『 実に優雅で、感動的なお話ではございますが、事と次第ではお里の名誉にも関わることであり、やんごとなき方々の学問は、まさに命がけでございますねぇ。』
村上帝の御時でございます。
宣耀殿(センヨウデン)の女御というお方は、小一条の左大臣の御姫でございます。
そのお方が、まだ姫君であられた頃、父君がお教えになられたことは、
「第一に、お習字の稽古をしなさい。次には、琴を上手に弾けるように心がけなさい。その上で、古今集二十巻を全部暗誦することを学問としなさい」
というものでした。
( 中略 )
この女御の教養の高さは、宮中で誰一人知らない者が
いないほどになり、ついに、帝が古今集二十巻すべてを
暗誦しているか試してみようということになる。
この様子を、女御に仕えている女房が、お里の大臣家にお伝えしたものですから、大臣殿はじめ皆さま大変心配なされ、経を唱えさせ、宮中の方角に向かってお祈りし続けたそうなのです。
実に優雅で、感動的なお話ではございますが、事と次第ではお里の名誉にも関わることであり、やんごとなき方々の学問は、まさに命がけでございますねぇ。
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( 「麗しの枕草子物語」より )
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