雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

神仏との距離

2015-01-25 11:00:47 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子   ちょっと一息 

「神仏との距離」

清少納言が活躍した時期は、今からざっと一千年前、西暦一千年前後のことです。
平安時代の中期にあたり、藤原氏の全盛期の絢爛たる王朝文化が咲き乱れている時代ともいえます。

この頃、人々にとって、それは老若男女を問わず、身分の上下を問わず、神仏と非常に近い関係にありました。もちろん神仏といっても、仏教など特別な対象を意識することもありましたでしょうが、もっと広い対象を身近に感じていた生活だったと考えられます。

よく知られているように、陰陽師なども活躍したでしょうし、物の怪やたたりは日常生活に密接していました。忌日とか方違えとかは、現代の交通ルールよりも定着している程でした。
貴族が病ともなれば、医師の見立てや薬の投与もされましたが、最も頼りとされるものは、厄を払ったり、付きものや悪霊を追い払ったりするための、僧侶や行者や神官による加持祈祷でした。

枕草子の中にも、加持祈祷や法華八講などの様子が数多く描かれています。
清少納言も、法会などに熱心に通われたりしておられたようですが、そして、当然その御利益を尊ばれていたと思うのですが、書き残された文章の所々には、極めて冷静に神仏と接しているように感じられる表現があります。

現代の私たちでもなかなか理解しにくい、神仏や物の怪や悪霊たちとの距離を清少納言がどのように保っているのかと推察するのも興味深いものです。
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