならアルゼンチンじゃなくてスペイン領なんじゃないの、と意地悪く思ってしまう。

1982年のフォークランド紛争は時のアルゼンチン軍事政権が不人気を挽回するために起こしたもので、まさか軍事的に反撃されるとは思っていなかったところ、強気なサッチャーがやはり自国での不人気挽回のために実力行使に出て戦争になった。
国内の不満を領土問題で愛国心をあおってそらそうとするのはどこの国でも常套手段らしい。

紛争当時は実際の利益というより両国の威信が重要だったようだが、現在では海底油田の可能性や漁業権の問題があってやはり両国譲れないらしい。
「フォークランドを取り戻せば油田で金が入るからアルゼンチンも冬季オリンピックに選手が送れるんだ」とは選手団を送っていないアルゼンチン人スタッフの主張。
フォークランドの領有権問題はいまだ根が深いようだ。

わかりやすいレクチャーを楽しんでいるとすぐにお茶の時間になって、夕食の時間。
食後は映画の上映もあったが、部屋に帰って寝てしまった。
洋上の一日も退屈することなく、船の揺れが心地よくて、夜もよく寝られる。



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コメント (2)
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