マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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室生小原の田の虫送り

2014年12月30日 07時54分20秒 | 宇陀市(旧室生村)へ
我が家ではキリギリスが鳴き始めたこの日。

例年通り村の人たちは松明を持ってやってきた宇陀市室生小原。

集まる場は推定300年余りのエドヒガンの枝垂れ桜で名高い極楽寺だ。

明治32年に焼失した極楽寺は、のちに再建されたが無住寺。

それまでは住職(融通念仏宗派であろう)もおられて虫送りの祈祷もされていたと聞いている。

田の虫送りが始まる前に打つ太鼓。

「ドン、ドン、ドンドドドン」の太鼓の音色は小原の里に広がる。

鉦の音も聞こえることから境内で行われる数珠繰りも始まったのであろう。

「なんまいだ」念仏の虫祈祷を終えて松明に火を点ける。

先頭を行くのは村の役員が勤める鉦叩きと太鼓打ち。

オーコに担がれた太鼓は相当な重さ。

他所では軽トラで運ぶようになったが、小原では今でもオーコ担ぎ。

肩が食い込みながらも田の虫送りに巡行する。

「キン、キン、キンキキキン」と打つ鉦の音に合わせて太鼓は「ドン、ドン、ドンドドドン」。



寺を出発した一行は南に下って東に向かう。

かつては「おーい おーい たのむしおくり おーくった」と囃しながら行列を組んでいた。

「おーい おーい」は呼びかけの「おーい」でなく、虫を「追う」である。

その田の虫送りの唄を知る人は多くない。

松明は遠目で見ても判るように大きくはならない。

枯れた竹一本がほとんどである。

稀に大きな火が燃える松明もある。

それは枯れた竹を割って束ねた手作りだが、おそらく2本だけであったろう。

村の子供たちも虫送りに参加する。

安全性を考えて竹一本の松明にしたと聞いている。

それらは燃えやすいように脂を染み込ませている。

田んぼの方に向けてではなく、上に燈す子が多い。

まるでトーチのように見える。

かつての松明は松のジンがつきものだった。

それゆえ「松明だというのだ」と話していたことを思い出す。

割木、シバなどで松明を作っていたと話していた松明は水平に抱えて田の虫を送っていた。



こうして送った松明はトンド場で燃やされる。

ポンと一回鳴ったその場は村の行事を終えて直会に移る。

いつものようにスルメとジャコでお酒をいただく。

解散後の20時過ぎともなれば笠間川のホタルが飛び交う。

(H26. 6.20 EOS40D撮影)