文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

鞍馬天狗にモデルがいた!

2016-10-12 14:42:52 | その他
 美祢市という山口県にある小さな市の広報誌を読むと、面白いことが載っていた。有名な大仏次郎の「鞍馬天狗」(といっても、最近の若い人は知らないかもしれない)。天狗という名前がついていても妖怪の類が出てくる訳ではない。幕末を舞台にした時代小説で、鞍馬天狗は主人公の剣士のことだ。その正体は謎に包まれているが、勤王の志士として新選組などと対決する。嵐寛寿郎(これも最近の人は知らないだろうなあ。私にしても、知っているのは名前だけ)の主演で制作された映画は大ヒットになったという。もっとも嵐寛寿郎と大仏次郎の間では色々あったらしいが。

 この鞍馬天狗のモデルとなった人が誰かは諸説あるらしいが、この広報誌に書いてあったのは、美祢市美東町の長登出身の福原乙之進という人物。高杉晋作や久坂玄瑞などといっしょに、「英国公使館焼き討ち事件」に参加している。幕末の長州には、歴史の流れの中に埋もれてしまった人物が沢山いる。この人物も誰かが小説にでもしてくれたら、もっと有名になるかもしれない。なお彼の出身地の長登は、奈良の大仏に使用した銅の産出地として有名な場所だ。

 ところで、この乙之進さん、幕府の取り手の目から逃れるために変名を使っていたという。その名前が、出身地の「美禰」を匂わす、「長原美禰介」。広報誌でも、「オチャメなのかよほどの郷土愛」と突っ込まれているが、バレなかったのかな?

 
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書評:未来化する社会 世界72億人のパラダイムシフトが始まった

2016-10-12 08:46:48 | 書評:ビジネス
未来化する社会 世界72億人のパラダイムシフトが始まった (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)
クリエーター情報なし
ハーパーコリンズ・ジャパン

・アレック・ロス、(訳)依田光江

 本書は、インターネットとグローバル化により、世界を変えていく産業について書かれたものだ。著者は、ヒラリー・クリントンが国務長官時代に、イノベーション担当上級顧問を務めた人物である。

ここで取り上げられている産業は、次の5つ。①ロボティクス、②ライフサイエンス、③通貨のコード化、④サイバーセキュリティ、⑤ビッグデータ。これらの産業は、私たちの生活を大きく変えていくことは間違いない。現在においてもその兆しは見えている。

 しかし、それは必ずしも明るい面だけではないのだ。光あるところには影が存在する。本書はそんな産業の現状と今後どのように進んでいくのかを光だけでなく影の側面も含めて私たちに示している。

 例えばロボティクスについてだ。かっては人間しかできないと思われていたことが次第にロボットに委ねられはじめている。ロボティクスの発達により、人間はもっと生産的なことに向かえるものの、その反面人間から多くの職を葬ってしまうという。ロボットのもたらす変化に対して、人間は必ずしも対応できるわけではないのだ。

 ライフサイエンス分野については、正常な細胞とガン細胞のゲノムシーケンスを比較することにより、どこに原因があるか突き止められるという。その一方では人が遺伝以外の原因に目を向けなくなるおそれもあると警告している。

 通貨のコード化というのは、例えばビットコインだ。これは、管理機構が信用を保障するという従来の秩序をひっくり返して、アルゴリズムと暗号を駆使した新しい金融システムをつくるということだが、影の部分としてはマウントゴックス事件を上げれば十分だろう。

 サイバーセキュリティについては、既にこの話題を聞かない日はないくらいだ。戦争においても、既に直接的な戦闘ではなく、コード戦争の時代に入っている。サイバー攻撃は敵を大混乱に陥れられるのだ。更に何でもネットに繋がるIoTの時代が近づいているため、この分野はますます重要になるだろう。本書には、いずれ、トースターボットネットのようなものが出現するかもしれないと、ユーモラスなのだか、不気味なのだかよく分からないようなことが書かれている。

 最後にビッグデータだ。データ収集量の増加と、コンピュータ能力の増大により、データの山の中から、有用な情報を掘り出せるようになった。金融や農業など、様々な分野への応用が期待されている。しかし、プライバシーの問題あったり、誤った相関が出てくることがあったりとこれもバラ色の未来だけではない。

 これらの産業は、全てコンピュータ技術の発達があってのことだ。大きな特徴は、物理的な場所の制約を受けなくなるということだろう。本書は、そのような可能性についても書かれているが、果たしてこれからは、東京周辺への一極集中を緩和する方向へ世の中が進んで行くのか。

 もうひとつ本書で主張されているのは、女性と若者が活躍できる世界の重要性である。もうおじんが大きな顔をしているような時代ではない。これからは、これまでとは違った感性で、イノベーションを進めていかなくてはならないのだ。

 コンピュータ技術の発達とグローバリズム化に伴う光と影。本書は、そんな近未来を予想させる一冊である。

☆☆☆☆

※本記事は、「風竜胆の書評」に掲載したものです。


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