マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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苣原大念寺施餓鬼

2012年10月12日 06時40分15秒 | 天理市へ
幾度となく訪れる天理市苣原。

1月のケイチンを始めとして、3月の念仏講、7月の大般若、8月の念仏講の数珠繰り、9月の如来さん御回在、11月の十夜の法要などだ。

この日は大念寺で施餓鬼をされると聞いていたので訪問した。

本堂前に設えたのは「外棚(そとだな)」。

檀家の人たちが朝早く採ってきた笹竹を四方に組んで斎壇を設ける。

そこには高さ70cmほどの古い位牌のようなものが置かれる。

「無塵法界凡聖斎圓」らしき文字を判読できたが「何なのか判らん(ねん)」と檀家たちは云う。

外棚をこの日の法要を営む福住西念寺の住職が云うには「ガキンドサン」である。

そこには4枚の白い布の幡(ハタ)。

「一切唯心告知」、「三世一切佛」、「應觀法界性」、「若人欲了知」とある。

これらは平成元年に大念寺什物として作られた外棚の幡だ。

今でも使っている明治24年製作の西念寺の幡をモデルに作ってもらったという。

外棚は「無塵法界凡聖斎圓」牌の他に施餓鬼の幡を立てた盛り飯。

いわゆる仏飯やツルカメの燭台、御供のカボチャ、線香などを供える。

餓鬼に施す供養だと話す。

本堂では外に向けた斎壇を組む。

その間上には天井から吊るした何本かの幡。

「南無妙色身如来」、「南無寶勝如来」、「南無十方法界常住佛」、「南無十方法界常住法」、「南無十方法界常住僧」、「南無大慈観世音菩薩」、「南無大慈比蔵王菩薩」などがあった。



本堂に登った檀家総代らと向かい側に新盆を迎える親族。

施餓鬼の法要には先祖代々の供養や塔婆追善供養などの法要を営まれる。

「なんまんだぶ なんまんだぶー」と弔う法要に焼香される喪服姿の親族ら。

塔婆にシキビの葉を水に浸して塔婆をなでるようにつける。

新盆の供養に手を合わせて参る。

住職が話すには、香で焼香するのではなく「水焼香」だと云う。

大念寺過去帳一切を詠みあげて「さんまんだぶー」。

「なまんだぶつー なまんだぶつー なむあみだー なーむあみだぶつー」と唱えて寺施餓鬼を終えた。

(H24. 8.11 EOS40D撮影)

話しは大きくそれるが静岡県の有東木(うとおぎ;うろぎが訛った)で行われている盆行事に話題を繋げる。

家のお盆に供えられるナスビの午がある。

採ってきたクルミの実を午の背に乗せる。

鞍に見立てたクルミの実である。

その上にはソーメンも。

それは手綱だと紹介される。

編んだマコモを敷いた上に置く。

いわゆる先祖さんに祀るオショウウライダナ。

有東木のお盆のあり様だ。

その夜は東雲寺の境内で踊られる盆踊り。

400年も受け継がれた踊りは国の重要無形民俗文化財に指定されている。

踊りは男性方の踊りと女性方の踊りがある。

男踊りと女踊りは交わることなく相互に踊る。

先祖のために踊る盆踊りはどことなく十津川の大踊りと似てはいるが、長刀で悪霊を切るあの世に追い出すという踊りもある。

8月14日の迎え盆はサイの目にきったナスやキュウリをお墓に供える。

洗った米は墓石に撒く。

その日はお寺で施食会(せじきえ)。

施餓鬼会と同じように施餓鬼幡を天井から吊るしている。

会式を終えればその幡を引きむしり取って家に持ち帰る村人たち。

この幡を畑に挿しておけば虫除けになるという。

野菜を食べる虫が来ないという言い伝えである。

この映像を見て思い出したのが山梨県甲府出身のご婦人。

送迎者の一人であるTさんが語った故郷の風習。

甲府では施餓鬼の幡を参った人が貰って帰って、ダイコンの葉が虫にくわれんようにと畑に立てると話していた。

まさにその様相である。

描きだしていた放送はBSジャパンの「にっぽん原風景紀行」の一編。

日本各地で行われている行事や風習が紹介されているので楽しみにしている。

(H24. 8.11 EOS40D撮影)