文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

日本人は今年もノーベル経済学賞を取れなかった

2016-10-10 19:41:50 | オピニオン
 今年度のノーベル経済学賞は、米国のオリバー・ハートとベント・ホルムストロムの二人に決まった。経済学賞は、他のノーベル賞とは位置づけが少し違うとはいえ、物理学賞、化学賞、医学・生理学賞とは異なり、これまで日本人受賞者が一人も出ていないというのはいささか異常だと言わざるを得ない。

 これは、ひとつには日本の経済学は、これまでは、いわゆるマル経に染まった人間が多く、そのイデオロギーに照らしてどうこう言っていただけということが多かったということがあるからではないのか。私が学生の頃は、経済学部のあたりで石を投げれば、マル経の人間に当たったものだった。そろそろ、経済学という分野の在り方を見直す時期ではないだろうか。

 私学では、数学をろくにやっていない人間が、経済学部に入れる。数学ができればいいというものでもないが、これでは、世界の潮流についていけない。最先端の研究の論文を読むことだってできないだろう。

 いっそ経済学部は解体して、工学部のシステム工学の下に入れればどうか。工学部システム工学科経済学専攻といった具合だ。そうすれば数学はある程度できる人間が集まるはずだし、イデオロギーに捕らわれてモデルを絶対化するようなことも少なくなるし、いいことづくめだろう。マル経学者もいなくなるので、大学もスリム化でき、大学経営にも資するはずだ。

(追記)
 そういえば、私の出た大学には、農学部に農業経済をやっている学科があった。今は学科名が変わっているようだが、今でも履修科目の中にマクロやミクロ経済学などが入っている。だから、工学部の中にもあっていいじゃないかと思う。
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ぞっとする会社

2016-10-10 13:59:01 | オピニオン
 小学館が運営しているニュースサイト、「NEWSポストセブン」に、本日付ですごい会社の記事が掲載されていた。神奈川県横浜市の秋山木工という注文家具メーカーだそうだが、独自の「徒弟制度」で職人を育てているという。

 この会社では、1年間の「丁稚見習いコース」終了後に丁稚として正式採用されるという。丁稚という呼び方から、なんだかなあと思うのだが、採用されると待っているのは地獄の日々。

 全寮制で起床は朝5時。朝食を作って、1.5kmのランニング。朝食後は、工場や近所を掃除。8時には朝礼で「職人心得30箇条」なるものを全員で唱和して仕事開始。職人の仕事を手伝いながら仕事を覚えるのはいいが、就業後は夕食を作って、夕食後はレポート作成や自主練習。就寝時間は23時だという。つまり確保できる睡眠時間は6時間。休日なしで、修業から解放されるのは盆と正月の10日間のみらしい。こうなるともう、「労基法ってなあに?それって食べれるの?」といった世界だろう。どこかの新興宗教かとも思ってしまう。

 会社のルールもすごい。入社後は丸坊主。女子も丁稚1年目は丸刈りだそうだ。恋愛が発覚したら即刻クビだとも。いまどき、このような時代錯誤な考えの会社があることに驚いた。記事は、この会社に好意的な書き方だが、私ならこんなところは絶対にごめんだ。

 我が国では、一部でこのような風潮をもてはやす向きもいるように思う。何でもかんでも手取り足取り面倒みるということにも反対だが、こういったアナクロニズムもぞっとする。やはり何事も中庸に勝るものはないということか。

(10月11日追記)
 上の記事でリンクしている「NEWSポストセブン」記事が削除されていた。ネット上では、あまりのアナクロぶりに、ブラック企業だと炎上していたようだが、おそらくその関係だろう。人の価値観はそれぞれだとしても、法治国家である以上、それなりのルールはあるはずだ。それが分かっていないのだろうか。

 記事の方も、炎上したから削除という態度はどうか?それなりの信念があって書いたのならどうどうと反論すべきだろう。反論もせずに記事を削除したということは、全面的に非を認めたということだろうか。こういったところにもマスゴミの無責任さを垣間見るような気がする。書く以上は、きちんとした信念に基づいた記事を書いて欲しいものだ。
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書評:私の微分積分法: 解析入門

2016-10-10 08:13:16 | 書評:学術教養(科学・工学)
私の微分積分法: 解析入門 (ちくま学芸文庫)
クリエーター情報なし
筑摩書房

・吉田耕作

 最近の事情は分からないが、私たちが大学に入ったころは、理系の人間は数学の授業を受けて、驚いた人間が多かったことと思う。その原因は、悪名高いε-δ法。慣れてしまえば、よくできているものだと思えるのだが、これで数学の迷宮に迷い込んでしまい、理系にも拘わらず、数学が苦手だと感じる人間が増えたとしたら残念だ。

 このε-δ法を知らない人のために、私が大学時代に使っていた解析学の教科書から事例を挙げてみよう。これは関数の極限の定義に関する部分である。

<関数f(P)の定義域をDとするとき、f(P)の点Aにおける極限値がlであるとは、任意のε>0に対して適当にδ>0を定めると

 P∈D で0<PA<δ ならば |f(P)-l|<ε
(PAは線分。上にバーが付くが、システム制約により省略〔評者注〕)

となることである。>
(岡野初男「微分積分学」(共立出版)p11)

 断わっておくが、私の入学したのは数学科でなく工学部電気系である。ところが、1回生で履修する数学の授業はいきなりこんな感じなのだ。これに馴染めなかった人間も多かったように思う。

 本書は、この道の大家である故吉田耕作さんが、このε-δ法を使わずに、解析学の初歩について解説したものである。扱われている内容は、高校の微積分から始まり、その自然な延長として、大学1回生の半分くらいまでを網羅している。

 ここで半分くらいと書いたのは、本書が対象とするのは、扱われているのが独立変数が一つの関数に限られているからで、1回生の時に通常は勉強する偏微分や重積分といったものは出てこない。しかし、本書の内容を十分理解すれば、そこから偏微分や重積分と理解を進めることにはさほどの困難はないだろう。

 練習問題も豊富なので、時間があれば練習問題を解きながら読んでいくというのが理想的だが、何かと忙しい社会人はもちろん、学生でもなかなかそこまではできないかもしれない。しかし、問題をざっと眺めて、少し考えないといけないようなものを選んで解いていけばよいのではないだろうか。その気になれば高校生でも十分に読める内容なので、数学好きの高校生にもお勧めしたい。

☆☆☆☆

※本記事は、「風竜胆の書評」に掲載したものです。
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