蝶になりたい

いくつになっても、モラトリアム人生。
迷っているうちに、枯れる時期を過ぎてもまだ夢を見る・・・。

鎖につながれた関係

2012-07-23 | 日々のこと

田舎の法事は、疲れる。


生活の糧を得る仕事がらみの関係者が、地元に、うじゃうじゃいる。
親戚の集まる席で、なにか、へんなことを言ったりしたら、
「あそこの、あの人が、ああ言った」と各家の末代まで語録として伝わりそうだ。
ただし、かんじ悪い人や、非常識な人などいない。みんないい人ばかりだ。
が、個人と組織の関係みたいで、わたしにとって、親戚、というだけで、どんないい人も、別のものに変化してしまう。


血縁、親戚、仕事、生活・・・すべてが、同じエリアに濃厚に凝縮されている。
しかも、人の出入りの少ない地域なので、
子供の世帯に、自立生活できなくなった老親が引き取られたり、入院したり、老人施設に入居したりする以外は、
転出、転入など、ほとんど聞いたことがない。


法事の食事の席で、いろんな話題が出る。


わたしは、すべて、口(くち)チャック。
話せるのは、野球やテニス、ゴルフの話題ぐらい。
(わたしは、そのスポーツを観戦も、プレイもしないが、聞きかじりの一般論で。
といっても、うんうん、そうですね、と顔で応戦)


義母から、いろんな人の話をいっぱい、30年前から叩き込まれているので、
かなり昔にさかのぼった詳しい情報まで知っている。
あの家は、あんな家。あの人は、あんな人。
この家は、こんな家。この人は、こんな人。
あの人のお母さんは、どこどこから嫁に来て、あんな人、お嫁さんのお兄さんはこんな人、
生まれは、どこ、育ちは、こう、実家は、昔は、こう、今、こう、
跡継ぎは、今、ああなった、長男は、こうなった、次男は、そうなった、長女は嫁いだ、次女は、嫁いだが戻ってきた・・・
その子供は、どこどこに、いって、ああなった、それから、こうなった・・・
いろいろな個人情報を隣の県とあわせた2県エリア限定で、50~100年まえぐらいからの情報を延々、伝え聞かされる。


そのわりに、あんまり覚えてなくて、この人、だれだっけ?
どういう関係だっけ? 
前にも同席したし、その前にも、また、その前にも同席したんだけれど、だれ、あの人?
ごくごく身近な人にも、はてな?で、いまさら、あなた、どなたさんで?とは聞けない。
参加者は、非常に少ないにもかかわらず、わたしは、けっこう、義母の説明を、聞いていないことを再認識する。

聞いても、理解するのに時間がかかり、せっかく時間をかけて、理解しても、こんどは、すぐ忘れる。
なので、義母とわたしの会話は、時間と口数ばかり膨大で、中身を要約すると400文字ぐらいかも?
先生(義母)と生徒(わたし)、生徒のレベルが低すぎる。
学生時代と同じで、わたしは、はいはい、と聞きながら、脳に空気穴があいているようだ。
脳と、こころは、すこーん、と通り抜け、風通しがいいので、ジメジメはないが、サラサラすぎて、肝心なことをちゃんと聞いていない。


そんな、うろ覚えの情報では、親戚の席で、ぺらぺらしゃべって、間違ったことでも言ったら、まためんどうくさい。


ひたすら、会が終了するのをじっと待つのみ。


が、料理も終わり、デザートも出て、コーヒーまで出たのに、まだまだ話は続く。
長い~。
にこにこ、を通り越して、にたにたするのも、いい加減、疲れる。


あとで、鏡を見ると、鼻のあたまは、てっかてか。
化粧(ファウンデーション)と汗と、脂が、分離して、奇妙な光を放っていた。
お化粧は、壊れた冷凍庫に入っているアイスクリームのようになっていた。
どろっ。


あの顔で、いくら、にたにた微笑んでも、薄気味悪いだけだ。


口はあるが、話せない、って、けっこう、辛い。
ほんの時たま、そりゃ、ちがうやろ、と、ぴくっとなることがあるが、おさえる。
しょうもないことを言って、めんどうなことになっても、しかたない。
ただただ、逃げの一手。
聞こえても、聞かない。
ひょっとして、なにも話さない、自分を出さない水くさい人だ、と思われてたりして。
なんでもいい。なんとでも、思ってください。
あれこれ、考えると、きりが、ない。
ので、思うことは、だだひとつ。
早く帰りたい。


かくして、義務の法事は、二日経った今でも、ブログネタになるほど、わたしに負の感慨と、疲労をもたらした。



来年は、ウチも、法要を行うらしい。
義母に、「あなたに、任せましたよ」と、きっぱり言われた。(前々から言われているが)
とりあえず、今年いっぱいは、なにも考えないようにしよう。


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