の続きです。
前回の記事で、
「実際には、発達に気がかりのある子の行動や伸びを左右する要因は、多種多様で、
日常のあらゆる場面に散らばっています。
成長のきっかけも成長していく道筋も数えきれないほどあります」と書きました。
発達に凹凸のある2、3年生の子らのレッスンの様子です。
2人と1人のチームに分かれて、『STRATEGO』というゲームをしました。
どの子もこのゲームは初めてなので、最初にルールを説明しました。
2年生のAくんはいくつかのルールを理解して指示に従って遊ぶのが難しい子です。
気持ちが高揚してくると、感覚刺激を求めて動き回って、
ゲーム盤上のコマをぐちゃぐちゃにしたり、
ほかの子が作っているものを壊してしまうことがあります。
同じく2年生のBくんも感覚刺激を求めて落ち着きなくうろうろしがちですが、
少ないルールなら理解できるし、指示にも従えます。
悪気なくルール違反をすることがよくあります。
3年生のCくんは、教室ではこちらの話をよく聞いて理解し、
ルール通りにゲームを楽しむことができますが、
家ではルールのある遊びをすることはめったにないそうです。パッと思いついたことを
口にすることはよくありますが、考えを組み立てていくのは苦手です。
教室では、遊びが成り立ちにくい子たちが
「ルールを覚えたり、ルールを守ったり、頭を使って問題を解決したり
する必要がある遊び」に親しんでいけるようにさまざまな工夫をこらしています。
それぞれの子の情報処理や感覚処理の能力に合うように
ルールを教えることも一つです。
「前に1進める、横にも1進める、斜めはダメ、進めない」と教えるのでしたら、
「前」と言う時に手を突き出し、「横」と言う時には、右手と左手を順に横に伸ばし、
斜めはダメと言う時に手を交差して大きなバツを作ります。
実際に駒がどう動くのか、子どもにやらせた上で、ダメなケースも、
「バツバツバツ~!」と言いながら、何度かやってみせて教えることもします。
忘れてしまいそうな場合、紙にイラストつきのルールを書いて、
傍らに置いておくこともあります。
幼い子たちにじゃんけんや左右や数を教える際も、同様に
身体を使って表現するよう促しています。
たとえば、じゃんけんをする時には、「パー」と「チョキ」を出し合ったあとで、
「パーの勝ち」と口で教えるのではなく、
チョキのはさみでパーの紙をチョキチョキ切る真似をして、
「チョキの勝ち~!」とチョキの手を上に高くあげさせて教えます。
数も、数える度に指で表現しています。
ルール自体をワクワクしながら続けることができて、わかりやすいものに
変更することや、その子が興味を持つ内容から順に教えることも一つです。
たとえば、強い感覚的な刺激を求める子たちは、
『STRATEGO』の爆弾に触れた時にどうなるか説明するところから話をすると、
ルールに興味を持ちやすいです。
ほかのゲームにも、「ロケットが飛ぶ」とか「落とし穴に落ちる」とか
「高速で追いかけ回される」といったルールを加えると、
飽きるのが早い子たちが、長い時間、ゲームに参加できるようになることも……。
もし、その子たちの今の課題が、「途中で投げ出さずにじっくりと遊ぶこと」なら、
面倒なルールはなるべく減らして、
ゲームの進行がスムーズになるようにします。
『STRATEGO』のクレーター上は進んではいけないルールなのですが、
今回はクレーターの上も進んでいいことにしました。
しょっちゅうルール違反をする子がゲームに参加している場合、
きちんとルールを守る子がイライラしてきてゲームが続かなくなりがちです。
そこで、「相手がルール違反をした時は、
「一度、取られてしまった駒を1つ復活させることができる」
というルールを加えると、違反があっても、
ルール違反をされた子のモチベーションが下がることなく
ゲームを続けることができました。
また、ルール違反が多い子が、「次は違反しないようにしよう」と
努力するきっかけになりました。