めったに映画館に足を運ばないくせに、一本見ると予告編につられてまた来ちゃうといういつものパターンで日比谷へ。
まずは日比谷シャンテで 「ゴヤの名画と優しい泥棒」 The Duke
日本語タイトルがダサいが、原題のDukeとはゴヤが描いたウェリントン公爵のこと。
ナショナル・ギャラリーが当時としては大枚をはたいて買取り公開した所、わずか19日後に盗難にあってしまったという、これは実話なんだそうだ。
時は1961年、その頃は防犯システムも何もなくて、はしごでトイレの窓から侵入、誰にも見られることなく絵を運び出すなんて、今では考えられないほどのんびりしている。
映画の冒頭、タイトルバックからしてスプリットスクリーンに文字のフォントまで60年代っぽい。
途中に登場するロンドンの街頭風景は古いフィルムを加工し、役者をはめ込んでいるのだろうがこれがうまい。特殊技術とはこういう風に使う物よ。
主人公は60代のおっさんなのだが、売れない戯曲を書き、社会正義を語る変わり者。
その主張の一つがBBCの受信料を老人にはタダにせよ、ってどこかでも聞いたことがあるようなものなのだが、このおじさんの場合には年季が入っているし筋も通っている。
ただし家族はたまったものじゃなくて、苦労する奥さんの役を実際にはゴージャスなデイム・ヘレン・ミレンが地味~な装いで演じていて、おかげで一見軽いこの映画に重みが付いている。すごい。
クライマックスはおっさんの裁判場面なのだが、「これはコメディアンのオーディションじゃない」と裁判長に怒られるほどおっさんの発言はふざけていて、しかしセリフのいくつかは実際の裁判での発言だというから驚く。イギリス人って本当に面白い。
裁判場面では弁護士役で「ダウントンアビー」に出ていたマシュー・グードがかっこよく決めるし、一家の息子役のフィオン・ホワイトヘッドもかわいい。
小品だけれど気持ちよくみられる映画。
と気分よく映画館を出て、今日のランチは久しぶりにファラフェルを食べようと以前に行ったことのある中東料理屋に行ってみると、運の悪いことにお休み。
さてそれではどうしよう、と歩いていると、泰明小学校のお向かいにポルトガル料理屋を見つけた。 地下にある「ヴィラモウラ」。
店内はちょっと驚くほど広くて、しかし12時少し前に入ったら先客は1組しかいない。
ちょっと不安を感じつつオーダーをすると、すぐに出てきたサラダはたっぷりの量でこれはうれしい。
メインのフェイジョアーダは豆が少なくて予想していたブラジル風の物とはずいぶん違うけれど、ほろほろに煮込まれた豚肉がいっぱいでとてもおいしい。
このお店は今まで知らなかったけれどいい感じ。次は鱈を食べに来よう。
で毎度のことで映画のはしご、次はミッドタウンに移動して 「オペレーション・ミンスミート ナチを欺いた死体」
副題が語っている通り、死体に偽文書を持たせてドイツ軍に渡し、シチリア上陸作戦から敵の目をそらせたという、これも実話だというからびっくり。しかも作戦名が「ひき肉」ってブラックすぎると思うがこれも実際の名前だそうで、まったくイギリス人って。
作戦の第一歩が適当な死体探しと言うことに驚いたが、その後の偽のアイデンティティ作りが周到を極めていて、相手の裏の裏のそのまた裏までかこうとするところ、日本人には絶対にまねできないと思う。
情報局の将校にイアン・フレミングがいてMやQが出てきたり、途中で「本を書かない将校はいないのか」なんてセリフがあって笑う。
死体がスペインに計画通り漂着しながら、なかなか思うようにドイツ側が動いてくれなくてやきもきするあたりもスリリングながらおかしい。
しかし全体のトーンはかなりシリアスで、これはもっと軽くしても良かったのじゃないだろうか。
主演のコリン・ファースはさすがに年を取ったと思うが海軍士官の制服姿はかっこよすぎ。
制服フェチにはたまらないが、部下の女性とのロマンスはいらなかったと思う。
いささかもったいないところはありながら、元ネタの面白さで最後までだれることなく見られる。
2本続けて見て、やっぱりイギリスは面白い。 ←人気ブログランキングへ一票、お願いします。