マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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矢田垣内のオショウライサン送り

2012年10月27日 09時08分58秒 | 大和郡山市へ
矢田垣内のオショウライサンは13日に迎えた。

鉦を叩きながら松明に火を灯して家に戻る。

火は線香に移し替えて先祖さんの仏壇に供えた。

14日は朝におじゅっさんがお念仏。

夜は村の観音講の人たちが新盆の念仏を唱えてくれたT家。

15日は迎えていたオショウライサンを送る日だ。

夕刻のころ。涼しくなったころにはあちこちで鉦の音が聞こえてくる。

垣内のみならず横山辺りからも聞こえてくる。

矢田幼稚園前に広がる田園からも聞こえてくる。

松明の火は見えなかったが鉦を打つ音は遠くまで聞こえる。

行先はそれぞれのようで畑地辺りで手を合わせる家族も居る。

丁度、そのころ横山のMさんも鉦を打ちながら家門を出てきた。

川堤の土手は家から出てすぐのところだ。

抱えていた箕にはウリ、ナスに大きな葉っぱ。

ハクセンコウの御供や何対かの箸もある。

ガキンドさんに供えたものであったのか聞きそびれたが、それを土手に置く。

砂を盛ったところに線香を灯して手を合わせる。

オショウライサンを送られたのだ。

「うちより隣家はちゃんとしている」と云われて示す方角は新盆のT家。

門屋の前で長い松明に火を点ける。



藁で作った松明はおよそ2mにもなる長さだ。

火が点いた松明をそろりそろりと運ぶ。

松明は家を出たすぐ近くの辻まで持っていく。

火が消えてはならないから早めに歩くことはできない。

鉦を叩き続ける息子さん。

松明の燃え具合を確かめながら一緒に向かう。

家族揃って辻に向かう。

その間も叩き続ける鉦の音が垣内に響き渡る。

辻に着けば燃えた松明の火から線香に移す。

そうして般若心経を唱える。



家族揃いの般若心経は墓地に向かって三巻も唱えた。

かつてあった来光寺跡の墓地である。

年の始めの1月に亡くなられた親父さんを葬った墓がある。

「気いつけて無事にお墓に戻ってや、一年後には迎えます」と母親が口にする。

燃やした松明は田に捨てて戻っていった。

そうこうしているうちに再び聞こえてきた鉦の音。

隣家のM家だ。

鉦を叩きながら門屋を出てくる家族。

当主は火を点けた藁松明を持っている。

玄関先で火を点けたのであろう。

同じようにそろそろと歩いていく。

火を絶やさずに運ぶ松明は家先の辻。

オショウライサンを迎えた同じ場所だ。

T家と同じように鉦を叩き続ける婦人。



その場で松明から線香に移し替えた。

線香を地面に挿して同じように来光寺跡墓地に向かって手を合わせるが般若心経を唱えることはない。

そのまた隣家のT家の家人に伺った。

付近では先ほどの2軒だけが松明に火を点けるという。

それぞれの家がそれぞれの方法でオショウライサンを送る。

三日間に亘る垣内のお盆の風習を拝見させていただいた。

貴重なお盆行事の資料として残すとともに取材させていただいた皆さま方に厚く御礼申しあげる次第である。

(H24. 8.15 EOS40D撮影)