Luntaの小さい旅、大きい旅

ちょっとそこからヒマラヤの奥地まで

The Monuments Men

2020-04-19 11:07:55 | 雑談

本来であれば今頃はベルギーにいるはずだった。
しかし主目的であった「ファン・アイク展」も結局会期半ばで中止、博物館の休館が延期されてとうとう再開できずに終わってしまった(泣)。

さて、その楽しみにしていたベルギー行きのためにこんな本を読んだ。

 The Monuments Men

モニュメンツ・メンとはアメリカを中心に連合国側13か国のスタッフで結成された文化財保護のためのチームのこと。文化的に価値のある建造物を保護したり、ナチスに略奪された文化財の奪還が目的だが、このチームの構想が日本軍の真珠湾攻撃の1941年12月に始まったというのがまずすごい。

戦争と言えば敵国からお宝をさらってくるのが当たり前、ナチスでさえフランスから文化財を持ち出すのはナポレオンがさらっていったドイツのお宝を取り返しただけとうそぶいていたそうだし、ベルリンを陥落させたソ連軍にはスターリンの指示でお宝を持ち出すチームまであったのだとか。
そんな中、奪還したものを元の持ち主に戻す努力をしたこのチームは素晴らしいし、その中心になったアメリカはこの当時はちゃんとした正義感があったんだなと思う。

さて、なぜこの本がベルギーと関係があるかと言うと、ベルギー南部は連合国とドイツとの激戦地だったから。今回の旅ではアルデンヌ地方に足を延ばそうと考えていたのだが、リエージュなど第二次大戦でほとんど破壊されていたとは、まったく不勉強にもこの本を読むまで知らなかった。
欧米人観光客はベルギー南部と言えば呑気な城巡りよりも戦跡巡りだということも旅程を作り始めてやっと知った。

それ以上に今回の旅に関係していたのはナチス・ドイツがさらっていった大量のお宝の中にゲントの「神秘の子羊」があったこと。これがオーストリアの塩鉱山の奥深くに隠され、危うくヒットラーの狂信者に爆破されるところを鉱山関係者の機転により救われ、連合国側がここにたどり着いた後もあわやソ連軍にさらわれたかもしれない、とゲントにこの祭壇画が戻ったのはまさに奇跡と言いたいほど。

と、興味深いエピソード満載のこの本だが、ばらばらに活動していた複数のチーム・メンバ-の動向を戦争の進展と共に並列で描くものだから、第二次大戦末期のヨーロッパ戦線がどう動いたかはわかりやすいが、モニュメンツ・メンの活躍は小間切れで読みづらい。
大体13か国からのスタッフがいたはずなのに活躍するのはほぼアメリカ人で、しかしこれはアメリカ人が書いたものだから仕方ないか。

中で一人、ルーブル内でナチスの動向をひそかに監視していたフランス人女性はさすがに大きく取り上げられていて、この人が関係した列車による美術品持ち出しの阻止は「大列車作戦」という映画になっている。

この本自体もジョージ・クルーニーが映画にしていて、奪還されたお宝の中にブルージュのミケランジェロ作のマドンナ像があったので、映画も翻訳本も邦題は「ミケランジェロ・プロジェクト」となっている。


引きこもりの毎日、この2本でも見ようかな。
「大列車作戦」の方が絶対に面白そうだけど、さてTsutayaにあるだろうか。


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コメント (2)
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