都市と楽しみ

都市計画と経済学を京都で考えています。楽しみは食べ歩き、テニス、庭園、絵画作成・鑑賞、オーディオと自転車

ドイツのコンパクトシティはなせ成功するのか(村上敦):ドイツの事例紹介、論旨が弱いがお薦め

2017-09-04 02:43:14 | 都市計画

 ためになる著作だ。観点は:

①人口減少では、高齢者、低学歴、低収入が残る→これは根拠が薄い、人口安定の都市の中でも同じくモザイク化するはずだ、むしろ人口減少の地区は、低サービス、低税収、インフラ維持困難の指摘が良いと思う 

②ショート・ウェイシティは効率的な高密度居住であるが、P76の事例で移動と距離、居住面積の関連は分かりにくい、利便性と交流が混在している。密度と用途混合での都市活動の分析はジェイコブス以降多い。

③発電と夜間電灯使用と昼間の余剰電力で路面電車というのは本当だろうか。京都では両方一緒で、文明のシンボルだった。この理論だと夜間の路面電車は運行できなくなる。水力だけでなく、火力発電の併用もあったはずだが。電気自動車単体の変換効率が高いというのも、おかしな指摘で、エネルギー(例えば石油)を電力に替え、蓄電池に充電するまでの効率を無視している。

④自動車の環境コストや都市空間の占用は同意できる、自転車は偉大だと感じた

⑤都市マスタープラン(Fプラン)での商業の品揃え(業種)指定は面白い。しかし、我が国ではコンビニの更なる成長になるかもしれない

⑥徒歩、自転車、公共交通機関(路面電車、バス)で交通弱者を救うネットワークは良い。さらにEBikeで高齢者も自転車に乗れるのは素晴らしい。昔、アメリカで貧民層は週に1回タクシーで買物に行くとあったが、公共交通機関の欠如(または、マイカーの発達)だ。

⑦自転車道には示唆が多い。

 自転車道は車が止まないのが要件だが、事例では一歩進んで、歩道、路側帯、自転車道、車道の構成が指摘されている。これは、京都の自転車道(烏丸通、二条城の南の押小路、府警の前の新町通など)でも実際はタクシーや一般車両の駐車帯になっている。自転車は迂回して車道に出るという、「名前だけ自転車道」になっている。路側帯には引越や宅配、郵便の車の駐停車が多く、都市活動として避けられない。このため、歩道、路側帯、自転車道、車道の構成が理にかなっている。また、路側帯はL字側溝などの継ぎ目が多く、自転車ではタイヤを取られたりするため快適ではない。さらに、近年自動車交通量の減少も自転車重視の背景としてある。

 事例主体で分析やまとまりに難があるが一読に値する。

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